東方漆風録   作:零霧

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どうも、零霧です。
久々にほのぼの回が書けた気がします。


第39話 疑惑

 

 

 晩ご飯も終わりお風呂も入り、いつでも寝られるようになった夜。私は神奈子様と諏訪子様と話していた。

「――へぇ。影斗がそんなことをねぇ」

 神奈子様が感心したように言った。

「影斗も、やるときゃやるんだね。少し見直したよ」

 何を話しているのかというと、今日の影斗さんのことだ。神奈子様はその時その場にいなかったからだ。その影斗さんは、もうぐっすりと寝ている。

 ちなみに、影斗さんには怪我一つなく、至って健康体だった。怪我が無くてよかったです。影斗さんは不思議そうにしてましたけど。

「あの……話は変わるんですけど……いいですか?」

「構わないよ。何の話?」

「えっとですね……」

 私は、この頃悩んでいる話を聞いてもらうことにした。

 

 

「「影斗に嫌われてる?」」

「はい……」

 私の悩みとはこれのことだ。影斗さんは私のことを避けている気がする。

「また、どうしてそんなことを思ったの?さっきの晩ご飯の時も、仲良くしていたじゃないか」

 諏訪子様がそう言った。確かにさっきの晩ご飯の時は普通に話せた。ですが……。

「神社では普通に話してくれるんです。ですが湖だと、よく避けられてる気がして……」

「どんな感じに避けられてたの?」

「話してはくれるんですけど……目を逸らされるんです」

 それもとっても気まずそうに。

「そうだねぇ……影斗に早苗のことどう思ってるか聞いてみたら?」

「そ、そんなの出来る訳ないじゃないですか」

 もし「嫌い」なんてきっぱり言われたら……。

「まさかこんなことないと思うけど、影斗に何か嫌なことしたとか」

「それなら……」

 一つだけ心当たりが……。

「何かありそうだね、早苗」

 今まで俯いていた神奈子様が顔を上げた。

「はい……実は……」

 

 

「――へぇ~、そんなことがねぇ~」

「早苗も、なかなか大胆なことするね~」

 神奈子様と諏訪子様はニヤニヤと笑っている。

「ちょっとぉ!笑わないでください!本当に困ってるんですから!」

 お二人ならちゃんと聞いてくれると思って話したのに……。しかもあれは事故です!事故なんです!

「いや、ごめんごめん。冗談だ」

 神奈子様は急に真面目な顔に戻った。いきなり変えられてもびっくりします。

「でも、影斗がそんなことで早苗を嫌うとは思えないけど……」

 諏訪子様もさっきまでとは違い、真剣に考えてくれている。

「とりあえず、明日も早いし、この話は明日にしようか」

 時計を見ると、針は十一時を指すところだった。

「わっ、もうそんな時間なんですね……ふわぁ……」

 あくびが出てしまった。時計を見て遅い時間だったら急に眠くなってしまうのは何故なんでしょうか。

「おやすみ、早苗。また明日」

「また明日~」

「おやすみなさい、神奈子様、諏訪子様」

 私と神奈子様たちの部屋は居間からだと反対方向にある。一周することは出来るのだが、距離的に反対方向になってしまう。ちなみに私の部屋は影斗さんの隣だ。

 部屋に入り、布団を敷く。枕と掛け布団を敷き布団に乗せ、潜り込むようにして入る。

 しばらくすると、睡魔が私を襲い、私の意識は途切れた。

 

 

――――――――――――

 

 

「うーん、よく寝た」

 昨日はすごい早い時間に寝たからな。スッキリ起きることが出来た。

「今日は、確か湖で遊ぶんだっけ」

 今日は折角だし皆で湖で遊びに行くことになっている。

「顔洗って皆のところに行くか」

 もう皆起きてるだろ。というかいつも俺が一番遅いし。

 

 

