目を開くと、どこか見慣れたような天井が目に映った。
「あれ、ここ……」
寝ぼけ眼を擦りながら布団から出て、ドアを開ける。廊下を歩き、階段を下りる。
気のせいかな、廊下が近いような気がする。
一階の廊下をしばらく歩き、ある部屋に入る。
そこには、トントン、と一定のリズムで何かを刻んでいる女の人がいた。
俺に気付いたのか、そのひとは俺の方を振り向いた。何故か顔は見えない。その人は、こう言った。
「おはよう、影斗」
顔は見えないけど、俺は何故かその人を――
「おはよう、母さん」
――母さんと呼んだ。
――――――――――
目を開くと、薄暗い空が目に映った。
まず上体を起こし、次に立つ。そして大きく伸びをする。今気付いたのだが、どうやらブルーシートの上で寝ていたらしい。
一体どれくらい寝てたんだ俺……。もう夕方……いや夜じゃんか……。そもそもなんで寝てたんだっけ? 何してたっけ? そうだ、湖だ湖。湖に遊びに来て……あれ、それから何してたんだっけ?今日のことなのに何も覚えてないぞ。
「……というか、皆は?」
草原にも湖にも、誰もいない。 帰っちゃったの? 何それ酷くない?
「……クスクス」
どこからか、女の人であろう声が聞こえた。 なんだ、いるじゃん。帰ったのかと思ったよ。
改めて辺りを見回してみるが、やはり人の姿はない。どこで皆話してんだ?
「……クスクス」
確かに誰かの声は聞こえる。でも姿は見えない。声が聞こえるんだから、近くにいると思うんだけど……。そもそもこんな草っ原に隠れるようなところなんてないよな?
「おーい!起きたんだけど!!皆さんどこですかー!」
大声を出して気付いてもらおうと考え、大声を出す。
「…………」
だが聞こえるのは、ザワザワ、と風が周りの木々を揺らす音だけだった。
「……気付かなかったのかな」
そう思い、再度大声を出してみることに。
「すみませーん!俺だよ、俺!!どこですか皆さん!」
なんかいつぞやか流行った詐欺の手口みたいだなこれ。 ちなみに返事はない。
「あの!寝ててすみませんでした!!謝るんで出てきてくれませんか!」
返事はない。
「出てきてくださいお願いします!」
返事はない。
「出てきてくれませんかね!?」
「……クスクス」
返事があった。 いや返事って言えるのかこれ。
「さっきから笑ってる人誰だよ?」
「……ねぇ」
さっきからクスクス笑っている人――クスクス女でいいかな――が初めて喋った。
「……あなた、一人?」
俺に聞いているのだろうか。
「え、うん……どういう訳か皆いなくなってさ……」
「……へぇ、そうなんだ」
しばらく沈黙が続いた後、クスクス女さんがこう言った。
「……ねぇ、一緒に遊ばない?」
「へ?あー……いいよ?」
「やった!……じゃあ、何して遊ぶ?」
何して遊ぼうかなぁ……ってそうじゃないよ俺。一番気になってることがあるだろ。
「あの、遊ぶのはいいんだけどさ」
「……ん?何?」
「あなた?君?は、どこにいるんですかね?出てきてくれないと、遊べないよ」
周りの木々に隠れてると考えても、俺結構木々から離れてるから、こんな近くから声が聞こえる訳ないと思うんだけど……。
「……何言ってるの?」
「え、いやだから」
「……私、ずっとあなたの前にいるよ?」
「……え」
そう言った直後、目の前から手が俺に迫ってきた。 え、なにこれ――
「おはよう、影斗」
反射的に瞑っていた目を恐る恐る開けると、目の前にはやはり手が――
「ぎゃぁぁぁっぁぁぁ!?あああぁぁぁっ!?」
夢!そう夢!!そういやさっきも何か夢見てた気がするけどこれも夢!だから落ち着こう俺!
「ちょ、うるさ……っ、静かにしなさいったら!」
「ぎゃぁぁっああぁばはっ!?」
頭を叩かれた。 痛い!?夢じゃない!?
