戦え! けものフレンズvsトランスフォーマー【第1部完】   作:大きさの概念

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第9話 スタースクリーム・フレンズ!!

 さて、今日のけもフレvsTFは! パーク近海の海底の様子からお目にかけよう!

 

 ジャパリパークの火山島、キョウシュウ島の湾岸部「キンコウ湾」……そこには硫化水素などの火山性ガスが海底から噴き出す「熱水噴出孔」が数多く存在する! 分類不明の謎の生き物、ジャパリ・ハオリムシなどが生息するこの謎多き場所は、地元の海獣フレンズからは「たぎり」とも呼ばれ、火山性サンドスターの放出量もまた膨大である!

 

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【Episode 9: Do What You Wish (汝の欲することをなせ)】

 

『よし! 熱水タービン・ジェネレーターを作動させるのだ! ビルドロン部隊!』

 

 見よ! 熱水噴出孔から噴き出すエネルギーを利用せんがため、デストロン軍団が海底に発電装置を敷設しているのだ!

 ビルドロン師団に指示を出すのは、メガトロン、スタースクリーム、サウンドウェーブの3名だ!

 

『へへへっ! 面白いようにエネルゴンキューブが出来ていきますぜ~、メガトロン様!』

『全くジャパリパークには資源がごろごろしているわい! エネルギーに満ち溢れるこの“熱水噴出孔”は、生命起源の場所と言われているのも納得だな……惜しむらくは、現時点ではこのエネルゴンキューブをセイバートロン星に送ることができないという事だが……』

『我々TFノ、時空移動ノ原因、並ビニ、コノ未来ノ世界ノ状況、目下調査中ダ。元ノ世界トノ通信、マダ回復ノ目途ガ立タナイ』

 

 さて、デストロン軍団がエネルギーの発電に精を出す間、予想だにしない者が海中を遊泳して様子をうかがっていたのである!

 

『コンドルカラノ警戒警報! 気ヲツケロ! 近クニ侵入者アリ!』

『くそぉっ! 何者だ!? 姿を現しやがれ!』

『待たんか! おい! スタースクリーム! 深追いするでない!』

 

 海底に潜む3体の謎の影! 一体何者なのか!? その正体を確かめんと、海中を追いかけるスタースクリームだが!

 

「あははっ! キミも泳ぐの得意なんだねっ! あたしはマイルカ! よろしくね!」

「私はバンドウイルカだよ! ねえ、あなたは何のフレンズ?」

「わたくしはシナウスイロイルカと申します。“音を見て”いたら、あなたがたを見つけましたの」

 

 海底の偵察者の正体は、イルカのフレンズ達だったのだ!

 

 音を見るというのは、イルカのわざ「エコーロケーション」! 水面下の世界では、音の伝導速度は空気中の4倍以上、視覚より聴覚に頼るほうが効果的だ! イルカは頭の上の鼻腔から「クリック音」という種類の超音波を出し、これを「メロン体」と呼ばれる脂肪の塊を通して指向性を持たせて前方に発信して、その音の反射を顎の骨で受け耳で聞くのだ! これにより、水中の障害物や動物の位置を感知するほか、仲間同士の交信を音波を通じて行うこともできる!

 

「ねえ、お友達になろうよ~! 一緒に遊ぼうよ~!」

「友達だから、これあげる! “人魚の財布”っていうの! きれいでしょ!」

「うふふ、大きいお友達というのも、悪くありませんものね」

 

 さあ、この誘い、どうする? スタースクリーム?

 

『オレを馬鹿にするんじゃねえや! 誰がお前らフレンズどものお遊戯会につきあうかってんだ!』

「きゃっ! いたーい!」

 

 イルカフレンズを掴んで、海底の巨大コンブ、ジャイアントケルプ(オオウキモ)の林立する「ケルプの森」に投げつけるスタースクリーム!

 

『さっさと帰りやがれ! オレ達は忙しいんだ!』

「あーっ! ひどいよー! 髪飾りを落としちゃった~!」

「ひどーい! らんぼーう! 髪の毛引っ張られたー!」

「や、やめて下さい! どうしてこんなことをするんですか!」

 

『お前らが近づくとなぁ~、オレ様の輝かしいボディが魚臭くなるんだよっ! とっとと失せろっ!』

 

「わあーん! おかあさんに作ってもらったヒトデの髪飾りが~!」

「なによーもうー! ひどいねー! ほんと失礼だよ! あたし遊ぶのやだ!」

「みなさん、こんな野蛮な人は放っておいて、イロワケイルカちゃんと遊びましょう!」

 

 怒りながら海の奥へと消えていくイルカたち!

 

の の の の の の の の の の の の

 

『けっ、全く下らねえぜ……うおっ! な、なんだこの揺れは!?』

 

 海底を襲う大振動! これは大災害の前兆か!? 天変地異の前触れなのか? いや、そうではなかった!

 

「このぉ~! あなたですね! うちの子たちをいじめたら許しませんよ~!」

 

 なんと! これは「シロナガスクジラ」のフレンズが海底に体当たりして、地震を起こしているのだ!

 

 フレンズ対TF! 海底の戦い! だがそれは、もはや戦いとは呼べぬ一方的なものであった!

 

『うわぁーっ! こ、この野郎~、止めねえか!』

「さっき、うちの子たちにひどいことしたでしょう! お仕置きですよ~!」

「こいつめ~! そんなに大きな体して、小さい子をいじめるなんて恥ずかしいと思わないのかっ!」

 

 全長26m! 体重100t以上! 46億年の地球史上最大の動物! それがシロナガスクジラだ! そのパワーを受け継ぐ、フレンズクジラの超パワフルな頭突き! 身の丈7mの金属の塊、スタースクリームを海中で吹っ飛ばす威力! 守護けもの……神格クラスのフレンズに匹敵するパワーには、ひとたまりもない! そして、長いツノが具現化した武器のスピアーで鋭い追撃を加えるのは「イッカク」だ!  

 

『うぎゃあ~! や、止めてくれ~! もうフレンズにひどいことしねえからよぉ~!』

「その言葉、本当ですね……みんな、仲良くしないとダメですよ」

「私の妹達にまたらんぼうしたら、許さないからな!」

 

 戦いは終わった……クジラ偶蹄目のフレンズの圧倒的勝利だ!

 

『く、くそーっ! あんな小娘どもに、最新鋭TFのこのオレ様がやられるなんて……』

『おっ! やっと追いついたぞ、スタースクリーム! 何を泡を食っておる! 一旦基地へ退散するぞ!』

『サッキノ地震デ、発電装置、故障シタ。修理物資、足リナイ』

 

∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀

 

 海底臨時基地に帰還したデストロン一行!

 

『ちくしょう! なんてパワーだ、イルカどもめ! ジャパリパークじゃ、あのけもの同然の原住民の“フレンズ”どもがやりたい放題ですぜ!』

『スタースクリームよ! 我々のいた時代の人間どもを、お前も知っておろう……スパイクやチップ、スパークプラグ……フレンズは知能こそ低いものの、あのヒトに勝るとも劣らぬ身体能力に加え、野生由来の“フレンズのわざ”を持つ!』

 

『けっ! ちぃっとばかし強力だからって、たかが未開の有機生命体の分際で、いい気になりやがって!』

『うかつに連中に戦いを仕掛けるなど、愚か者のすることだぞ!』

『だが、小娘どもにおべっか使ってご機嫌取りなんて、オレはゴメンでさぁ!』

 

『そこがお前の未熟なところなのだ、スタースクリーム。わざわざ余計な戦闘をしかけて何になる? 欺瞞、懐柔、脅迫……無駄な武力を使わずとも、単細胞のフレンズどもを支配してエネルギーを強奪する方法など、いくらでもある』

 

『相変わらず、まどろっこしいやり方がお好きのようですなァ!』

『フン! ならば貴様の考える、サンドスター・エネルギー採取の“冴えたやり方”とやらを、見せてもらおうではないか!』

『望むところだ! タンマリとエネルギーを持って帰ってきてやるとも! そしてオレ様こそがデストロンのニューリーダーにふさわしいと、アンタに認めさせてやるぜ!』

 

 さあ! ジャパリパークの資源を我が手中に収めんとするスタースクリームの野望!

 いったいどうするつもりなのか!?

 

『だが、エネルギー集めはひとりじゃムリだぜ。よ~し、まずは部下どもを集めるか!』

 

 まずは基地内のデストロン兵士に声をかけて仲間を集めようというのだ!

