ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 今回から、全部一行空けしていたのを幾らか詰めて書くようにしました。


第64話 クリリン決死の突撃!窮地の茶々丸を救え

「界王様!何なんだあいつらは!?」

 

 突如大会に姿を現し、悟飯達四人に襲いかかった謎の集団

 その様子を悟空と界王はあの世から、この世の様子を映し出す特別なテレビを通して見ていた

 そして悟空は切羽詰まった顔で界王に問いかける

 彼らが常軌を逸しているのは、直接目にせずともテレビ越しで充分に把握

 しかも自分の息子や、仲間の知人が殺されかけているのだ

 悟空といえど、焦らずにはいられなかった

 

「…………」

「界王様!」

 

 一方の界王も、別の意味で焦りの表情を見せていた

 額からは冷や汗が一筋、サングラスの奥では目が見開いたままだ

 界王は、あの者達が誰かを知っていた

 最後に見たのは遙か昔、しかしひとたびその姿を見れば即座に思い出せた

 

「界王様!」

(な、何故じゃ……何故あやつらが地球に……)

 

 悟空の声もロクに耳に入らず、界王はただただテレビに目を向け続けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 あと数秒経つか、あるいはほんの少し更に力を強く込めるか

 それだけで決着、目の前の少女の命を奪える筈だった

 しかしモヒカンの男、ビドーはそれをすんでのところで邪魔された

 多方向から飛んでくる、無数の気弾の雨

 後方からそれを片っ端から浴び、ダメージはともかく意識をそちらへと向けてしまう

 

(ま、間に合っ……た!)

 

 この攻撃の正体を知る楓は、ビドーのように動じることなくその身を躍らせた

 残る力を振り絞って両脚を前方へ伸ばし、ビドーの胸板を思い切り蹴る

 攻撃を受けたことで僅かに弛緩していた拘束から、息も絶え絶えながら脱出に成功した

 

「こっ、こいつ!くっ、次から次へと!」

 

 再び掴みかかろうとするビドーを、今度は気弾でなく別のものが遮る

 バトルゾーンに着いた時八方に散らせていた影分身の、残りの七体

 捕まった直後から楓の指示で急行しており、気弾を撃ったのもこの影分身達

 密度は低く戦闘用としては力不足だったが、ビドーの目先を逸らすには充分な役割

 

「むんっ!」

 

 その間に楓は気を込め、充分に密度を高めた戦闘用の影分身を生成する

 全部で六体、自身の前に立たせ壁にした

 

(これでどうにか時間を稼いで、悟飯殿達と……)

 

 この時点で楓は両者間の力の差を自覚し、単独での制圧を諦めていた

 試みようとしていたのは、影分身に相手を任せての戦線離脱

 そして、そう遠くない場所にいるであろう悟飯達との合流

 

「逃がすかよっ!」

 

 しかしそれをこの男、ビドーが許すわけが無い

 影分身を出し終え、正面を向いたまま下がろうとする楓の素振りを見抜き、先んじて突撃してきた

 当然影分身達が行く手を阻むのだが、それに微塵も躊躇を見せず直進

 

(くっ!頼むでござる、せめて1びょ……)

 

 楓本体に辿り着かせぬことが影分身の使命、ゆえにこの突撃を避けることは許されない

 出来るのは気弾での牽制、そして正面からの肉弾戦

 

「おらおらあぁっ!」

 

 それらを全て、ビドーはものともしない

 気弾はまるで戦車への豆鉄砲、威力ではなく手数を重視したためもあるが、全身を覆う気が全てを弾き飛ばす

 肉弾戦は言わずもがな、ブルドーザーのように片っ端からなぎ倒す

 

「だあああぁっ!」

 

(無理か!もう一体……)

 

 すぐさま両者の距離は詰められ、突き出した拳が問題なく当たるところまで接近を許してしまう

 ここから楓一人でビドーを引き離して逃げるのは不可能、となれば出来るのは影分身を出すことのみ

 間を遮るように一体の影分身が出現、腕を伸ばして動きを止めようとするがもう駄目

 

「ぐがっ……ぐ……うぅ…………」

「……これでようやく、いっちょあがり」

「…………」

 

 ビドーの拳は影分身を突き破り、そのまま楓の腹を抉った

 意識の混濁も碌に晴れぬまま叩き込まれたそれは、少女を気絶させるには充分な一撃

 せめて一矢報いようと力なく伸ばされた右手が、全ての力を失い下へ垂れる

 

「なかなか面白い技だったが、所詮は小細工よ。さて、他の奴らの首尾はどうかな……」

 

 ビドーは楓を肩の上に担ぎ上げ、砂漠から飛び去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、どうしたのよ?遊んであげるって言ってるじゃない」

(こ、こいつ……強いぞ!)

