全国大会地区予選東京地区の準決勝は星鳳高校と秀麗高校とどちらも無名校の対戦は星鳳高校に軍配は上がった。
それにより星鳳高校は10年ぶりに全国大会への出場が決まる。
バトルに勝利した星鳳高校はぞれぞれがGBNからログアウトして龍牙は冬弥の方に向かう。
「冬弥……」
「本当に強くなったな……龍牙」
バトルに負けて全国へ行く事の出来なくなった秀麗高校ガンプラ部は廃部になるのだろう。
それでも冬弥はどこか晴れ晴れとしていた。
「なぁ……冬弥。あの話しって……」
「本当だよ。これで俺達のガンプラバトルも終わったよ」
冬弥は遠い目をしてそう言うが、言葉には龍牙に対しては責める印象はない。
一度は道を間違えたが、それでも全力を出して冬弥は龍牙に負けた。
龍牙に勝って全国へ行くと言う願いも、冬弥が負けた時点でバトルが終わった事から始めからそんな道は残されてはいなかった。
「終わってない。終わらせちゃ駄目だ!」
全てを出し切っての敗北を受け入れた冬弥に龍牙は声を上げる。
「だって冬弥はあんなに強いんだぜ。ガンプラバトルが好きじゃなきゃあそこまで強くはなれ無いだろ! だからそう簡単に諦めれんなよ!」
「龍牙……」
「それに今の俺の仲間が言ってたんだよ。ガンプラバトルなんてガンプラがあればいつでもやれるって、そりゃ部活が無くなるのは寂しいかも知れないけど、冬弥にも一緒にガンプラ部を作った仲間がいるんだろ? 俺達とのバトルに負けて部が無くなっても冬弥の仲間までは無くなったりはしない!」
秀麗高校ガンプラ部が廃部になる事はもはや止める術はないのかも知れない。
だが、ガンプラ部が無くなっても、ここまで一緒にやって来た仲間がいなくなるわけではない。
仲間が居ればガンプラバトルを続けようと思えばいつでもやる事は出来る。
今の仲間を取ってバトルに勝利した龍牙が出来る事は冬弥に諦めないように言う事しかない。
「龍牙……そうかも知れないな」
「だから……またバトルしようぜ」
「ああ。お前も俺達に勝ったんだ次も勝って全国で暴れて来いよな」
そう言い龍牙と冬弥は握手をして別れる。
「色々と済みませんでした!」
冬弥と別れた龍牙は静流のところに戻ると頭を下げる。
最終的には覚悟を決めたものの、戦いに迷いバトルに身が入らなかった。
「構わないわ」
「ありがとうございます。それよりも藤城は?」
すでに大我の姿はない。
大我はバトルが終わってログアウトすると、準決勝のもう一つのバトルを見に行った。
結果は当初の予想通り皇女子高校が難なく勝利して決勝戦に駒を進めた。
それにより今年の東京地区からの全国大会には星鳳高校と皇女子高校の2校が出る事が決まった。
準決勝に勝利した龍牙達はそのまま解散せずに一度学校に戻る事となった。
その際に大我が渋っていたが、半ば強制的に連れて行かれた。
「皆、良くやったよ。これで星鳳高校は10年ぶりに全国大会に出場する事になったよ」
部室では一足先に戻った颯太が飲み物やお菓子等を用意して軽い打ち上げの用意をしていた。
地区予選は最後の決勝が残っているものの、決勝の勝敗に関わらず星鳳高校は全国大会に出る事が出来る。
「次が本番だろ」
全国大会出場が決まり、部が浮かれる中大我がそう言う。
大我にとってはここまでのバトルは皇女子と戦う為の前座に過ぎない。
「向こうも全国行きが決まっても、大人しく手を抜いてくれるような可愛げはないからな。次の決勝も全力で潰しに来るぞ」
相手の事を良く知る大我はそう考えている。
すでに全国大会出場が決まっている為、決勝戦は本気を出す必要はないが、決勝戦で勝って全国に行くか、負けて全国に行くかではチームとしての勢いが違ってくる。
確実に皇女子高校は決勝も勝ちに来るだろう。
「確かにそうかも知れないけど、今日ぐらいは浮かれても良いと思うよ」
「だな……お前も少しは部に馴染もうとしようぜ」
龍牙が大我を座らせると全国大会出場決定の軽い打ち上げが始まる。
「浮かれれるのは良いけど、全国大会でウチの部には大きな問題があるけどどうするつもり?」
打ち上げが始まり少しすると静流がそう切り出す。
全国大会出場が決まったが、今の星鳳高校には全国で戦う為に大きな問題がある。
「問題ってなんですか?」