 

 

 

『スカイワープ! サンダークラッカー! お前ら、オレ様のエネルギー収集について来い!』

『やーなこった! お断りでい! お前さんの作戦じゃあ~、信用できねえってモンよ!』

『スカイワープの言うとおりだぜ。アンタの“保護者”としてメガトロン様がついて来るってんなら、話は別だけどなぁ!』

『な、なんだとぉ~! てめえら~っ! オレはお前らの上官だぞ!』

『てやんでい! 誰がてめえなんかのおマヌケな命令に従うかってんだ! ナハハハ~!』

『なあおいこいつ、怒りのあまり、顔の放熱装置がオーバーヒートして、表情回路のヒューズが飛びそうだぜぇ~!』

 

『く、くそーっ……覚えてろよ~! お前らがサイバトロンにやられて死にかけた時は、容赦なく捨てて置き去りにしていってやるからなぁ~……』

 

 他にも仲間を誘うスタースクリームだが、その結果は無残なものであった!

 

『ちっ……SWは“スカウトロボ”の修理中だとか言うし、カセットロンどもは偵察任務に出動中、ビルドロンは海底発電装置の修理中で、リフレクターはパークの航空写真の編集で忙しいときやがる……』

 

 

 

 

 結局、スタースクリームについて行こうという部下は、だれひとりとして集まらなかったのである! みんなやることがあって忙しいのだ!

 

『ちくしょう……みんな馬鹿にしやがって……たとえオレ独りでもやってやるぞ!』

 

『……そうだ! フレンズだ! サンドスターのエネルギーを使ってオレ様のフレンズを作ってやる! あのいけ好かないフレンズどもを忠実な部下にできるなんて、我ながら良い考えだぜ! 善は急げだ! 早速“フレンズのもと”を探しに行くぞ!』

 

の の の の の の の の の の の の

 

 そしてここは「ジャパリ自然史博物館」! 化石や剥製、標本の蒐集の充実具合においては類を見ない、まさに地球生物史の殿堂である! そして今は、訪問客のツチノコとビーチコンバーが館長(キュレーター)のマンモスに案内されているのだ!

 

 ツチノコは考古学に造詣の深いフレンズであり、日夜パークの考古学的遺産の研究を行っている! サイバトロンの研究者ビーチコンバーは、専門の地質学のみならず、地球科学や古生物学の知識においても右に出る者はいない!

 

「うおほっはぁーっ!! はっくぶつかぁん!」

『それもふつうの博物館じゃない。とてつもなく、でかぁ~い博物館だよ』

「んな、なんてぇすっげぇ場所なんだァーっ」

 

『保存状態の良い収蔵品の数々……いやぁ、素晴らしい。ジャパリパークは“生命だったもの”の宝庫でもあるのか……』

「ふふふ……この“がくげいいん”の私がご案内しますよ。生命の神秘をたっぷり閲覧していってくださいね」

 

「フハぁっ…‥ま、まさにヒトの遺した遺産の山じゃないかぁ……」

『これは、一日中見て回っても飽きないだろうねぇ』

「一日じゃあ、とても全部見切れないですよ。それと、迷子にならないように気を付けて。ここには隠し扉や秘密の通路がたくさんありますから……」

 

 だがそこに! 博物館の知の静寂を打ち破る影っ! 壁を打ち壊して入ってくるスタースクリームだァ!

 

「あーっ! 展示室の壁が~! 展示物に直射日光は厳禁なのにぃ!」

『悪いが入場チケットは持ってねえぜ!』

「なぁなな何だァ! お前ェえ!」

『お前はスタースクリーム! お願いだから、館内で戦うのはやめてくれ! ここにはたいへん貴重な博物学標本がたくさんあるんだ!』

 

『ククク、別にお前らと戦いに来たワケじゃねぇぜ……もっとも、仲良くお勉強会をするつもりもないがな! オレ様のナルビームを食らえ!』

 

 見よ! スタースクリームの持つ「ナルビーム」の威力! 殺傷能力こそ無いが即効性の麻酔効果があり、相手を行動不能に陥らせる恐ろしい兵器なのだ! 強力なフレンズパワーを持つマンモスですら、瞬時に全身が麻痺してしまうのだ!

 

「お、お客様ぁ~……か、館内の展示品に直接手を触れるのはご遠慮ください~……」

『へへへ、オレ様はお客様じゃないからなぁ~……遠慮なぁ~く、何でも持ってかせてもらうぜ!』

 

 博物館の中を物色するが、はたして目ぼしいものは!?

 

『おお~! こいつぁ良いモンを見つけたぜ! 軍用の猛禽類の剥製に、軍用犬の首輪だぞ!』

 

 軍用の猛禽というのは実在する! 第2次世界大戦の頃、伝書バトを多用する英軍に対し、ドイツ国防軍がタカを使って襲撃したことに端を発する! 日露戦争では宮内庁の鷹匠の軍事利用が検討されていたそうだ! また現代では、フランス空軍やオランダ警察で、ドローン(小型マルチローターヘリコプター)の襲撃用に猛禽類が使われている!

 

 また、軍用にイヌを使役する例は世界各国、枚挙にいとまがない! ここにディスプレイされているドッグタグは、かつてジャパリパークで秘密の任務に就いていた個体のものであるらしい!

 

『強そうなノコギリだなぁ! このノコギリザメの標本ももらってくぜっ!』

「だめ~! レプリカじゃなくて本物なんですよぉ~!」

『じゃあな!  あばよっ!』

 

 博物館から飛び去って行くスタースクリーム! これからどうするつもりなのか!?

 

 

Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ

 

 一方、さばんなちほーの片隅のサイバトロン基地では! サイバトロン戦士たちとフレンズが「テレトランビースト」の映像再生能力を使い、動物ドキュメンタリー番組を楽しんでいた!

 

(だからこういうことなのよ。タローはハナコと浮気をしていて、ハナコはジローと不倫の関係。そしてジローは――)

『ア……“おしどり夫婦ロマン劇場”ヲ一時停止シテ、野外調査中のコンボイ司令官ノ、緊急連絡ヲ見セルネ』

 

 テレビ番組の再生を中断するテレトランB! かばん、サーバル、マイスター達の残念がる声!

「え、えー!」

『タローとハナコとジローは!?』

「この後がいいのにぃ……」

『ホントだよお……』

 

 さて、コンボイの緊急の報告とは!?

 

(博物館がデストロンの襲撃を受けた! ツチノコとビーチコンバーからの無線連絡によると、スタースクリームが収蔵品の動物標本などを強奪しているらしい)

 

『それは不思議ですね、司令官。ヤツは何故そんなものを集めているのでしょうか?』

「ジャパリパークの自然が好きになって、フレンズさんやけものさんのことをもっと知りたくなった、とか……?」

『いや、アイツの頭の中身は悪事でいっぱいである方に、私のPPPチケットを賭けてもいいがね!』

 

(今パワーグライドにヤツを尾行させている! マイスター、かばん、サーバル、テレトランB、君たち4人も、至急出かけて欲しい! 他のサイバトロン戦士たち、インフェルノとグラップル、ブロードキャストは待機! 基地の警備任務と、周辺の警戒に当たってくれ!)

 

「はい、了解しました! コンボイ司令官!」

『これは、司令官の右腕の私の出番だぞ!』

「私もりょーうかーいっ! かばんちゃん、一緒にがんばろうねっ!」

 

『ちぇ、俺も一緒に行って戦いたかったよ! あのクソったれジェット機の(ノーズ)をへし折ってやりたいぜ!』

『そうボヤかないの、インフェルノ。私は、フレンズに頼まれている“がっこう”作りに、ホイストと出かけてくるからねぇ』

『基地の防衛なら俺っちと“カセットボット部隊”にお任せ♪ ナウいPPPのイカす新曲をギンギンに流しちゃうぜ~♪』

 

『向こうについたらまた連絡するよ、ブロードキャスト。ではサイバトロン戦士、トランスフォームして出動!』

 

 ポルシェ・935ターボに変形するマイスターに乗るかばん・サーバル・ラッキー! スタースクリームの野望を阻止せんと火山へと赴く!

 

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 所変わって、空飛ぶスタースクリームを尾行する攻撃機A-10サンダーボルトII! これはミニボット空中戦士「パワーグライド」のTFした姿なのだ! お茶目でお調子者のサイバトロンだが、任務遂行に対する忠実さにおいては他の戦士たちに全く引けを取らない!

 

『なんだありゃあ~? どおいう風の吹き回しなんだぁ? スタースクリームのヤツ? あんなガラクタなんか集めちゃってぇ!』

 

 己のフレンズ軍団を組織せんと、精力的に活動するスタースクリーム!

 彼が次に向かった目的地は! 皆さんおなじみのサンドスター火山! 実はこの山には、はるか昔に墜落した軍用機の残骸が残っており、その調査に来たというわけだ!

 

『くそっ、外装甲はボロボロだし、メインコンピューターの回路が無くなってしまっている。所詮は人間どもの幼稚な技術で作った軍用機だな。ここまで状態が悪いと、流石に使うのは無理か……ん……あれは一体何だ?』

 

 遠方に何かを発見するスタースクリーム! 山腹に爆撃機のようなものが存在するではないか! 