 

 突如クリリンと茶々丸の前に姿を現した女戦士、ザンギャ

 元々は茶々丸を襲撃していたところを逃げられ、見つけた先にクリリンが居合わせた形

 古やネギの仲間と知った以上、茶々丸を放って逃げるわけにはいかない

 クリリンはザンギャの前に立ちはだかるが、自ら仕掛けることが出来ず現在膠着状態にあった

 

「そっちが来ないなら……」

 

(けど、どうにかするしかない!たとえ、正面から戦って勝てない相手でも……今あいつを助けてやれるのは、俺だけなんだ!)

 

 未だ動けずにいるであろう茶々丸の身を案じ、ほんの一瞬クリリンは背後へと意識を向ける

 彼からすれば瞬き一回分にも満たない刹那的な動作、しかしザンギャは見逃さなかった

 

「……遠慮なく、私からいくわよ」

(し、しまった!速い!)

 

 初動を捉えられず、正面にいたザンギャの姿を見失うクリリン

 彼女の気配を感じたのはその直後、既に自身のすぐ真横にまで接近し蹴りを放つ直前だった

 そこからの四連撃を、まともに止められず食らってしまう

 

「くっ、がぁ!ぐ!ぐあぁっ!」

 

 気配を感じた瞬間咄嗟に出した右腕を蹴りで弾かれ、握られていた拳で頬を殴られ、腹へ膝蹴り、上から肘打ち

 最後の肘打ちは特に強烈で、一度地に叩きつけられたクリリンの身体が跳ね上がる

 

(まずい、やられ……)

「はい、おしまい」

 

 そしてとどめの五撃目、岩場まで蹴飛ばすべく横蹴りを見舞おうと膝を折ったその時だった

 

「!」

「茶々丸!」

 

 ザンギャの目の前を、一筋の光線が通り抜けた

 当たりそうだったところを咄嗟に仰け反って回避した結果なのだが、これによって五撃目は中断

 クリリンはザンギャの間合いから抜け出し、光線の飛んできた先を見やる

 

 僅かに上体を起こした茶々丸の瞳がほんのり灯り、消えていくのが見えた

 ぼろぼろの身体に鞭を打った、彼女の決死の援護射撃

 

(くっ、当たらず、です、か……)

「ふーん、まだ戦えるのね。だったら……」

 

 頭を狙うも外れてしまったことに、茶々丸は歯噛みする

 一方でザンギャは今しがたの行動を受け、関心を向け直す

 

「や、やめろ!」

「……あんたが先ね」

 

 一度はクリリンに向けられた矛先が、より鋭くして茶々丸へ戻ってきた

 クリリンが制止の言葉を放つが、勿論ザンギャは止まらない

 片脚を失い、その場から自力で移動出来ない茶々丸へ迫る

 

「くっ……」

 

 茶々丸に出来るのは、気休めながらも己の手による迎撃のみ

 もう一発光線を飛ばす猶予は無く、水平に前方へ伸ばした右腕を全力で射出した

 

「遅いのよ!」

 

 しかしザンギャはそれを、当たる前に右手で横から掴んでしまう

 更には残る左手で、茶々丸本体と繋がるコードを切り落とす

 蹴りが叩き込まれたのはその直後、茶々丸の上半身が宙を舞った

 

 

 

 

 そう、上半身だけが

 

 

 

 

「ちゃ、茶々丸ー!」

「あら、取れちゃった」

 

 クリリンが来る前の交戦で、既に右脇腹を損傷していた茶々丸

 元々は以前桃白白との戦いで出来たもので、簡易的な補修を施していたが難なく抉られていた

 そして今しがた右腕を射出したことでザンギャの攻撃から庇えず、その箇所に蹴りが直撃

 血の代わりにオイルと冷却液を吹き出しながら、腰から上だけになった茶々丸は地面に転がった

 

「……じゃあ今度こそ」

「うおおおおおおおっっ!」

「そっちの番ね」

 

 これでもう、戦うことはおろか碌に動くことも出来まい

 そう判断したザンギャは、改めて狙いの先をクリリンへ

 既に彼の方から、激昂した様子で向かってきていた

 

「食らえっ!」

 

 腰のすぐ横につけていた両手を前方へ突き出し、気功波を撃ち出す

 始めはまっすぐ進んでいたのが、途中でクリリンの腕の動きに合せて真上へと上がった

 準決勝で風障壁を張るネギに対して放った、あの攻撃である

 だが障壁に遮られギリギリまで気付かなかったネギの時と違い、今回は初動から見られている

 つまり奇襲性がなく、ザンギャの視線は切れること無く気功波を追っていく

 

