東方漆風録   作:零霧

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どうも、零霧です。
やっと待ちに待った(?)宴会です。


第28話 飲めや歌えの大騒ぎ!

 宴会が始まってから、俺はいくつかの飯を持って、皆から少し離れた木に(もた)れている。なぜ離れているかというと、また酒を飲まされるかもしれないからだ。それだけは、なんとか回避しなければならない。

 プリズムリバー楽団の演奏が、いい味出している。

「うま。あ、これも美味い!こっちも美味い!かゆ……うm」

「こんなところにいたんですか」

 誰かと思い顔を上げると、そこには早苗がいた。

「こんなところで何やってるんですか?」

「飯食ってるの」

「それは見たら分かるんですけど……どうしてこんなところで?」

「酒を飲まされる可能性を少しでも少なくするため」

「まあ、そんなことだろうと思いました。で、そのことで話があるんですよ」

「酒のことで?」

 早苗ははい、と頷いてから言った。

「今日はお酒飲まさないそうですよ?だからこっち来て食べればどうですか?」

「本当に?」

「本当です」

「本当の本当に?」

「本当の本当です」

「なら行こう」

 飲まされないんなら行ったって問題ない。好きで一人でいたわけじゃないし。

「あ、影斗さん?」

 立ち上がろうとしていると、今度は横から声を掛けられた。

「あの、少しいいですか?」

 声の正体は、魂魄妖夢だった。

「あ、はい。大丈夫です」

「失礼します。あ、敬語はいらないですよ」

「分かりま……分かった」

 ならば遠慮なく。

「私、先に行ってますね」

 早苗がそう言って皆がいる方に歩いていった。さて。

「あの……影斗さんと闘った時なんですけど……影斗さん、ですよね?」

「うん、合ってる」

 魂魄妖夢で合ってるよね?こっちも不安になってきたぞ。

「えっと……その、無理矢理闘わせてしまって、申し訳ございませんでした!」

 頭を下げながら言う妖夢。

「いや、いいよ。……あ、腕、大丈夫?」

 妖夢の腕には包帯が巻かれていた。あれやったの俺だよね。

「大丈夫です。それより、影斗さんの方が重傷じゃないですか」

「確かにそうかも」

 まあ重傷かもしれないけど。腕って日常生活に関わるじゃん。そういや、腕骨折した奴ってやりにくそうだったな。飯もろくに食えてなかったな。

「あの……影斗さん?」

「あ、ごめん」

 妖夢が呼んできたので我に返った。やめようか。なんか思い出したくないことまで思い出しちゃいそうだし。逆に忘れたいけど。

「それで、少し聞きたいことがあるんですけど……」

「なに?」

「最初の時、影斗さん、やけに動きが鈍かったですよね。その後は、結構動いてましたけど」

「あぁ……妖夢30の時?」

「よく分かりませんけど、多分それです」

 あれねぇ……。正直に言うかな。

「実はさ、足挫いたの」

「……は?」

 妖夢が素っ頓狂な声を上げた。何さ。足挫いちゃ悪いっての?

「最初突進した時にさ、足挫いたの。間抜けだよね……」

 実は意外とへこんでたりする。あんな場面で足挫くか普通?

