ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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全国大会編
大我と龍牙


 『ガンプラバトル・ネクサスオンライン』

 

 通称GBN

 アニメ『機動戦士ガンダム』から始まったガンダムシリーズに登場する人型兵器MSのプラモデル、ガンプラを電脳空間~ディメンジョン~にダイブする事でまるで自分で本当にMSを操縦しているかの如く動かす事が出来るゲームだ。

 サービス開始当初から爆発的な人気となり、多くの人々が日々GBNでガンプラバトルの腕を磨いている。

 ユーザー達を通称ダイバーと呼び、その中でもバトルを中心にプレイする者達をファイター、ガンプラの制作し中心にGBN内で披露する者達をビルダーと呼ばれるようになる。

 GBNのサービスが始まり暫して様々なルールのバトルが行われるようになり、ファイター達はルールに対応するかのようにそれぞれが徒党を組み多くのチームが生まれる事となる。

 その中で国籍も年齢もバラバラな10人で構成されたチーム「ビルドファイターズ」が頭角を現し始めた。

 彼らは個々の能力はビルダーとしてもファイターとしてもトップクラスの実力を持っていた。

 誰もがビルドファイターズに憧れ、彼らを倒す事を目標にしていた。

 しかし、彼らは強く長らく無敗を誇っていた。

 だが、ある日を境に彼らのチームは解散した。

 チームのメンバーは散り散りとなり、それぞれが新たな道を進む事となり、彼らはGBNにおいて伝説となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 チーム「ビルドファイターズ」の解散から10数年が経った今でもGBNの人気が衰える事ななく、彼らの伝説はもはや不動の物をなっていた。

 世界各地では日々ガンプラバトルが繰り広げられている。

 アメリカサーバーにおいてもその日、とあるチームがバトルをしていた。

 チーム「ビッグスター」

 メンバー全員が10代と言う比較的若いチームだが、アメリカサーバーでは一目を置かれるチームだ。

 メインの5人にサブのファイターが数名と言うのがビッグスターの構成となっている。

 今日はメインの5人のみでタイムアタックバトルを行っている。

 タイムアタックバトルは数あるルールの中の一つで一定時間内で敵ガンプラの撃墜数を競うルールだ。

 撃墜数が増えれば増える程敵ガンプラの性能が上がり、重装甲や特殊な防御システムを持つ撃墜し辛いガンプラが出て来る。

 

「先陣は僕が切らせて貰います」

 

 バトルが開始されてディラン・デイルの駆るZガンダム・シュテルンがウェブライダー形態に変形して加速する。

 ディランのZガンダム・シュテルンはZガンダムの改造機でバックパックにガンダムデルタカイのプロトフィンファンネルを装備し、手持ちの火器がロングメガライフルを装備した高機動型のガンプラだ。

 

「はっ! お前にばかり撃墜数を稼がせるかよ!」

 

 ディランのZガンダム・シュテルンをジェイク・サンダースのスターユニコーンガンダムが追い駆ける。

 スターユニコーンガンダムはバックパックのビームサーベルを外して Hi-νガンダムのバックパックをベースにしたフィンファンネルを装備し、ビームマグナムの変わりに威力と継続能力を両立したメガビームライフルを装備し、バックパックにはハイパーバズーカ、脚部と腰部にはグレネードランチャーとバランスの取れたガンプラだ。

 

「馬っ鹿じゃないの。張り切ってさ」

「仕方が無いさ。暫く彼とはバトルが出来なくなるんだからね」

 

 敵ガンプラをわれ先にと撃破しようとするディランとジェイクを後方からクロエ・ウォーカーが冷ややかにみている。

 それをチームリーダーのルーク・アーウィンが彼らの気持ちを代弁する。

 クロエのガンプラはガンダムAGE-FXを改造したガンダムAGE-FX エステレラだ。

 ガンダムAGE-FXの全身のCファンネルをプロヴデンスガンダムやレジェンドガンダムが装備しているドラグーンユニットをベースにしたDファンネルに変更し、大型が肩に2基つづとバックパックに2基の計6基と全身に小型が8基を装備している。

