~もうそう世紀末次元~ 遊戯王ADSで世紀末トーナメント同人   作:黒糖信者

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勝負の世界は厳しいもの。心が折れそうになったり、諦めかけてしまったり、そんな辛いことが沢山あります。
そんな時、最後の最後に心を支えてくれるものはなんでしょうか?そんなことを考えながら書いてみました。
少しでも楽しんでいただけたらうれしい限りです。


※注意事項
当SSは、ニコニコ動画にて本体様が投稿していらっしゃった「遊戯王ADSで世紀末トーナメント」シリーズ(完結済み)の二次創作作品です。このシリーズをご存知ない方はご視聴頂いた上で当作品を読んでいただくことを強くお勧めいたします。

part1
http://www.nicovideo.jp/watch/sm29930147

本体様ツイッターアカウント
https://twitter.com/0UEwyNR16xA7qXv

part14まであるじゃないか!そんなに沢山は見られない!という方は、せめてこちらの動画だけでもご視聴頂けますと幸いです。
(とはいえ、最終回だけ見るというのも勿体ないですし出来れば全部見て頂きたいですが…)

part14
http://www.nicovideo.jp/watch/sm32460403


支え

「サラの蟲惑魔でダイレクトアタック!私の勝ちよ」

 

「毒蛇神ヴェノミナーガでダイレクトアタック。これで我の勝利だ」

 

そんなやりとりが何度繰り返されただろうか。ついに迎えた世紀末大会決勝戦。優勝の座を賭けて火花を散らしているのは蟲惑魔とヴェノムだった。戦い、戦い、戦い抜いてついに最後の二人となった両者。彼女たちの戦いはひたすらに激しく、しかし同時に淡泊でもあった。

 

いや、そもそもこれは戦いと呼んでいいのだろうか?果たしてゲームとして成り立っているのだろうか?

 

サラの蟲惑魔の絶望的な制圧力。毒蛇神ヴェノミナーガの神をも超える超耐性。これらは一撃必殺の刃に等しい。

互いが必殺の一閃を放ちあう戦い。勝負は常に一瞬で決し、巻き返しもまくりも存在しなかった。

サラが全てを支配するか、ヴェノミナーガが全てを押し潰すか。決着の種類はその二つしかなかったのである。

それはゲームというよりは殺し合い、まさに文字通りの()()とでも呼ぶべきものであった。

 

世紀末大会では、先行と後攻を入れ替えながら1勝1敗以外の結果になるまで戦いを繰り返す。

つまり…この戦いでは互いに先行での一撃必殺を繰り返し、それに失敗した側が即座に敗北するというわけだ。

 

「私のターン!」

 

サラが叫ぶ。戦いはまだ終わりそうになかった。

 

 

‐‐‐

 

 

「っ!」

 

互いに一歩も譲らずもつれこんだ7戦目。サラは手札を一目見て表情を歪めた。これはまずい…。

 

蟲惑魔の唯一にして最大の弱点、手札事故。今までの戦いでは致命的な場面で事故を起こすことは殆ど無かったが、ついに、とうとう来てしまった。

 

分かっていた。幸運の女神は気まぐれなのだ。サラは拳をぎゅっと握り込んだ。

 

常に一瞬で決着がつく殺し合い。そんな戦いで一歩出遅れることは死と同義だ。鎌首をもたげた不安を強引にねじ伏せ、サラは相対するヴェノミナーガを睨みつけた。

 

 

‐‐‐

 

 

「私はカードを2枚伏せるわ」

 

「この瞬間、我は毒蛇の供物を発動。我が眷属ヴェノミノンと貴様の伏せカードを破壊する」

 

「それを待ってたわ、皆既日蝕の書を発動!貴方のしもべには眠ってもらうわよ」

 

「2枚目を握っていたか、小癪な真似を…」

 