「おはようございます」

「「おはよう、影斗」」

 神奈子と諏訪子といつもの挨拶を交わし、とりあえず適当な場所に座る。

「影斗、今日は楽しみだね」

 神奈子がそう言ってきた。

「おう、楽しみだな」

「ご飯出来ましたよー。あ、影斗さん、おはようございます」

 早苗がおぼんを持って台所から出てきた。

「おはよう早苗」

 早苗に挨拶を返す。

「さて、じゃあ食べようか」

 それぞれが机に集まる。皆集まったところで神奈子がそう言った。

「「「「いただきまーす」」」」

 

 

「で、どこに集合なんだっけ」

「皆さん各自で集合みたいです。どうしますか?」

「どうしようか」

「それを聞いたんじゃないですか」

「じゃあ行こうか。神奈子と諏訪子呼んでくる」

「じゃあ私は外で待ってますね」

「はいよ」

 俺は立ち上がり、神奈子と諏訪子の部屋へ向かう。大概神奈子の部屋か諏訪子の部屋で一緒にいる。

 神奈子の部屋の襖を開ける。そこには神奈子と諏訪子がいた。

「神奈子、諏訪子、湖行くってさ」

「ああ、分かった」

「うん、分かった」

 二人それぞれの返事をし、立ち上がった。

「早苗は?」

「外で待ってるってさ」

「へぇ。珍しいね」

「珍しい?何が?」

「いや、なんでもないよ」

「そうかい」

 何が珍しいんだろう?まあいいか。……いいよね?

 

 

「まだ誰も来てなかったか」

「ちょっと、早かったですかね……?」

 まだ湖は静かで、セミの声だけがうるさく響いている。

「いや、どうやら他にいるみたいだよ」

 神奈子がそう言った。

「え、どこ?」

「こっちこっち」

 そう言うと神奈子は歩き出した。

「ほら、あそこ」

 さっきの場所では屋台のせいで見えなかった椅子を指差す。その指差した方向を見る。誰がいるんだ?

「あれは……」

「アリスさんじゃないですか」

 たくさんある椅子の一番隅にある椅子にぽつんと一人座っているアリスがいた。こんなに椅子があるのにわざわざ一番隅っこを選ぶとは……。

「おはようございます、アリスさん」

「おはよう、アリス」

「早苗と影斗か。おはよう」

 俺と早苗に挨拶したあと、アリスは神奈子と諏訪子の方をちらりと見た。

「あ、えっと……おはようございます……」

 アリスは、先程とは正反対の、消え入りそうな声で挨拶をした。

「おはよう、アリス、だったよね?」

 神奈子が聞いた。

「あ、うん、合ってる……」

 アリスは相変わらずの消え入りそうな声で言った。

「おはよー、いつも思うけど、そんなビクビクしなくていいよ?食ったりはしないからさ」

 次に諏訪子が挨拶をした。

「うん、ごめん……」

 アリス、なぜ謝った。まあ気持ちは痛いほど分かるが。

「ところで神奈子」

「なんだい?」

「なんでアリスがいるって分かったんだ?」

 ちょうどアリスが座っている席は屋台に隠れて見えなかったはずなんだが。

「あぁ、そんなことかい。別に、何か近くに力を感じたからってだけだよ」

「ほ、ほう」

 俺にはそんな力一切感じなかったんですが。まあ俺は神ではないし。おそらく無理なんだろう。

「次は、騒がしいのが来たねぇ」

「おらおらー!いちばんのりだー!」

 神奈子が呟いた途端、上から大声が聞こえた。この声は……。

「あれ!?いちばんのりじゃない!」

 チルノだった。チルノは地面に降りながら、そう言った。

「チルノちゃ~ん、待ってよー!って、あ」

 後から大ちゃんも飛んできた。

「おはようございます、今日はいい天気でよかったです!」

 大ちゃんがペコッと頭を下げつつそう言った。

「おはよう、大ちゃん。晴れてよかったな」

「えいとー!あたいと勝負しろ!」

「どうしてそうなる。ゆっくりまったり他の皆が来るのを待っておこう」

「それじゃぁ行くぞー!氷符【アイシクルフォール】!!」

「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇっ!!」

 避けようと思ったがもう間に合わない。小さな吹雪が近づいてくる。当たる――!

