「~♪」
鼻歌まじりに、早苗は毎日の習慣である境内の掃除をしていた。
「さて、こんなところでいいでしょう」
手の甲で額の汗を拭う。まだまだ暑いな、と思いながら箒を片付けようと倉庫に向かう。
その途中で、さっきまで光り輝いていた太陽が陰り、辺りが暗くなった。
雨かと思い、空を見上げる。空は、真っ赤な雲に覆われていた。
「なに、これ……?」
早苗の目が驚きで見開かれた。これが異変だと理解するのに、そう時間はかからなかった。そして早苗は、今日外出した影斗のことが気になった。
「影斗さん……」
確かアリスと魔法の材料集めをすると言っていたはずだ。
アリスさんと一緒なら、大丈夫だと思いますけど……。
「神奈子様、諏訪子様、すぐに戻ります!」
箒をその場に投げ捨てて、早苗は守谷神社を飛び出した。
―――――――――――――
「うーん」
しまった。迷った。
魔法の森をアリスなしに歩くんじゃなかった。これからは気を付けよう……。
「それになんか頭も痛いし」
風邪でも引いたかな……。
そんな感じで勘のおもむくままに歩いていると、
「ねぇねぇ、おにーさん」
どこからか声がした。辺りを見回してみるが、どこにも人影は見えない。
「あー、私たちのことは気にしないで。少し、おにーさんに用があるの」
きょろきょろしてるのをどこかで見ているのか、幼い声がまた聞こえた。もしかして、また紫か?
「用って?」
「あのね、この先で氷の妖精が暴れてるの。それで皆迷惑してて……。おにーさんが、あいつを止めてくれたら嬉しいんだけど……」
「氷の妖精、って……チルノのこと?」
「えと……え? あ、合ってる? ええ、その、ち、えと、ち、……そいつよ!」
何をやってるんだあいつは。そういえば、チルノは妖精の中じゃ強い力を持ってる、っていつだったか聞いたな。大ちゃんと一緒になんとかすればなんとかなるだろ。多分。
「あ、そうそう! おにーさん、今道に迷ってるでしょ?」
なぜばれたし。
「うん、まあ……恥ずかしながら……」
「もし私たちのお願い聞いてくれたら、道案内してあげる!」
おぉ、これは嬉しい話だ。
「よし、その話、乗った!」
「ほんと!? おにーさん、ありがとー!」
無邪気に喜ぶ声が聞こえる。相変わらず姿は見えないけど。
「それじゃあ、よろしくね! 氷の妖精は、ここをまっすぐ行くとすぐに見つかると思うよ!」
「へぇ、分かった」
「頑張ってねー!」
後ろから声援を受けて、俺は歩き出した。
「あ、ごめん、やっぱりそっちじゃない」
「えっ」
上から木の実が降ってきた。出鼻をくじかれた。
影斗がつい先程までいたところ――空が赤いことを除けば、いたって普通の森の中。
人影もなく、木がざわざわと揺れている。
だが何故か、どこからかで話している三つの声がする。
「……行った行った。やったね、こんなに綺麗に成功したの初めてじゃない!?」
「まだ成功はしてないけどね」
「細かいことはいいのよ! まったく、少しは喜びなさいよね!」
「ワーイヤッタァヨカッタネー」
「ムカー! もういいよ、行こ、スター!」
「まあ、今回のイタズラはサニー以外暇だったからね、ルナがこうなるのも無理はないよ」
「むー、じゃあ次のイタズラは頑張ってよね! とりあえず、行くよ皆!」
「もう行くの? 早くない?」
「馬鹿ね、あいつが少しでも体力を回復させる前にやっつけなきゃダメでしょ!」
「いつもながら思うけどやり方汚いよね」
「頭を使ったやり方よ。それにそんなこと言ってるけどなんだかんだルナも乗り気でしょ?」
「……まあ、そうね」
「まあ、今回の作戦のカギは、あの人間さんね」
「そうね、どこまで闘ってくれるか……」
「そもそも闘えるのかなあの人?」
「腰に大層な刀ぶら下げてたし、まあまあいけるんじゃない?」
「もー! 私を置いてけぼりにして議論しないでよ!」
「「あ、ごめんサニー」」
「素で忘れてたの!?」
「うん」
「えっ」
「冗談よ、冗談。まあ、何はともあれ、見に行きましょうか」
「なんだかんだで一番楽しんでるのルナだよね」
「私もそう思う」
「…………い、いや私はサニーが行きたそうにしてるから……ほら、行くんでしょ?」
「やれやれ、ルナ様のご命令とあらば聞かざるをえないね、ねぇスター」
「ルナ様のためにー」
「……帰りたい……」
そして場所は移って――
「うぅ、寒……」
「そりゃ氷の妖精が闘ってるからね」
「にしたって寒すぎない? この辺の木ほとんど凍ってるし……。息も白いよ、ほら」
「確かにちょっと寒すぎかもね……。あ、氷の妖精いたよ」
「あ、ほんとだ」
「よし、近付くよ!」
「サニー、近付くのはいいけど、能力解除してないよね?」
「大丈夫、そんな間抜けなことはしないよ」
「ならいいけど」
「おー、やってるやってる」
「ちょっと、あの人間さんまずくない? あちこち凍ってるよ?」
「それに、氷の妖精の力もおかしいよ。何あの猛吹雪。もうここだけ氷の世界だよ」
「少なくとも、もう森とは呼べないね」
「……」
「……どうしたのサニー? 珍しく静かね」
「ねぇ、あれ……」
「「あれ?」」
「氷の妖精の友達の……大ちゃんじゃない?」
「大ちゃんもあちこち凍ってない?」
「もしかして、この闘いに巻き込まれたんじゃない? あの人間さんも、氷の妖精のことで手一杯で、大ちゃんを助ける余裕はなさそうよ」
「そんな……!」
「ちょ、サニー、どこ行くの!?」
「決まってるでしょ! 大ちゃんを助けに行くのよ!」
「無茶だよ! 私たちが行ったところで、大ちゃんの二の舞になるだけだよ!」
「行くにしても、こんな猛吹雪の中を突っ切るのは無茶でしょ。回り込まなきゃ」
「え、ルナまで何言って……」
「あ、その発想はなかった」
「ホントにいつも勢いだけなんだから……。行くわよ、巻き込まれないようにね」
「わ、私も行かなきゃ、ダメ……だよね?」
「何言ってんの、当たり前でしょ。私たちのイタズラは、最後まで三人でやるものでしょ」
「なんてったって、光の三妖精だからね」
「そう言われちゃ、やるしかないじゃん……」
「よし、それじゃ……行こう!」
この小説ですが、これからはまたぼちぼち書いていくつもりです。ホントのホントに不定期更新になると思いますが……。
それでは、また次回。