やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。Delusion story 作:神納 一哉
葉山・由比ヶ浜アンチ・ヘイト
葉山・由比ヶ浜嫌われ
雪ノ下雪乃アンチ
奉仕部アンチ
独自設定
雪ノ下は葉山が自分に懸想していると思っている。
雪ノ下は葉山が嫌い。
由比ヶ浜は感情的になりやすい。
まあ奉仕部・葉山アンチ・ヘイト設定で良くある、「雪乃ちゃんを手に入れるためにヒキタニを利用して貶めてやる」といった葉山のイメージを、雪ノ下が持っているという設定です。
あくまでイメージだけ。実際にそんなことを考えてる葉山はこの話には居ません。
アンチ・ヘイト設定で書いてみようと思って書いただけの雑文です。気楽に読んでください。
アンチ・ヘイト作品が嫌いな人、原作至上主義の人、キャラ崩壊が嫌いな人はブラウザバック推奨です。
「……先に戻るわ」
冷たい声音でそう言うと、雪ノ下は一瞬だけ俺を睨んでから背を向けて歩いて行った。その後ろ姿はいつもと変わらず、凛とした雪ノ下雪乃だった。
残されてしまった由比ヶ浜は力なく笑う。
「あ、あたしたちも、戻ろっか」
無理して明るく振舞うときの声だ。わかりやすくて助かる。
ここで由比ヶ浜に同意して戻ることを選択するのが無難なのだろうが、今の俺にそれを選ぶことは出来なかった。
「いや、先に戻ってくれ。俺はもう少し頭を冷やしてから戻る」
「頭を冷やすってことはさ、悪かったって思ってるんだよね?なんで、あんなことしたの?」
「あれが一番効率が良かった。それだけだ」
「効率とか、そう言うのじゃなくて…」
由比ヶ浜は両手をぎゅっと握りしめると、真っすぐに俺を見て言う。
「ああいうの、やだ」
「解決を望まない奴もいて、現状維持がいいって奴もいた。みんなに都合よくは出来ないだろ。だから妥協できるポイントを探すしかない。時間もなかったしな」
「みんなも変わらないで明日から過ごせるかもしれないけど、人の気持ち、もっと考えてよ。なんでいろんなことがわかるのに、それがわかんないの?」
そう吐きだすと、由比ヶ浜は俺に背を向けて走り去って行く。
青白い光を放つ竹林のトンネルは凍えそうなほどに冴え冴えとしている。
空を見上げると、月が雲に隠れて見えなくなっていた。
風が竹林を揺らして涼やかな音を奏でる。
そこに小さな足音が混ざったのは、由比ヶ浜が居なくなってから暫くしてからのことだった。
「彼女は、気付かなかったのね」
「まあ、な。『人の気持ち、もっと考えてよ』だとさ」
「私はあなたのやり方がとても嫌いとしか言っていないのにね。あなたを否定したわけじゃないのに、彼女には私があなたを否定したように見えたのかしら。まあアイコンタクトなんてあなたとしかしたことなかったから仕方がないかもしれないけれど」
小さく、本当に小さく微笑みながら、雪ノ下は真っ直ぐに俺を見た。
「それで、なぜあんなことをしたのか、説明して貰えるのよね?