問題そのものは史郎たちも分かっているが、明日香だけは分かっていないようだった。
「全国はね。今までの地区予選とはバトルの方式が違うんだよ」
「確かフラッグ戦でしたよね」
「それも最大10機までのね」
史郎や静流の言葉で明日香も何となく問題が見えて来た。
地区予選は3機までのチーム戦だが、全国大会のバトルは最大10機で行われるフラッグ戦となっている。
フラッグ戦はGBNでもフォース同士のバトルで良く行われるバトル方式の一つだ。
自分のチームの中でフラッグ機を事前に決めて置きバトルを行い先に相手のフラッグ機を撃墜されば勝ちと言うルールだ。
そして、現在のガンプラ部の部員は部長の史郎に副部長の静流、1年は大我と龍牙、2年には新しき入った岳の5人だ。
地区予選を勝ち抜いている為10機を出す必要はないが、全国に出るチームは皆出場可能な10人で来るだろう。
5機でも戦えない事はないが、数の差は圧倒的な不利となる。
「それに関しては俺に任せて貰おうか!」
タイミングを見計らったかのように生徒会長の諒真が部室のドアを開けて扉にもたれ掛っている。
「会長が?」
「そうだ。生徒会が全面的にバックアップしてメンバーを集める。無論、俺も参加させて貰う」
ルール上はガンプラ部の部員でなくとも星鳳高校の生徒であれば全国大会のメンバーとして出る事は可能だ。
そこに諒真も加えてれば残りは4人となる。
ガンプラ部が独自にメンバーを集めるよりも生徒会が集めた方が大会に向けての準備も並行して行える。
「諒ちゃんは別に良いにしても数合わせの雑魚はいらないよ」
諒真の実力は以前のバトルで証明されている。
だが、残りのメンバーの実力も全国で戦う上では重要な要素だ。
募集すれば星鳳の生徒の中でGBNをプレイしているダイバーが集まるが、全国大会では各地区予選を勝ち抜いて来た実力者ばかりだ。
半端な実力では足手まといにしかならない。
「分かってるって。その辺は俺に任せてお前らは次の決勝戦に備えてろよな」
諒真はそれだけ言ってどこかに去って行く。
いずれは全国の事を考えて動き始める必要はあるが、今優先しなければいけないのは次の決勝戦だろう。
相手は去年の全国準優勝校の皇女子高校。
今まで戦って来た学校とは実力は段違いだろう。
かつては練習試合では惨敗したが、今は全体的にレベルアップしてあの時のような胸を借りて戦うのではなく、対等な対戦相手として決勝戦を戦う。
その事を意識する事で、もはや全国出場に浮かれて打ち上げ等している雰囲気ではない。
その日は解散となり、各々が次の決勝戦の準備に入る。
決勝戦の当日、会場は観客席は満員だった。
片や去年の準優勝校。
片や無名校。
星鳳高校はここまで番狂わせを起こして勝ち上がって来た。
このバトルは全国大会出場が決まっている学校同士とはいえ注目を集めている。
「このバトルは全国行きには無関係とはいえ、彼を調子づかせないように勝ちに行きなさい」
バトル前の最後のミーティングで麗子は決勝に出る3人に指示を出す。
大我の読み通り、皇女子は決勝戦も完全に勝ちに行くようだ。
「分かってるってその為に今日は私らも全国用のガンプラを使うんだし」
皇女子は星鳳高校に対して、一切の油断はない。
今日は今まで温存しておいた全国用のガンプラを投入してまで勝ちに行く。
「分かっているなら良いわ。勝って来なさい」
麗子はそう言って貴音たちを送り出す。
「今日は泣いたって許して上げないんだからね! 馬鹿大我!」
「言ってろ。泣くのは姉ちゃんの方だ」
バトル開始前から大我と貴音の間に火花が散っている。
互いにガンを飛ばしながらもGBNにログインして地区予選の決勝戦が始まる。
星鳳高校の3機がバトルフィールドの宇宙に入る。
「来るぞ」
フィールドに入った瞬間、大我がそう言いバルバトス・アステールはバーストメイスを振り上げる。
バーストメイスを振り上げた瞬間にバーストメイスに何かが当たった鈍い音がする。
同時にアリオスガンダム・レイヴンの左腕と左側のGNキャノンが、バーニングデスティニーの上半身も吹き飛ぶ。
「狙撃!」
開始早々の狙撃で大我は完全に見切りバーストメイスを振り上げて銃弾を弾き、静流は反応出来たものの、かわし切れずに腕をGNキャノンを失い、龍牙に至っては反応出来ずに撃墜された。