 両腕には内蔵式のビームサーベルの変わりにビームシールドの発生装置が搭載され、変わりにリアアーマーに手持ち式のビームサーベルが装備されている。

 手持ちの火器としてベース機のスタングルライフルの下部に大型ブレードを装備したスタングルライフルⅠBを持っている。

 そして、機体全体をDファンネルと同じグレーで塗装されている。

 一方のルークのガンプラはガンダムエクシアの改造機ガンダムソルエクシアだ。

 ガンダムエクシアをベースにバックパックにはラファエルガンダムのセラヴィーガンダムⅡを改造して取り付けている。

 右手にはベース機同様のGNソード、腰にはダブルオークアンタのGNソードⅤが装備されて、機体の青い部分が赤く塗装されている。

 

「で、今日の主役はどこにいるのよ」

「さぁ……まぁ彼の事だからどこかで好きに暴れているさ」

 

 すでにディランとジェイクは交戦状態に入っているが、ディランとジェイク、クロエとルーク以外の一人が周囲には見当たらない。

 

「それよりも僕達も行くよ。バトルが終わって僕達のスコアが低かったら良い笑いものだからね」

「分かっているわよ」

 

 クロエはそう言いガンプラを戦闘宙域に向ける。

 ルークもバックパックのGNビッグキャノンを前方に向けて掃射する。

 

「始まったな……」

 

 戦闘宙域から少し離れたところに藤城大我のガンプラ、ガンダムバルバトス・アステールが漂っていた。

 ガンダムバルバトス・アステールは一見するとガンダムバルバトスルプスレクスの改造機のように見えるが、ガンダムバルバトス(第6形態)の改造機だ。

 ルプスレクスと見間違える最大の要因が両腕がルプスレクスと同じように大型化されていることだ。

 同時にバックパック中央にテイルブレードが追加されている事もだ。

 肩には機動力強化の為にシュバルベグレイズのブースターをベースに機関砲を内蔵したシールドブースターが増設され、脛の部分には防御力強化のための増加装甲が追加されている。

 手持ちの武器はルプスレクスの超大型メイスをベースに独自の改造を加えたバーストメイスと背部に滑空砲と予備の武器として太刀が装備されている。

 胸部の追加装甲には大きな星に中央にBIGと書かれているチームのエンブレムが追加されている。

 ガンダムバルバトス・アステールのコックピットから大我はバトルの様子を眺めている。

 大我はビッグスターの中で唯一の日本人の少年だ。

 GBN内ではアバターはある程度はユーザーの自由に設定する事が出来るが、大我は現実世界と背格好や見た目は殆ど変らない。

 コックピットはデフォルトは使用ガンプラのコックピット設定に準じた物だが、無課金でもある程度の設定は出来る。

 尤も、大我はガンダムバルバトスのコックピット設定を気にっている為、デフォルトのままだ。

 アバターの顔や背格好は現実世界と同じにしているが、服装は運営が用意したガンダムシリーズの登場キャラのデフォルトの中から鉄華団の物を選択し、ジャケットの鉄華団のエンブレムをビッグスターのエンブレムに変更している。

 また、ジャケットの下に来ているインナーからはコードが伸びておりシートに繋がれている。

 これは阿頼耶識システムを再現した物だが、実際には見た目だけで本当に機体とパイロットが繋がれている訳ではなく、運営側が用意したロールプレイ用の機能の一つだ。

 

「今日の主役を差し置いてずいぶんと暴れているな」

 

 今日のバトルは今までのバトルとは少し違った。

 大我は日本の高校に進学する為にアメリカから日本に帰る事になったからだ。

 電脳空間では日本とアメリカの距離等関係なく会おうと思えば会えるが、現実世界での時差からGBNへのログイン時間はどうしても合わせる事は難しい。

 その為、暫くの間大我はチームを離れる事になっている。

 今日は大我の送別バトルでもあった。

 遠くからバトルを眺めていると、ガンダムバルバトス・アステールを挟み込むように敵ガンプラのゲルググとゲイツがそれぞれの近接戦闘用の装備を展開して襲い掛かろうとする。