(ふん、こんな大したことない攻げ……いや、違う)

 

 上から降り注ぐように襲ってくる攻撃、そんな技だろうとザンギャは予想した

 襲ってくる方向が分かれば怖くも何ともない、そんな余裕が笑みとして浮き出る

 しかしその直後、クリリンが気功波を撃つ際の様子を思い出し表情を戻した

 

 

 彼はこちらへ向かって、『走りながら』射出したのだ

 

 

 何故わざわざ接近しながら遠距離攻撃の気功波を放ったか、その理由をザンギャはすぐ思いつく

 

(こっちは囮ってことね?つまらない小細工を……)

 

 視線を上に移させ、その隙に直接攻撃を叩き込むため

 簡単に気付かれるような策を講じてきたことにザンギャは呆れ、なら迎え撃つまでと視線を元に戻す

 

 

 

 

 

「太陽拳!!」

「!!」

 

 視界に入ったクリリンの姿は、一瞬で消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 忙しない様子が、足音から伝わってくる

 口からもやや乱れた息がこぼれ、余裕があまりない状況だとわかる

 速いピッチで駆け続けていたその男は、暫くしてからようやくそのペースを落とし始めた

 

「はぁっ、はぁっ、ここまでくれば大丈夫か。気を消して遠回りに移動すれば、多分ばれないだろ」

 

 火山エリアから脱出したクリリンは周囲の様子を確認し、足を止めて乱れる呼吸を整える

 

「ところで大丈夫か?死ぬ、は違うな……動きが完全に止まったりとかは、なったりしないよな?」

「は、い……最低限の機動、維持機、関は……腰より上、の胴体部に、集中して、いますから、よほど長時間で、なければ」

 

 そして腕の中にいる茶々丸に、無事とはほど遠い彼女の姿を見た上で状態を尋ねた

 

「ありがとう、ございます。ご自身だけで、なく、私のこ、とまで……」

 

 

 

 

 クリリンがあの時走りながら気功波を撃った、本当の理由

 まず気功波を上に撃ち上げた理由は、視線を一旦自分から離した上で戻させるため

 気功波に目を向かせ、その間に太陽拳の動作を見られることなく準備を完遂

 そして視線誘導が目的だと相手が気付き意識してクリリンの方を向けば、確実に太陽拳の光を当てられる

 後者は半ば賭けだったが、ザンギャの洞察力は見事『走って撃った』ことを気に留めてくれた

 

 

 

 

 そしてミスリードを誘ったとは別に、クリリンがザンギャの方へ走った理由

 

「いいっていいって。でもまあ、うまくいって良かったぜ」

「するとやはり、あれは……」

「賭け、の部分もあったかな。けどああでもしなきゃ、二人そろって逃げ出すのは難しかったかもだろ?」

 

 それは、茶々丸を助けた上でより確実にあの場から脱出するため

 あの時茶々丸はクリリンから見ると、ザンギャを挟んで反対側にいた

 つまり太陽拳の命中から茶々丸を回収しての脱出までには、単体で逃げるのと比べて少なからずタイムラグが発生する

 それを少しでも縮めようと、決死の覚悟で接近を図ったのだ

 

「とにかく、早いとこ地上に戻ろう。機械に強い知り合いがいるから、元通りに直してもらえるさ」

「ですが、私の構造は少々……」

「大丈夫だって、その人はなんたって前にも同じようなのを……っ!」

 

 クリリンはこの話題については、あまり自らの口では語らず早々に切り上げる

 その代わりに、ボロボロになってしまった茶々丸を励ますように、地上に戻りさえすれば大丈夫だと明るく振舞った

 しかし直後、言葉を止めて顔をしかめてしまう

 

「どう、されまし、たか?」

「あいつ、仲間がいたんだ……他の場所でも何人かが、戦ってる!」

 

 自身のことで手一杯だったためこれまで気付かずにいたが、一息つけたことで広範囲の気を感知する余裕が出来たクリリン

 よく知る悟飯やトランクスのものとは別に、彼らのすぐ近くで動く大きな気を複数捉えていた

 

「ここから一番近くにいるのは……トランクスか」

 

 相手の気の大きさは、先程交戦したザンギャに勝るとも劣らぬそれ

 彼女との力量差は、既に身をもって味わっている

 トランクスへの助太刀として自身に出来ることは少ないだろうし、何より一番にすべきことが目の前にある

 

「……ちょっと休みすぎたな、行こう」

「よろしいの、ですか?」

「ああ」

 

 茶々丸を抱えなおし、クリリンは再び駆け出した

 

(今俺が出来るのはこれが精いっぱいだ。悪いが悟飯、それにトランクス……任せたぜ!)

 

 




 次の話も書けてるので、近いうちに
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