東方漆風録   作:零霧

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どうも、零霧です。
今回から、ようやく湖編です。


第35話 『少し』の基準は人それぞれ

 

「楽しみだねー」

「泳ぐぞ!」

「水着と聞いて」

 沢山の人がこの中央広場に集まっている。今日ここで、ある会が開かれるのだ。

 神奈子が、その人々の前に立った。

「皆様、よくぞここに来てくれた!私の名は八坂神奈子!!守矢神社の神だ!」

「いいぞー!」

「守矢サイコー!」

「ババアー!」

「今さっきババアって言った奴御柱な!!とりあえず、この一週間、目一杯楽しんでくれ!!」

 ワーワーと中央広場が喧騒に包まれる。

「それじゃ、あの白狼天狗のところへ並んでおくれ!」

「はーい、ここに並んでくださーい」

 分社の横に立っている、白髪の頭の上に山吹風の赤い帽子をかぶり、そして腰から白い尻尾が生えている少女が手を振る。

 彼女の名前は、犬走椛。白狼天狗である。

 彼女ら白狼天狗が人々を整理している。

「さて、と」

 分社の周りに二十人くらい集まったところで、神奈子が右腕を上げた。

 そして、親指と中指を合わせる。その後、パチン!と小気味良い音が鳴った。俗に言う、指パッチンである。

 次の瞬間、分社の周りにいた二十人が消えた。

 周りから、「おぉ!」と感嘆の声が上がった。

「次々来てくださいね!」

 椛がまた分社へ人々を集める。

「さて、忙しくなりそうだね」

 親指と中指を合わせて、神奈子はそう呟いた。

 

 

――――――――――

 

 

「よっこら……せっと」

 持っていた机を下ろす。「よっこらせ」とか「よいしょ」って無意識の内に出るよね。

 後から椅子を持ってきた河童たちがやってきた。

「よいしょ、っと」

 ほら。

「仕事はこれで終わりだよ。皆、お疲れ様」

 そう言って皆を労っているのは、河城(かわしろ)にとり。青髪で、その青髪を、赤い珠がいくつも付いた数珠のようなアクセサリーで左右両方結んでいる。肩の部分にポケットが付いている水色の上着、そして裾に大量のポケットが付いた濃い青色のスカートを着ている。そして、背中に大きなリュックを背負っている。

「あー、終わった~」

「疲れた~」

「早く帰ってきゅうり食べたい」

 河童たちが体を伸ばしながら口々に言っている。

「ねえ影斗。もう私たちの仕事はないんだよね?」

 いつの間にか近くに来ていたらしいにとりにそう聞かれた。

「うん、終わり。お疲れ様でした。……にしても、本当に一日で作ってしまうとはな……」

 二日前、「更衣室を作ってください」と河童たちに頼んでいたのだ。今目の前にいるにとりは「一日で作ってみせる」と答えたのだが……まさか本当に作るとは思ってもいなかった。……はい。冗談だと思ってましたすみません。しかもちゃんとした造りになってるし。

「それじゃ、私たちは帰ることにするよ。もしかしたら客として来るかもしれないから、その時はよろしくね」

「はいはい、ご来店をお待ちしております」

 「ご来……店?」とにとりは呟き、帰っていった。

「なあ影斗。そろそろ始まる時間じゃないか?」

 接客担当となっている魔理沙が聞いてきた。

「多分そろそろじゃないか?……あ」

 分社から何人かの人たちが出てきた。どうやら、開店のようで。

「いらっしゃいだぜー!」

「いらっしゃいませー!水着をお持ちでない方は、あちらに水着がありますのでご利用ください!更衣室もその先にあります!」

 それぞれ挨拶をする。なんか緊張しますね、これ。

 とか言ってる間にも、お客さんはどんどんやって来る。ちょ、机とか足りるかな……?

「おー!すげー!!」

「どうやって作ってるんだこれ!?」

「家だー!」

 ワッと歓声が上がる。おそらく、水の家を見たのだろう。

 水の家とは、そのまんまだが、水で作られた家である。家の形をした水の塊、と言った方がいいかもしれない。ちなみに、早苗の能力で作った。この世界じゃ常識に囚われてはいけないことが分かりました。ありがとうございます。いやまあ、早苗の奇跡は度々目にしている訳だが。

 元気に泳いでいる人もいれば、椅子に座ってゆっくりしている人もいる。

 いい感じじゃないかな。ちょっと辺りをぶらぶらしてこようかな。

 