 

「全く……弱い相手には興味はないんだがな」

 

 ゲルググとゲイツをガンダムバルバトス・アステールはテイルブレードで軽く薙ぎ払って撃墜する。

 

「さて……そろそろ俺もやるとするか」

 

 ガンダムバルバトス・アステールはバーストメイスを握り締めて戦闘宙域に突撃する。

 その後、5機のガンプラは時間の許す限り暴れまわり最終的にハイスクコアを更新した。

 

 

 

 

 

 

 『私立星鳳高校』

 東京都内にある私立高校だ。

 学業やスポーツにおいてすば抜けた部分は無いものの10年前に一度だけGBN内における国内大会高校生部門において優勝した実績を持つ。

 当時は無名高が全国制覇を達成した事で星鳳高校でガンプラバトルをやりたいファイターが集まるも、元々部活に力を入れていなかった事もあって星鳳高校ガンプラ部は廃れて言っている。

 今では毎年廃部ギリギリの部員数で大会でも成績を残す事もない弱小部に成り果てた。

 新年度が始まり、ガンプラ部を一人の少年が訪ねていた。

 

「頼もう!」

 

 少年、神龍我は勢いよく部室のドアを開ける。

 龍我の後ろには龍我に付き添っている少女、清水明日香がおろおろと龍我の行動を見ている。

 

「1年C組の神龍牙です! ガンプラ部に入部希望です!」

 

 龍牙は大声でそう言う。

 部室にはガンプラ部の部員と思われる眼鏡をかけた大人しそうな生徒が突然の来訪者に驚いていた。

 

「……えっと」

「俺、星鳳が全国制覇したバトルを見ていつか俺もここでバトルしたいと思って」

 

 龍牙は10年前の星鳳高校が全国制覇した時の中継を偶々見た事をきっかけでガンプラバトルを始めた。

 そして、高校は絶対に星鳳高校に入ると決めていた。

 その夢がようやく叶い、ガンプラ部にやって来たのだ。

 

「分かったから少し落ち着いて。僕はこの部の部長をやっている沖田史郎。うちは部員は僕を合わせても2人しかいないから新入生は大歓迎だよ」

 

 ガンプラ部部長の史郎はテンションの上がっている龍我をなだめる。

 現在ガンプラ部は去年3年生が卒業した事で部員は2人しかいない。

 元々、ガンプラバトルをGBNでやる為にガンプラ部に入る必要性も低い事もあって入部する生徒も少ない。

 

「マジっすか」

「うん。そっちの子も入部希望かな?」

「私は龍牙がやってるのを見ていただけですけど。大丈夫ですか?」

 

 明日香は少し遠慮気味にそう言う。

 高校の部活と言えばある程度は経験者でなければついて行く事は出来ないと言う印象が強い。

 明日香は龍我とは幼馴染で昔から龍牙がガンプラバトルをしているところをただ見ているだけで実際にバトルをした事もガンプラを作った事もない。

 

「もちろんだよ。初心者でも大歓迎」

 

 史郎の言葉に明日香はホッと胸を撫で下ろす。

 

「取りあえず、入部届を書いて持って来て貰えるかな? ただ正式に部活が始まるのは来週からだけど、せっかく来てくれたんだから少しGBNでバトルして行く?」

「もちろんです!」

 

 話しは纏まり、3人は学校を出ると近くの大型ゲームセンターへと向かう。

 GBNにログインする為には専用の端末が必要であり、強豪校は学校にある場合があるが、星鳳高校にはそれがない。

 その為、GBNにログインする為には端末の置いてあるゲームセンターや模型店等に行く必要がある。

 ゲームセンターに到着すると、3人分の端末が空いていた為、龍牙達は端末の席に座る。

 龍牙と史郎は自分のガンプラを端末にセットしてヘッドギアを付けて電脳世界にダイブしてGBNにログインする。

 GBNのエントランスで集合すると史郎はバトルの受付を始める。

 

「どれのしようか……」

 

 受付では様々なルールのバトルを行う事が出来る。

 

「神君。これなんかどうかな? ちょうど後2人まで受け付けているから」

 

