「鬼に襲われてる・・・?あの里が・・・?」
おそるおそるもう1度聞いてみる。
「あくまで予想だけどね。でも人里を襲うなんて大胆なことをする奴らは鬼か盗賊だと相場は決まってる」
諏訪子が厳しい顔で言う。だが今諏訪子は「鬼か盗賊か」と言った。何故鬼だと分かるのだろう?
「《どうして鬼だと分かる?》って聞きたいんだろう?」
「ええ、どうして鬼だと分かったんですか?」
「盗賊はあんな派手な真似はしない。そんなことをするとそこの退治屋に返り討ちに遭う可能性があるしね。盗賊だって命は惜しいだろうし。静かに物や命を奪っていくよ。でも鬼が来る理由はそれとは真逆。あいつらは《強いやつらと戦いたい》のさ。だから家とか燃やして知らせるんだ。《俺たちはここにいるぞ。ここの人間殺されたくなかったら自分たちを倒してみろ》ってね。当然、鬼を倒せる人間なんてそうそういない。というか、私は聞いたことないかもね」
鬼があまり好きではないのだろうか、諏訪子は心底嫌そうな顔をして言った。さらに、
「だからあんたが行ったって、何も出来はしないよ。神奈子の言うとおり、ここで待っているのが安全だと思うけどね?」
くっ・・・。痛いところを突いてくる。確かに俺が行ったところで出来ることは、諏訪子の言うとおり何も無いかもしれない。ここで騒ぎが治まるのを待つのが賢明だろう。
だが、さっきから何か嫌な予感がする。何かのフラグが建ったかもしれない。いやそんなことを考えている場合ではない。
「あの、やっぱりちょっと様子を見てきます」
諏訪子と神奈子が驚き&呆れた表情でこちらを見る。
「「ちょ、あんた今の話聞いてた!?」」
綺麗に2人の言葉が重なった。
「聞いてましたよ。でも何か、嫌な予感がするんです」
言った直後、2人の顔が呆れ顔だけになった。
「嫌な予感ってあんた、そんなの何の根拠も・・・」
「じゃ、俺行きます。戻ってくるかもね?もしかしたら」
言った後でこれはフラグだと気付いたがもう遅いだろう。1度建てたフラグは自分で壊さなければならない。
「あ、待ちなさ・・・!」
神奈子が呼び止めたような気がしたが、よく聞こえなかった。その頃にはもう俺は階段を駆け下りていた。
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「うわ・・・」
里は逃げ惑う人々でごった返していた。あまりの人の多さに眩暈がしてくる。その人波に逆らって里の方へと走っていく。しばらく進むと、明らかに人ではない者がいた。頭に先が尖った角が付いている。それに、その内の何人かは火を点けた太い木の棒や、棍棒らしきものを持っている。その中に、早苗の姿は無かった。
「いやあぁぁっ!」
女性の叫び声が聞こえた。よく見ると、俺よりも頭一つ分は大きい複数の人影の中に、瓦礫にもたれかかっている女性が見えた。
くそっ、このままじゃあ・・・!
視界の端で、何かが光った。
見てみると、民家の玄関先に包丁が転がっていた。ご飯時だったから包丁を持ちながら逃げようとしたのかもしれない。
「誰か助けてぇっ!!」
それを急いで拾い上げて、大通りに戻る。
鬼の一人が、棍棒を振り上げ、今にもあの女性を叩き潰そうとしていた。
「いやっ・・・いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
間に合え・・・っ!
俺はその鬼に向かって駆ける。
鬼との差は、自分が思っていたより早くぐんぐん縮まる。
——これなら、間に合う!?
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
その勢いのまま、思い切りがら空きの鬼の脇腹に包丁を突き刺す。
今までに感じたことのない感触が、俺の手を伝わる。
「……がぁ……っ?」
その鬼は、驚きの表情を浮かべながら倒れた。もう立ちませんように。
「早く逃げて!」
怯えている女性に向かってそう告げる。
「ひっ……でも……」
「いいから、早く!!」
そう言うと、俺の声に突き飛ばされたようにその女性は逃げ出した。
それを確認し、残りの鬼を見る。
残りは、1,2・・・4人か。
「この包丁でやれるか・・・?」
やれるかどうかは分からない。何せ、刃物を持って戦うなんて初めてなのだから――初めてじゃないと逆に怖いか――というか、元の世界でも喧嘩というものをしたことがない気がする。
鬼たちはしばらく呆然としていたが、我に返ると、
「くくく・・・はっはっは!」
急に笑い出した。なんだなんだ?
「何がおかしい?」
よくあるセリフを口にする。
「まさか普通の人間が出てくるとはな・・・。何の力も感じられない。見たところ、武器はそれだけか?そんなちっぽけな刃物で我らを倒せるとでも思ったのか?全く、笑わせてくれる。悪いことは言わん。とっとと逃げな。俺たちは雑魚には興味ないんだ」
ここではいそうですか、と引き下がるわけにはいかない。ここを突破されたら鬼たちは里の人々を殺してしまうだろう。
「ってことは、その雑魚にやられるお前らも雑魚だよな?」
今決めた。俺は、時間稼ぎに徹する。俺がここで時間を稼げば、いずれ【強い奴ら】が来るだろう。
「あ?」
鬼の表情が明らかにキレた。やば、これは怖い。
「言ってくれるじゃねえか糞餓鬼。鬼を一人倒した度胸に免じて見逃してやるつもりだったが・・・もう知らねえ。我ら鬼に手を出したこと、後悔するがいい!」
そう言って、棍棒を振り上げた。
1つ言いたいことがあります。
前回の後書きで「次回はバトルです(キリッ)」とか言っておきながらバトルに入ることが出来ず、申し訳ございませんm(__)m
これからは、軽率な予告はしないようにします…。
そして安定のgdgd。