 

「これは傑作(マスターピース)ですね! この“ひこうき”は本物と区別がつかない出来です!」

 

 その問題のステルス機! なんとそれを作ったのは、鳥のフレンズ「ニワシドリ」! まるで芸術家のような風貌の、おフランス系・シャレオツ・フレンズなのだ!

 

 さて、スタースクリームが遠くから認めたステルス爆撃機、これはニワシドリの制作した作品であった! フレンズの体になった彼女は、木の枝などを集めて飛行機の模型を作り、彩り豊かな拾い物でカラフルに飾り付けたというわけだ! 本物より断然小さいのだが、なかなかディティールに凝っている!

 

『なんだこいつァ! 枝や藁でできたオモチャの飛行機じゃねえか!』

 独りで勝手に憤慨するスタースクリーム!

 

「そこのカラフルなアナタ、ワタクシのゲージツを理解できて? 素晴らしい出来栄えでしょう!」

『チッ……なんでこんな紛らわしいものを作ったんだよ?』

「それはですねー、この辺りのフレンズに伝わっている昔話がありますのよ」

『長い話はよしてくれよ!』

 

「まあまあ……むかしむかし、このジャパリパークで、セルリアンがうじゃうじゃ現れる大災害がありました。というのも、サンドスターの火山がおかしくなり、セルリアンの巣へ通じる穴が出来てしまったからです。パークを救うために、大きな平たい鳥“ひこうき”が火山の口にたくさん燃えるフンを落として、セルリアンの巣穴を塞ぎました。でも、大きな鳥はその時にお尻を火傷して死んでしまいましたとさ……火山の地下にずっと閉じ込められたセルリアン達が暴れるせいで、噴火が起こるというワケです」

 

『なるほど……それは過去にパークで起こった実際の事件を、フレンズ達が語り伝えたものに違いないな』

「そういうわけで、ワタクシはとしょかんで本を調べて、ニセの“ひこうき”を作ってますのよ。本当の“ひこうき”が仲間と勘違いして、降りてきてくれるかもしれないでしょ。パークの救った大きな鳥、一度は生きているのを見てみたいもの。あの山の向こうに落ちている黒い“ひこうき”、アナタご覧になったでしょ?」

 

『これは人間の学者が言う所の“カーゴ・カルト”って奴か……ニセの空港や滑走路まで作って、兵隊の真似をして、全くご苦労なモンだぜ!』

 

「“カミは細部に宿る”とは言いますでしょ?(博士が言ってたけど、どういう意味かしら」

『でもなんでこんなにカラフルなんだ? あの飛行機は黒一色だろ?』

「それは……アレはメスだから地味な色なんですー! オスはきっとこんな素敵な色よ! ふふ、それにしてもアナタ、なかなか見る目がありますわね!」

 

(どうやら、火山周辺の地元のフレンズには、奇妙な「信仰」があるらしい……一丁、こいつを利用してやるか! 過去の記録を調べていたら、人間の「信仰」がフレンズになったという例もあるそうだしな! ダメモトだぜ!)

 

『よぉ~し! この飛行機はこのオレ様、スタースクリームが頂くぞっ! トランスフォームッ!』

 

 ジェット機モードに変形し、ニワシドリの“ひこうき”をマニピュレーターで掴んで強奪するスタースクリーム!

 

「あーっ! 持ってっちゃダメぇ! ワタクシの最高傑作がーっ! ……ってわぁー! あの人“ひこうき”になったぁー! あの方自身が“ひこうき”だったのね!」

『あばよ! お前の作品の出来の良さを恨むんだな!』

 

「や、やはりこれは、ワタクシのゲージツがユウシキのコウズカのヒヒョウカのカブキモノに認められた結果なのねっ!(ユウ(シギ)のコウ鹿のヒ豹科のナマケモノって、どういうけものなのかしら?」

『代金なら、このミサイルで支払うぜっ!』

「(ドゴーン)ゲージツ~! バクハツ~!」

 

Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ

 

 さあ、猛禽類の剥製、軍用犬のドッグタグ、ノコギリザメの標本、ニワシドリの作った飛行機の玩具……これらの物品をサンドスターに当てて、陸海空を制圧可能な強力な直属フレンズ部隊を作ろうというのが、スタースクリーム発案「恐るべきフレンズたち計画」なのだ! 果たして、この計画は上手くいくのであろうか!? サンドスター火山の火口へと赴くが!

 

『よし! あとは火山からサンドスターが噴火するのを待つだけだぜ!』

 

 だが!

 

『アレハ、デストロンノ、スタースクリームダネ。ジェットロン航空参謀、永遠ノNo.2ナンダヨ』

『サイバトロン戦士!! アターック!!』

「うみゃぁみゃーッ!」

 

『うおっ! いつの間にサイバトロン!』

 

 ドアから飛び出したサーバルのディスアーム・クローアタックが、離陸前のスタースクリームのナルビーム砲を叩き落とす! 最も脅威となる銃を無力化するという、デストロンとの戦闘経験を積んだサーバルの判断力! 空中からパワーグライドの航空援護を受け、スタースクリームを地上に釘付けにすることに成功したぞ! サーバルの放つストンピング空中殺法、「烈風のサバンナふみふみ」を見よ!

 

 そして、頼れるぅ♪サイバトロン副官マイスターの乱れ撃ち! レースカー形態からTFし、遮蔽物に隠れて光子ライフルをファニングしての早撃ちクイックドロー! ブラックのウェスタン・スリーピースに身を包んだ、西部のクールなガンマンを思わせる戦いだ!

 

 両軍のNo.2同士の対決! 高い戦闘能力を持つスタースクリームだが、戦況は数で勝るサイバトロン側の有利であった!

 

『それぇ~い! みんなでスタースクリームをスクラップにしちまおうぜぇ~い!』

『ジャパリパークの大地に金属の骨を埋めろ、スタースクリーム! お前の腐った心も良い肥料になるだろうよ!』

 

『くそ~っ! 多勢に無勢とはこのこと! かくなる上は……一か八か! これでどうだっ!』

 

 なんと! 意外にもスタースクリームのナル・パチンコが発射されたのは……サンドスター火山の火口!

 巻き起こる噴火! 流れ出る溶岩と飛び散る火山弾! 大自然の脅威の前に、戦いは中断されたのだった!

 

「うわあっ! サーバルちゃん! 木に登ろう!」

「きゃぁっ! あついぃっ! あついよぉっ!」

 

『かばん、サーバル、早く俺っちに乗りな! 救助活動ならこのパワーグライド様におまかせだぁい!』

『フタリトモ、軽イ火傷ヲ負ッテイルネ。僕ノ“治療装置”デ、応急処置シテアゲルヨ』

 

『く……かばんとサーバルを安全な場所へ逃がさないと! パワーグライド、一時退却だ! トランスフォーム・アンド・リトリート!』

『命拾いしたなぁ、スタースクリームめ~! この勝負はお預けだぞゾ、っと!』

 

 

 撤退するマイスター! パワーグライドはA-10攻撃機に変形し、かばんとサーバルを収容して飛び去って行く!

 

『へへ、これで邪魔者はいなくなったぜ……さて、火山のエネルギーをエネルゴンキューブに入れて、苦労して集めた“フレンズのもと”にサンドスター当てるとするか……』

 

 だが、スタースクリームのこの不審な行動を見逃さなかったのは、かばんである!

「スタースクリームさんは、また何か良からぬことを考えていそうです……せめて置き土産にこれを! えいっ!」

 

 かばんは去り際にバックパックから何かを取り出し、頭上で振り回してから投げた! 回転しながら飛んでいき、スタースクリームの脚に絡みついたこの物体は「ボーラ」だ! 複数の石の(おもり)をバオバブの樹皮を裂いて編んだロープで結んだ、狩猟や護身用に使われる投擲武器だ! 先史時代の東南アジア発祥とされており、世界中に伝播して、カナダのイヌイット・南米インカ帝国・日本のニンジャ・中国のクンフーなどでも同様の物体が使われる! ヒトが野生動物より優れる身体能力のひとつ、投擲力を生かした武器なのだ!

 

『オアッ! 何をする! ああ~っ! オレ様の“フレンズ・アイテム”がっ!』

 

 ボーラに脚を取られて山頂で転んでしまうスタースクリーム! そして、かき集めた収集物は全て火口の中へ投げ捨てられてしまったのだ!

 

∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀

 

 そして! サンドスター火山の爆発だ!

 飛び散る溶岩弾に混じって、火口から飛び出てきたひとりのフレンズ!

『あれはフレンズだ! 生まれたんだ! 落ちてくる!』

 

「(ドグチャァッ!)……(ゴロゴロゴロゴロゴロ)……」

 

 岩場に勢いよく後頭部から落下して、激しく転がりながら、やがてその運動エネルギーが失われ静止、ぴくりとも動かないフレンズ!