 史郎が選んだルールはバトルロイヤル。

 複数のガンプラが一つのバトルフィールドで最後の1人になるまで戦う形式のバトルだ。

 受け付けているバトルロイヤルの中から10人で行うバトルが後2人募集している。

 

「俺は何でも良いですよ」

「分かった。それじゃ僕達もエントリーするからIDを提示して貰える?」

 

 龍牙と史郎がエントリーした事で募集が終了してすぐにバトルの準備が始まる。

 

「星鳳高校での初陣だ。部長に恥ずかしくないバトルをしようぜ」

 

 龍牙は自身の愛機であるバーニングデスティニーガンダムに語りかける。

 バーニングデスティニーガンダムはデスティニーガンダムの改造機だ。

 ベースとなった機体はどの距離でも高い戦闘能力を発揮する万能機であったが、龍我は全ての武器を外している。

 唯一の武装はバルカンだけでだ。

 全身が燃えるような赤で塗装されている。

 

「バーニングデスティーガンダム! 神龍牙。行くぜ!」

 

 バトルが開始される。

 今回のバトルフィールドは荒野だ。

 バトルが開始されるとすぐに龍牙は史郎を探す。

 バトルロイヤルは自分以外は皆敵ではあるが、序盤は誰かと組む等をして自分が圧倒的不利な状況にならないように立ち回るのが定石だ。

 だからこそ、事前に合流して徒党を組むように史郎に言われている。

 

「神君!」

「部長ですか?」

 

 近づいて来るガンプラに龍牙は一瞬警戒するが、ガンプラに表示されているIDとハンドルネームから史郎のガンプラだと判断した。

 

「部長はAGE-3ですか」

「そう言う神君はデスティニー。それも武装を全部外していると言う事は格闘戦特化なのかな?」

 

 史郎は龍牙のバーニングデスティーガンダムを見てそう判断した。

 一方の史郎のガンプラはガンダムAGE-3だった。

 見た目はノーマルのままだが、細かいところまで作り込まれており史郎のビルダーとしての技術が高い事が分かる。

 

「上手く合流できたことだし行こうか」

「オス!」

 

 2機は他のガンプラを探し始める。

 バトルフィールドはそこまで広くないのかすぐに他のガンプラを補足する事が出来た。

 

「機影は2……向こうも組んでるって事ですかね」

「だろうね」

 

 接近して来るガンプラは2機だが交戦している気配はない。

 そうなれば向こうも自分達と同じように徒党を組んでいると見て間違いない。

 

「向こうはティエレンとハイザック。攻撃力はこちらに分がありそうだね。先制は僕から行くよ」

 

 史郎のガンダムAGE-3はバックパックに付けていたシグマシスライフルを迫る2機のガンプラに向ける。

 向こうもこちらが攻撃体勢を取っている事に気づいている筈だが、ティエレンもハイザックもスピードを落とす気配もなく、寧ろ加速して向かって来ている。

 多少の違和感を覚えながらも史郎は引き金を引こうとする。

 だが、史郎が引き金を引く前にそれは起きた。

 上空から何かがティエレンの上に落ちて来てティエレンを跡形もなく破壊したのだ。

 

「部長。一体何が?」

「……分からない」

 

 土煙の中には人影が見える。

 明らかにシルエットはティエレンの物ではない。

 両腕と思われる部分が長く人型としては異形だ。

 

「アレはバルバトスルプスレクスか」

「いや……似ているけどベースはバルバトスだよ」

 

 土煙が収まりようやく影の主を見る事が出来た。

 龍牙はガンダムバルバトスルプスレクスだと思ったが、史郎はベースがガンダムバルバトスだと気付いていた。

 バルバトスルプスレクスと一見すると間違えそうなガンプラは藤城大我のガンダムバルバトス・アステールであった。

 

「ハンドルネーム……リトルタイガー。まさか!」

 

 史郎はバルバトス・アステールに表示されているハンドルネームを見て驚く。

 ハンドルネームは必ずしも本名である必要はない。

 そして、バルバトス・アステールに表示されているハンドルネーム『リトルタイガー』は史郎も知っている名前だった。

 