世紀末の檜舞台で繰り広げられる、呼吸すら忘れそうになる攻防。視線を捕らえて離さない駆け引き。アトラの蟲惑魔は、仲間達を観客席で見守りながら固唾を飲んでいた。

 

祈るように組まれた両手。早鐘のように脈打つ心臓。真剣な、どこか思いつめたような瞳。アトラの様子は、周囲のお祭り気分を楽しんでいる観客たちとは一線を画していた。彼女が今どんな想いでいるのかは…わざわざ語るまでも無いだろう。

 

既に蟲惑魔は7戦目を落としている。ここで負ければすなわち敗北、もう後が無い。しかも今の戦況は芳しくない。まだどうにか持ちこたえているが、どこか一か所でも綻んだら最後。毒蛇の牙が蟲惑魔の喉笛を食い千切るだろう。

 

 

「スタンバイフェイズ、禁じられた聖衣を発動!それを無効にしてサラの蟲惑魔を特殊X召喚!」

 

サラが叫び、自らフィールドへと降り立つ。

 

「ふむ。蟲惑魔が相手であれば…ヴェノミノンが手札に固まるのもそう悪いことではないな」

 

ヴェノミナーガは静かに呟き、手札からヴェノミノンを呼び出した。

 

「2体は…受けきれない…っ」

 

サラの表情が苦悶に歪む。

 

「蛇神降臨の儀を執り行う」

 

あくまで淡々と言葉を並べ、ヴェノミナーガは切り札を切った。破壊されたヴェノミノンの肉体から禍々しいオーラが立ち昇る。紫毒の煙が噴き出して視界を奪い、それが晴れた時…毒蛇の神が戦場へと顕現した。

 

「ああ……神が……」

 

諦観を孕んだ声が、サラの口から転がり落ちた。

 

 

 

呆然としたのはサラだけではない。

 

「そんな…ここまで来たのに…」

 

観客席のアトラも同じだった。張り詰めた糸が切れたかのように両手はだらりと下がり、口はぽか

んと開きっぱなし。

 

 

しかし、身体に反して頭の中はぐちゃぐちゃだった。

 

サラが生まれ、ゆっくりと目を開いたあの瞬間。

 

世紀末大会に備え、みんなで必死に修練を積んだこと。アトラの生涯の中で、あれほど必死に頑張ったのはあの時が初めてだった。

 

デッキを研ぎ澄まして強くなっていくにつれ、自分の居場所が無くなっていった時の胸のざわつき。

 

トリオンが、フレシアが、サラが、蟲惑魔みんなが私のためにと試行錯誤を続けてくれた日々。

 

悔しさを飲み込み、笑顔でみんなを世紀末大会へと送り出した時のこと。

 

蟲惑魔が無事予選を突破し、大喜びでみんなに会いにいったりもした。

 

そんな思い出たちが走馬灯のようにアトラの頭を駆け巡った。思わず目を瞑り、ぎゅっと頭を抱える。あんなにみんな頑張ってたのに。とうとうここまで来られたのに。それなのに…

 

 

「あぁ、蟲惑魔終わったなぁ」

 

「惜しかったねぇ。しかし、ヴェノムが優勝するとは思わなかったぜ」

 

「世紀末大会もおしまいかぁ…」

 

突然、そんな会話がアトラの耳に飛び込んできた。周囲の観客たちの話し声だった。呆れるほどに気楽で、気軽で、他愛のない会話。適当なテレビ番組でも見ているかのような、平凡な映画の感想を語るような、毛ほどの重みも無い言葉。

 

かちん。アトラの中で何かが音を立てた。何も知らないくせに、私たちがどんなに頑張ってきたか、どんな想いでみんなを送り出したのか、何一つ知りもしないくせに。こんな気軽に「終わった」なんて言うのか?こいつらは?