「……あれ?」

 ――涼しい。

「あー……極楽~」

「影斗さんなんでそんな幸せな顔をしてるんですか」

「いいから早苗も当たってみなよ。めっちゃ涼しいから」

「それじゃぁ、少しだけ……」

 そう言って早苗は俺の椅子の後ろに立つ。

「あ……涼しい」

「だろ?」

「なになに?そんなに涼しいの?」

 諏訪子と神奈子もこっちにやってきた。

「わーホントだ。すっごい涼しい」

「これは下手な扇風機よりいいねぇ」

 いつの間にか大ちゃんも来ていた。アリスもさりげなく左手だけ伸ばしてた。

「はっはっは!どうだ!まいったかー!」

「「「す~ず~し~」」」

 あれ?涼しくなくなった。チルノがスペルを終了したのか。

「チルノ、もう一回!」

「お願いですチルノさん!」

「もう一回やってくれたらこの帽子凍らせてもいいよ!」

「頼む!あと一回だけでいい!」

「チルノちゃん頑張って!」

「み……みんなどうしちゃったの?」

 どうしたもこうしたもない!

「あんなんじゃ俺は倒せないぞ!ほらかかってこい!」

「な……えいとのくせに、なまいきだぞ!!」

「よいしょ」

 俺は弾幕を飛ばした。速度も威力もない、実践でなんか絶対に使えないであろう弾幕。

「こんなもの、凍らせてやるー!雹符【ヘイルストーム】!!」

 そう言って、チルノはまたもや冷気を飛ばしてきた。

「「「す~ず~し~」」」

 

 

――――――――――

 

 

「全く、霊夢は支度が遅いんだぜー」

「いいじゃない。まだ昼前よ」

 ぼやく魔理沙に、そう返す。

「私は朝から泳ぎたかったんだぜ!」

「まだ時刻的には朝よ」

「もう昼近いけどな?」

「なんだっていいわ」

 私は昨日までの売り上げを貰えればそれでいいのよ……。

「ふふっ……お金……」

「な、なんか霊夢が怖いんだぜ……」

 はっ、いけないいけない。ついついお金に心を奪われてしまった。

「お、見えてきたぜ」

 魔理沙がそう呟いた。前を見てみると、確かにあの湖で出来た家が見えた。

「よーし、飛ばすぜー!」

「ちょ、待ちなさいよ魔理沙!」

 もうあと少しなんだからゆっくり行けばいいじゃない……ったく。

 

 

「おーおー、もう全員いるな」

「くそー!なんでだよー!」

「「「す~ず~し~」」」

「で、あいつらは何やってんのよ」

 見れば、チルノが影斗たちに攻撃している。だが影斗たちは幸せそうな顔をしている。もしかして、暑さで頭がおかしくなっちゃったのかしら?

「何やってんのよ」

「す~ず~……あ、霊夢。おはよう」

「普通に返さないでよ。右手、凍ってるわよ」

「右手が?……ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」

 影斗が立ち上がって叫んだ。

「こらえいとー!にげるなー!」

「ちょ、待って、勘弁してください!!情けを!せめてこれが溶けるまで情けをください!!」

「くらえ!凍符【パーフェクトフリーズ】!!」

「ちょ、待てとあれほど――」

 影斗は何かを最後まで言い切る前に凍った。

「あたいの勝ちだー!!」

「影斗さん!?しっかりしてください!!」

「落ち着くんだ早苗!まだ慌てるような時間じゃない!!」

「そうだよ!きっと溶けてまた騒ぎ出すから大丈夫だよ!!」

 早苗が影斗をゆさゆさと揺らしている。それを神奈子と諏訪子が止めている。ヘタして割れたら大変だものね……。

 

 

 それから二十分くらいしたら、影斗を閉じ込めていた氷は溶けた。

 

 




昔、と言っても二年くらい前の話ですが、『雹』を『あられ』と読んでました。今思えば変な話ですがね。

そういえば、前回のあとがきで泳ぐって言ったのに結局泳がなかったな……。だから軽々しい予告はするなと言ったんだ!

それでは、また次回。
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