「知ってるんですか?」

「僕も噂程度だけど。アメリカの方で活躍しているチームのエースと同じなんだよ」

 

 ハンドルネームは自分で自由に入れる事が出来る為、有名なファイターのファンが自分も同じハンドルネームを使うと言う事は多々ある。

 同様に憧れのファイターのガンプラのレプリカを自分で作るビルダーも珍しくはない。

 だからこそ、ハンドルネームが同じでバルバトスの改造機だからと言って本人とは限らないが、バルバトス・アステールから発せられる威圧感は並みのファイターの物ではない。

 ティエレンを粉砕したガンダムバルバトス・アステールは次の狙いはハイザックに決めたようだ。

 ハイザックは後ろづ去りながらビームライフルを連射する。

 ビームはバルバトス・アステールに直撃するが、ビームは霧散してダメージを与えられる事は出来ない。

 

「ビームが!」

「表面に特殊な塗装をしてるんだよ。だからビームが弾かれる」

 

 ガンプラの塗装の中ではバトル中にビーム等を拡散させる効果を持たせる塗装法が存在している。

 主に塗装範囲が広いMA等で使われる技法だが、稀にパーツの細かいMSにするビルダーもいる。

 

「部長。ひょっとしてアイツ等。俺らと戦おうとしてたんじゃなくて、アイツから逃げようとしてたんじゃ?」

「かも知れないね。あれだけのガンプラだからね」

 

 ティエレンとハイザックは自分達と交戦する為ではなく、圧倒的な力を持つバルバトス・アステールから必死に逃げていたのかも知れない可能性が出て来たが、今となっては確かめる意味はない。

 ハイザックのファイターも覚悟を決めたのか、ビームライフルを捨ててヒートホークを構えて突撃した。

 左腕のシールドで身を守りながらだったが、バルバトス・アステールは微動だにしない。

 ハイザックが振り下ろしたヒートホークをいとも簡単にバルバトス・アステールは刃の部分を受け止める。

 そして、バルバトス・アステールはヒートホークの刃を握りつぶした。

 

「マジかよ」

 

 ホートホークが破壊されたハイザックは一度距離を取ろうとするが、後ろに下がれずに尻餅をつくように倒れ込む。

 ハイザックの足にはバルバトス・アステールのテイルブレイドのワイヤーが絡まっており、ワイヤーによりバルバトス・アステールとの距離が離れられないようにされていた。

 バルバトス・アステールはバーストメイスを振り上げる。

 ハイザックは懸命にシールドで、身を守ろうとするが無情にも振り下されたバーストメイスの威力はシールドでは到底防げるものではなく、シールドごとハイザックは粉々に粉砕された。

 ハイザックとティエレンを葬ったバルバトス・アステールは龍牙と史郎の方を向く。

 バルバトス・アステールと目が合ったような気がすると龍牙の背筋がゾクリとした。

 対峙しただけでも相手が相当な実力者だと言う事は分かる。

 そして、向こうは次のターゲットの自分達を選んだと言う事もだ。

 

「来る!」

 

 バルバトス・アステールは新たな獲物を求めて史郎のガンダムAGE-3の方に向かう。

 ガンダムAGE-3はシグマシスライフルで迎撃するが、バルバトス・アステールは最低限の動きでかわす。

 

「速い!」

 

 攻撃を完全に見切っているのか、バルバトス・アステールにガンダムAGE-3のビームが当たる事は無い。

 攻撃をかわしながらバルバトス・アステールは上空のガンダムAGE-3に腕部の200mm砲の狙いを定める。

 始めの数発はかわす事が出来たが、次第に回避できずになりガンダムAGE-3は直撃を受けて落ちていく。

 何とか体勢を整えて地面に着地すると同時にバルバトス・アステールは一気に加速する。

 

「部長!」

 