 

同時にアトラははっと目を見開く。

 

そうだ、何を凹んでいるんだ。諦めている場合じゃない。終わってない。まだ終わってなんかいない。出来ることはまだある。非力でも、弱くても、戦いの舞台に立てなくても。それでも出来ることはある。

 

たった一つ、今の私に出来ること。

 

アトラは大きく息を吸い込んだ。

 

 

‐‐‐

 

 

「ライトニングラインを超えた我に触れられるものはない。あとは時間が過ぎれば我の勝利だ。諦めるのだな…」

 

禍々しくも厳かな声。力に満ちた巨躯。6000に達した攻撃力。サラを射貫く鋭い視線。

ヴェノミナーガの圧倒的な存在感は、サラに絶望を与えるには十分すぎた。

 

勝てない…。

サラは、力なく俯い…

 

 

「みんなぁーーーーーーーっ!!!!頑張ってーーーーっ!!!!!!!」

 

 

観客席から響き渡る声。弾かれたようにサラは顔を上げた。背後から届いた声援。願いが、祈りが、誇りが。そして何よりも仲間への想いが籠った叫び。聞き慣れた声。生まれ落ちた瞬間から、ずっと一緒にいたあの子の声。

 

振り返るまでも無かった。誰の声かなんて見なくても分かる。何より、きっとあの子(アトラ)は振り返ることなど望んでいない。

 

戦いの最中、敵から目を逸らすような決闘者であってはならない。ましてや途中で戦いを諦めるなど言語道断。

 

彼女の視線を背負っていながら。あの期待を背負っておいて。悔しさを飲み込んで私を送りだしてくれた彼女の笑顔を知っていながら。あんな叫びを聞いておいて。

 

そんな無様なことが出来るとでも?

 

サラの体を血潮が巡る。冷たく冷えていた心が、消えかけていた闘志が、再び煌々と燃え上がった。

 

 

「いいえ…まだ”希望”は残っているわ」

 

「何…?」

 

「私の…ターン!ドローッ!」

 

サラは叫ぶ。(デッキ)から(カード)を抜き放つ。

 

劇毒の沼地に蟲惑の花は咲けやしない。可憐なる蟲惑魔は、蛇神に届く牙など持ち合わせていない。だが、それが一体何だというのだ?そんな理屈なんかより、もっとずっと大切なものがある。

 

「トリオン、ティオ、カズーラ、力を貸して。私たちはまだ戦える」

 

そっと呟くサラの瞳には、討ち倒すべき毒蛇以外、何も映ってはいなかった。

 

 

‐‐‐

 

 

「ホープ!更にホープ!重ねてホープ!もう一つホープ!最後に……ホープ」

 

サラの元に集ったのは、希望の名を持つ二振りの剣。無敵のホープ・ザ・ライトニング達だった。

 

「ほぅ…まだ抗うか。しかしその力でも、我には一歩及ばぬぞ」

 

それでもヴェノミナーガは動じない。5000という法外な攻撃力。完全無欠の効果耐性。墓地の眷属を除外して発動出来る再生能力。分体による身代わり能力。毒蛇の神は信徒達の屍によって幾重にも守られていた。

 

 

「それでも分体は貰っていくわ。バトル!」

 

希望の剣が蛇神を切り裂く。同時に勇者の喉を毒蛇が食い千切る。力は互角、相打ちだった。

 

だが…この戦いは英雄譚ではない。勇者の剣が蛇神を倒し、それでめでたしめでたしとは問屋が卸さない。紫毒の煙が噴き出し、墓から蛇が顔を出す。

 

「我は不滅。墓に眠る眷属達が何度でも我に力を与える」

 

墓地から蘇り、ヴェノミナーガは言い放った。

 

圧倒的。絶望的。脅威、災い。邪神、蛇神。どんな言葉を重ねたところで、サラの前に立ちはだかる神を形容するには到底足りない。

 

しかしサラは笑った。

 

「そんなことは知ってるわ、でも知ったことじゃないの」

 

