「くっ、ん……ここ、は……」
「トランクスさん!」
「気がついたんやな!」
トランクスが目を覚ましたのは、ヤムチャ達が天津飯の援護を始めて少し経った頃であった
敵に倒されたと思ったら、今度は空中でコタローの腕の中
そんな目の前の事態にトランクスは戸惑いを見せたが、飛び込んできた轟音でそれはすぐさま掻き消された
「はっ!!!はっ!!!」
「ぐっ!このおおっ!」
「うぉあああっ!」
今もなお、絶えず放たれ続ける天津飯の新気功砲
地を砕き、更には空気を震わせる
「あ、あれは天津飯さん!?気を失ってた間に、一体何が……」
「トランクス!お前に頼みたいことがある!」
次に飛び込んできたのは、コタローのすぐ横で一心不乱に腕を振るうヤムチャからの声
繰気弾の操作を乱すわけにはいかず顔は向けられていないが、それでも張り上げた彼の声はトランクスの耳にまっすぐ入ってきた
「悟飯が今、敵の親玉と戦っている!その援護にすぐ向かってくれ!」
「悟飯さんが!?っ、この気はあの時の……」
悟飯の気がある方へ意識を向けると、すぐ近くに大きな気がもう一つ
決着間近の戦いの途中に乱入し、自身を撃破したあの男の気
ほんの一瞬の交戦だったが、その気をトランクスは覚えていた
「他の奴らはここで俺達が食い止める!早く行け!」
「で、ですがヤムチャさん、皆さんを残して俺が離れたら……」
トランクスは周囲を一瞥し、より詳しい状況を確認する
上方で新気功砲を撃つ天津飯、その横には餃子
新気功砲で動きを止められているのは、自身が戦った剣術使いを含め四人
そして今いる場所にはヤムチャとネギとコタロー、そして気を失っている楓
(ダメだ、危険すぎる!)
口にはしなかったが、あまりにも総戦力として小さすぎた
数でこそ六対四なのだが、単体での戦闘力は比べるまでもない
天津飯が力尽き、四人が解き放たれた後の惨状
蹂躙される様子が、嫌でもトランクスの頭には浮かんだ
「いいから行け!俺達のことは心配するな!」
「トランクスさん、僕からもお願いします」
そんなトランクスに対し、ヤムチャに続いてネギも頼み込む
ネギも天津飯を援護すべく、楓を抱える傍ら
「
最初に放った光矢と違い、魔力を多量に込めて練られたこの風矢
鋭い勢いで新気功砲の衝撃を潜り抜け、脱出を図る手下達に届きその動きを封じる
それはヤムチャの繰気弾、ひいては天津飯の新気功砲をアシストしていた
「天津飯さんが攻撃を続けられなくなった時は、躊躇せず全員で撤退します!そのための策も用意してます!」
「せやからトランクスさん、今は悟飯のことを助けたってや!」
「コタロー君まで……」
ネギの言う『撤退のための策』の準備だろうか、攻撃はせず単身気を練り上げながらコタローも二人に続く
この場にいる誰もが、真剣な面持ちだった
確固たる使命を胸に、動いていた
「……わかり、ました。けど決して無理は、しないでください」
「うおおおおおおっ!」
そしてトランクスもそれに応え、今しがたその使命の一端を果たした
あと一歩で重傷を負いかねなかった悟飯を救い出し、対ボージャック戦線に自身を並べる
「あの時のお返しを、させてもらおうか!」
「……面白い」
かくして開戦された第2ラウンド
手傷を負っている悟飯を無意識に気遣ってか、その一番槍はトランクスが務めた
悟飯に一瞬目配せをし、余裕の表情を未だ崩さずのままでいるボージャックへ突撃する
振るわれる右拳、それをボージャックはどっしりと構えたまま左腕で受ける
トランクスのパワーをボージャックが実感するには、十分すぎる第一撃
自らの部下ゴクアが追い詰められたのも、彼が油断したせいだけではないこともこれで分かった
無論、トランクスの攻撃はこれで終わりではない
先程放った第一撃に続き、左拳や両足で繰り出される第二撃第三撃第四撃……
第一撃に劣らないキレで放ち続けていった
防御に徹したボージャックはこれらを受け続け、耐えていく
(いいぞ!このまま抑え続けて……)
「……浅いんだよ、考えが」
「!?」
「そぉら!」
すると唐突にボージャックが防御を緩める
その目的はトランクスの反撃、ではなかった
自身の真横へ片腕を伸ばし、気弾を射出
一度に小球が十数発、まるで散弾銃のように放たれる
一発一発の威力は普通の気功波攻撃に劣るが、『狙った相手を捉える』ことに関しての性能は群を抜いていた
「ぐっ、しまった……」
「このおっ!」
「ぬぐぅ!」
ボージャックの攻撃は、回り込んで仕掛けようとしていた悟飯を捉える
撃破には程遠いが悟飯の足を止めさせ、攻撃を妨げる
防御を緩めたことで正面からのトランクスの攻撃を許してしまうが、悟飯がしようとしていた攻撃に比べれば小さなもの
むしろトランクスが殴り飛ばしたことで、ボージャックは二人から一旦距離を取ることが出来た
追撃は左手からの気功波攻撃で妨害されて叶わず、振出しに戻る
「くっ、見破られていたか」
「すみません、トランクスさん。もう少し僕が上手くやれていれば……」
一方が正面から戦って注意を惹き、もう一方が死角から攻撃を仕掛ける
二対一という有利な状況を生かすべく、トランクスが考えた作戦だった
ボージャックの注意を自身のみに向けさせようと、大声を張り上げながらの突撃