「撃墜出来たのはジン君のデスティニーだけか……それにタイちゃんは狙撃を完全に見切っていた。流石だな」
バトルフィールド後方で千鶴のガンプラ、ガンダムグシオンリベイクフルシティシューティングスターが大型のリニアライフルを構えていた。
千鶴のガンプラは今まで使っていたフルシティをベースにガンダムフラウロスの砲撃能力を加えた長距離砲撃に特化したガンプラだ。
バックパックはフルシティの物をベースに2門のフラウロスのレールガンと火器の収納されたコンテナユニットで形成されている。
手持ちのライフルもレールガンと同様にエネルギーをチャージするとダインスレイヴとして使える大型のリニアライフルとなっている。
膝にはバックパックに搭載れている物と同タイプのコンテナユニットが増設され、リアアーマーは可変機構を廃止して内部に武器を収納できるように改造され、近接戦闘用にグシオンチョッパーが収納されている。
機体は全体的にガンダムフラウロスと同じピンク色で塗装されており、フラウロスの砲撃能力とグシオンリベイクの精密射撃モードにより長距離での狙撃に重きを置いたガンプラだ。
「今のでこっちの位置は把握されたと思うのでお願いします」
「任せんしゃい!」
初手の狙撃で1機撃墜して、1機は手負い。
大我だけはダメージはないが、そこまでは想定の範囲内だ。
貴音のキマリスがバルバトス・アステール目掛けて突撃する。
貴音のガンプラはガンダムキマリス・ヴィダールの改造機、ガンダムキマリス・トライデントだ。
背部にはキマリスブースターを装備して機動力を大幅に向上させ、下半身はキマリス・トルーパーの物をベースに宇宙での高機動モードと陸戦時のトルーパー形態の2種類に変形可能に改造し、膝にはキマリス・ヴィダールのドリルニー、リアアーマーには各種機雷が内蔵されている。
腰にはガンダムヴィダールの物をベースに内部にはバーストサーベルの替刃でなく、キマリスサーベルが1本づつ収納されている。
肩には小型のミサイルポッドに変更されている。
腕部には緊急時に手に持つ事無く使用できるコンバットナイフが折り畳んで装備されている。
最大の特徴が手持ちのデストロイヤーランスに背部からアームで保持されているシールドの裏側にそれぞれグングニルとドリルランスとガンダムキマリス、ガンダムキマリストルーパー、ガンダムキマリス・ヴィダールの3種類のキマリスの槍を装備し、ガンダムヴィダールを含めた全てのキマリスの要素を詰め込んだのが高機動型のガンプラが貴音のガンダムキマリス・トライデントだ。
「キマリス。姉ちゃんか」
キマリス・トライデントは加速したままでデストロイヤーランスを振う。
それをバルバトス・アステールは正面から受け止める。
「今日は本気で潰して上げるかんね!」
「やれる物ならな」
バルバトス・アステールはキマリス・トライデントを弾き返す。
そして、腕部の200ミリ砲を向けるが、キマリス・トライデントは一気に加速して射線上から退避する。
「ちっ……速いな」
「おっそい! 遅すぎてあくびが出ちゃうね!」
背後を取ったキマリス・トライデントに振り向きざまにバーストメイスを振るうが、すでにキマリス・トライデントはそこにはいない。
攻撃を回避したキマリス・トライデントは3つの槍に内蔵されている火器でバルバトス・アステールに集中砲火を浴びせる。
シールドスラスターで身を守りながら200ミリ砲で応戦していると別方向からの射撃がバルバトス・アステールに直撃する。
「……面倒なのが来たか」
攻撃して来たのは皇女子高校の最後の1機、珠樹のガンダムバエルの改造機ガンダムエルバエルだ。
ガンダムバエルをベースに背部にはウイングスラスターを増設する事でフリーダムガンダムのような翼と化して機動力を向上させている。
右手にはグレイズ用のライフルをベースに銃身の下部にグレネードランチャーを追加したバエルライフル。
左手には先端がクロー状になりワイヤーで射出する事の出来る小型のシールド、バエルシールドを装備している。
腰には姿勢制御用のサブスラスターも兼ねてストライクフリーダムのレールガンが装備され、ビームサーベルの変わりにバエルソードの腰に装備されている。
貴音のキマリスが直線的な機動力に特化している分、珠樹のバエルは小回りの利く高機動型のガンプラとなっている。
