呼ばれて飛び出て例のスキマが出てきます。
「あーもう、やってられないわ!」
霊夢が突然愚痴りだす。俺は今博霊神社にいる。いるのは、霊夢、魔理沙、早苗、俺の四人だ。
「この頃、また参拝客が減ってきたのよ!私はこんなに一生懸命やってるのに!」
(((霊夢{さん}がいつ頑張ったんだろう)))
誰かと心が重なった気がした。
「まあまあ霊夢さん。いつか霊夢さんを認めて参拝に来てくれる人がいますよ、きっと」
早苗が中々いい感じのフォローをした。さすがだね。
「もめはみむむぐむぐ」
「まず飲み込んでから喋ることをお勧めするぜ」
霊夢は饅頭を食べながら言ったので、何言ったのか分からなかった。ちなみに、その饅頭は早苗が持ってきたものだ。
「――むぐ。それはいつ来るのよ?」
改めて霊夢が聞いた。
「え?まあ……いつかです、いつか」
「どうせ来ないわよ……もう!こうムシャクシャすると酒が飲みたくなってきたわ!」
あ、やばい。これは無理矢理飲まされるパターンだ。
「霊夢。ヤケ酒は良くないぞ?」
一応忠告しておく。まあ――
「うるさい!飲むったら飲むの!」
――聞いたためしはないんだけど。
「はぁ……早苗」
「……どうしましょう」
「上手い感じに誤魔化して飲まないようにしよう」
「その作戦、成功したことありましたっけ?」
「無いに決まってるじゃない」
「そうですよね……はぁ」
なんてやり取りをしているうちに、霊夢が酒を持ってきた。盃は――四つあった。ひどい!酒飲めないの知ってるくせに!!
「さて、飲むわよ~」
「おぉー!」
今思ったんだけど、さっきの愚痴って酒飲むための口実だったんじゃないの?どうなのよ、霊夢。ちなみに意気揚々と霊夢に応えたのは当然魔理沙だ。
「ほら、あんたたちも飲みなさいよ」
そう言って酒を持ってくる霊夢。くそ、意地悪い笑みを浮かべやがって。
「あ、どうも」
おとなしく貰っておく。下手に断ると無理矢理飲まされると学んだのだ。
「あら?随分おとなしく貰うのね?」
霊夢が驚いたような、不思議そうな顔をする。……その反応、断ることを前提としていたと考えていいな?
「まあ、な」
適当に返事しておく。霊夢はちょっと残念そうな顔をして自分の盃の元へ帰った。
「さて、なんか適当に話すか」
「そうですね」
霊夢に飲んでないことを悟られないように上手く話していたのだが、
「私もそっちに入っていいかしら?」
と霊夢がこっちにやってきた。ゑ?
「じゃあ私も入るぜー!」
魔理沙も入ってきて結局全員集合だ。ゑ?ゑ?
「あれ?あんたたち全然酒が減ってないみたいだけど……?」
「あ、いや、これは補充したのさ」
内心冷や汗ダラダラである。勘付かれたか……?
「そう、遠慮しないでいいのよ?」
「お気遣いどうも……」
霊夢……俺たちの嫌いな物ばかり勧めやがって……。どうせならその大事そうに自分の横に置いてる饅頭を寄越さんかい。
「ほら、遠慮しなくていいって言ってんだろ~?」
首元を掴まれた。すかさず加速して横に避ける。
「む?なんで避けるんだぜ?」
魔理沙が不思議そうな顔をしてくる。まさか魔理沙が飲ませようとしてくるとは……。こいつ…侮れぬな……。
「もう知ってるだろうに……」
おそらくもう勘付かれているのだろう。
「ええ、知ってるわ」
当然と言わんばかりに言う霊夢。こいつ……!
「私たちはね、影斗。あんたたちに早く酒を飲ませたいのよ。あんたたちが宴会で寂しい思いをしないように……」
「なんかいいこと言ってるような気がするけど、飲まなくても宴会は楽しかったぞ?」
これは本当。
「いいから酒飲みなさーい!」
「うおぉ!?」
いきなり霊夢が飛びかかってきた!俺に酒を飲ませようと酒瓶を装備して。さてはこいつ、酔ってるな!?しかも瓶ごと飲めと!?
「ちょ、うわ、やめろ!」
「宴会は酒飲まないと始まらないでしょうがー!」
しばらく霊夢と取っ組み合っていると、
「まったく……昼っぱらから騒がしいわねぇ……」
知らない人の声が聞こえた。この三人の中の誰かではないと思う。
どこから聞こえたのかと辺りを見回してみると、あるところだけぱっくりと空間が割れ、そこからたくさんの目玉らしき物がたくさん映っている薄気味悪い空間が現れていた。そしてその空間から一人の女性が上半身だけを出していた。
「何しに来たのよ、
それに気付いた霊夢がそう言った。やっと酒を近付けるのをやめてくれた。
「いえ、特に用は無いわ。やることが無かったからね」
「帰りなさい」
「いくらなんでもそれは酷くないかしら!?」
こいつら、仲良いな。神奈子と諏訪子的な感じか?