加えて悟飯への目配せ、これらの僅かな手掛かりだけで作戦の意図を汲み取った悟飯は流石と言えよう
しかし結果は不発、ボージャックに作戦を読み切られていたのだ
そこから悟飯とトランクスの二人は、手を変えながらボージャックへの攻めを続けていった
正面からの同時攻撃や、遠方から気功波を操っての援護射撃
どれも一定の効果はあった
攻め手側に回り続け有効打の数も倍近く、戦況自体は優勢のまま
しかしあと一歩、倒すためのあと一歩がどうしても届かない
ある時は次の一手を読んで回避し、またある時はダメージを最小限に留める防御の仕方の選択を完璧に行う
「くそっ、どうして……二人掛かりで攻撃してるっていうのに……」
(悟飯さんの言う通りだ。悟飯さんと俺の戦力を合わせれば、奴を十分に上回っている筈だ。なのに何故……それに、あの余裕は一体……)
(って考えてそうな面だな。ふふっ)
これで何度目になるだろうか、一定の距離を空けボージャックと悟飯達が向かい合うこの状況
傷をその身に重ねつつも、ボージャックは笑っていた
(お生憎様、こちとらこういったことには慣れてるんでね)
悟飯とトランクスにはなく、ボージャックにはあるもの
それは、数多の集団戦闘を経て得られた豊富な戦闘経験
銀河の各地を暴れ回っていたボージャック一味、その星の原住民が抗戦を試みてきたことも少なくない
ある時は敵一人を相手に、全員で巧みなコンビネーションを発揮し圧倒
またある時は幾倍もの人数を相手に、それぞれが多対一をものともせず一騎当千
それを幾度となく繰り返し、今の彼がある
ここまで苦戦を強いられるのこそ初めてだが、圧倒的な差でない以上そのノウハウを活かすことは幾らでも出来た
(あっちは若造、それにこれまでの動きを見るに二人で組んで戦うのは初めてだろう。モノが違うんだよ)
「悟飯さん、セルを倒した時のあの変身は……」
「すみません……ピッコロさんとの修行中何度か試したんですけど、一度も……」
「……そうですか」
とはいえ戦況が優勢には違いないので、このまま持久戦に持ち込めば悟飯達の勝ち目は十分にある
しかしこの二対一という状況がいつまでも続く保証は無い
となれば現実的な突破口は、『圧倒的なパワーを以て上から叩き潰す』ということになる
だがその突破口は、悟飯の言葉で閉ざされてしまった
(無理もない、大会前に猛修行してたとはいえ悟飯さんには半年以上のブランクがある。戦いの勘は幾らか取り戻せていても、一度きりのあの変身をものにするのは厳しいか……)
超サイヤ人への変身、言葉としては同じでもただ『変身した』のと『自在に変身出来る』のとでは大きな差が存在する
悟空もベジータも、そして彼らの血を引く悟飯とトランクスも
怒りによって覚醒したその後さらに修行を重ね、その結果怒りという感情に縛られず自らの意志による自在な変身を可能としたのだ
「おいおいどうした、こんなもんか?さっきみたいな攻撃じゃ、いつまで経っても倒せないぜ?」
(かくいう俺も、ピッコロさんと戦った時のあの変身はまだ上手く出来そうにない。時間を掛ければ分からないが、それだと相手に隙を見せてしまうことになる)
(とにかくここは、少しでも攻めるしかない。こちらが焦って手を止め余裕を与えれば、それこそあいつの思う壺だ!)
悟飯はトランクスの口ぶりから、彼も自身と同様にあの変身を自由に行えないことを察する
結果は如何ほどか、悠長に構えている時間は無い
(いいねえその目。今はがむしゃらに行くのみ、ってところか?)
そしてさらに一歩先の思考も、ボージャックの掌の上
「「うおおおおおおっっ!」」
「ふん゛っ!」
突撃した二人の攻撃を、顔を歪めながらも両腕でそれぞれ受け止めた
繰り返す、戦況そのものは現時点で悟飯達が優勢
(で、もうそろそろか?)
だが間もなく、それは引っ繰り返る
ボージャックは半ばそう確信していた
(まさか雑魚相手にいつまでも黙ったままでいるわけじゃあ……ねえよな。お前ら)
遠くにあっても、ボージャックは感じ取る
叩き伏せられ動けずにいようとも、消える気配の無い強大な気四つを
「はっ!!!はっ!!!はああっ!!」
「ぐっ、ぬっっぐうううう!」
(い、つまで、撃ちやがる!)
(この死にぞこないぃっ!)
(マズいわ、ボージャック様が押されている。早く私達も戦線に戻らないと……なのにこんな雑魚に!)
遠目から見ただけでは、開幕当初と変わらない
天津飯が新気功砲を鬼気迫る形相で上から撃ち続け、部下四人がその場から動けない
しかし着実に、見えないところで少しずつ状況は変貌を遂げていく
(天さん、やっぱり僕の気を!)
(何度も言わせるな餃子、ここは俺の力だけで奴らを止める!)
(けど!もう……)
(まだ撃てるさ、エネルギーが尽きぬ限り幾らでも!)
天津飯の気は尽きかけ、あとは気力でどれだけ絞り放てるかという領域
そして
(……くそっ、こうなったらやってみるしかねえか。おいザンギャ!ブージン!ゴクア!聞こえるか!)
(((!)))
(あんな雑魚相手に不本意だが、事態が事態だ。お前ら、手を借せ!)
ただ力づくで脱出を目指すだけだった四人が、新たに動き始めた
次の話が完成済み&さらに次の話の進み具合が半分ほど
今月上旬の内には投稿を目指します
何本書けるかわかりませんが、今年もネギドラをよろしくお願いいたします