やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。Delusion story   作:神納 一哉

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なんか批判が多かったんで、アンチ無しのパターンで書いてみました。

7巻255P途中からのDelusion storyです。

原作至上主義の人は読まないでください。ブラウザバック推奨。


修学旅行Delusion もしも比企谷八幡と雪ノ下雪乃が信頼関係を築いていたら Ver.2(八雪)

「一応、丸く収める方法はある。時間が無いから実質それしか方法が無いが」

 

「却っ下」

 

雪ノ下は文化祭の時と同じように花のような笑みを浮かべてそう言うと、鋭い眼差しで俺を睨みつけた。

 

「あなた、また泥を被るつもりでしょう自傷谷(じしょうがや)くん。いい加減、そういうのは止めなさい。由比ヶ浜さん、よく覚えておきなさい。この男が解決策があると言って目を逸らしたときは、自らを犠牲にして何かをしようとしているときよ」

 

「自らを犠牲にするって、何をする気なのヒッキー!」

 

「少し落ち着けお前ら」

 

由比ヶ浜を宥めてから二人に向き合い、一つ溜息をつく。

 

「はあ。雪ノ下には敵わねえな。まああれだ。奉仕部は戸部の告白のサポートの依頼を引き受けちまったわけだが、それとは別に戸部の告白を阻止したい奴がいて、現状維持を望んでいる奴もいる。だから俺が戸部の前に海老名さんに嘘告白をして有耶無耶にしちまおうと思っていたんだが」

 

「有耶無耶にするなら確かにそれが最適かもしれないわ。だけど、その方法は認めません。あなたが泥を被るのは嫌だし、たとえ嘘だとしても海老名さんに失礼だと思わないの?失礼谷(しつれいがや)くん」

 

「そうだよ、姫菜に失礼だよヒッキー!」

 

「じゃあ聞くが、他にどんな解決方法がある?」

 

俺がそう尋ねると、雪ノ下は小さく口元を綻ばせてから雪ノ下の考えた解決方法を告げた。それを聞いた俺と由比ヶ浜は反論したが、結局は雪ノ下の提示した解決方法を実行するということで落ち着いた。最後まで由比ヶ浜が渋っていたが、由比ヶ浜の所属するグループ内での問題なのだから、由比ヶ浜が当事者になるのは駄目だという結論となったのである。

 

結論が出たところで、向こうから由比ヶ浜からの呼び出しを受けた海老名さんが歩いてくる姿が見えた。

 

葉山たちが道の角から戸部を送り出す。

 

竹林の道の脇に等間隔で置かれた灯篭を一つづつ追い越して、海老名さんはやってきた。

 

戸部がそれを緊張の面持ちで迎える。

 

「あの……」

 

「うん……」

 

戸部が声をかけると、海老名さんはそれに小さく答えた。

 

それを見た俺は、すぐさま雪ノ下の手を引いて待機場所から灯篭の前に飛び出し、雪ノ下と向かい合う形で道の真ん中に立ち、周りに聞こえるよう大声を張り上げた。

 

「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」

 

そう、雪ノ下の考えた解決方法とは、俺が海老名さんにではなく、雪ノ下に告白して戸部の告白を阻止するというものだった。

 

これで俺が雪ノ下に断られたら海老名さんに目配せをして誰とも付き合う気が無いことを口にしてもらおうという作戦である。

 

「はい。よろしくお願いします」

 

………………あれ?

 

「すごいすごい、生告白&カップル成立の瞬間を見ちゃったよ。憧れちゃうな。まあ、私は皆と騒いでいる方が楽しいから、今のところは誰かとお付き合いする気はないけど」

 

「あー、海老名さんってそんな感じなん?まあ、俺もそんな感じかな。ヒキタニくんスゲーわ。まじリスペクトしねーと」

 

俺が雪ノ下に向けた視線を外せないままでいると、海老名さんが空気を読んだのか誰とも付き合う気が無いことを口にした。それを聞いた戸部も不自然にならないよう追従している。そして気が付くと戸部にリスペクトされている始末。

 

「みんな、ひとまず退散しよう」

 

「ああ」

 

「だな」

 

「あ、あはは。そうだね隼人くん」

 

俺と雪ノ下が動けずにいると、やがて葉山が大和と大岡、由比ヶ浜を連れてその場を後にして、竹林の道には俺と雪ノ下の二人だけとなった。

 

「これで依頼達成ね」

 

「ああ」

 

「二人きりになったのだけれど」

 

「そうだな」

 

「比企谷くん」

 

「なんだ」

 

「好きよ」

 

「………いいのか?俺で」

 

「あなたじゃなきゃ駄目なの」

 

「雪ノ下。俺も、お前が好きだ」

 

「比企谷くん」

 

それから俺たちは真っ直ぐにただお互いを見つめ合い、どちらからともなく瞳を閉じて、やがてお互いの距離が零になった。

 

     ×   ×   ×

 

「由比ヶ浜さん、抜け駆けしてごめんなさい」

 

ホテルのロビーにゆきのんに呼び出され、顔を合わせた途端に深々と頭を下げられた。

 

ヒッキーがゆきのんに嘘告白をして、それをゆきのんが断るとともに、とべっちの告白を有耶無耶にしてしまう作戦だったのに、ゆきのんはヒッキーの告白を受け入れてヒッキーと恋人同士になった。

 