 龍我のバーニングデスティーがガンダムAGE-3の援護に向かおうとするが、バルバトス・アステールのテイルブレイドがバーニングデステニーを襲う。

 とっさにビームシールドで身を守るが、バーニングデスティニーは地面に叩き付けられてしまう。

 その間にバルバトス・アステールはガンダムAGE-3を自身の間合いまで距離を詰めていた。

 バルバトス・アステールはバーストメイスを突き出す。

 ガンダムAGE-3は回避と共にシグマシスライフルを使えるだけの距離を取ろうとする。

 バーストメイスがギリギリ届きそうだったが、その先端はガンダムAGE-3に届く事は無かった。

 攻撃を回避できたと言う史郎の一瞬の隙を相手は見逃す事は無い。

 バーストメイスの先端の杭が射出されてガンダムAGE-3のシグマシスライフルに突き刺さる。

 

「しまった!」

 

 だが、それだけの留まらなかった。

 シグマシスライフルに突き刺さった杭が爆発してシグマシスライフルの銃身が吹き飛ぶ。

 バルバトス・アステールのバーストメイスが超大型メイスからの改造点が先端のパイルバンカーの杭が射出後に爆発するようになっている事だ。

 杭を敵に突き刺したままで相手の動きを阻害する以外にも爆破する事で相手のガンプラを内部から更に破壊する事も可能になっている。

 銃身を破壊された事でガンダムAGE-3はシグマシスライフルを捨てざる負えない。

 パイルバンカーを打ち込んだバルバトス・アステールのバーストメイスの先端に内部から新たな杭がリロードされる。

 元々超大型メイスのパイルバンカーは単発式だが、バーストメイスは内部に数発分の杭が内蔵されている。

 それによりバトル中にパイルバンカーを使っても数回は杭をリロードする事で連続使用が可能となった。

 そのせいでバーストメイス自体の重量が大幅に増す事になったが、それが逆にバーストメイスの圧倒的な攻撃力にも繋がった。

 

「ライフルが……なら!」

 

 シグマシスライフルを失ったガンダムAGE-3は両手にビームサーベルを抜く。

 ガンダムAGE-3の遠距離攻撃が可能な武器はシグマシスライフルしかない。

 シグマシスライフルを失ってしまえばビームサーベルによる近接戦闘しか戦う術はない。

 バルバトス・アステールはバーストメイスを中心とした近接戦闘を重視したガンプラである事はここまでの戦いで分かっている。

 だがらこそ、距離を保ったままで戦いたかったが、シグマシスライフルを失った以上は接近戦で戦うしかない。

 バルバトス・アステールを相手に接近戦をしようと思って覚悟を決める史郎だったが、先ほどまで接近しようとしていたバルバトス・アステールは両手でバーストメイスをしっかりと握り締めてた状態で足を止めていた。

 先端は迫るガンダムAGE-3に向けられている。

 史郎は相手は接近戦しか出来なくなった事で距離を詰めて来たところをカウンターの突きで応戦するのだと判断した。

 相手の狙いが分かればバーストメイスの動きに注意していれば対応は出来る。

 史郎はそう身構えながら接近するが、その判断は誤りであった事に気づかされる。

 まだ、バーストメイスの間合いからは十分に慣れていたが、史郎のガンダムAGE-3のコックピットのモニターが閃光に包まれると、撃墜されたと言う表記が出て来て何が起きたのか分からずに唖然としていた。

 

「……嘘だろ」

 

 史郎はコックピットからの視点であった為、何が起きたのか分からなかったが、テイルブレイドに弾き飛ばされて地面に叩き付けられて何とか起き上がった時にそれが起きた龍牙は何が起きたのか見ていた。

 史郎のガンダムAGE-3に向けられていたバーストメイスの先端の杭がとんでもない速度で射出されたのだ。

 射出された杭は一瞬の内にガンダムAGE-3を粉々に吹き飛ばすとその威力を物語るように荒野に爪痕を残した。

 これがバーストメイスに追加された機能だ。

 先端の杭をパイルバンカーとして射出する機能に追加して、射出の際に電磁力により超高速で杭を撃ちだす機能で、バルバトス・アステールのベース機、ガンダムバルバトスの登場する作品における超兵器「ダインスレイヴ」と同じ物だ。