 

『噴火のサンドスターで、火口に落ちた物品から1体のフレンズが誕生したようだが……こいつは爆発と墜落の衝撃で死んでしまったのか……?』

 

 はたして彼女の安否は!

 

「……さ、再起動中…………再起動中…………」

 

 なんと! 致命傷と思われたダメージから、無事に起き上がったではないか!

 

『おおっ! だ、大丈夫なのか、お前?』

「イエス。負傷部位、軽微です。歩行・飛行ならびに潜水機能に問題ありません。脳震盪および全身の軽度の骨折・脱臼・靭帯損傷、治癒継続中です」

『なんか理屈っぽい喋り方のヤツだな……お前は何のフレンズなんだ?』

「ラジャー。ネットワーク接続不可のため、スタンドアローンで内部データベースを検索します。ID確認中……所属および個体識別名、不明です」

 

『……まあ、確かによく分からない姿をしているからなぁ~、お前……』

 

 彼女の容姿をまじまじと観察するスタースクリーム! 一見イヌ科のフレンズを思わせる風貌ではあるが、翼や羽毛を思わせる髪の毛は、まさに猛禽類フレンズのそれだ! 加えて、軍服のような服装に背嚢、胴部のハーネスにくくりつけた雑嚢や弾薬ケースなどを見ると、WW2のドイツ軍の兵士のようである!

 

『ふーむ……オレが集めたアイテムは、軍用猛禽類の剥製、軍用犬の首輪、ノコギリザメの標本、ステルス爆撃機の玩具だったな。そして噴火のサンドスターで生まれたのが、この色々な特徴の混じった変なフレンズがひとり……つまり、コイツは動物や機械の要素が融合した、キメラのフレンズってわけか!』

 

「今の発言に関して質問があります。私を製造したのは、貴方なのですね」

『おうともよ! オレ様がお前の親にして上官だ! オレの名前はスタースクリーム! 超ロボット生命体トランスフォーマーの一派、デストロン軍団のニューリーダーなんだぞ!』

 

「ラジャー。製造者、兼上官、スタースクリーム様。役職、デストロン軍団・ニューリーダー。自分は貴方様の命令に何でも従います。まずは、自分に個体認識名をお与え下さい」

名付け親(ゴッドファーザー)になって欲しいってわけだな。よーし、“けもの”と“ステルス爆撃機”から生まれたお前の名前は“ビースト・ボム”……“B・B”だ!』

「個体呼称名B・B。登録完了です。これより自分は貴方様の指揮下に入ります。ご命令を、スタースクリーム様」

 

 イヌ科の走力、スタミナ、咬合力、忠誠心! 猛禽の飛行能力、強靭な脚力、鋭敏な視覚! ノコギリザメの潜水能力と切れ味鋭いブレード! そして、B-2爆撃機のステルス性と攻撃能力! これら、全ての能力を併せ持つスーパー・フレンズ! それがデストロン「陸海空獣爆兵B・B」なのだ!

 

『よーし一丁、お前のスーパーパワーを見せてもらおうか! サイバトロンの基地を襲撃するぞ! トランスフォームッ!』

「ラジャー。サンドスター充填開始。テイクオフ」

 

 サイバトロン基地へ逆襲に向かうスタースクリームと、その忠実な部下、野生動物と近代兵器のパワーを併せ持つ強力無比のフューザー戦士(フレンズ)B・B! 絶体絶命! サイバトロン!

 

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 超! けものフレンンジング! トランスフォーマー!

 

 さばんなちほーのサイバトロン基地を襲う、デストロンの奇襲アタックだァァーッ!!

 襲撃をいち早く察知したのは、サバンナに聞こえる音や声を熟知し、著しく聴覚に優れるサーバル!

 

「なにあれ! なにあれー! 飛んでくるよー!」

『あっ! あれはスタースクリームと……鳥のフレンズなのか!?』

「でもあの姿はタイリクオオカミさんに似ています。イヌ科のフレンズさんでしょうか?」

『なんにせよ、あの“パタパタ犬”を、スタースクリームのヤローが率いているじゃんか~!』

 

 さあ、戦いだ! だが守備の不意をつく、攻撃側のデストロン・コンビの圧倒的優位性!

 

『やっちまいなァ~ッ! B・B! まずは手はじめに、ミサイル攻撃をお見舞いして連中を驚かせてやれ!』

「ラジャー。ミサイル攻撃、開始します」

 

 サンドスターを消費して「けものプラズム」により数個のミサイルを実体化させる! 空対地(エア・トゥ・グラウンド)ミサイルを小脇にかかえ、サイバトロン基地上空に急降下……! そのまま着陸した勢いで、ミサイルを持って爆走するB・B!? これは一体どういうことなのか!?

 

「えっほ、えっほ、えっほ」

『バッキャロめが!! なんで地上に降りるんだよっ! ミサイルは空から撃って使うんだ!』

「お?」

 

 突撃するB・Bだったが、地面の草に脚をとられ転倒! その調子にミサイルは信管を強く叩かれて爆発! 誘爆! 自爆! 吹き飛ばされるB・B!

「(チュドーン)……(ゴロゴロゴロ)……ば、爆撃、失敗しました」

『このばかっつら!』

「申し訳ありません。次の攻撃命令を。スタースクリーム様」

 

『くそー! 銃を使え! 機銃掃射でサイバトロンの奴らを慌てさせてやるんだっ!』

「ラジャー。光学式バルカン砲、具現化。給弾ベルト装填。発射準備完了」

 

 チェーンガンをバッグから出しなよ……とばかりに取り出したのは7.62mm口径ビーム・ミニガンだ! フレンズでも持ち運び可能な携行武器だが、その毎秒100発を誇る発射速度の光の矢の威力は、TFの兵器に勝るとも劣らないのだ!

 

『よーし、撃てーっ!』

「撃つー!」

 

 ガトリングの回転銃身が高速回転し、電動ノコギリのような金切り声を上げて発射される、レーザービームの五月雨! だが、その照準はスタースクリームを向いたままだった!

 

『ギャーッ!! オレに向かって撃つんじゃねえ! ホールド・ファイアー! このバカタレー!』

「すんません……」

 

 それにしても、B・Bのこの要領の悪さは、一体どういうわけなのか? おそらく、イヌ・ワシ・サメ・爆撃機それぞれの戦闘思考が混ざってしまい、思考制御が上手く働かないためと思われた! コンピュータに例えるならば、機能制御用のオペレーティング・ソフトが複数インストールされて、機能衝突を起こすようなもの!

 

 あるいは、けものの本能とメカの合理的思考の相性の悪さか? 誕生時に強く頭を打ったせいか? それとも、噴火時のサンドスターに、スタースクリームのナルビームが科学的反応を起こしたのか? はたまた、TFの生みの親・クインテッサ星人に知能を低く設計された、デストロンの宿命であろうか!? やはり、生みの親がスタースクリームなのが全部悪いのか!?

 

 なんにせよ、サイバトロン戦士とフレンズも、このおかしな状況に困惑の色を隠せなかった!

 

『なにやってんだろ、あいつら……』

「うーん、わかんないや! でもたのしそうー!」

「犬さんのふさふさのお耳に! 鳥さんのふかふかの羽! 尻尾ももこもこしていて……あっ! あぁ~……」

「よっ、よだれがすごい出てるよ! かばんちゃんっ!」

 

『スタースクリームのヤツ、とうとうデストロンをクビになって、コメディアンでも始めたのかね?』

『違いねえぜ! 頭脳回路がおめでたいアイツには天職ってやつだよ!』

『漫才コンビでも結成したのかなぁ~? ”ザ・ツリーボアズ”と同じように、PPPの前座くらいには、モノになるかもな~♪』

 

『くそぅ! くそぅっ! テメエ全然使い物にならねェじゃねーかっ!!』

「ハイ。お役に立てず申し訳ありません」

『サイバトロンの連中までオレを馬鹿にしやがってぇー! デストロン軍団、退却だぁっ!』

「ラジャー」

 

 戦い?は終わった……さばんなちほーを去っていくスタースクリームとB・B!

 

「あのフレンズさん、なんだったんでしょうか?」

『さあ、アイツが何を考えているのか、さっぱりだよ』

「よくわかんないけど、あの子は、すごいことが色々できるフレンズなんだね!」

『スタースクリームの新しい部下みたいだけど、頼りなさそうだね~』

『全くだ。あの様子じゃ、これからデストロンでやってけないよ』

 

 

 

 デストロン海底基地! ボロボロの姿のまま敗走し、基地に帰還したスタースクリームとB・Bを迎えるスカイワープとサンダークラッカー、ダージ、スラストだが!

