主人公ってあれですよね。サクサクっと敵を倒して涼しい顔して武器を肩においてトントンってするようなキャラですよね。
影斗さんと白髪の少女―――妖夢さんの闘いを見ています。いえ、見ていました。
影斗さんの闘いを見たことが無かったので心配だったのですが……
「その程度ですか?」
「うっ……」
―――まさか30秒程度で負けるとは思っていませんでした。
先ほど私は闘いと言ったはずですがこれは違いますね。レベル100の勇者が青いプルプルした生き物を暇つぶしに倒しているようなものです。
「あいつ、どうしたんだぜ?霊夢の時はもっと粘っていたはずなんだけどなぁ……」
魔理沙さんが不思議そうな顔をして呟いた。ということは、影斗さんはまだ本気じゃない……?
「あなた……本当に闘う気があるんですか?」
妖夢さんが怒っているような口調で言う。
「……あるよ。ここからが本番だよ」
影斗さんがそう言った瞬間、影斗さんが消えた。
「っ!?」
妖夢さんが驚いたように辺りを見渡す。
「―――上ですか!?」
刹那、上からものすごいスピードで影斗さんが降ってきた。妖夢さんはギリギリそれを刃で受け止めた。
「ここからが本番かもね、多分」
――――――――――
よかった……妖夢が油断していてくれて本当によかった……。なんとか逃げ出すことが出来た……。
「ここからが本番かもね、多分」
距離を離し、足が震えるのを極力隠すように努めながら言う。足が……。
妖夢はまだ驚いているように見える。おそらく、今がチャンス!
「行くぜぁ!」
ぜぁ?まあいいか。
加速して妖夢に斬りかかる。妖夢は我に返ったのか、一瞬目を見開いた後、刃で防御した。
「っ……」
そんなに力を入れてなかったのか、妖夢の力が弱い気がする。証拠に俺が地味に押してるし。だが少しした後、
「―――やっ!」
妖夢が力任せに刀を振るった。おかげで少し体勢が崩れてしまった。やば―――!
「隙あり!」
妖夢が刀を振り下ろしてきた。何も考えずに後ろに跳ぶ。
「いてっ……!」
どうやら完璧に避けることは出来なかったらしく、左頬辺りに痛みが走った。同時に生暖かいものが俺の左頬を流れる。なんだと思って指で触ってみる。
―――血だった。
大体予想はしてたけど。でもこんなところから血が出たことが初めてなのでビビった。
「本番ではなかったのですか?」
妖夢が聞いてきた。アホか。本番だよ。持っている刀には、俺のものと思われる血が付いていた。
「……っ」
加速して斬り込む。妖夢はそれを迎え撃とうと刀を構える。
そしてさっきと同じように二つの刃が交差―――しなかった。
刀と刀が交差する直前に速さを少し上げ妖夢の後ろに回り込む。そして隙だらけの背中を突き飛ばす。
そして体勢を崩した妖夢へ斬りかかる。手応え地味にあり。
「よっしゃ?」
「くっ……」
どうやら刃は右腕に当たったらしい。右腕から血が出ていた。
「……情けをかけたつもりですか」
右腕を押さえながら妖夢が睨みつけてきた。なんか怒ってる?
「さっきあなたは、私を殺せたはずです。何故ですか?そもそもあなた……」
えーっと……
「さっきのは単純に狙いが狂っただけです」
とでも言っておけばいいかな。
「私は……容赦しませんよ」
そう言って刀を構え直す妖夢。ちょっとマジで怖いんですけど。距離取っとこうか。
「影符:【影昇牙】!」
とりあえず今のところ唯一持ってる遠距離技を出す。技これ一つしかないけど。
前より霊力は上がったのでまだふらつきはしない。
「妖怪が鍛えたこの
妖夢が剣を横に構える。
「――斬れぬものなど、あんまりない!!」
そして、黒い斬撃は妖夢に真っ二つに斬られてしまった。おかしいよね!?俺の切り札(笑)斬るなよ!!
「そういうのあり!?」
「覚悟!」
妖夢が一瞬のうちに距離を詰めてくる。速い!?
横薙ぎに斬られる刀をしゃがんで躱す。次に斜めに振り下ろしてきたので右に避ける。
「このっ……」
妖夢が苛立ったような声をあげる。
斬り込もうと思ったのだが、その前に妖夢が刀を振って弾幕を出してきた。
「うおっ!」
弾幕を避けるのに精一杯だった俺は、妖夢がものすごいスピードで駆け寄ってくるのに気付かなかった。
「隙あり!」
「えっ」
足を払われた。バランスを崩した俺は一瞬宙に浮く。転ぶ途中に妖夢に刀を弾き飛ばされた。何も出来ずに転倒した後、その武器を取ろうと左腕を伸ばすが、妖夢にその腕を踏まれた。そして、俺の首元に刀が突きつけられた。げっ。
「あなた、本当に闘う気があるのですか?」
あれ、なんかデジャヴ。
「あなたからは、ちっとも殺気が感じられません。本当に闘う気があるのですか」
無い、とは言えなかった。ここでそんなバカなことを言ったら冗談抜きで首斬られそうだから。
「影斗さ―――」
さっきの声は早苗だろうか?
「動くと斬ります」
なんなんだこの人。すごく怖いです。
どうしよう。適当に闘う気すごいありますとでも言っておこうか、とか考えていると、妖夢がいた場所に、針が刺さった。妖夢はいち早く回避していたが。ちなみに、その針が刺さったのは俺の足元すれすれであることを言っておく。
「あいつ……来るのが遅いんだぜ」
魔理沙がため息をつきながらもどこか嬉しそうな顔で言った。
俺も針が投げられた方を見てみる。
そこには、博霊の巫女こと、博霊霊夢がいた。
おお影斗よ、負けてしまうとは情けない!
いや、違うんです。影斗が弱いのではなく、幻想郷の皆様が強すぎるのです。……多分。
それでは、また次回。