~もうそう世紀末次元~ 遊戯王ADSで世紀末トーナメント同人   作:黒糖信者

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勝利の女神に微笑まれて勝利を掴むものがいれば、天に見放されて敗北を喫するものもいます。両者の違いはいったいどこにあるのでしょうか?そんなことを考えながら書いてみました。
少しでも楽しんでいただけたらうれしい限りです。


※注意事項
当SSは、ニコニコ動画にて本体様が投稿していらっしゃった「遊戯王ADSで世紀末トーナメント」シリーズ(完結済み)の二次創作作品です。このシリーズをご存知ない方はご視聴頂いた上で当作品を読んでいただくことを強くお勧めいたします。

part1
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29930147

本体様ツイッターアカウント
https://twitter.com/0UEwyNR16xA7qXv

part14まであるじゃないか!そんなに沢山は見られない!という方は、せめてこちらの動画だけでもご視聴頂けますと幸いです。

part9
http://www.nicovideo.jp/watch/sm31283445


勝敗を分けたもの

勝利の女神は気まぐれだ。決闘では本来滅多に起こりえないことが何度も起こったりする。またその逆も叱り。決闘者であれば幾度となく経験することだろう。

 

勝利の女神は、果たしてどんな決闘者に微笑みかけるのだろうか?これは、神に微笑まれた決闘者と神に見放された決闘者。両者のほんの僅かな、しかし何よりも大きな違いの物語である。

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

「ほら、早くいかないと。参加申請、もう締め切っちゃうよ?」

青い髪を三つ編みにした美少女が急かす様に言った。彼女の名はアトラの蟲惑魔。蜘蛛の力を持った蟲惑魔の一人である。

 

「いや、でも…」

「そうよ、まだ何か方法はあるはず…」

 

彼女の周りを囲む少女たちは、みな言い淀んでアトラの言葉を聞き入れようとしない。いや、聞き入れたくないのだ。

 

「そんな顔しないの。ほら、みんな行って!私は観客席で応援してるからさ。」

 

アトラが少女たちの背中を押す。が、彼女たちは動かない。あるものは苦虫を嚙み潰したような顔で立ちすくみ、あるものは唇をかみしめて俯く。あるものはアトラから目を逸らして肩を落としている。

 

「嫌、だよ…」

 

灰色の髪をした少女が、絞り出すように言った。彼女はトリオンの蟲惑魔。アトラと一緒に生まれた、最初の蟲惑魔の一人である。

 

「ねぇアトラ、私たちずっと一緒だったじゃない!ティオやフレシアさんが生まれる前から、ずっと一緒に戦ってきたんだよ?今みたいに強くなれる前から、ああでもないこうでもないってみんなで考えて頑張ってきたじゃない!やっと強くなれたのに、それなのに、こんなの嫌だよ…」

 

トリオンの声は震えていた。瞳は、今にも涙が零れそうなほどに潤んでいた。悲しさもあるだろう。悔しさも寂しさも、やりきれなさもあるのだろう。しかしそれだけではない。トリオン自身が分かっていたのだ。理解してしまっていたのだ。

 

”蟲惑魔は、アトラがいないほうが強くなれる”という残酷な真実を。

 

生まれ落ちた時から、所謂ファンデッキの一つとして生きてきた蟲惑魔。そんな彼女たちが、ある時何の因果か選ばれたデッキだけが立ち入ることの出来る「世紀末次元」へと招かれた。そして、途方もない力を持つ新たな蟲惑魔が生まれた。

 

彼女の名はサラの蟲惑魔。詳しい紹介は省くが、彼女はたった一人で蟲惑魔というデッキに劇的な進化をもたらした。ファンデッキを世紀末のレベルへと引き上げ、環境に大打撃を与えるほどの能力を秘めたモンスターだった。

 

サラは素晴らしい仲間となった。トリオン達の力を何十倍にも引き上げ、蟲惑魔に新たな戦術を与えた。今まで蟲惑魔のエースを務めてきたフレシアとも抜群の相性を誇り、二人揃えば最強無敵といっても過言ではない。

 

サラは他の蟲惑魔を支え、他の蟲惑魔達はサラを支える。正に理想的な関係だった。ただ一つの問題を除いては。

 

そう。アトラは、アトラだけは、サラとの相性が最悪だったのだ。アトラの力ではサラの支えになれず、サラもアトラの力を引き出すことが出来ない。どころか、アトラの能力がサラの足を引っ張ってしまう始末。アトラだけが爪弾きにされたも同然だった。

 

 

「アトラ、まだ時間はあるわ。ギリギリまで考えましょう。貴方の力を生かす方法もきっと…」

 

「いいんです、フレシアさん。私がいないほうが強くなれるって、もう結論が出たでしょう?戦う舞台はあの世紀末大会なんだから。全力でいかなきゃ勝てませんって」

 

フレシアの言葉を遮り、アトラが言い切る。「私がいないほうが強くなれる」という言葉を聞いた途端、肩を落としていたサラがびくりと震えた。

 

「ねぇ…アトラはそれでいいの?」

 

静かに口を開いたのはカズーラの蟲惑魔。彼女もまた、アトラと一緒に生まれ育った最初の蟲惑魔である。

 

「本当にそれでいいの?納得、してるの?」

 

カズーラは淡々と言葉を並べた。一見すると平静そのものだが、カズーラの眉はかすかに歪んでいる。

 

 

「まぁ…悔しくないって言ったら…ウソになるわね」

 

ふっと息を吐き出し、アトラは続ける。

 

「でもね、納得はしてるの。サラさんが生まれて、私たちはとても強くなれた。私はみんなの力にはなれなかったけど…でも、みんな私をのけ者にしたりはしなかった」

 

