今回から、ようやく湖編です。
「楽しみだねー」
「泳ぐぞ!」
「水着と聞いて」
沢山の人がこの中央広場に集まっている。今日ここで、ある会が開かれるのだ。
神奈子が、その人々の前に立った。
「皆様、よくぞここに来てくれた!私の名は八坂神奈子!!守矢神社の神だ!」
「いいぞー!」
「守矢サイコー!」
「ババアー!」
「今さっきババアって言った奴御柱な!!とりあえず、この一週間、目一杯楽しんでくれ!!」
ワーワーと中央広場が喧騒に包まれる。
「それじゃ、あの白狼天狗のところへ並んでおくれ!」
「はーい、ここに並んでくださーい」
分社の横に立っている、白髪の頭の上に山吹風の赤い帽子をかぶり、そして腰から白い尻尾が生えている少女が手を振る。
彼女の名前は、犬走椛。白狼天狗である。
彼女ら白狼天狗が人々を整理している。
「さて、と」
分社の周りに二十人くらい集まったところで、神奈子が右腕を上げた。
そして、親指と中指を合わせる。その後、パチン!と小気味良い音が鳴った。俗に言う、指パッチンである。
次の瞬間、分社の周りにいた二十人が消えた。
周りから、「おぉ!」と感嘆の声が上がった。
「次々来てくださいね!」
椛がまた分社へ人々を集める。
「さて、忙しくなりそうだね」
親指と中指を合わせて、神奈子はそう呟いた。
――――――――――
「よっこら……せっと」
持っていた机を下ろす。「よっこらせ」とか「よいしょ」って無意識の内に出るよね。
後から椅子を持ってきた河童たちがやってきた。
「よいしょ、っと」
ほら。
「仕事はこれで終わりだよ。皆、お疲れ様」
そう言って皆を労っているのは、
「あー、終わった~」
「疲れた~」
「早く帰ってきゅうり食べたい」
河童たちが体を伸ばしながら口々に言っている。
「ねえ影斗。もう私たちの仕事はないんだよね?」
いつの間にか近くに来ていたらしいにとりにそう聞かれた。
「うん、終わり。お疲れ様でした。……にしても、本当に一日で作ってしまうとはな……」
二日前、「更衣室を作ってください」と河童たちに頼んでいたのだ。今目の前にいるにとりは「一日で作ってみせる」と答えたのだが……まさか本当に作るとは思ってもいなかった。……はい。冗談だと思ってましたすみません。しかもちゃんとした造りになってるし。
「それじゃ、私たちは帰ることにするよ。もしかしたら客として来るかもしれないから、その時はよろしくね」
「はいはい、ご来店をお待ちしております」
「ご来……店?」とにとりは呟き、帰っていった。
「なあ影斗。そろそろ始まる時間じゃないか?」
接客担当となっている魔理沙が聞いてきた。
「多分そろそろじゃないか?……あ」
分社から何人かの人たちが出てきた。どうやら、開店のようで。
「いらっしゃいだぜー!」
「いらっしゃいませー!水着をお持ちでない方は、あちらに水着がありますのでご利用ください!更衣室もその先にあります!」
それぞれ挨拶をする。なんか緊張しますね、これ。
とか言ってる間にも、お客さんはどんどんやって来る。ちょ、机とか足りるかな……?
「おー!すげー!!」
「どうやって作ってるんだこれ!?」
「家だー!」
ワッと歓声が上がる。おそらく、水の家を見たのだろう。
水の家とは、そのまんまだが、水で作られた家である。家の形をした水の塊、と言った方がいいかもしれない。ちなみに、早苗の能力で作った。この世界じゃ常識に囚われてはいけないことが分かりました。ありがとうございます。いやまあ、早苗の奇跡は度々目にしている訳だが。
元気に泳いでいる人もいれば、椅子に座ってゆっくりしている人もいる。
いい感じじゃないかな。ちょっと辺りをぶらぶらしてこようかな。
「おぉ、ここも賑わってるね」
俺が来たのは、『さるののさいきょーかきごおり』という店……――というか屋台か――だ。おそらく訳すと、『チルノのさいきょーかき氷』かと思われる。まあ他でもない、チルノと大ちゃんがかき氷を売っている場所だ。
もう賑わってるか。来て早々かき氷とは……さすがかき氷。人々を惹きつける魔性の力を持ってるんだな……。
とまあそんなどうでもいい思考は置いといて。上手くやっていると。
「かき氷、二つください」
「任せなさい!」
「チルノちゃん!?何個入れるつもりなの!?」
「二つ?」
「じゃあなんでそんなに入れ物持っていってるの!?入れ物二つでいいんだよ?」
「え?いや、これで二つ……」
「普通に十個超えてるよ!!うぅ……すみません、お騒がせして……」
上手く……やって……る……?