「……そ、そういうことだったんですか。結構間抜けですね、それは」

 言わないで。落ち込んでるんだから。

「あ……すみません」

 何かを察してくれたのか、妖夢が謝った。

「いやいいよ。気にしてるから」

「気にしてるんですか!?」

「ごめん。冗談」

 ――ではない。とはあえて言わない。

「本当に気にしてませんよね?それでは、この辺で」

「じゃ」

 お互い、軽く手を振って別れた。さて、じゃそろそろ「隣、いいかしら?」うわーお。

「どうぞどうぞ」

「それじゃ、失礼するわね」

 次の来客は、ここのお嬢様であり今回の異変の首謀者でもある、西行寺幽々子だった。

「それで、私に何の御用でしょうか」

「あら、あなたそんな堅苦しい人だったかしら?」

 断じて違うよ。でも目上の人には敬語で話せって言われたから。俺もそうだと思ってる。

「さっき、妖夢との会話を聞く限り、そんな話し方ではなかった気がするのだけれど」

「聞いてたんかい」

「そうそう。そんな感じでいいわよ」

 ……またここから敬語で話すのもアレだし、素でいいや。

「じゃあ、素に戻るよ」

「そうしなさい。で、用件なんだけど」

 なんだろう。

「改めて、自己紹介でもしない?」

「へ?」

「ほら、なんかバタバタしててゆっくり話もできなかったでしょ?」

 異変中にゆっくり敵と話すのもいかがなものかと思うが。その話し合いで解決してくれるなら大歓迎なんだけど。幽々子は構わず続ける。

「だから、ゆっくり自己紹介でも、と思って」

「まあ、いいけど……」

「それじゃ早速。私は西行寺幽々子。よろしくね」

「月宮影斗です。こちらこそよろしく」

「終わっちゃったわね」

「そうですね」

 どうしよう。

「まあ本題はここからなんだけどね」

「え?あ、今から?」

 よかった。気まずい沈黙流れなくて。

「あの時、あなたが気絶した後、西行妖は散ったんだけど」

 なんだろう。面白そうな話だな。俺もあの時のこと知りたいと思っていたので助かる。

「散った時、西行妖の枝の上にね、私がいたのよ」

「ふーん、どゆこと?」

「詳しく言うと、私の影、って言ったほうがいいのかしら」

 つまりは、西行妖に幽々子の影があったってことか。

「不思議よね。そのこと、どう思う?」

「どう思う?って……不思議なんじゃない?」

 不思議以外の言葉で表せるとすれば……不可思議とか?摩訶不思議とか?結局『不思議』って字が入ってるじゃねーか。

「そうじゃなくて……まあいいわ。私、『あの木には誰かが封印されている』って言ったわよね?」

「言ってたな、そんなこと」

「それで私、あの木の下には私が封印されているんじゃないか、って思ったの」

 ……えーと?

「でも、幽々子は俺の目の前にいるじゃん」

 こいつは幽々子のはずだ。だって、さっきそう名乗ったもの。

「私は亡霊よ」

「そうでした」

「別にあなたくらいなら呪い殺すくらい訳無いわよ?」

 すぅ、と目を細めながら近付いてきた。ちょ、目がマジに見えるんですけど?

「やめてくれ、冗談キツい」

「ふふっ、ごめんなさい。それにしても、話してたらまた気になってきたわ。また春を集めようかしら?」

「おいそれは……」

 また異変を起こすってことだよな?

「冗談よ。さてと、時間とらせちゃったわね。そろそろ行くわ」

 だから冗談キツいっての。

「それじゃ」

 またお互い軽く手を振って別れた。さてと、じゃ行きますか――

「あれ!?飯がない!?」

 ――俺がとっていた飯が、綺麗さっぱりなくなっていた。あるのは、飯を置いていた皿だけ。

「補充の意味も込めて、あいつらのところへ行こう……」

 

「あ、来たんですか」

「お待たせ?」

「やぁ影斗!またこっぴどくやられたもんだね!!」

「どうして神奈子がいるんだ」

 神奈子は顔を赤くして酒を煽っていた。いつも通りだな。

「いいじゃないか。細かいことは気にしちゃダメだよ」

 それもそうだ。あ、分社見つけた。

「少しは自分で動かんかい」

「いいんだよ。私は神なんだから。わっはっは!」

 豪快に笑う神奈子。酔ってるのか素なのか分からんのが怖い。

「はぁ……俺も食べよ」

「これ美味しいですよ」

「お、サンキュー」

 肉に何かかけたようなものだった。美味かった。

「あ、影斗」

 料理にありついていると、魔理沙に呼ばれた。顔赤いですね。

「あの霊力飛ばすやつ、よかったぜ!」

「あれは助かりましたね」

 急に褒められ始めたんだが。

「えーと、何の話?」

「あれだよ。幽々子のスペルを止めた時だよ」

 そういえばそんなことがあったような気がしないでもない。

「なんだい!?影斗が役に立ったのかい!?意外なこともあるもんだね!!」

「うっさい神奈子!!」

 『意外』ってなんだ!!でもあれは完璧なまぐれであってですね……。もう一回同じことしろ、って言われても多分できないよ。

「まあ、あんたにしちゃ上出来だったんじゃない?」

「そうか?」

 霊夢にも褒められた。褒められたんだよね?今の。

「ほらほら、よくやったな~」

「むぐぅ!?」

 口に何か流し込まれた。にがっ!?なにこれすごい苦い!!

