この頃、会話文が多い気がします。
第29話 夏といえば?
長い冬が終わり、短い春も過ぎ、セミがうるさく鳴き喚く暑い暑い夏となった。
「おはよう」
「ああ、おはよう背中マン。背中は大丈夫かい?」
「ええ、おかげさまで」
俺はあれから『背中マン』と呼ばれるようになった。なぜかというと、前の異変の時、敵――西行妖――の弾幕に当たって気絶したのだが、目が覚めたら背中が死ぬほど痛かったからだ。
いつも思うんだが、いつまでこの背中ネタ引っ張るつもりなんだろう。
「ちょっと神奈子。影斗は頑張ったんだからそういう言い方はないでしょ」
諏訪子が俺を弁護してくれた。ありがとうございます。どっちが祟り神なのか分かったもんじゃないね。
「でもまあ……その、やっぱり笑っちゃうよね~」
「てめぇぇぇぇぇ!!」
裏切った!!ちょっと上げて一気に落とした!!一番酷いやつだよそれ!!
「ご飯出来ましたよー、あ、影斗さ……背中マン。おはようございます」
早苗が飯を持ってきた。相変わらず美味そうだ。
「おはよう」
「ちょっと反応してあげたっていいんじゃない?」
神奈子にそう言われたが、いやだ。
「この頃背中マンって言っても反応しなくなったよねー。つまんないの」
「言われ始めて早何ヶ月だよ」
じゃあ諏訪子のことは『ケロババア』って呼んでやろうか。……やめよう。殺されるじゃ済まない気がする。
「今は七月ですから……三ヶ月ですね」
三ヶ月か。言ってもまだ三ヶ月か。いや、こういう場合、もう三ヶ月になるのか?というか早苗。真面目に答えなくていいから。
「とりあえず飯にしよう。腹が減ったよ」
神奈子が腹を抑えながら言う。腹が痛いポーズに見えなくもない。
「そうしましょう」
「「「いただきまーす」」」
「あの、影斗さん」
「なに?」
「夏といえば、何ですか?」
なんでいきなりそんなことを聞くのか、という質問はしなくていいだろう。早苗がいきなり何かを聞いてくるのはよくあることだし。
夏……そりゃ夏といえば……
「アイス?」
「美味しいですよね。他には?」
「うちわ?」
「涼しいですよね。他には?」
「風鈴?」
「風情がありますね。他には?」
「うーん……」
アイデアがなくなってきた。
「もっと夏らしいのがあるじゃないですか。規模が大きいやつです」
「あ……花火!!」
「やりたいですね!でも、もっと大きいやつです」
「スイカ割り?」
「あ、近いです!じゃあ、それをするのはどこですか?」
「家」
「なんでですかぁ!?」
違ったっけ?……あ。
「海?」
「やっと言って欲しい単語が出てきました……。そうです。海です!」
よっしゃ。やっと当たった。
「……で、海がどうしたの?」
「もう暑くなってきたじゃないですか。そこで、ちょっと私にいい考えがあるんです」
――――――――――
「あ……暑い……私、このまま溶けて死ぬのかしら……?」
もう何度目かも分からないそのセリフを口にしていると、
「よお霊夢。こんなところに寝転がって何やってんだ?」
という声がした。
声がした方を見てみると、そこには影斗がいた。
「暑いのよ。暑くて死にそうなのよ……」
「確かに、死ぬほど暑いよな……」
そう言って隣に座る影斗。その影斗の手には、何かの袋が握られていた。
「ねぇ、影斗。それ……何?」
「これ?」
影斗が袋の方を見る。「そうそれ」という意味を込めて頷く。
「アイスだけど」
「ちょうだい!!」
「うくぁ!?心配しなくてもお前の分もあるから安心してくれ!!」
気付けば影斗に掴みかかっていた。いけないいけない。ご馳走の名前を聞いて少し取り乱してしまった。
「うーん美味しい♪やっぱり持つべきものは友達よね~」
「その友達の分も取ったのはどこの誰なんだろうな……」
影斗が何か言っているが気にしない。今私はこのご馳走を食べるのに忙しいのだから。
「ふぅ。ごちそうさま。ねぇ、もうないの?」
「あったらとっくに食ってますよ……あぁ……暑い……」
そんなやり取りをしていると、魔理沙が来た。
「よぉ霊夢!今日も暑いな!と、影斗もいたのか。おはようだぜ!」
相変わらず元気な奴だ。ちょっとは暑さに堪えないのかしら?
「あんたはいっつも元気ねぇ。はぁ……暑い……」
「そうやって『暑い……暑い……』ばっかり言ってるから暑く感じるんだぜ?その暑さを吹き飛ばすように元気に動けば、いつかこの暑さが心地よく感じるはずだぜ!」
「で、今あんたはこの暑さが心地いいの?」
「めちゃくちゃ暑いぜ!」
まあそんなことだろうとは思ったわ。
箒を持ってないほうの手でピースサインをする魔理沙。ピースなんかしてどうすんのよ。
「ほい魔理沙。アイス」
「お、サンキューだぜ!」
「な……!!」
影斗が袋からアイスを取り出す。もうないんじゃなかったの?
「影斗、もう無いって……」
「俺たちが食う分はもうない、ってことだよ」
何よそれ。魔理沙ばっかりずるい。私も食べたい。
「なんだ霊夢。欲しいのか?」
どうやらアイスをじーっと眺めていたらしい。その視線に気付いた魔理沙が聞いてきた。
「もちろんよ」
「お前さっき二個食ったよな」
「そんなのはどうでもいいのよ」
アイスは何個食べようが美味しいのよ。それが影斗には分からないのかしら?
「じゃあ、少しだけあげるぜ」
そう言ってアイスを渡してきた。
「おい魔理沙、やめとけ。全部食われるぞ」
「安心しなさい。当然そのつもりよ」
「え?」
いただきます。止めに入られないように出来るだけ早く食べる。
「ふぅ。美味しかった」
――完食。ごちそうさまでした。その時間、わずか二秒。
「わぁぁぁぁ!!私のアイスが!!おい霊夢!!どうしてくれるんだよ!?」
既に空になったアイスの容器を持って魔理沙が叫ぶ。
「またいつか返すわよ」
「絶対嘘だぜ!!」
嘘じゃないわよ。失礼ね。お賽銭がたんまり入ったら返すわよ。
「まぁその、なんだ。お取り込み中のところ悪いんだが……魔理沙も来たし、ちょうどいい。ちょっと話があるんだけどさ」
影斗が何か話し始めた。
「なに?お金でもくれるの?」
「どうしてそうなる。……あ、いや、お金はあげる。もちろん、手伝ってくれたらだけど」
「是非ともやるわ」
「まだ内容を言ってないんだけど!?」
お金が貰えるんなら、その話、乗るしかないじゃない!
「まあいいや。実は――」
アイス美味しいですよね。今は食べませんけど。
夏の必需品だと思います。
それでは、また次回。