先行した貴音に後から珠樹が追いかけて来てようやく追いついた。
「大我には悪いけど」
エルバエルがバエルライフルをバルバトス・アステールに向ける。
バルバトス・アステールはキマリス・トライデントとエルバエルを同時に相手しなければならなかった。
大我が姉二人を相手にしている頃、残った千鶴の方には静流が向かっていた。
初手の狙撃で痛手を負ったものの、アリオスガンダム・レイヴンはまだ戦える。
「見つけた!」
アリオスガンダム・レイヴンは捕捉したグシオンシューティングスターにGNスナイパーライフルⅡを放つ。
それをグシオンシューティングスターはかわしてレールガンで応戦する。
グシオンシューティングスターのレールガンとリニアライフルはエネルギーをチャージする事でダインスレイヴとして使う事が出来るが、チャージしなければ通常の砲撃としてにも使える。
ここまで相手に接近された状態で友軍の援護なしにダインスレイヴは使えない。
「手負いとはいえ手加減はしない!」
グシオンシューティングスターは背部のコンテナユニットからマシンガンとライフルをサブアームに持たせる。
手持ちのリニアライフルは通常射撃でも並のガンプラなら一撃で仕留める程の威力を持つが、連射が出来ず残弾数もそこまで多くはない。
機動力のあるアリオスガンダム・レイヴンに無駄撃ちは避ける為にグシオンリベイクフルシティの特徴でもあるサブアームを使って手数で押す。
マシンガンとライフルでは連射速度も弾速も違う為、避ける方は非常にかわし辛い。
「そう簡単にはやらせては貰えないようね」
「そこ!」
攻撃をかわしているアリオスガンダム・レイヴンにグシオンシューティングスターはリニアライフルを放つ。
その銃弾は正確にGNスナイパーライフルⅡを撃ち抜く。
爆発する前にGNスナイパーライフルⅡを捨てるとビームサーベルを抜いて一気に接近戦に持ち込む。
「接近戦か……生憎だが!」
グシオンシューティングスターは左手でリアアーマーのグシオンチョッパーを抜くとビームサーベルを受け止める。
「すでに苦手は克服している!」
グシオンシューティングスターはアリオスガンダム・レイヴンを蹴り飛ばすとリニアライフルを撃つ。
リニアライフルの銃弾はアリオスガンダム・レイヴンの頭部を吹き飛ばすが、アリオスガンダム・レイヴンはGNキャノンで反撃してリニアライフルを破壊する。
「こっちもそう簡単にやられてあげる訳にはいかないのよ!」
「流石にトップランカー。一筋縄ではいかないか」
手持ちの火器を失ったグシオンシューティングスターは膝のコンテナユニットからガトリング砲を取りだす。
取り出したガトリング砲をアリオスガンダム・レイヴンに向けて連射する。
アリオスガンダム・レイヴンは右肩のビームシールドを使いながら、ひたすら攻撃の回避に専念するのだった。
2人の姉からの猛攻を大我はひたすら捌きながら反撃を行うも、反撃は珠樹のエルバエルに妨害されて完全に抑え込まれている。
キマリス・トライデントが機動力を生かした一撃離脱とエルバエルが上手く立ち回りバエルライフルを撃ち込む。
2人の姉は完璧な連携で大我を追い詰め、バルバトス・アステールはすでに10回以上も被弾させられている。
「ちっ……」
姉たちの連携も去る事ながら、大我はリヴィエールにより機体性能を底上げされたバルバトス・アステールの扱いにも苦労させられている。
巨陣高校戦や秀麗高校戦等は相手が格下である為、扱いに慣れれば問題はないが、今日の相手はレベルが違う。
「いい加減に俺に従えよ。バルバトス」
キマリス・トライデントの攻撃をかわしたところにエルバエルがバエルライフルを撃ち込み頭部に被弾する。
頭部は半壊して、フレームのツインアイの片方が露出する。
「硬い」
珠樹も過去の大我の戦闘データを事前に頭に入れているが、そこから計算されたバルバトス・アステールの装甲強度は明らかに誤差の範囲を超えている。
「珠樹。大我のガンプラは前より強くなってる。油断は駄目」
「みたいだね。なら、少し冒険もしてみたいとね!」
キマリス・トライデントは一直線に加速するとバルバトス・アステールに突っ込んで行く。
