Fate/stay night-Ceux qui tuent un ami- 作:甘茶々
そこは荒野だった。大小様々な剣が墓標のように突き刺さっている。その荒野に剣戟の音が鳴り響く。争うのは、赤い外套を纏った男とフードを被り布で顔を覆った男だ。
砂塵が舞い、男の視線を遮る。布によってその表情を伺うことはできないが、その声音から笑みを浮かべていることが伺える。
「固有結界、大禁呪の使用者が霊長の使い走りとは笑わせるな」
「精々笑ってくれたまえ。私としては、同業者が妨害をしてくるイレギュラーの方が笑えるがね」
赤い外套を纏った男、フードの男が言うならば霊長の使い走りは、その言葉とは裏腹に顔をしかめる。
「ほう?気づいていたか。僕は君ほど制限がないんでね。好きにやらせてもらっているよ。いやあ、君の仕事の妨害をしつつ君の自我を取り戻す作業はとても骨が折れた」
二人は言葉を交わしながらもその剣戟の激しさを増していく。
「私の自我を取り戻したことに何の意味があるかは知らないが、私のやることに代わりはない。そこをどけ!守護者!」
「僕も君と目的を共にするものなんだがね。同じ守護者だろう?親交を深めようじゃないか!」
そうフードの守護者は告げると後ろに飛び、赤い外套の守護者と距離をとる。それまで喜色のこもった声音をしていたフードの守護者の声から突然感情が消えた。
「僕はね、君みたいな守護者を見たら必ず問うようにしていることがあるんだ。とはいっても、君が初めて出会う同業者なんだけどね」
「ふん、答える義理も必要性も感じないな。それよりも死が迫っているが構わないのかね?」
「ッ!!!」
フードの守護者の頭上から宝具と思われる複数の剣が降り注ぐ。赤い外套の守護者はそれと同時にどこからか取り出した弓に捻じれた剣を番える。
「I am the born of my sword.(わが骨子は捻じり狂う)―――“偽・螺旋剣”(カラドボルグⅡ)」
「出し惜しみはしない。壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」
荒野にとてつもない威力の爆発が起こる。爆風により赤砂が舞い上がり視界を悪くする。しかし、その声はよく通った。
「問おうか、無名………いや、無銘の守護者よ」
「後悔、しているかい?」
日本海側に面する都市の一つ、冬木市。名前に反し温暖な気候であるこの都市は、中央の未遠川を境界にして東側が近代的に発展した「新都」、西側が古くからの町並みを残す「深山町」となっている。日が傾き、夕方となったその深山町にて、二人の学生服を着た若者が下校途中に公園で話をしている。
「なあ、士郎」
そう呼びかけたのは金髪碧眼の見るからに外国籍と分かる学生だ。公園のジャングルジムの中段あたりに腰掛け、夕陽を見ながら話している。
「なんだ?ヒロ」
士郎と呼びかけられた少年は金髪碧眼の学生――ヒロに目線を向ける。
「例えばさ、俺とお前が明日殺しあう関係になったとして」
「おいおい、ずいぶん物騒だな」
「まあ聞けよ。それでさ、お互い引けない理由があったとしたらお前は俺を殺すか?」
そう聞いたヒロはどこかとぼけたような表情をしていて、士郎に視線を向けない。士郎は視線を一旦下に下げて考えるように顎に手を当てるもすぐにまたヒロへと視線を戻した。
「そうだな…、その引けない理由によるかもしれないけど、俺は多分どんなことがあってもヒロを殺すことはないだろうな」
「どうしてさ?」
本当にわからない、といった様子でヒロは士郎に問いかける。夕陽に向けた視線も今は士郎の方へ向いている。
「そんなの、お前が友達だからに決まってるだろ?」
その言葉を聞くとヒロはジャングルジムから勢いよく飛び降り、士郎の前に着地する。
「じゃあ、もしそんな状況になったら俺のために死んでくれるのかい?」
「いや、多分二人とも生き残れる道を探すんじゃないか?というかさっきからなんだよ。終いには怒るぞ」
「あははは!悪い悪い!なんとなく思いついたら気になっちゃってさ!そっか、二人とも生き残る道か。士郎らしいなぁ…」
笑顔を浮かべたヒロは士郎の方に視線を向け、もう夕陽に目を向けることはなかった。