「おぉ、ここも賑わってるね」

 俺が来たのは、『さるののさいきょーかきごおり』という店……――というか屋台か――だ。おそらく訳すと、『チルノのさいきょーかき氷』かと思われる。まあ他でもない、チルノと大ちゃんがかき氷を売っている場所だ。

 もう賑わってるか。来て早々かき氷とは……さすがかき氷。人々を惹きつける魔性の力を持ってるんだな……。

 とまあそんなどうでもいい思考は置いといて。上手くやっていると。

「かき氷、二つください」

「任せなさい!」

「チルノちゃん!?何個入れるつもりなの!?」

「二つ?」

「じゃあなんでそんなに入れ物持っていってるの!?入れ物二つでいいんだよ?」

「え?いや、これで二つ……」

「普通に十個超えてるよ!!うぅ……すみません、お騒がせして……」

 

 

 上手く……やって……る……?

 

 

――――――――――

 

 

「さて、そろそろご飯を作り始める頃ですかね?」

 時計を見ると、時計の針は十時を指していた。そろそろ、お腹が空く人が出てくる頃でしょう。

 一応、幽々子様から目を離さないようにしていましたが、つまみ食いとかは無かったです。よかった。

「あら?始めるの?」

「もうそんな時間?」

 幽々子様と霊夢さんがそれぞれ言う。

「ええ。仮に来なかったとしても、置いておけばいいと思いますし」

「すみませーん。焼きそば三つお願いできますか?」

 お客様がやって来た。

「あ、はい!少々お待ちください!」

 火を点け、鉄板に油をひく。そして、肉、キャベツを鉄板に乗せる。その上に塩こしょうをまぶす。次にそばを鉄板に乗せる。そして水を入れて蒸す。肉が焼けたら全部を混ぜる。しばらくして、そばがほぐれたので、ソースをかけ、ひたすら混ぜる。混ぜ終わったものを別の皿に移し、それを紙皿に載せる。

 ちなみにここまで三分。なんでも河童たちが造った物で、特別製だとか。火力がもの凄いです。

「お待たせいたしました。焼きそば三つです」

 霊夢さんとアリスさんが作ってくれた焼きそばもお盆に乗せ、お客様に渡す。

「……ふぅ……これ、熱くない?」

 霊夢さんが鉄板を指さして言った。

「河童が造った物みたいです。凄いですよね。ちょっと凄すぎますけど……」

 煙で前見えなかったですよさっき。……でも、これで前が見えるようになれば、視界が悪いところにいる敵の位置も分かるかも……!

「ねぇ妖夢。目から炎を出してるところ悪いんだけど、この焼きそば、食べてもいいのかしら?」

「やってやりま……え?何ですか幽々子さ――ちょっと!?やめてください幽々子様!!それ食べちゃダメです!!」

 幽々子様が焼きそばに手を伸ばしていたので止める。これを食べさせるわけにはいきません!

「むぅ……妖夢、少しくらいいいじゃない」

「幽々子様の少しは私にとっての沢山なんですよ!」

 幽々子様の『少し』はちょっと、いや、全然違う。

 

 以前夕食を作っていたら、幽々子様が「少しだけちょうだい」と言ってきたので、少しだけ皿に盛ってあげた。のだが、何を思ったか幽々子様はこっちの皿には見向きもせず、夕食を半分くらい食べてしまったのだ。それも、一瞬で。

「幽々子様、これだけどうぞ――って、あれ!?」

 皿に盛り付け、幽々子様がいた方を見ると、幽々子様の姿はなく、夕食もほとんどなくなっていた時のことは、今でも忘れられません……。

 それで、夕食はほとんどないまま出すことになった。まああれだけ食ったのだから大丈夫だろう――

「妖夢、今日は随分と少ないのね?」

「幽々子様が食べたんじゃないですか!」

「私、『少しだけ』って言ったじゃない」

「!?」

 ――そう思っていた私が馬鹿でした。

 

「これは、次にお客様が来た時に渡すものです」

「そんなこと言ってたら、冷めちゃうわよ」

「じゃあ、冷めたのは食べてもいいですよ」

「いただきます」

「まだ冷めてないじゃないですかぁぁぁっ!!」

 まだ煙出てますよね!?どこをどう見てこれが冷めてると判断したんですか!?

「全く、困ったちゃんねぇ妖夢は」

「……もう、困ったちゃんでも何でもいいです……」

 もう疲れました……。あ、今日の晩ご飯、どうしましょう……?

 




難しいですね、料理のこと書くのって。自分が料理できれば楽なのかもしれませんが……。料理などしたことのない作者が料理の描写を書くとこうなる。
それでは、また次回。
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