サラの声に迷いは無い。剣はあと一振り残っている。ヴェノミナーガを指差し、サラは叫ぶ。

 

「再び…バトルッ!」

 

 

‐‐‐

 

 

「サラの蟲惑魔、貴様に聞きたい…。我が戦場に現れた時点で貴様らに勝機は無かった」

 

激戦が幕を閉じ、ヴェノムが勝利の栄冠を手にしてから少し後。サラとヴェノミナーガをはじめとしたモンスター達は控室へと引き上げていた。

 

「蟲の牙が我の喉元に迫ったことは認めよう、そして称えよう。だが、それでもなお我の勝利は揺るがなかった」

 

ヴェノミナーガは自身の喉元をさする。世紀末大会において、顕現したヴェノミナーガを一時的にでもフィールドから引き剥がせたのも、分体の身代わり効果を使わせるまで追い込んだのも、唯一蟲惑魔だけだった。勝利は揺るがなかったとはいえ、文字通り紙一重の勝利であったことはヴェノミナーガ自身が一番よく理解している。

 

「にも拘わらず…何故だ?何故最期の最期まで我に挑んだ?何故勝敗が決した後も、闘志が欠片も衰えなかった?決闘者の本能…それ故か?」

 

どうしても腑に落ちない。納得がいかない。ヴェノミナーガの表情はそう物語っていた。それほどまでに、最後の蟲惑魔の闘志は凄まじかったのだ。

 

 

「決闘者の本能…そうね。それもあったわ。でもそうじゃないの」

 

サラはナーガを見据え、にこりと笑った。

 

「約束があったから。”かっこ悪いところ見せたり、途中で諦めたりしたら許さない”ってね」

 

「…?一体どういう…」

 

ヴェノミナーガが眉をひそめたその時。控室のドアがバタンと勢いよく開いた。

 

 

「みんな…みんな、格好よかったよ!」

 

息を切らし、まだ赤い目をしながらも、満面の笑顔を湛えたアトラがそこにいた。

 

「貴方のお陰よ…ありがとう」

 

サラはそう言って微笑み、トリオン達は涙を零しながらアトラの元に駆け寄っていく。ヴェノミナーガは合点がいったとばかりに目を瞑った。

 

 

‐‐‐

 

 

「エキシビションマッチの時間です、ヴェノム及び蟲惑魔はステージに集まってください。なお、今回のエキシビションは特別にタッグデュエルで行うこととします」

 

スピーカーを通してジュノンの声が会場に響いた。サラとヴェノミナーガは思わず顔を見合わせる。

 

「昨日の敵は今日の友、といったところか。蟲の少女達よ、くれぐれも我の足手まといになるでないぞ」

 

「あら、誰に向かってモノを言っているのかしら?貴方達こそ、きっちり私たちについてきなさいよ」

 

ニヤリと笑い、彼女たちはステージへと向かっていった。

 

 

‐‐‐

 

 

「ちょっと!爬虫類しか召喚出来ないとか書いてあるんだけど!!」

 

「…本当に申し訳ない」

 

 

「おい、蟲惑魔しか特殊召喚出来ないのだが。これでどうやって我が顕現すれば良いのだ」

 

「……」

 

そんな微笑ましい(?)一幕があったのは、また別のお話。




最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。
一つだけ脚注を入れたく思い、後書きの筆を執りました。

入れたかった脚注とは、世紀末における決闘についてです。自分は、彼女たちはあくまでもカードゲームで戦っていると考えています。
より正確に言うなら、デッキを代表するモンスターの精霊(蟲惑魔で言うとサラ、ヴェノムならヴェノミナーガ)が決闘者として戦いの舞台に立ち、一時的に他のモンスター達を使役する、といった形です。
遊戯王GXに登場した黒蠍盗掘団と首領・ザルーグを思い浮かべて頂くのが近いかと思います。

脚注は以上になります。重ねてとなりますが、最後までお読みいただき本当にありがとうございました!
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