アトラの声に暗さは無い。トリオンを、カズーラを、ティオを。フレシアを、そして力なく俯くサラを見つめた。

 

アトラはふと過去へ思いを馳せる。思い返せば色々なことがあった。

 

突然世紀末次元へと招かれ、なぜ私たちがと驚いたこと。世紀末次元に怯えるトリオンの手を握り、大丈夫だよと励ましたこと。

 

無事みんなで世紀末次元へと辿り着き、サラが生まれた時。みんなでサラの誕生を祝福し、喜び合ったこと。サラの力を知り、全身が沸き立つような高揚感を覚えたあの日。あの日のことはきっと生涯忘れない。

 

サラと共に戦いに備えた日々。私が手札にいたせいで命削りが打てなかったこと。サラの力で場に出たはいいが、手札から落とし穴を打つことが無いためまるで仕事が無かったこと。私が場にいたせいでサラを呼び出すのに失敗したこと。自失茫然とする私に、フレシアが「アトラは攻撃力が1800もあってかっこいいじゃない!」という何の慰めにもならない言葉をかけてくれたこと…。

 

いや、決して悪い思い出ばかりでもない。

 

いつも掴みどころのないカズーラが、真剣な目をして私のために考えを巡らせてくれた。かつては世紀末次元に怯えていたトリオンが、落ち込む私を励ましてくれた。自分のせいでと気に病みながら、それでもサラは私のためにと試行錯誤を続けてくれた。

 

そうだ。何を悔やむことがあるというのだ。これ以上、一体何を望むというのだ。アトラは再び口を開く。

 

「みんな一緒に頑張ってくれた。私はサラさんとは明らかにかみ合わないのに、それでも私の力を生かすにはどうすればいいのかって考えてくれた。貴重な時間を使っていろいろ試してくれた。それだけで私は満足なの」

 

アトラはそう言って笑う。曇りのない笑顔、前向きな言葉。後悔なんてない、納得している。だからみんなは気にしないで。言葉でも態度でもそう語り、アトラは仲間達を送り出そうとする。

 

 

…皆には見えないように後ろに回した手が、ぎゅっと固く握りしめられていたことはアトラしか知らない。

しかしアトラは前を向く。迷いなく、まっすぐに、大切な友にエールを送る。

 

 

「だからほら、みんな行って!私たちは強いんだってこと、思いっきり見せつけてきてよ!」

 

全員の背中を叩き、アトラは俯くサラに向かい合う。

 

「サラさん、頑張ってくださいね。貴方は勿論、蟲惑魔はみんな強いんですから!もしもかっこ悪いところ見せたり、途中で諦めたりなんてしたら許しませんよ!」

 

アトラの言葉に影は無かった。期待と希望と、どこか誇らしげな感情が混じったまっすぐな声。サラの目に力が戻る。落としていた肩をゆっくりと持ち上げ、前を向き、正面からアトラを見据えた。

 

「分かったわ、約束する」

 

ぽつりと一言。しかし、それだけで十分。アトラはにこっと笑い、サラは小さく頷いた。

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

「貴方のお仲間、1回戦を突破したそうよ」

 

「……ふぅん」

 

「次の相手は…蟲惑魔?らしいわ。私の仲間に勝ったんですって」

 

「まぁ、誰が相手だろうがきっと勝つだろ。あいつら強いからな、俺なんかと違って…」

 

Kozmo‐パーヴィッドは虚ろな目で呟いた。横にいるのはエルシャドール・ウェンディゴ。

彼らもまた、世紀末大会へと挑んだKozmoとシャドールの一員である。しかし、大会は既に始まっているにもかかわらず二人がいるのは戦いの舞台ではなかった。それどころか観客席ですらない。彼らは、世紀末次元の片隅に佇む場末の居酒屋でたむろしていた。

 

「あいつらが勝とうが負けようが、どうだっていいけどな…俺には関係ない話さ」

安酒を煽り、カウンターに突っ伏すパーヴィッド。今の彼を見て、世紀末次元でも屈指の強者であるKozmoの一員だと見抜けるものはいないだろう。

 

 

パーヴィッドは、決して他のKozmoたちからのけ者にされているわけでは無い。いや、のけ者ならまだ良かったのだろうか。

 

彼は、そもそも仲間達から認識されていないのだ。世紀末の大舞台で戦っているKozmo達は、パーヴィッドのことなど最初から知りもしない。きっと名前すら分からないだろう。

 

一体何故か?至極単純だ。

 

パーヴィッドは”弱い”から。仲間たちと肩を並べるには、明らかに力不足だったから。ただそれだけの話だった。

 

 

「どうだっていいさ…どうでもいい…」

 

酒を煽ってはうわごとのように呟くパーヴィッド。ぼろきれのようなその姿には、自信も矜持も、仲間への想いも、何一つ見出すことは出来なかった。

 

 

 

‐‐‐

 

 

 

「次の相手は…Kozmoね」

 

サラ達を送り出してからしばらく後。アトラは世紀末大会の観客席にて固唾をのんでいた。蟲惑魔は無事予選を突破。本選でもあのシャドールを下して二回戦へと駒を進める活躍を見せていた。

 

Kozmo相手なら、相性でいえばサラを擁する蟲惑魔が圧倒的に有利だ。しかしデッキの地力ではKozmoに遠く及ばない。強さと相性のせめぎ合い。どう転ぶかまったく分からない相手だ。

 

「みんな、頑張って…!」

 

天に祈るように、仲間の幸運を願うように、アトラは目を瞑った。

 

 

 

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