珠樹は援護しようと思えば、援護射撃を行えたが、貴音が一直線にバルバトス・アステールに突っ込んで行った意図は分かっている為、あえて援護射撃は行わない。
突っ込みデストロイヤーランスを振るうが、それをバルバトス・アステールは正面から掴む。
「お前の全てを出してやる。だから……お前は全部俺に任せれば良いんだよ!」
「何!」
貴音はバルバトス・アステールの雰囲気が変わったような気がした。
同時にデストロイヤーランスが握りつぶされた。
すぐにデストロイヤーランスを手放すと、サイドスラスターに内蔵されているキマリスブレードの柄を持つとサイドスラスターがスライドしてキマリスブレードを抜く。
バルバトス・アステールはバーストメイスを付きだすがギリギリのところでキマリス・トライデントには届かなかったが、先端の杭を打ち出す。
「調子に乗んな! バーカ!」
キマリス・トライデントはキマリスブレードで射出された杭を弾く。
杭や射出されバーストメイスの先端に新しい杭がリロードされる。
「そうだ……それで良い。後は俺がアイツ等をぶっ潰す!」
バルバトス・アステールはバーストメイスを握りキマリス・トライデントに襲い掛かる。
キマリス・トライデントは加速してバルバトス・アステールを振り払うが、バルバトス・アステールは最短距離を移動して回り込む。
「鬱陶しい!」
キマリス・トライデントは肩のミサイルを全て撃ち尽くす。
それをシールドスラスターの機関砲で迎撃する。
「やらせない」
エルバエルがバエルライフルをバルバトス・アステールに向けるが、珠樹の死角からテイルブレイドがエルバエルを襲う。
とっさに回避するが、エルバエルのバエルライフルが破壊されてしまう。
バエルライフルを破壊しても尚、テイルブレイドはエルバエルを狙う。
エルバエルはバエルソードを抜きながら、バエルシールドの先端のアンカークローを射出して迎撃する。
アンカークローをテイルブレイドにぶつける気だったが、激突する直前にテイルブレイドは軌道を少し逸らしてアンカークローを回避すると、アンカークローのワイヤーの自身のワイヤーを絡める。
「お姉ちゃん!」
「大丈夫」
力勝負ではバルバトス・アステールには敵わない為、珠樹はすぐにアンカークローのワイヤーをバエルソードで切断する。
「私とやりながらお姉ちゃんも相手にするとか生意気!」
「うるさいよ。黙って俺にぶっ潰されてろよ」
「やなこった!」
キマリス・トライデントは距離を取りながらグングニルとドリルランスの火器でバルバトス・アステールを寄せ付けないようにする。
バルバトス・アステールはバーストメイスを逆手に持ち替えて勢いよく投擲する。
迫るバーストメイスをキマリス・トライデントの火力では押し戻す事は出来ない。
しかし、勢いが付いているとはいえ、キマリス・トライデントの機動力の前には止まっているも等しい。
キマリス・トライデントは余裕でバーストメイスを回避する。
「遅いのよ!」
「十分だ」
バルバトス・アステールの投げたバーストメイスの射線上にはキマリス・トライデントだけではなく、珠樹のエルバエルもいた。
そして、珠樹はキマリス・トライデントがブラインドとなり、大我の攻撃に反応が遅れていた。
「狙いは始めから私」
大我は戦いながらキマリス・トライデントを誘導してこの状況を作り上げた。
「でも……そう簡単にはやられない」
「知ってるよ。珠ちゃん」
反応が遅れても珠樹は慌てる事無く、最小限の動きでバーストメイスを避ける。
だが、それは大我も読んでいた。
エルバエルの回避先にはすでにテイルブレイドが先回りをして、エルバエルを雁字搦めにする。
「……動きが」
「お姉ちゃん!」
「先に珠ちゃんをやらせて貰う」
バルバトス・アステールはキマリス・トライデントから狙いをエルバエルに変えて一気に加速する。
(ヤバい! ヤバい! ヤバい! お姉ちゃんが……)
動きを完全に封じられたエルバエルは珠樹の実力を持ってしてもどうしようもない。
貴音が助けなければ確実に落とされる。
機動力ではキマリス・トライデントの方が高く今からでも追えば十分に追いつく事は可能だ。
だが、大我も貴音が助けようとする事は想定の範囲内だろう。
貴音が取れる行動はいくつかあるが、その中からいくつかのパターンを思い浮かべてそうするべきなのかをすぐさま考える。
