東方漆風録   作:零霧

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第51話 日常が一番かもしれない

 

「それじゃあね、皆さん。楽しかったわ」

 紫がスキマの中に消え、スキマを閉じた。

「じゃあ私たちも、この辺で。妖夢、帰ったらご飯が食べたいわ」

「まだ食べる気なんですか!? あ、皆さん、今日はありがとうございました!」

 幽々子はまだ食べるつもりらしい。妖夢は作ってあげるんだろうか。

「今日は誘ってくれてありがとう。いい思い出になったよ」

「またなー!」

 魔理沙と霖之助は、霖之助が飛べないから、歩いて帰るらしい。

「……あ、あのさ、霖之助」

「どうしたの、魔理沙?」

「私の箒に、乗せてやっても、いいぜ?」

 魔理沙の顔がやけに赤い。熱でもあるんだろうか。

「いいのかい?落とさないでくれよ?」

「落とすわけないぜ!私の飛翔を舐めるなよ!」

 結局、魔理沙と霖之助は、箒に乗って帰った。

「それじゃあね。またお賽銭よろしくね」

 霊夢はお賽銭をせびってから飛んでいった。泥酔している萃香を担いで。

「それじゃ。楽しかったわ」

 アリスは魔理沙と霖之助が飛んでいった方向へ飛んでいった。何故一緒に帰らなかったんだろう……。まあ大体察しはつくけど。

「じゃーねー!」

「今日はありがとうございました。楽しかったです!」

 チルノと大ちゃんも飛んでいった。住んでるところはすぐ近くらしいし、まあ大丈夫だろう。

 そして、最後に残った俺と早苗と穣子さん。

「……えーと、この二人を運んで帰るわけだけど」

 萃香と同じく泥酔している神奈子と諏訪子を見下ろして呟く。

「それしかなさそうですね……」

 はぁ、とため息を吐く早苗。

 どっちがどっちを運ぼうか……。そう考えていると、

「あのさ」

不意に穣子さんが口を開いた。

「分社さえ作れれば、守矢神社まで連れてってあげるよ?」

 ……なるほど、その手があったか。

 その辺の手頃な石を積み重ね、社のような形にする。

「……影斗さん、雑ですね」

「え、そう?」

 割と自信作だったんだけど。

「まあ、多分これでも大丈夫よ。分社に近付いて」

 穣子さんに言われた通り、分社に近付く。あ、危ない。神奈子と諏訪子忘れてた。

 ……どう持てばいいんだろう。

 早苗は諏訪子を横抱き――いわゆるお姫様抱っこ――している。じゃあ俺も神奈子を横抱き……出来るか?

 恐る恐る抱き上げる。意外にも持ち上がった。よかった。持ち上がらなかったらどうしようかと思ったよ。……酒臭いな。

 本人に聞かれたら怒るかもしれないことを考えて、再度分社に近付く。

 穣子さんは、全員揃ったかを確かめるように、俺と早苗を見た。

「……はっ!」

 穣子さんがそう言った直後、一瞬視界が真っ白になった。

 ――そして気が付くと、見慣れた守矢神社があった。

「穣子さん、ありがとうございます!」

「ありがとうございます」

 一体どういう原理なんだろう。神力を込めればいいのかな?

「いや、そんなお礼を言われるようなことはしてないわ。それに、私にとっても近くなったし。 今日はありがとう。それじゃあね」

 穣子さんは手を振って、階段を降りていった。

「さて、諏訪子様と神奈子様を置きに行きましょうか!」

「あ、そうしよう」

 早苗と、諏訪子と神奈子の部屋へ向かい、二人分の布団を敷き、神奈子を片方の布団に置いた。

 さて、俺も寝ようかな。

 

 歯を磨き、早苗と別れ、自室に入る。布団を敷き、腹が冷えないように掛け布団を掛ける。

 さて、俺も寝るか。そう思い、目を閉じる。

「…………寝れない」

 何故か眠れない。疲れはたくさん溜まってるはずなのに。

 いやいや、そんなすぐに眠れる訳ないじゃない。目を瞑っていれば、いつか寝れるよ、うん。

 再度目を閉じる。

「……………………寝れない」

 どうしたってんだ。眠気すら襲ってこないんですが。なんでこんなに目が冴えてるの?

「外にでも出るか……」

 襖を開け、縁側に座る。しばらくすれば、眠気も襲ってくるでしょう。

 昼とは違い、少し涼しく、快い気温だった。どうでもいいけど満月が綺麗だ。

 しばらくしても、眠気は来なかったが、スーッ、と襖が開く音がした。

「どうしたんですか? 影斗さん」

「……あ、ごめん。起こしちゃった?」

 出てきたのは、早苗だった。そのまま早苗は俺の横に座った。

「いえ、私もなんだか眠れなくて」

「あ、そうなの?」

 そういうことなら安心した。

「影斗さん、今日は楽しかったですね!」

「あー……うん、楽しかった」

 今日起きたことを思い出す。

 色々大変なことも起きたが、楽しかった。ところどころ記憶が曖昧だけど。 肝試しはもう二度としない。するもんか。 あ、肝試しと言えば。

「そういえばさ、早苗ってどこにいたの?」

 早苗だけではなく、紫と幽々子もだ。何故か、俺と妖夢が必死で逃げているのを知っていたけど……。

「私も森の中にいましたよ」

「違う、そうじゃない」

 森のどこにいて何をしていたのか、ともう一度聞いた。

「私は、驚かしのプロの紫さんと幽々子さんの作戦で、天候を操ってました。影斗さんと妖夢さんの時は、風を操りました」

 あのやけに冷たい風か。あれ早苗だったのね。アリスとチルノがやけに泥だらけだったのも早苗のせいだったり?