――――――――――
「さて、そろそろご飯を作り始める頃ですかね?」
時計を見ると、時計の針は十時を指していた。そろそろ、お腹が空く人が出てくる頃でしょう。
一応、幽々子様から目を離さないようにしていましたが、つまみ食いとかは無かったです。よかった。
「あら?始めるの?」
「もうそんな時間?」
幽々子様と霊夢さんがそれぞれ言う。
「ええ。仮に来なかったとしても、置いておけばいいと思いますし」
「すみませーん。焼きそば三つお願いできますか?」
お客様がやって来た。
「あ、はい!少々お待ちください!」
火を点け、鉄板に油をひく。そして、肉、キャベツを鉄板に乗せる。その上に塩こしょうをまぶす。次にそばを鉄板に乗せる。そして水を入れて蒸す。肉が焼けたら全部を混ぜる。しばらくして、そばがほぐれたので、ソースをかけ、ひたすら混ぜる。混ぜ終わったものを別の皿に移し、それを紙皿に載せる。
ちなみにここまで三分。なんでも河童たちが造った物で、特別製だとか。火力がもの凄いです。
「お待たせいたしました。焼きそば三つです」
霊夢さんとアリスさんが作ってくれた焼きそばもお盆に乗せ、お客様に渡す。
「……ふぅ……これ、熱くない?」
霊夢さんが鉄板を指さして言った。
「河童が造った物みたいです。凄いですよね。ちょっと凄すぎますけど……」
煙で前見えなかったですよさっき。……でも、これで前が見えるようになれば、視界が悪いところにいる敵の位置も分かるかも……!
「ねぇ妖夢。目から炎を出してるところ悪いんだけど、この焼きそば、食べてもいいのかしら?」
「やってやりま……え?何ですか幽々子さ――ちょっと!?やめてください幽々子様!!それ食べちゃダメです!!」
幽々子様が焼きそばに手を伸ばしていたので止める。これを食べさせるわけにはいきません!
「むぅ……妖夢、少しくらいいいじゃない」
「幽々子様の少しは私にとっての沢山なんですよ!」
幽々子様の『少し』はちょっと、いや、全然違う。
以前夕食を作っていたら、幽々子様が「少しだけちょうだい」と言ってきたので、少しだけ皿に盛ってあげた。のだが、何を思ったか幽々子様はこっちの皿には見向きもせず、夕食を半分くらい食べてしまったのだ。それも、一瞬で。
「幽々子様、これだけどうぞ――って、あれ!?」
皿に盛り付け、幽々子様がいた方を見ると、幽々子様の姿はなく、夕食もほとんどなくなっていた時のことは、今でも忘れられません……。
それで、夕食はほとんどないまま出すことになった。まああれだけ食ったのだから大丈夫だろう――
「妖夢、今日は随分と少ないのね?」
「幽々子様が食べたんじゃないですか!」
「私、『少しだけ』って言ったじゃない」
「!?」
――そう思っていた私が馬鹿でした。
「これは、次にお客様が来た時に渡すものです」
「そんなこと言ってたら、冷めちゃうわよ」
「じゃあ、冷めたのは食べてもいいですよ」
「いただきます」
「まだ冷めてないじゃないですかぁぁぁっ!!」
まだ煙出てますよね!?どこをどう見てこれが冷めてると判断したんですか!?
「全く、困ったちゃんねぇ妖夢は」
「……もう、困ったちゃんでも何でもいいです……」
もう疲れました……。あ、今日の晩ご飯、どうしましょう……?
難しいですね、料理のこと書くのって。自分が料理できれば楽なのかもしれませんが……。料理などしたことのない作者が料理の描写を書くとこうなる。
それでは、また次回。