「うるさいわね……そんなに驚くことかしら?」
「お願いです殺すの一日でいいんで待ってもらえませんかねちょっと色々やることあるかもしれないんで…………は?」
今の声聞いたことあるぞ?
頭を上げてみると、そこにはスキマから上半身だけを出し、クスクスと楽しそうに笑っている紫がいた。
「影斗ってホント面白いわね~。見ていて飽きないわ~」
「今度藍にでも頼んで紫だけ飯抜きとかしてもらおうかな……それとも靴に画鋲でも仕込んでもらおうかな……」
「どっちも地味な嫌がらせね……。とりあえず、面白いもの見せてくれてありがとね」
「はいはいどーいたしましてー。ところで他の皆はどこ行ったの?帰ったの?」
「面白かったわよ大声で皆を呼んでるの。まあ一番面白かったのは姿が見えない怪しい奴と当然のように話していたところね。あ、いやでもやっぱり叫んだのが一番……」
「ねえその話続ける?もういいだろ?」
「そうね。後で藍たちだけにでも話しておくわ」
「後世に語り継ぐなっての……で、他の皆は?」
「なんか色々買いに行ったわよ。ここで打ち上げするんですって」
「ここで?ゴミとかやばくない?絶対皆酔っ払ってそのまま放ったらかしで帰るだろ……」
逆にそれ以外もう考えられない。
「あ、その点はおそらく大丈夫よ。酒は買わない、って言ってたから」
「ならまだ大丈夫……か?」
大丈夫だと信じよう。
「萃香が残念そうにしてたわ」
「あー……だろうね」
体が酒で出来てるんじゃないかってくらい酒飲んでるからな……逆にあの人(?)が酒飲んでない姿を見たことがない気がする。
「まあ……そろそろ帰ってくるんじゃないかしら?」
「そうかい」
「あー、重い。ったく……紫が来ればスキマに放り込んであっという間だったのに」
霊夢が大きい袋を持って空から降りてきながらそう言った。赤い巫女服に大きい袋を担ぐその姿はさながらサンタクロース……どうでもいいけど幻想郷にクリスマスという行事はあるのだろうか。プレゼントなら毎年置かれていたが。
「あ、影斗、起きたのね。紫に何されたの?」
「えっとな……って、なんか紫に何かされた前提みたいな言い方だな」
「だって、紫が来ればスキマに食材放り込めばめちゃくちゃ楽だったのに紫が来なかったのは、紫が「影斗に面白いことするから残るわ」なんて言ったからよ」
紫てめぇ……。
「ねぇ、何されたの?」
興味津々な様子で、霊夢が聞いてくる。目輝いてんぞ。
「霊夢、どうせなら全員帰ってきてからにしましょう?ね、いいでしょ?」
「まあ、そうね。あいつら何チンタラやってんのよ……」
「霊夢お前……人に荷物持たせといてその言い方はないぜ……」
疲れたような顔で霊夢が持っていた袋の二倍はあるだろう大きさの袋を持って魔理沙が箒に乗って降りてきた。 箒がミシミシ、と嫌な音を立てている。
「あ……影斗、起きたのか……おはようだぜ……」
「お、おはよう……と言っても、もう夜なんだけどな……お疲れ様です」
「本当にお疲れだぜ……」
その後、他の皆もぞくぞくと帰ってきて……チルノが気絶して帰ってきたのと、妖夢が霊夢が持ってきた袋の五倍ほどの大きさの袋を持って帰ってきた以外、特に何も問題はなく、打ち上げは始まった。
どうも、お久しぶりです零霧です。ちょっと長くなりそうなので後書きに避難しました。
更新遅れて申し訳ないです……。約一ヶ月ぶりの更新……失踪したと思われてもしょうがなさそうな空き期間ですね……。
実は引っ越しまして……準備だの片付けだの色々すったもんだありまして……なかなかPCに触ることが出来ず、こうなってしまったわけです。
これからはまた(不)定期的に更新したいと考えておりますので、また見ていただければ幸いです。
それでは、また次回。