「そのプロの紫と幽々子は?」

「幽々子さんは黒髪の女の人です。紫さんは幽々子さんをスキマで瞬間移動させたり、地面から手を出したりしてました。あの二人、ノリノリでしたよ」

 お二人さん、もうちょっと自重してくれてもよかったんだよ? あの幽霊、幽々子だったんだな……。自分の目の前で必死こいて逃げてるんだもんな……そりゃ嫌でも見えるか。

「幽々子さんも言ってましたけど、影斗さんと妖夢さんの仲良しなところが見れてよかったです」

「……え?」

「もちろん見えましたよ。私だってあの森にいたんですから」

「あ、そうなんだ……」

 確かにいきなり手を引っ張って走ったのは申し訳ないと思ってる。でもあのまま妖夢が立てなかったらどこかへ連れて行かれるか分かったもんじゃない! そりゃ今は幽々子だって分かってるから安心かもしれないけど、あの時はホントに必死だったんだ!

「あれは俺も妖夢も被害者だと思う」

「そうですか~?割と満更でもなかったような気がするんですけど……」

 早苗には俺と妖夢の必死さが伝わっていないらしい。妖夢の手を引っ張ってるのを森を出てから気付いたほど必死だったのに。

「もう一回やってみたいですね、肝試し」

「もう勘弁して」

 微笑しながらなんてことを言うんだ。今は早苗の笑顔が怖く見えた。いや早苗は普通に笑ってるだけなんだろうけど。それに、早苗が怒った時の笑顔はなんか黒い。

「私は、次は驚かされる側をやりたいです」

「俺は酒飲んで眠る側をやりたい」

 その時だけは浴びるほど飲んでやろう。 ……その前にきっと呑まれてるな。

「影斗さんもするんですよ。しなかったら恨みますからね」

「それはしないとまずいな……」

 化けて出られたりしたらたまったもんじゃないよ。

 その時、いきなり早苗が顔を伏せた。

「……早苗?」

「……あ、すみません。眠くなってきたみたいです」

 顔を上げて、早苗はそう言った。そう言われれば、俺もなんだか眠くなってきたような……。

「すみません、お先に失礼します。影斗さんも早く寝てくださいね。体に悪いですから」

「俺もそろそろ寝るよ。付き合わせてごめん」

「それはこっちのセリフですよ。おやすみなさい、影斗さん」

「おやすみ~」

 今日の二度目の「おやすみ」を告げ、早苗は部屋に戻った。

 俺もあと少しぼーっとしたら寝よ。

 

 

――――――――――

 

 

「マジかよ……」

 あれから部屋に戻ったのだが、結局全然眠れなかった。気合を入れてなんとか眠った。気合を入れて眠るなんて初めての体験だよ……。

 そして起きて、ふと時計を見ると、時計の針は五時を指していた。俺の記憶が正しければ、最後に時計を見たときは十二時。

 それからもゴロゴロしたり本を読んだりをしていたので、一、二時間くらいは経っているのではないだろうか。

 そこから「いい加減寝なきゃまずい」と思って、気合を入れて頑張って寝るまでに三十分くらいかかったとしたら……下手したら三時間も寝てないことになる。

 これだけしか眠ってないのに睡魔が襲ってこない俺はどうかしてしまったのだろうか。

 二度寝も出来る気がしないため、諦めて外に出る。まだ太陽もあまり仕事はされていないようで、涼しい風が吹いている。

「影斗さん、おはようございます」

 体を伸ばしていると、横から声をかけられた。

 体を伸ばしたままそちらを見てみると、早苗が立っていた。

「あ、早苗。おはよう」

 伸ばしていた腕を下ろし、早苗に挨拶した。

「影斗さん、やけに早いですね。……もしかして、あれから寝てないとか?」

「寝てないことはないよ、とんでもなく短い睡眠時間だったけど」

「大丈夫なんですかそれ……」

「大丈夫だと思うよ……。ところで、早苗はこれから何かするの?」

 いつも早苗はこの時間に起きているらしい。すげぇ。対する俺はこんな時間に起きたことはほとんどない。起きても二度寝だ。だせぇ。

「私はこれから、神社の掃除をするつもりです」

 早苗は、朝、昼、夕方に神社の掃除をやっている。朝やっているところを見たことがなかったけど、こんな早くにやってたのか……。

「それ、手伝わせてもらっていい?」

「え? いいんですか?」

「特に何もすることがなくて暇なんだ。二度寝も出来そうにないし」

「ホントですか? ありがとうございます!」

 

 神社の掃除は、守矢神社が広いため、予想以上に時間がかかった。

 俺が色々と足を引っ張ってしまったかもしれないが、早苗は「影斗さんのおかげで早く終わりました」と言ってくれた。ありがたかった。

 早苗が朝飯を作り終わったと同時に、俺が何度呼んでも起きなかった神奈子と諏訪子が飛び起きたのはびっくりした。起きてたんじゃないだろうな……。

 

 結局、それからはいつものように過ごし、掃除のおかげか、ぐっすりと眠ることが出来た。

 

 あ、そういえば、新聞にアリスが載ってたんだ。アリスがそうそう見せない笑顔で水遊びらしきものしててさ。なんだったんだろうね?

 

 




どうも、後書きに避難してきた零霧です。
これで、なんとか湖水浴場編は終わりです。もうあまりこの話関係なさげに見えないこともないですけど……。
何の気なしに目次を見てたら、これ、第29話から始まってたんですね……。それも八ヶ月もずるずると引っ張ったんですね……。話数的にも、時間的にも、この小説最長ですよ、異変でもないのに。
次は、また少しだけオリジナルになるかもしれないし、異変になるかもしれません。
それでは、また次回。

-追記-
文章を追加しました。申し訳ございません。
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