そして紫と呼ばれた女性は霊夢と少し話した後、
「あら、影斗じゃない。こんにちは」
俺に話しかけてきた。
「え?えっと……こんにちは。初めまして?」
俺、この人と会ったことあったかなあ……?
「何言ってるのよ影斗。前の宴会の時にいたじゃない」
霊夢がそう言ってきた。そうだっけ?あの時の記憶は無いに等しいからなぁ……。
「ふふふ。まあそういうことにしておくわ」
紫が手に持った扇子で口元を隠しながら上品に笑う。なんか意味ありげな言い方だったけど、まあ気にしないでおこう。
「あなた、私を覚えていないようだし、改めて自己紹介しておくわ。私は『
「えーと、月宮影斗です。よろしくお願いします、紫……さん」
一応さん付けはしておいた。まあ初対面みたいなものだし。
「紫でいいわ。それと敬語はいらないわよ」
と紫に言われたのでさん付けとかはやめることにする。
「あ、その饅頭、美味しそうね。少し貰っていってもいいかしら?」
紫が霊夢の横にある饅頭に目を付ける。霊夢はそれを隠すようにして、
「ダメよ。これは私のなんだから」
断った。一個や二個くらいいいんじゃない?
「いいじゃない。少しくらい」
俺と同じようなことを紫が言う。
「
「だからどうしたのよ」
「おみやげでもあれば機嫌直すかなー、なんて思ってね」
「自分で何か買いなさい」
「頼むわよ~、後でお金あげるから」
「しょうがないわね、はい」
『お金』って言葉が出てきた途端霊夢の目つきが変わった。というか紫、どうせお金払うなら自分で買ってもいいんじゃないか?
「ありがとね、これで少しは空気も良くなるわ」
「あら、帰るの?」
「ええ、これ以上藍を怒らせると後が怖いしね。それとも何?もしかしてまだいてほしかった?霊夢が私のことすごく嫌そうに見てくるから嫌われてるのかと思ったわ」
「馬鹿ね。そんなことある訳ないじゃない。早く帰りなさい」
「あら、残念。じゃあね、霊夢。それではごきげんよう、皆さん」
紫はスキマの中に入っていった。そしてしばらくするとスキマも閉じた。
「帰って行ったな。相変わらずよく分からない奴だったぜ」
霊夢と紫が話している間も飲んでいたのだろう。魔理沙の顔の赤みが増していた。
「お金……!」
霊夢はサンタさんを待っている健気な少女みたいに目をキラキラさせている。プレゼントがお金という凄く現実的なのが残念だ。
「それじゃ、俺たちも帰るか」
「あんたたちも帰るの?」
我に返った霊夢がさっきのように聞いてくる。
「うん、ちょっと頼み事をされてたのを思い出して……」
「そう、気を付けてね」
「じゃーなー!」
「じゃ、またいつか~」
「さよなら~……」
「あの、影斗さん」
「ん?」
「どうしてあんな嘘を?」
博霊神社から少し離れたところで、早苗が聞いてきた。あんな嘘とは、『頼み事をされた』ってやつのことだろう。あれはもちろん嘘だ。
「俺たち、今日酒一滴でも飲んだか?」
「いや、飲んでないですけど……」
「多分、あのまま居たら俺たち酒飲まされてたぞ?だから、紫に気を取られてるうちに逃げようかな、と思ってさ」
実際、成功するとは思ってなかったけど。霊夢がお金に眩んでたのと、魔理沙が酔ってたから出来たことだろう。
「まあ、今日のところは勝利、ってとこだ」
「ところで、帰ってから何します?」
「何かする」
「その何かを聞いてるんですけど……」
そうだなぁ、流し素麺――は前やったな。何しようか。
「いや~いつ飲んでも酒は美味いぜ!」
「そうねぇ……」
「どうした?どこか具合でも悪いのか?」
「いや、別に……」
私は、何かが胸に引っかかっていた。なにかしら……。
「何か忘れているような……」
紫にお金を貰うことと……何かがあったはずなんだけど……。確か、お酒絡みのことだったような……。
「まあいいわ」
酒を飲むときに変なことは考えるものじゃないわね。折角の酒に集中できないわ。
「あれ?もう酒が無いぜ……」
最後の一滴を垂らして酒が無くなった。むぅ……と不満そうにしている魔理沙。
「ねえ、魔理沙」
「どうしたんだぜ、霊夢?」
「もう一本行くかしら?」
そう言った途端、魔理沙の顔がパァッ、と輝いた。
「本当か!?」
「本当よ。じゃあ、持ってくるわ」
そう言って台所に向かう。私もあまり飲んでいないから、むしろ好都合ね。
「え~と、確かこの辺にもう一本……あ、あったあった」
あっちでは魔理沙がまだかまだかと言わんばかりに手を振っている。
さてと、もうちょっと酒を楽しもうかしらね。
スキマ妖怪というタイトルの割にはあまり出番が無かった不憫な紫さん……。
まああの人はどこにでも出没するでしょう。多分。
それでは、また次回。