 

『おっ! スタースクリームと女の子チャンが、デートからご帰館なすったぜ~!』

『ホントだ。コンドルの偵察カメラでお前らの戦いを見せてもらったが、全くお笑いだったぜ。笑いすぎてヒューズがぶっ飛びそうだったよ』

『やれやれ、何ともひでえ有様じゃねえか。まったく呆れたもんだ~』

『そのフレンズは何の材料から作ったんだい? お砂糖とスパイスと素敵な物だろうぜ! アハハ!』

 

 女性型トランスフォーマーがいないデストロン軍団は男尊女卑の傾向がある! B・Bへの風当たりは強かった!

 

『なんだとテメエら! B・B、お前も何か言ってやれ!』

「ハイ。自分のせいでスタースクリーム様にご迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありません」

 

『そうじゃねえ! コイツらにデカイ口叩かれて、悔しくねえのかよ!? お前の感じたままのコトを言うんだ!』

「ラジャー(ぐ~)……お腹が減りました、スタースクリーム様。怪我の回復と衣類の修復のため、ジャパリまんの補給をお願いします」

 

『ナハハハッ! 赤ちゃんはお腹が空いたからママのミルクが飲みたいってよぉ!』

『“オカマスクリーム”ちゃん、この子にオッパイでも飲ませてあげたらどうだい?』

『デストロンには、結婚退職や子育て支援制度は無いんだぜ?』

『航空参謀は止めて、漫才コンビに転職するのをオススメするがな! ワハハハッ!』

 

「あ、スタースクリーム様。膀胱から老廃物の体液を排出したいのですが、どこか適切な場所は……」

『『『『ぎゃはははっ!!』』』』

 

 堰を切ったようにあざ笑うジェットロン航空兵たち! ふたりを包む哄笑の渦!

 

『くそぅ~っ……くそぅっ! くそぅっ! ……B・B、テメエはクビだぁッ!』

「クビ」

 

『今日限り、デストロンはクビで引退だ! もう部下でも何でもねえ! どこへでも勝手に行っちまえっ!』

「クビで引退」

 

『そうだ! 金輪際戻って来るんじゃないぞ! テメエみてえなガラクタのポンコツ、その辺で野垂れ死んじまえばいいんだ!』

「ラジャー……」

 

 デストロンから追放されたB・B! 彼女はどうなってしまうのか!?

 

Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ Ψ

 

【トランスフォーマー解説:09】

 

ID:06 サイバトロン 副官(国内設定) マイスター / Jazz

トランスフォーム:ポルシェ・935ターボ(マルティーニ・レーシング仕様)

主兵装:光子ライフル

副兵装:ステレオサウンドスピーカー / フック付きワイヤー

体力:5 / 知力:9 / 速度:7 / 耐久力:7 / 地位:8 / 勇気:9 / 火力:5 / 技能:10 / 頼れるぅ♪度:10 / No.2度:10

座右の銘:「カッコよくキメられ(Do it with style or )ないならやるな、だ(don't bother doing it.)!」

 

 原語版ではジャズという名前で、性格もちょっと違い、陽気なおもしろ黒人のようなキャラになってるんです。というのも、原語版の声優さんはアメリカの黒人ミュージシャン「スキャットマン・クローザース」さんで、俳優として「カッコーの巣の上で」や「シャイニング」にも出演されてます。2010で副官の出番が無くなるのは、この方が亡くなられているからなんです。

 

 TFテレフォンによると、読書に凝っていて、意外にも名前に反してクラシックが好みだと言っていますね。この趣味の音楽を武器に変えた、大音響と閃光を広範囲に放つ必殺技「ミュージックアタック」はアニメ作中でも大活躍です。

 

 元ネタ玩具は、ダイアクロン・カーロボット「ポルシェ935ターボ」です。レースカー仕様のマルティーニ・ストライプがイマ~い! TV玩具CMでピンで出演したり、もうこの時点で破格に待遇が良い……玩具版マイスターは背中にウィングがあったり、「フリーゾンキャノン(スペクトルビーム)」なる肩ミサイルランチャーの装備があったりしますが、折り畳んだり外したりしてアニメ版の姿にすることができます。G1復刻商品を購入するなら、TFコレクション版よりアンコール版のマイスターがお勧めですよ。金型が変更されて、顔がイケメンになって屋根部分に固定用のツメが追加されたり、ゴーグルに塗装が加わっています。TFコレクション版は金型が古い方なのですが、設定やアニメの物語がまとめられた情報ファイルのオマケつきです。

 

 海外設定では、特殊作戦員(Special Operations Agent) や破壊妨害工作員(Saboteur)という役職なので、副官という割に出番が少ないのも納得です、玩具だと「AGENT MEISTER」ってたくさんシール貼ってありますし、テックスペックの値もそれっぽいですよね。でもその割に、コンボイのそばでNo.2っぽくしているシーンも多いような……ちなみに、影が薄いがサイバトロンマークのモデルでコンボイに次ぐ地位9の戦略家「プロール」と、出番が多く陣頭指揮を執ることも頻繁にあるコンボイ直属の警護員(ボディガード)「アイアンハイド」、司令官お付きの秘書「マイスター」、この3名がサイバトロンの最高幹部とされています。

 

 副官ファン必見の「32話 スカイゴッド」では、デストロンの副官たるスタースクリームと対決を迎えるんですけれども、No.2同士の闘争が激しくなったりして、喧嘩しているスタスクの首を絞めるわ「今日こそ息の根を止めてやる」っていうセリフといい、赤組並みの悪さをすることはあります。理性的で温厚でも、やはりサイバトロンのオイルが流れているんですね。もう1つの主役回「73話 サイバトロンの逆襲」ではサイバトロン全軍のピンチを救う大活躍するのですが、もともとTV未放映で、声優が片岡さんではないのがちょっと残念ですよね……。

 

 PS2のゲームではメインキャラのひとり。TFコレクションでは第1巻で発売。初代アニメ1話冒頭から登場し、あのユニクロン戦役を生き残り2010とHMにも出演する、すごい優遇されてるTF。マイケル・ベイに「一番死にそうにないキャラ」と言われたのも納得です。え、その監督の作った実写版? オォウ……そんなの知らないんですけど!

 

『このコンドルカセットで、デストロン達の好きなヒット曲でもひとつ聴きますか!』

『なかなかノれるじゃないの~! イェイ~!』

 

『雪だるまじゃないよ、スパイク。スノーロボットさ!』

『これこそが本当のロックンロールだけどね!(ノイズアタックで落石事故起こしながら』

 

はいけい:しゅとぅっとがると ぽるしぇはくぶつかん(どいつ ばーでん=う゛ゅるてんべるく)

こえ:かたおかこうき おにいさん

 

∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀

 

 キンコウ湾の海底部! 問題の熱水噴出孔では! 発電機材の修理を完了したデストロン軍団が熱水サンドスター・エネルギーの採掘を再開せんとしていた! それとは別問題だが、スタースクリームを叱責するメガトロン!

 

『この甲斐性無しめが! あのB・Bとかいうフレンズを勝手に追い出しただと!?』

『で、でもぉ……あのヤワちゃんフレンズでは、とてもデストロン兵士は務まりませんぜ!』

『サイバトロンの連中はフレンズと戦うのをためらうはず! 利用価値を見極められねば、No.1は務まらん! そんな風だから、友達のスカイファイアーには離反され、部下のコンバットロンには裏切られるのだぞ!』

『くっ……人の過去の失敗を蒸し返すのは止めて頂きたいですなぁ!』

 

 口論を続けるふたりであったが、そこへ突如! サイバトロンの逆襲だ!

 コンボイとともに、デストロン軍団を襲撃するマイスター、インフェルノ、グラップル、ビーチコンバー、ブロードキャスト! 迎え撃つのは、デストロンのジェットロン部隊とビルドロン師団だ!

 

『サイバトロン戦士、アターック! 撃て撃て―っ!』

『おのれ! 海の藻屑となれ、サイバトロンのウジ虫どもめ! 余が海の支配者であると教えてやるわい!』

 

 さあ! 戦いだ! 海底での静かな水中戦をご覧いただこう! 爆発物や光学兵器の威力が落ちる水中では戦況は膠着し、しだいに至近距離での格闘戦に待ちこまれていったが……!

 

 

 

 ところがである!

 

 鋭く異変を察知したのは、鋭敏な地質探査用センサーを持つ、ビルドロン採掘兵スカベンジャーだ!

 

『おい、スカベンジャーよ、さっきからなんだか水が熱いような気がしねえかい?』

『実際に水温が上昇しているのさ、スクラッパー!』

 

 デストロンの熱水噴出孔からの強引なエネルギー採掘と、シロナガスクジラの岩盤への体当たり、そしてスタースクリームが火山の火口に放ったミサイル攻撃の影響が、密かにパークの地下のマグマの活性化を促していたのである! その結果! この近くに眠っていた海底火山「すざく」が目覚め、大噴火を控え、周りの海の水温も急上昇していた! ジャパリパーク諸島は、海底火山の噴火と隆起によって生じたと言われている! 海底に眠る大火山が噴火すれば、ジャパリパークの滅亡は必定!