正直、ゆきのんが告白を受け入れたのを見たときは裏切られた気がした。だけど、考えてみると文化祭の時からヒッキーとゆきのんはお互いを意識しているように見えたし、信頼しあっているようにも見えたから、収まるべきところに収まったと見るのが正しいような気がする。

 

「えっと、ゆきのん。ヒッキーと相思相愛だったんでしょ?抜け駆けとかそういうの関係なくない?」

 

「でも、あなたも比企谷くんのこと…」

 

「あはは。あたしは憧れの方が強かったと言いますか何と言いますか、確かにヒッキーのことは好きだったけど、ゆきのんとヒッキーを見ているとさ、お似合いだなあって気持ちの方が先に来ちゃうんだよね。恋愛関係であたしの入る余地はないなって。でも、友達付き合いならこれからも変わらずに出来るよね」

 

「ええ。もちろん。由比ヶ浜さんは私にとってかけがえのない友人だもの」

 

「うん。じゃあ、そういうことで。これからもよろしくね、ゆきのん」

 

「ありがとう。由比ヶ浜さん」

 

「それで、ヒッキーとはどこまでいったの?ゆきのん」

 

「な、何を言っているのかしら由比ヶ浜さん。確かに比企谷くんとお付き合いを始めることにはなったのだけれど、いきなりそんな破廉恥なことをするわけないでしょう。そもそもそういった話を友人同士でするのは問題があると思うのだけれど」

 

「焦っちゃうゆきのん可愛い」

 

「抱き着かないで由比ヶ浜さん」

 

「よいではないか、よいではないか」

 

おどけてそんなことを言いながらゆきのんに抱き着いた。泣きそうになったのを誤魔化したのは内緒。

 

―――バイバイ、あたしの初恋。

 

     ×   ×   ×

 

ホテルの廊下で比企谷と会ったので、少し話をすることにした。

 

「比企谷、ありがとう。おかげで今まで通り過ごせそうだ」

 

「それは何より。それじゃあ依頼は達成ってことでいいか」

 

「そうだな。戸部には時期尚早だったということで納得してもらった。その、君たちのことが大々的に広まっているけど、大丈夫か?」

 

「まあ、雪ノ下も隠す気はないって言っていたから問題ない。個人的にはあまり目立ちたくないけれど、甘んじて受け入れる」

 

言葉の端から俺の幼馴染(雪乃ちゃん)への信頼を感じることが出来る。良かったな、雪乃ちゃん。

 

「そうか」

 

「ああ」

 

「とりあえず、おめでとうと言っておいた方がいいかな?」

 

「……まあ、うん。ありがとう」

 

「……君も普通に礼を言えるんだな。驚いた」

 

「ほっとけ」

 

照れ隠しなのか比企谷は俺から視線を外して歩き出す。そしてすれ違いざまに俺に向けて小さくぼそりと呟いた。

 

「まあ、お前の幼馴染は俺が守るから」

 

そのまま離れていく比企谷の背中に、届かないよう小声で返事を返しておく。

 

「よろしく頼む」

 

     ×   ×   ×

 

「ほらヒッキー、さっさと部室に行く!」

 

「わかったから押すなって。転んじゃうだろ」

 

「早く早く、ゆきのん待ってるよ」

 

「だから押すなって。由比ヶ浜は三浦たちと食べるのか?」

 

「うん。ゆきのん今日はヒッキーと二人で食べたいって言ってたし。あーんとかしてもらっちゃうのかな?」

 

「……ノーコメント」

 

「それ、してもらってるって言ってるようなもんだし!」

 

「うっせえ。雪ノ下がやりたがるんだから仕方ねえだろ」

 

「やりたがるって、その言い方、ヒッキーキモい!」

 

「馬鹿、変な言い方するな。じゃあ行ってくるわ。また後でな」

 

「うん。いってらっしゃいヒッキー」

 

由比ヶ浜に送り出された俺は、特別棟の階段をえっちらおっちらと上っている。最近の昼食はベストプレイスで戸塚を眺めながら食べるより、奉仕部の部室で雪ノ下と隣り合わせに並んで食べる率が増えた。

 

雪ノ下の作る弁当は美味い。それはもう間違いなく。

 

だから思わず早足になってしまうのは仕方のないことなのである。

 

奉仕部の扉を開けると、机の上には俺のための弁当が用意されていて、雪ノ下が笑顔で俺を迎え入れてくれる。

 

「いらっしゃい比企谷くん。さあ、お昼ご飯にしましょう」

 

「おう。いつもありがとうな」

 

「どういたしまして。ふふ。どれが食べたいかしら?」

 

「じゃあ、そのハンバーグから」

 

「はい、召し上がれ」

 

「モグ…。うん、美味い。雪ノ下はどれから食べるんだ?」

 

「人参のグラッセからいただこうかしら」

 

「ほれ、あーん」

 

「あーん」

 

食べさせ合うのにも慣れたもので、俺たちはスムーズに食事を済ませていく。

 

そうして食事を済ませると、雪ノ下が俺の頬に手を置いて、小さく微笑む。

 

「比企谷くん。お口が汚れているわよ。綺麗にしてあげる」

 

そう言ってキスをしてくるのが、最近の雪ノ下の食後の習慣となっている。

 

これは確かに、二人で食事をしないと出来ないことであろう。

 

そして雪ノ下の笑顔を見ながらこんな昼休みも悪くないと思うのであった。

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