出来損ないの聖杯戦争   作:カエサル

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Fateが好きすぎて流れで書いてしまったものです。
拙い文章ですが読んでもらえれば幸いです。


プロローグ

こんなはずではなかった、少年は過去の自分を恨んだ。

乱れた呼吸を必死で整えようとする。息を吸うたびに肺が痛み、地を踏み込むたびに足の骨が軋む。

少しでも足を止めれば、後ろから迫る死が一瞬でこの命を終わらせにくる。

こんな理不尽からわずかでも抗うこともできず、ただ逃げることしかできない。

 

───お前は、出来損ないなんだよ。……消えろ

 

またあの言葉が脳裏をよぎる。

『出来損ない』その言葉が酷く少年の心を抉る。本人も分かっていることだ。しかし、こんな状況になると改めて思い知らされる。

どれだけ自分が無力で出来損ないな存在なのかと……

その刹那。後方の建物が凄まじい音を立てて崩れ落ちる。雷鳴だ。

雷が建物に落下した。

 

「そろそろ鬼ごっこもやめにしねェか?」

 

崩れた建物の上にそいつは現れる。

燃えるような真っ赤な赤毛が左右に靡き、獲物を刈り取るようなどう猛な瞳。小柄な身体以上に大きな籠手を右腕に纏い。それと同等くらい巨大な鎚を肩に担ぎあげている。

その姿はまさに鬼そのものだった。

両足に枯渇しかける魔力を込める。

強化された足で大地を蹴り上げる。

砂煙が舞い上がるとともに少年は一気に加速する。

出来損ないの少年が使える数少ない魔術《身体強化》。それさえも、優れた魔術師たちに比べれば格段に劣る。しかし、今はそんなものにでも頼るしかない。

自分の全てを出し切らなければ待ち受けているのは数秒後の《死》だ。

こんなところで死ぬわけにはいかない。

 

「そんなもんで目眩しのつもりかよォ!!」

 

首だけで後方を一瞥する。少女は巨大な鎚などもろともせずに数メートル上空へと跳躍する。肩に担ぎ上げていたそれを一気に地面に向けて叩きつける。

少女を中心に衝撃波が生まれ辺りの建物を根こそぎなぎ倒していく。数秒遅れて鳴り響いた化け物の怒号のような音とともに少年の体は何もできずに吹き飛ばされた。

宙を舞う体は、抗うことすらできない。

少年の体は、勢いよく建物瓦礫に背中から叩きつけられた。

 

「がはぁッ……!」

 

肺から空気が強制的に吐き出さされる。それとともに鮮血が飛び散る。背中に痛覚などという感覚は既になかった。

痛みすら感じない。だが、動くことはできない。なのに意識は飛ぶことはない。

自分の体が矛盾を抱える。

 

「あれを受けて生きてるとは大したもんだ。少しは褒めてやるよォ」

 

死が足音を立てて忍び寄る。

逃げなくては……《死》

動かなければ……《死》

考えなければ……《死》

どれだけ思考を巡らせてもこの状況で生き残る術が見つからない。

一歩、また一歩と死は近づいてくる。

けど、もう悔いはないか。やれるだけのことはやった。それでこの結果ならば、やはり出来損ないの欠陥品である自分を恨むしかない。

 

───あなたは、そうやって逃げてるだけ……

 

またも脳裏に言葉がよぎった。

 

───自分のことを出来損ないや欠陥品って言って戦うことから逃げてるだけじゃない!

 

酷く心に刺さった言葉だった。まるで今までの人生を否定されてきたような気分になった。だけど、反論はできない。その通りだったからだ。

結局、それを言い訳にしてきただけだった。

出来損ないも欠陥品も少年の諦めからきた答えだった。

 

「ほんと……無茶させてくれるよな……」

 

感覚すらなくなった体に力を込める。足がふらつき何度も倒れるが諦めない。

諦めることすら許されないなら最後までに足掻いてやるだけだ。

 

「まだ、逃げようとするのかよォ? もうお前が死ぬことは決まってるのに」

 

「それでも……俺は生きたいんだ……例え、出来損ないの欠陥品だとしても……」

 

倒れそうになる体を支えて左の拳を地面に突き立てる。

 

「こんなところで死んでたまるか───ッ!!」

 

その瞬間だった。突き立てた拳を中心に足元に光の軌跡が描かれていく。

 

「なんだッ!?」

 

少女は驚愕の表情を浮かべながらも大きく後方へと飛びのく。軌跡はその大きさを徐々に拡大し、巨大な幾何学模様を形成する。

 

「魔法陣……?」

 

それは魔術を行使するときに使用される術式の一つだ。このサイズともなると少年では扱うことすらできない代物だ。

魔法陣の輝きは増していき、稲妻を帯びた魔力が辺りの瓦礫を一掃させていく。

光で視界が覆い尽くされ、突き立てた左手の甲が熱を帯びる。

浮かび上がったのは、紋章だった。

焼けるような光が晴れていくと少年の前に人の姿をしたものが現れる。

この場に似つかわしくないほどに華やかなピンクの髪に人懐っこい印象の大きな瞳。

華奢な体付きを覆うほどの純白のマント。いや、背中に模様が描かれている。その姿はまるでどこかの王子のようにも見える。

その姿を少年は目に焼き付けた。

絶望の中にさした光。その光景を一生忘れることはできないだろう。

 

「サーヴァント、ライダー。君の声を聞いて参上した。問おう、君がボクのマスターかい?」

 

その日、少年、久遠怜は運命と出会った。

 

これは世界を救う物語ではない。

むしろその逆だ。

出来損ないの少年とポンコツの英霊の物語が交わる時、運命の歯車は動き出す。

 

 

 





Fate/ApocryphaやFGOを見ててアストルフォが好きすぎて書いた作品です。彼(彼女)が聖杯戦争に参加したらどんなふうに戦うのかを妄想しながら書いています。

次の話のタイミングでどの世界の話なのかの設定は公開致します。
いつ次が更新されるかわかりませんが楽しみにしてくれる人が一人でもいられましたら幸いです。
感想、コメント等は気軽に大丈夫です。

また読んでいただければ幸いです。
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