 

 さらに、この水温上昇によって集まって来た者たちがいたのだ!

 

『うおおっ! 何だ! この下等生物どもは!? 早くワシを助けんか、バカモノ!』

『メ、メガトロン様!』

 

『ホアアアーッ! こ、この触手は一体!?』

『司令官! こいつらはセルリアン! それもすごい数です!』

 

 深海に棲息する謎の触手を持ったセルリアン「セルテヅルモヅル」である! ヒトデやウニ、ナマコなどの棘皮動物の一種、深海生物「テヅルモヅル」の輝きを持つセルリアン! 幾何学模様・フラクタルを想起させる、幾重にも無数に枝分かれした触手により、移動と捕食を行う! 動きは緩慢だが、触手が切断されても急速に再生が可能で生命力は非常に高い! 海底の温度変化により大終結した、暴徒と化したセルテヅルモヅルの大軍団が、所属を問わず両軍のトランスフォーマーたちを蹂躙するっ!!

 

 間近に迫る海底火山の噴火!! 恐怖の触手セルリアンの大群!!

 パークとTFたちはどうなってしまうのか!?

 

 

 

 一方! デストロン基地を放逐されたB・Bは! 空腹状態のまま浜辺に横たわっていた!

 そこへ偶然現れたのは、カワラバト(ドバト)のフレンズだ!

 

「くるぽっぽー……あっ! あんなところに鳥の子がいる!」

「…………」

「し、死んでるの……?」

「ノー。生きてます」

 

「なーんだ、よかったー。私はカワラバト。でも、あなた、怪我してるね、羽もボロボロだし」

「個別認識記号、私の名前、B・B。空腹によるサンドスター飢餓状態。損傷の回復、および外装の修復、不能。歩行・飛行、不可能」

「ほえ? ビービーちゃん? よおするにー……お腹が空いてキズが治らないし、動けないのよね? 私のジャパリまんを食べなよー」

 

「ノーサンキュー。お気持ちは有難いのですが、遠慮します。こうして(グー……)お腹を空かしている最中なのです、お気遣いなく」

「ええー! 食べなかったら、サンドスターが無くなって、もとの動物に戻っちゃうんだよ!?」

「ノー。自分は古い剥製などから生まれた身。ガラクタから生まれたものが、元のガラクタに戻るだけです」

「じゃあ死んじゃうってことじゃない! それなら、なおさらだよ! せっかく生まれてきたのに、どうしてそんなこと言うの!?」

 

「自分は“死ぬ”という命令を受けました。上官の命令、絶対服従」

「ほええー!? どういうことなのか全然わからないよー!! 誰がそんなひどいこと言ったのか知らないけど、そんなのってないよ! それはきっとチョットけんかしただけだよ? 言葉のアヤってやつでしょ。まー、とにかく食べなって」

「ム……つまり、自分の命令解釈ミスの可能性……それならば、有難く頂戴いたします。もぐもぐ」

「ジャパリまん、ボスからもっともらってくるよ!」

 

 そして!

 

「破損部位、再生完了。ありがとうございます、カワラバト様。次の問題は“クビで引退”になった自分は、誰にお仕えして、何をすればいいのか……ご意見お聞かせ願えないでしょうか?」

「ううーん……そんなのテキトウでいいじゃないかな?」

「ラジャー。適当……つまり、それは個人の裁量、自由意志。上官より部隊から外された場合、指揮権が自分自身に移動……」

「あはは、難しくて何言ってるのかわからないやー。でもまあ、フレンズの体になったんだから、人生を楽しんだらいいんじゃないかなー」

「人生を楽しむ……」

「そうだよぉ~。おいしい物を食べたり、好きなだけ寝たり、友達とお話したり。この身体でしかできないことをするんだよ~」

「この身体でしかできないこと……」

 

 

 

「これ、オリーブの首飾り、作ったの! あげるよ!」

「ありがとうございます。おお不思議。これをつけると、マジックショーのBGMが脳内で聞こえます……」

 

 打ち解けるB・Bとカワラバトだが! そこへ忍び寄るセルリアンの奇襲攻撃だ!

 

「きゃあーっ!! セルリアンだっ!! ビービーちゃん、早く逃げなきゃ!!」

 

 ドローン(マルチローターヘリコプター)型セルリアン「ドローンリアン」の大群の襲撃である! 立体空中機動を得意とするセルリアン! 中型のボディサイズと独立動作可能な複数ローターの利点を生かし、自由自在の方向転換と小回りをきかせて、群れで獲物を追い詰める空のギャング集団だ! それは、南北アメリカ大陸に生息する中型の猛禽類、モモアカノスリ(ハリスホーク)の群れでの狩りを思わせる! ドローンリアンの独特の不快なプロペラ音は、鳥のフレンズにとっては恐怖の象徴! 死の予兆! 空の死刑執行人の耳障りな足音に他ならない!

 

 空中を逃げるカワラバトとB・Bだが、セルリアン側には数の利があった!

 

「だっ、ダメ……逃げ切れそうにない……ううっ、戦わなきゃ……」

「ん? アイツらとは、戦っても良いのですか?」

 

 狩る者と狩られる者の、決死の戦いが今始まる!

 

「そうだよ! 少しでも数を減らして、空いた所を突破して逃げよう!」

「ラジャー。数を減らすのはかまいませんが、全滅させてしまっても良いのですね?」

「ほえ?」

 

 さあ、B・Bの大活躍! たぁっぷりご覧いただこう!

 

「ミサイル、発射! 敵に向けて、機銃掃射!」

 

 見よ! 誘導ミサイルと大口径バルカン砲の威力を! さしものドローンリアンといえども、戦闘方法を学習した陸海空重爆兵B・Bの猛攻撃には、ひとたまりも無かった! ドローンリアンの大群はまたたく間に爆発四散! 全滅だ!

 

「ふー。もう大丈夫ですよ、カワラバト様」

「……あっ……ありがとう……ね……」

「……」

 

 だが、カワラバトと手を繋いだ時に、B・Bは気が付いた! 心細そうに手を震わせるカワラバト……それはセルリアンの恐怖や、戦いから解放された安堵ではなく、フレンズには過ぎたる戦闘力を持つ自分へ向いている恐怖であることに!

 

(……この子たち、平和に生きるフレンズ。戦うために生まれてきた私とは、相容れぬ存在……)

 

 B・Bの取った行動とは!

 

「ふっふっふ……この銃は、豆鉄砲ではない。私はセルリアンより、ずっと、こわーい……」

「(ビクッ)ひっ……」

 

「がおぉーう! カワラバト! 食べちゃうぞぉ!」

「きゃああああーーっ!!」

 

 怯えて一目散に逃げていくカワラバト!

「さよなら、最初で最後のトモダチ……」

 

 さあ、始まる火山の噴火! パーク破滅の時は近いぞ!

「行かなくては……私のいるべき場所へ……この身体でしかできないことをするため……」

 

 Ψ   Ψ   Ψ   Ψ 

 

 そして! キョウシュウ、キンコウ湾の海面では!

 

 波間に揺られてお昼寝中のラッコたちと、そのフレンズ! アラスカラッコとカリフォルニアラッコ! 海流に流されないように、海底に根を張る巨大コンブ、ジャイアントケルプを腹巻にして、お互い手を繋いで眠っている! いったい何の夢を見ているのであろう!?

 

「むにゃむにゃ……世界の考古学的遺産は全て、このアラスカラッコのコレクションに……」

「ぐうぐう……みんな~、すしがあるぞぅ~、ウニもだぁ~……」

 

 だが!

 

「ひぎゃわーっ! 熱っ! 熱いぃいっ!!」

「あばばばーっ! 水が熱いよぅ! 毛皮が溶けちゃうよぅっ!」

 

 アイヌの伝承によると、ラッコの肉が煮える臭いは欲情を刺激し、1人でいては気絶してしまうほどだという……と、そんな非常事態になる前に、ラッコたちは命からがら、全速力で泳いで、無事に遠くの水域へと避難していった!

 

 海底火山「すざく」は、デストロンのせいで爆発寸前! その周辺部の水温は急上昇の一途を辿っていたのだ!

 

 海底では、デストロン、サイバトロン、セルリアンの三つ巴の激しい戦いが続いていた! 切っても切っても再生するセルテヅルモヅルの群れに対し、戦いは膠着状態の様相を呈してきた!