 バルバトス・アステールが近接戦闘型のガンプラだと言う思いこみが、すでにダインスレイヴの有効射程に入っている事も気がつかずに易々と撃墜された。

 バルバトス・アステールのダインスレイヴは圧倒的な威力があるが、反動も大きく足の裏に内蔵されているエッジで機体を固定しなければ安定して使う事が出来ず命中精度が大きく下がる。

 それと同時に威力が強すぎて一度使うごとにバーストメイス内のパイルバンカーの射出機構に不具合が出て修理しなければ使えない。

 

「部長がやられた……俺が一人でやるしかないのかよ」

 

 龍牙は呼吸を整える。

 ここまでの戦闘でバルバトス・アステールの力は分かっている。

 龍牙は下手な小細工をする事は苦手だ。

 ならば、出来る事は全力でぶつかる事だけだ。

 バーニングデスティニーは拳を握り、光の翼を展開してバルバトス・アステールに突撃する。

 対するバルバトス・アステールもバーニングデスティニーに向かって行く。

 2機のガンプラの距離は一気に縮まって行く。

 龍牙が殴りかかろうとした瞬間にバルバトス・アステールは持っていたバーストメイスを上に投げた。

 龍牙は無意識に内に視線を上に向けてしまった。

 それが隙となり、バルバトス・アステールは左手の先端に付いている爪を突き出す。

 龍牙はビームシールドで防ごうとするが、ビームシールドでは防ぎ切れずにバルバトス・アステールの爪がバーニングデスティーの左手を破壊する。

 

「くっ!」

 

 そして、落ちて来たバーストメイスをバルバトス・アステールはキャッチするのと同時に振り下した。

 バーストメイスはバーニングデスティニーの右腕を肩から破壊する。

 バーニングデスティニーの右腕を破壊したバーストメイスの先端は地面に叩き付けられると、その勢いを利用してバルバトス・アステールはバーニングデスティニーに向かって飛び蹴りを放つ。

 足の裏に内蔵されているエッジが展開され、バーニングデスティニーの胴体に突き刺さり、そのまま地面に倒して積みつける。

 バーニングデスティニーは何とか頭部を向けて唯一の火器であるバルカンを撃ち込むがバルバトス・アステールには効果がない。

 それを鬱陶しく思ったのか、バルバトス・アステールはバーストメイスの先端でバーニングデスティニーの頭部を先端で押しつぶす。

 ダインスレイヴを使ったせいで先端には杭がリロードされてはいないが、頭部を潰す程度の事は容易い。

 

「マジで強すぎだって」

 

 最後の一連の攻撃が流れるように鮮やかで龍牙はただ、見も知らぬ相手のファイターの力量に感動すら覚えていた。

 

「どこの誰かが分からないが……いつかは俺もアンタに追いついて俺が……」

 

 龍牙は中学時代はそこそこの実力者ではあった。

 高校に進学してから並み居る強敵達を次から次へと倒していくと大それた野望を抱いていた訳ではない。

 だが、圧倒的な実力者を前に何も出来ず敗北した。

 その実力差に悔しさが無かった訳ではない。

 それ以上に自分もまた力を付ければそれだけの域に到達できるかも知れないと言う可能性を感じた。

 だからこその宣言として『俺が勝つ!』と言おうするが、向こうにはその声は届いてはいない為、衝撃と共に機体が撃墜されたと言う表示が現れた。

 龍牙がやられた事でバトルロワイヤルの終了のアナウンスが入り、バトルのスコアが表示された。

 

「ハハハ……マジかよ」

 

 そのスコアを見て龍牙は驚きと同時に納得もした。

 スコアには参加したファイターの各撃墜数が表示されていたが、その中で龍牙や史郎と倒したファイターのハンドルネーム『リトルタイガー』の撃墜数が9機となっていた。

 バトルロワイヤルに参加していたガンプラは全部で10機だ。

 リトルタイガーの撃墜数は自分以外のガンプラを一人で全て破壊しなければ出せない。

 これがリトルタイガーこそ藤城大我と神龍牙の初めてのバトルとなった。

 

 

 

 




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