やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。Delusion story   作:神納 一哉

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8巻35P途中からのDelusion storyです。

ラブコメですかね。

原作至上主義の人は読まないでください。ブラウザバック推奨です。


修学旅行の後、部室に向かった比企谷八幡が奉仕部の二人の会話に聞き耳を立てていたら?

そして、長い時間をかけてようやく部室の前にたどり着く。

 

扉に手を掛ける前に、大きく深呼吸する。

 

と、中からは話し声が漏れてきた。扉越しの声は聞き取りづらいが、どうやら二人とも来ているらしい。

 

扉に手を掛けて、俺は逡巡した。戸部や海老名さんたちの葉山グループは、あの嘘告白をグループ内の揉め事として内々に処理することにしたようだが、雪ノ下と由比ヶ浜はどう思っているのだろうか。そんな疑問が俺の手を止めた。

 

「ねえゆきのん。ヒッキー遅いね」

 

「……そうね」

 

「でも、ヒッキー来るのかな」

 

「もしかしたら来ないかもしれないわね。もしそうだとしたら、平塚先生が来るでしょうね」

 

「どうして?」

 

「比企谷くんのことだから、部活を休むって平塚先生に連絡を入れると思うの」

 

「あー。そうかも」

 

そうか、平塚先生に断りを入れれば休んでもいいんだ。雪ノ下もそう考えているみたいだしそうしようかな。

 

「…今日のところは平塚先生が来てくれればいいわね」

 

…………え?

 

「ゆきのん…」

 

「比企谷くんと、どんな顔をして会えばいいのかわからないわ」

 

「ゆきのんも?実はあたしもちょっと顔合わせ辛いかな、なんて思ってるし」

 

………なんだよそれ。

 

「あたし、怒ってるし」

 

「…私もそうかもしれないわ」

 

「ゆきのんも?」

 

「ええ。彼のやり方は許せないわね」

 

その雪ノ下の言葉を聞いた瞬間、俺は扉に掛けていた手に力を込めて部室の扉を勢いよく開けた。雪ノ下と由比ヶ浜が驚いた表情を浮かべて俺の方を見る。

 

「………お前らは何かしたのかよ?」

 

「比企谷くん?」

 

「ヒッキー?」

 

「雪ノ下。お前、俺が、一応、丸く収める方法があるって言ったら俺に任せるって言ったよな?」

 

「……ええ」

 

「ならあの時、奉仕部への依頼は戸部のサポートだけじゃなくて、海老名さんの戸部の告白を阻止して欲しいって依頼があったことに気付いていたか?」

 

「……そこまでは知らなかったわ。…そう、だから貴方はあんなことを」

 

「え?姫菜そんなこと依頼してたの?」

 

「葉山グループの由比ヶ浜なら海老名さんの気持ちに気付くと思ったけどそんなことはなかったな。それ以前に告白の手伝いなんて依頼は受けちゃいけなかったんだ。俺も雪ノ下も反対したのに由比ヶ浜が雪ノ下に泣きついて、結局依頼として受けちまった。まあ依頼を受けちまったことに関しては止められなかった俺にも責任の一端はあるけど、戸部の告白の手伝いなんて誰もやってなかったよな?」

 

「…ロケーションとか意見出したし」

 

「あれって奉仕部内での雑談だったじゃねえか。ともかく戸部の告白の手伝いなんて何もやってないだろ」

 

「だからって、あれは酷いよ」

 

「……いえ、由比ヶ浜さん。比企谷くんが言うように海老名さんの依頼があったとして、海老名さんの真意に気付いたのが、比企谷くんが丸く収める方法があると言ったときだったとすれば、あの方法しかなかったかもしれないわ」

 

雪ノ下が悔しそうに唇を噛みながらそう言うと、俺を真正面から見つめてきた。

 

「比企谷くん。あの時、そうするって私たちに話してくれていたら、海老名さんを巻き込まずに私たちだけで解決できたのよ」

 

「いや無理だろ。時間なかったし」

 

「無理じゃないわ。戸部くんが海老名さんに告白する前に、比企谷くんが私か由比ヶ浜さんに告白すればよかったのよ。私たちも全員あの場所に居たのだから」

 

………………は?