 

『く……エネルギーを使いすぎてしまったわい!』

『コノママデハ、サイバトロンモ、セルリアンモ、倒シキレナイ。水温上昇モ著シイ』

『しかたがあるまい! デストロン軍団! 発電施設を放棄し、退却するぞ! トランスフォームッ!』

 

 ワルサーP38に変形し、サウンドウェーブに持たせてジェネレーターとエネルゴンキューブを狙撃させるメガトロン! 発電装置を奪われないように、砲撃で破壊しようという焦土作戦だ!

 

『うわあああっ!!』

 だが、スタースクリームはこの銃撃による爆発に巻き込まれ、岩の下敷きになってしまうのだった!

 

『この愚か者めが! ドジさにかけては、貴様は立派にデストロンのNo.1だぞ!』

 

『見ろ! メガトロンの攻撃でスタースクリームが生き埋めになったぞ!』

『はははは! ざまぁないぜ! そのまま海の底でオネンネしてな!』

 

『あの海底火山の噴火は止められない! 私たちも退却し、パークの全フレンズに避難勧告を出さなければ! サイバトロン戦士! 総員退却ぅっ!』

 

 サイバトロンも海底から退散だ!

 

 

 

『だっ、誰かー!! 助けてくれぇー!! この岩をどけてくれー!! メガトロン様ぁー!!』

 

 哀れ! ひとり置き去りにされ、海底に消える運命か、スタースクリーム!

 

 しかし!

 

「お助けします、スタースクリーム様」

 

 サンドスターパワーと戦闘意欲に満ち溢れたB・Bの満を持しての登場! サメの持つ微弱電流感知器官「ロレンチーニ器官」で、水中を探索してデストロンの危機に馳せ参じたというわけだ! 魚雷による爆破でスタースクリームを閉じ込めた岩を爆破するB・B! 

 

『お前は、B・Bじゃねえか!』

 

「火山の噴火、間近……よし、こうなったら一か八か……」

 

 海底火山「すざく」の大爆発まで、あと何秒か!?

 どうする、B・B!?

 

「こうする!」

 

 なんと! 海底火山の火口へ単身特攻し、全武装の一斉射撃により岩盤を崩して塞いでしまおうというのだ! 噴出する溶岩や高熱の火山性ガスにもいっこうに怯まずに、全火力を集中させるB・B! 弾薬が尽きた後も、さらにノコギリザメ由来の回転式チェーンソーで火口の岩をなぎ払う! 歯が欠けても再生する近接白兵戦用の兵装だ!

 

『バッ、バッキャローめが!! 死ぬ気か!』

「全てがあるべき姿に戻るだけです」

 

 

 

「任務……完了……お元気で、スタースクリーム様」

 力尽き火口へと落ちていくB・B! 直後、火口の岩盤が大きく崩落する!

 

 海底火山大噴火は、こうして未然に防がれた……高熱化した地盤に熱せられたセルテヅルモヅルも全滅した……。

 パークの危機は去ったのだ……ひとりのフレンズの命が犠牲になって……。

 

『くそぅっ!! くそぅっ!! お前がけものだったら、こんな危険な場所からはさっさと逃げていただろうし……もしお前がメカだったら、自分の命を捨てるような非合理な真似はしなかっただろうぜ!』

 

「ビービーちゃーんっ! さっきは助けてくれたのに、怖がっちゃって、ごめんなさいー! ホントは、あなたは良い子なんでしょー! ねえ、どこにいるのー!」

 

『他人を救ってテメエが死ぬなんざ、やっぱり大馬鹿野郎だっ!! 下等なフレンズどもは、だからキレえなんだっ!!』

 

 海底火山の火口を掘り続けるスタースクリームと、パーク上空を捜索するカワラバト……身を挺してジャパリパークを救ったB・Bは、火口で死んでしまったのであろうか……? いや、彼女は生きているのだ! スタースクリームやカワラバト……我々の心の中に、いつまでも、永遠に!

 

【さらばB・B! また会える日まで!】

 

の の の の の の の の の の の の

 

【けものフレンズ情報:08】

 

 今日のけもフレvsTF、どうだったかな?

 さあ、けものフレンズ情報は、今回のお話に登場した鳥フレンズの紹介だ!

 

美術建築兵 アートガーデナー / Gardenmake

分類:鳥綱スズメ目ニワシドリ科カンムリニワシドリ属チャイロニワシドリ

レッドリスト:EX/EW/CR/EN/VU/NT/[LC(軽度懸念)]

 オーストラリアとニューギニア、その近隣の島々に生息するスズメ目の鳥だ! 別名コヤツクリ、アズマヤドリとも呼ばれる! 鳥が巣作りをするのは当たり前であるが、その建築能力をアートの領域まで高め上げたのがニワシドリだ!

 種類によって様々な形状のバワー(あずまや)を作る! これは巣ではなく、メスにプロポースをするための愛の建造物なのだ! そして、鳥類特有の「4色型色覚」に基づき、あずまやを色とりどりの色彩の拾得物で飾り立てるぞ! さらに、この収集品の配置の際には「遠近法」を検討する! これは自らの求愛ダンスをより魅力的に演出するためだという!

 詳しくはグーグル画像検索してくれ! まさに彼女は鳥類のレオナルド・ダ・ヴィンチ! ヒトのルネサンス美術など、文字通り自然の「再現」に過ぎないことが分かるだろう! これには、でいびっど・あってんぼろーおにいさんもビックリ!

 なお、公式にはまだフレンズは登場していない、このお話のオリジナルのフレンズだぞ!

 

空中伝令兵 ピースウォーク / Speedbird

分類:鳥綱ハト目ハト科カワラバト属カワラバト

レッドリスト:EX/EW/CR/EN/VU/NT/[LC(軽度懸念)]

 顔がちっちゃくて、胸(胸筋やぞ)がでかくて、やたら首を振って歩いて、ちょっとずんぐりむっくりな感じする、丸っこい体をしてるのがハトです! キジバトやアオバトなどハトの仲間にも色々種類があるが、最も普通に見かけるハトが「カワラバト」だ! カワラバトは首の部分が緑色と紫色をしているのが特徴! これは色素ではなく「構造色」で、DVDの裏面やシャボン玉などと同様に、羽の先端の微細構造が特定の光の波長のみを反射して色が変わるのだ! 原産地はヨーロッパや北アフリカ、中央アジアの乾燥地だったが、繁殖力が高く家禽としても使役されるこの種は世界中で見られ、家禽化されたものをとくに「ドバト」と呼ぶ! 高い知能、鋭い視覚・嗅覚、太陽コンパス、体内時計、地磁気の知覚などにより方角の判定能力が非常に高い! 航続距離とナビゲーション能力に優れ、1000km以上離れた場所から帰巣することができるのだ! 

 伝書バトとして、おもに距離200km(所要時間は約2時間)以内の通信・輸送目的で、ヒトに長らく使役されてきた! 人間に飼われてきた歴史は古く、その起源は紀元前5000年前の古代シュメール時代まで遡るというっ! 帰巣本能を利用するため、通常は、ある場所から自分の鳩舎への一方通行の通信ルートしか使えないのだが、2つの鳩舎を行き来できるエリート「往復鳩」もいるぞ! さらに旧日本軍には、持ち運び鳩舎を移動させてもそこへ帰ってくる特殊な「移動鳩」がいたらしいが、現代ではその訓練法は失われてしまっている!

 電源の要らない迅速な伝令能力は、歴史上重要な役割を担ってきた! 中でも第一次世界大戦フランスの「ヴェルダンの戦い」では、「シェール・アミ」というハトが、12通の機密文書を運搬し、フランスの軍事功労章であるクロワ・ド・ゲール勲章を受章した! また「アルゴンヌの森の戦い」では、戦場での散弾銃(ショットガン)鳥撃ち散弾(バードショット)をかいくぐって、胸部に被弾し右足を失う重傷を負いながらも任務を果たし、194人の米兵の命を爆撃から救った! 傷という勲章を全身に身につけたその身体は、スミソニアン博物館に剥製となって展示されている! まさに伝書バト界の日曜洋画劇場、コマンドー! 弾けるハト胸! 飛び散るピジョンミルク! 豆鉄砲(さんだん)なんかじゃビクともしねェ! 鉄骨伝書バトは、タフネス設計! 戦うポッポーは、かっこいい!

 第二次世界大戦、伝書バト全盛期では、イギリス軍は50万羽のハトを軍事利用したそうだ! 文書やマイクロフィルムの他にも、血清や薬品、家畜の精子などの軽量物資を背中に背負って運搬することもあり、空気圧による自動撮影式の小型パノラマカメラ「ドッペル=シュポルツ」でのスパイ偵察もこなしたという! カセットロンのコンドルもびっくり! さらにWW2のアメリカ軍では、ミサイルの誘導にハトを使うという、行動心理学者B.F.スキナーによる「プロジェクト・ピジョン」なる計画があったそうな! このように長い歴史がある伝書バトだが、IT通信技術の発達により廃れた現在では、そのノウハウや技術は「レース鳩」に転用されている!