「ちょ、萃香!今日はダメだって言ったでしょ!!」

「え~そうだったかぁ?忘れちまった~」

 霊夢。萃香に一発お祓い棒かましてやってくれませんかね?

「影斗さん、大丈夫ですか?すごい顔赤いんですけど……」

 早苗が顔を覗き込んできた。

「これだけで酔うってのも考えものですね」

 声が下から聞こえた。もう一度言う。下から。もう少し詳しく言うと、俺と早苗の間から。

「――――」

 ――そこには、半透明な女の頭があった。

「影斗さん!?ちょ、大丈夫ですか!?ここで寝ないでください!」

「いや……多分違うと思います……」

「あ……あんたは確か……」

「そうです!あの時の――」

「お妙さん?」

「誰だよ!?」

 あの時の幽霊だった。そういう登場はするなって言わなかったっけ?

「あの、影斗さん、この方は?」

「幽霊のお妙さん」

「誰だよ!?違います!!初めまして。幽霊です。といってもここに幽霊は沢山いるんですけど。名前はないです」

「そうなんですか。でもそれだと、呼び方に困りますね……お妙さん、って呼んでいいですか?」

「ダメですってば!!影斗さん、変なこと言わないでください!!」

「俺たち、初めましてだっけ?」

「お前に言ったんじゃねぇよ!!そしておせぇよ!!」

 この人急にキャラ変わるな。なんなんだろう。

「ごめん。冗談」

「そうじゃないと困ります……」

「で?何しに来たの?」

「遊びに来たんです」

「仕事しろよ」

「休憩時間です」

「影斗さんが言えた義理ですかね……」

 確かに。仕事しないとな。

「待ってください!!幽々子様!!」

 大声が聞こえた。大声というより、半分叫び声だった。何事かと思い、声がした方を見てみる。

 そこには、妖夢と幽々子がいた。幽々子がこっちに走ってきている。それを妖夢は止めようとしているのか、幽々子の肩を掴んでいるが、止めることは出来ず、引っ張られている状態だ。

「見えた……!!」

 幽々子の目が一瞬光った気がした。いや、間違いなく光った。妖夢は後ろに突き飛ばされた。

 

 そして次の瞬間、幽々子が消えた。同時に、この辺一帯にあった食材も消えた。

 

 皆声も出さず、ぽかんと口を開いている。プリズムリバー楽団の演奏の音量が、大きくなった。

「――ふぅ。ごちそうさま」

 そんな中、声を出す者が一人。西行寺幽々子だ。

「ね、ねぇ……あんた……?」

 ギギギ、とぎこちなく首を動かす霊夢。その目には、確かな殺意が芽生えていた。酔いも覚めたのだろうか?赤かった顔は、今では若干蒼白気味だ。

「これ、全部あんたが食ったの……?」

 長い沈黙。その後で、俺たちを待っていたのはたった一言。

「ええ、そうよ☆」

「「「『ええ、そうよ☆』じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」

 皆の心が一つになった。素晴らしいハーモニーだ。

「どうしてくれんのよ!!」

「まだまだ全然足りないぜ!!」

「この量でも……止められませんでしたか……」

 順に霊夢、魔理沙、妖夢が発した言葉。

「あの……妖夢さん?まさか、これでも足りないって……」

 早苗が妖夢に聞く。何か聞いていたのだろうか。

「はい。そういうことです……私の主人、幽々子様は大食いなのです……」

「いや、あれは大食いの域を軽く凌駕してると思うぞ……」

 例えるなら……バキューム。バキュームと聞いてピンクの球体を思い浮かべた俺は決して悪くないと思う。

「う~ん♪異変解決したら宴会なら、毎日異変起こしたっていいかもね~」

「「「ふ・ざ・け・ん・な!!」」」

 

 

 この日、宴会が終わったあと、博麗神社に集まって『宴会には幽々子を呼ばないように』と皆で話し合い心に誓ったのは、また別の話。

 

 




長っ!?4000文字超えたよ!?
前も宴会は長かったような気がする……。
何はともあれ、妖々夢編、これにて終了です!
次は何しようかな……。
影斗が足挫いたっていうのは、17話の最後と18話を見ていただければ分かると思います。
それでは、また次回。


前話のあとがきで「明日出せるといいなぁ」って投稿フラグ立ててたにも関わらず出せずに申し訳ありませんでした。
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