 

「ゆ、ゆ、ゆきのん!?何言ってるの!?」

 

「あの時、比企谷くんが何をしようとしていたのかを話していてくれたら、戸部くんの告白を打ち消すように比企谷くんが私か由比ヶ浜さんに告白して、私たちが返事をすれば海老名さんも話を合わせてくれていたと思うのだけれど」

 

「いやいやいや、ちょっと待て雪ノ下。お前の言う返事とは、もちろんお断りの言葉だよな?」

 

「誠に不本意なのだけれど、比企谷くんが海老名さんに言ったことを私に言ってくれたのならば、謹んでお受けしたわよ?」

 

「ちょっとゆきのん!?何言っちゃってるの!?」

 

………お受けした?それってつまり、え?そうなの?

 

「貴方が海老名さんに告白したのを聞いて、私はとても胸が痛かったわ。あの時はそれだけかと思ったのだけれど、今ならわかるわ。あれは海老名さんを妬んでいたのだって。海老名さんに嫉妬していたのだって」

 

真っ直ぐに俺を見て、雪ノ下が言葉を続ける。

 

「比企谷くん、私は比企谷くんのことが…」

 

「ゆきのんストーーーーップ!!」

 

「由比ヶ浜さん、邪魔をしないでくれるかしら?」

 

「ずるいよゆきのん!あたしだって、あたしだってヒッキーのことが…」

 

「由比ヶ浜さん、黙りなさい!」

 

「ここまで言っちゃったらもう無理だし!」

 

「確かにそうね。それでは一緒に言いましょうか」

 

「ゆきのん、なんか達観してる!?」

 

「「由比ヶ浜(さん)が、達観してる(だと)(ですって)!?」」

 

「二人とも酷っ!?しかも息ぴったり!」

 

いやだって、お前、お馬鹿キャラじゃん。ほら、雪ノ下も頷いてる。俺たち、自然とアイコンタクトできてしまうのって何気に凄くね?

 

「じゃあ今度はあたしとゆきのんが息を合わせる番だね!いくよゆきのん!」

 

「不本意なのだけれど、仕方ないわね」

 

雪ノ下はそう呟くと、大きく息を吸い込んでから由比ヶ浜を見て頷いた。

 

「「比企谷くん(ヒッキー)、好きです(好きっ!)」」

 

「……見事にバラバラだな。まあ、今はそれは置いとくとしても、お前ら、さっき俺のことを拒絶しておいて何言ってんの?」

 

「言ったでしょう?海老名さんを妬んでいたのだって。告白は私にして欲しかったのよ。それにあれは拒絶じゃないわ。あなたのやり方が許せないって言ったのよ。私に嫉妬させるなんて、なんて罪深い人なのかしら。これは責任を取って私と正式なお付き合いをしてもらうしかないわね」

 

「ちょっとゆきのん、どさくさに紛れて自分に都合のいいことばかり言わないでよ。でもねヒッキー。あたしも姫菜に嫉妬したから、ヒッキーと顔を会わせ辛かっただけなの!だから拒絶したわけじゃないし」

 

「ごめんなさい。謝って済むことだとは思わないけれど、あなたが聞いていないと思ってあなたを傷付けるようなことを言ってしまいました。でもあなたのことが好きなのは本当よ。比企谷くん。好き。大好き。愛してるわ」

 

「ごめんねヒッキー。あたし馬鹿だから感情が先にきちゃうんだ。ヒッキーのことが好きなのは本当だし、あたしと付き合ってください」

 

部活メイトに拒絶された(と思った)のでブチ切れたら、部活メイトの二人から告白されました。

 

……いったいこれってどうすればいいの?


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