 なお、伝書バトやレース鳩を撃ってしまうおそれから、カワラバトは狩猟対象から外されている! そのため都会などでは増えすぎて、フン害による汚染や、羽毛に寄生するダニやフンに繁殖するカビなどの健康被害をもたらし、市街の繁殖地では大きな問題になっている!

 「平和の象徴」として名高いハトだが、オーストリアの動物学者コンラート・ローレンツは『ソロモンの指環』という本の中で、ハト同士の喧嘩ではお互いに死ぬまで攻撃を止めないという話をしている! これは、戦い慣れしておらず、鋭いツノやツメなどの強力な武器も、甲羅などの防具も持たないため、戦いが泥沼化しやすいからだという! 狩りに慣れた戦闘能力の高い肉食けものや、気性が荒く喧嘩慣れしていたり防衛能力の高い草食けものよりも、むしろ「武器や防備を持たないけものこそ、いったん争えば凄惨な殺し合いに発展する」例として挙げられることがある!

 

 Ψ   Ψ   Ψ   Ψ 

 

『「PPP&デストロン予告っ!」』

 

『くそっ! オレが必ず、この海底火山から助け出してやるぞ……! B・B……!』

「(ヒョコッ)ふー。ありがとうございます、スタースクリーム様。こんなに早く、海底の火葬場から解放されるとは、思ってもみなかったです」

『ぎゃあ! お前、フツーに生きているじゃねえか!』

「イエス。お尻が燃えた程度です。B・B、思ったよりずっと丈夫でした……そんな細かいことより、デストロン追放と野垂れ死にという、スタースクリーム様の命令を破ってしまいました。なんなりと処罰を」

『フン! まあいいさ! さっそくこれからはオレ様とデストロン軍団のために、身を粉にして働けよな!』

「ラジャー」

 

(こいつはおバカだが、中々実力があるようだ。いじめられっ子のマイク・タイソンがヘビー級ボクサーになったように、オレ様が名トレーナー、カス・ダマトになってやる!)

 

(……燃え残ったこれは、カワラバト様から頂いたオリーブの首飾り、平和と友好の証……デストロン兵士には必要ないものは、“ひとりのフレンズの死”を喪って火山に捧げよう……)

 

 

 

「火山に落ちたB・Bは生きていたのね! 良かったわ~」

「おお! 死んじゃったかとおもったぞ!」

「でもデストロンに、強力新メンバーが生まれてしまったわけですね!」

「これからも、サイバトロンとフレンズを応援してくれよなー!」

「読者のみなさ~ん、ナレーションさんからお話があるよ~」 

 

 

 

 今回は特別に、けもフレvsTFのオリジナル・新メンバーを皆さんにご紹介しよう!

 

ID:-- サイバトロン パーク通信案内員 テレトラン・ビースト / Teletraan B

分類:???

レッドリスト:EX/EW/CR/EN/VU/NT/LC/[N/A(該当せず)]

主兵装:LB1型標準装備・底面式除草カッタ―

副兵装:-

体力:4 / 知力:10 / 速度:2 / 耐久力:5 / 地位:2 / 勇気:10 / 火力:1 / 技能:8 / マカセテ度:10 / ドラテク:10

座右の銘:「僕ニマカセテ(Trust me, and )、君ノ見タイモノハ全部、見セテアゲルネ(I show you everything you want to see.)

 原作アニメ「けものフレンズ」にて、かばんとサーバルとのパークの旅路の終わりに体を失い、本体部分のみになってしまったラッキービーストが、前回の物語中でサイバトロンの技術提供により、新たなボディを得た姿だ! パーク内で発見したラッキービースト1型の在庫ボディとサイバトロン戦士の予備パーツを利用し、凄腕の研究者、ホイルジャック、ラチェット、パーセプターの3名が共同開発を行った!

 ジャパリパークの内部ネットワークの他に、サイバトロン・データベースとも常時リンクアップしており、通信機能・ナビゲーション能力・緊急時の判断力・ホログラム投影能力を標準のLBより向上させているぞ! 性格や記憶はもとのまま引き継いでいるので、フレンズとのコミュニケーションやパークガイドの経験も豊富だ!

 元の世界のサイバトロン基地の「テレトラン1」のようなオレンジ色のボディカラーと、正義と友好の証・サイバトロンマークが、一般のLBと異なる特徴だ! なお新ボディに追加装備は無く、戦闘武装となるものは草刈り用カッターのみで、変形機構も無い……はずなのだが、あの稀代の発明家ホイルジャックのことだ、これから先のお話では何か新しい機能が追加されるかもしれないぞ!

 姿は変わってしまったけれど、アニメでかばん、サーバルと苦楽を共にしたラッキービーストだ! 読者のみんな! これからもサイバトロンとテレトランBを応援してくれ!

『カバン、サーバル。コレカラハ、僕ノコトハ、テレトランBッテ、ヨンデネ』

「はい! ラッキーさん」

「これからもよろしくね! ボス!」

 

ID:-- デストロン パーク陸海空重装獣爆兵 B・B / Beastbomb

分類:???

レッドリスト:EX/EW/CR/EN/VU/NT/LC/[N/A(該当せず)]

主兵装:光学式7.62mmガトリング砲 / 多目的ミサイル砲「BBランチャー」 / 汎用空爆ポッド

副兵装:チェーンソーサーベル「ヘルスクリーマー」

体力:8 / 知力:2 / 速度:4 / 耐久力:9 / 地位:1 / 勇気:9 / 火力:9 / 技能:3 / 設定盛りすぎ度:10 / アホの子度:10

座右の銘:「身体はフレンズでも、(The body of the FRIENDS )心は常にデストロンと共に(with the spirit of the Decepticons.)

 今回のお話で登場したフューザー・フレンズ、B・Bだ! スタースクリームが、軍用猛禽類の剥製・軍用犬のドッグタグ・ノコギリザメの標本・フレンズが作った爆撃機の玩具模型を集めて、この4つが火山噴火のサンドスター・エネルギーで合体して誕生したのだ!

 イヌとトリが合わさったような外見をしているが、それらの能力の他にも、サメの水中活動能力と、B2爆撃機スピリットの攻撃能力とステルス機能を併せ持っている! ジャパリパークの大自然、陸・海・空のどこでも、ステルス状態で忍び寄り、高火力での電撃陣地制圧戦が可能なのだ! ジャパリパークのシンボル「の」マークの上に、メガトロンから授与された悪の紋章、デストロンマークをつけているぞ! 暴力と破壊と恐怖こそを至上の喜びとする、残虐非道、冷酷な悪魔、スタースクリームの忠実なる番犬、戦って死ぬために生まれた悪の尖兵だ!

 だが、その高い能力の代償として、知能が低下してしまったという致命的な弱点を持つ! これは、4つの動物・メカの認知能力、意識形態の不統一によるものと考えられる! 「合体戦士は強いけどアホ」なのはTFの常識なのだ! 能力は高いが知能と性格に問題があるのは、まったくデストロンらしいではないか!

 このような恐るべき敵が増えてしまったが、負けるな! サイバトロン! ジャパリパークのフレンズの自由と平和のために、頑張ってくれ!

『あのお人好しでマヌケのB・Bだが、自分で考えて動けるフシがあるし、なかなか根性がある。下等なフレンズと言えども、訓練して戦い慣れすれば、それなりモノになるかもしれんな……』

『メガトロン様、B・Bこそは理想的な戦士でさぁ! 勇敢でしかも忠実! 第一オレ様にでしゃばらない!』

『フン! それを言うなら、奴には人を見る目がないってことだわい! いつまでもNo.2が関の山の愚か者を、リーダーに奉っているんだからな!』

『うるせえッ!! 人をコケにしやがるのもいい加減にしろぉっ!!』

「メガトロン様、スタースクリーム様、けんかは止めてください。お腹が減ります」

 

 

 

「さあ、気を取り直して来週の次回予告をするわよ!」

「次回はサイバトロン戦士たちが車モードに変形!ヘンケイ!して大活躍するらしいぞ」

「サイバトロンさんは、別名“オートボット”……”くるまロボット”なんですよね」

「車とフレンズが、パークじゅうを走り回って競争するんだってよ!」

「PPPの“れーすくいーん・こすぷれ”もいいよね~。あ、グレープ君の好みの話だけど~」

「フルル~! お前またのろけ話かよ!」

 

次回、【第10話 ジャパリパーク横断ラリー・スペシャル!!】

開催! モータースポーツの祭典! フレンズたちとカーロボット(オートボット)たちの大レース!

デストロンたちも参加して……!?

パーク全土をめぐる超過酷なエキサイティング・大自然ラリー!

素晴らしい賞品と優勝カップの栄冠は誰の手に!?


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