「なんだその嫌な名前は」
「まさか、
「いやいやいや、それは無いから。簡単に言うと、今回の依頼は3つあったわけだ」
「戸部くんの他に葉山くんから依頼があったとは思っていたけれど、もう一つの依頼があったのね」
「葉山の依頼に気付いていたのか」
「ええ。あの男は昔から変わらないもの。おそらくグループの人間関係がおかしくならないように戸部くんの告白を止めてくれとでも依頼してきたのでしょう?自分で戸部くんの依頼を奉仕部に持ってきたくせに」
「何故葉山がそうしたのか見当が付けば、自ずと3つ目の依頼もわかると思うのだが」
「そうね。戸部くんの告白の阻止を頼まれたとかかしら?」
「まあ正解。戸部には告白のサポート、海老名さんには告白の阻止を頼まれた葉山は、奉仕部と言うか俺に事態の打開を求めてきたってことだな」
「自分のグループの問題を比企谷くんに押し付けて、漁夫の利を得ようとしたってことね。まさかまだ私に懸想しているのかしら。
「どういうことだ?」
「比企谷くんを悪者にして、私に取り入ろうとしたのじゃないかと思うのだけれど」
「
「…ええ。本当に」
ぽしょりと呟くと、雪ノ下はそっと俺の右手に自分の左手を合わせて、きゅっと握った。
「少しだけ、こうしていてもいいかしら?」
「別に構わんが」
「ありがとう」
そう言って微笑んだ雪ノ下はとても儚く見えて、思わず引き寄せて抱き締めてしまいそうになったが、代わりに左手を固く握りしめることによってその衝動を抑え込んだ。
「比企谷くん」
「なんだ?」
「もう、あんなことはしないで。私、虚言は嫌いなの」
「善処する」
「だから、早急にさっきの虚言を消してしまう必要があると思うのだけれど」
「………は?」
「それで、今、この状態というのは、ロケーションとしては最適だと思うのだけれど」
雪ノ下を見ると、その顔は真っ赤に染まっており、視線は伏し目がちではあるが俺に向けられている。
雪ノ下の言う『虚言を消してしまう必要がある』とか、『最適なロケーション』っていうのは、つまり、そういうことなのか?
「……雰囲気はとても素敵ってやつか?」
「ええ。そうね」
雪ノ下に最終確認をすると、俺は右手に力を込めた。
「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」
「はい。よろしくお願いします」
それから俺達は真っ直ぐにただお互いを見つめ合い、やがてどちらからともなく瞳を閉じて、お互いの距離が零になった。
× × ×
「ちょっ!?ゆきのん、どういうこと!?」
昼休みの教室内に由比ヶ浜の声が響き渡った。
「どういうことも何も、見た通りなのだけれど」
小さく首を傾げながら雪ノ下が由比ヶ浜に返事をする。その仕草はとても可愛らしい。
「だから、なんでゆきのんがヒッキーを呼びに来て、二人揃って教室を出ていこうとするの?」
「比企谷くんと一緒に部室で昼食を食べるためよ。由比ヶ浜さんは今日は三浦さんたちとお昼を共にするのでしょう?」
「それはそうだけど、ゆきのん、今までヒッキーと昼食を食べるなんてことなかったじゃん!」
「そうね。だから今日は迎えに来たの。比企谷くんの様子を見るためでもあったけれど、この様子だと心配しなくても良かったみたいね」
教室内を見回してから俺に微笑みかける雪ノ下。由比ヶ浜の後ろから葉山が苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべて俺を見ているが、そんなの知ったこっちゃない。海老名さんは俯いてるし、三浦は葉山を見て怪訝そうな顔をしている。
「何で?ヒッキーのこと嫌いになったんじゃないの?」
「あら?由比ヶ浜さんは比企谷くんのことが嫌いなの?」
「嫌いとかそういうんじゃなくて…」
「由比ヶ浜さんは
「それって、どういうこと…」
「葉山くんなら教えてくれると思うわ。行きましょう比企谷くん。早くしないとお昼御飯が食べれなくなってしまうわ」
「おう。雪ノ下の弁当、楽しみだな」
「ふふ。期待してもらっていいわよ」
楽しそうに言いながら、俺は雪ノ下と連れ立って教室を出た。
「なあ、俺の様子を見に来たって言っていたけど、どういうことだ?」
「文化祭の時のようにあなたの悪評が流れていたら葉山くんを抹殺しようと思っていたのだけれど、あなたの悪評は流れていなかったから悪いとは思っているようね。変な顔をしていたのは、私とあなたが親密になったからかしら?」
「修学旅行のことはあの時だけで済まそうとしたんだろう。ありがたいことだけど」
「もっともあなたの悪評が流れていたら、ただでは済まさなかったのだけれど」
「おいおい、お前に悪評が着けられるようなことは無いようにしてくれよ」
「大丈夫よ。私、強かだもの。その言葉、そのままあなたにお返しするわ。あなただけが泥を被るようなやり方は今後一切認めませんからね」
「……ありがとうな」
「どういたしまして」
特別棟の階段を並んで上りながら、俺たち以外の姿が無いことを確認して俺は隣に居る雪ノ下の手を握る。
幸い振り解かれるようなこともなく、それどころか握り返されたことに感動を覚えながら、俺達の始まりの場所へと進んでいくのであった。