すると、ふとモニターの端に映されている数字が無意識の内に目に入り、貴音はある策を思いつく。
それを思いついた貴音はそれ以上考える事無く行動した。
完全に動きが封じられて引き寄せられるエルバエルにバルバトス・アステールは膝のドリルニーをブチ込もうとする。
回避も防御も出来ない珠樹は自分がやられる事を覚悟した。
「ちょーっと待った!」
バルバトス・アステールのドリルニーがエルバエルを貫く前に2機の間にキマリス・トライデントが割り込んだ。
キマリス・トライデントは道中でグングニルとドリルランスを捨てて身軽になり、2枚のシールドと両腕で胴体部を守った状態で間に入りエルバエルの変わりにドリルニーを受けたのだ。
バルバトス・アステールのドリルニーはキマリス・トライデントの2枚のシールドと両腕を貫通するも、胴体までは達する事は無かった。
それでもキマリス・トライデントは両腕を潰されて戦闘能力を殆ど奪われた事になる。
しかし、ドリルニーが胴体を潰せなかった時点で貴音の勝利だった。
ドリルニーがキマリス・トライデントを貫いた状態でバトル終了のアナウンスが入る。
「終了? 時間切れか」
「貴音。ぐっじょぶ」
貴音の目に無意識の内に入ったのはバトルの残り時間だった。
その残り時間が残りわずかだった事に気が付いた貴音は確実に勝利する為の手段として珠樹を庇ったのだ。
大会のルールでは制限時間が切れた時点で互いのチームの残りガンプラの数で勝負が決まる。
星鳳高校は千鶴の初手の狙撃で龍牙がやられて静流も何とか喰らい付いて残っている為、残りのガンプラの数は2機。
対する皇女子高校のガンプラは損傷が大きいキマリス・トライデントがいるものの3機とも残っている。
もしもその時点で残りのガンプラ数が同じであればインターバルを置いて残ったガンプラから代表の1機により一騎打ちで勝負を付ける。
1対1でのバトルとなれば星鳳高校は大我が出る事は確実で単体で大我を相手にする事は厳しい。
だから貴音はバルバトス・アステールを止めるのではなく、時間切れまで3機を維持する事で判定勝ちに持ち込んだのだ。
決勝戦は判定により残りのガンプラ数の多かった皇女子高校が勝利となり地区予選決勝戦は皇女子高校の優勝で幕を下ろした。
「俺が最初にやられたせいだ……すんません!」
GBNからログアウトすると、すかさず龍牙が勢いよく頭を下げる。
バトルは負けたが、すでに全国大会には進む事が出来る。
観客達も皆、1機も落とせなかったものの皇女子高校を追い詰めた星鳳高校の健闘を称えて歓声を上げている。
誰も龍牙を責める事はないが、龍牙自身はそうは思ってはいない。
最初の攻撃で龍牙がやられていなければ、判定負けをする事もなく、バトルに参加出来て結果も変わっていたかも知れない。
「……別に。お前の責任じゃねぇよ」
大我はポツリとそう言うと通路の方に歩いて行く。
龍牙は大我からは何を言われても仕方がないと思っていたため、意外な言葉に拍子抜けする。
「ちくしょう」
通路で一人になった大我は備え付けのベンチを力の限り蹴り飛ばす。
「意外ね。貴方が神君にあんな事を言うなんてね」
大我の様子が気になった静流は後を追いかけて来たらしく、大我はそっぽを向く。
「アイツは俺の邪魔をしないって最低限の仕事はしたんだ。文句はないよ」
静流はそこで龍牙に対しての言葉が龍牙を励ます為の物ではないと気が付いた。
大我にとって龍牙は始めから戦力として考えてはいなかった。
だからこそ、始めに何も出来ずに撃墜されても始めから戦力として見ていなければ痛手でもなんでもない。
むしろ、下手に生き残り大我の邪魔になるくらいなら早々に撃墜されていてくれた方が大我にとっては都合がいいとすら思っているのだろう。
「アイツがやられも俺が姉ちゃんたちを全員ぶっ潰せば勝てていた」
「それはそうだけど、相手は去年の準優勝校で藤城君のお姉さんたちでしょ? そう簡単に勝てる相手ではないわ」
「関係ない。相手が誰であろうと敵はぶっ潰す。それが俺のエースの仕事だ。勝てないエースに存在する価値はない」
相手は今までとはガンプラの性能もファイターの実力も連携の練度もレベルが違う。
大我が幾ら高い能力を持っていようとも、そう簡単に勝てる訳が無い。
だが、大我にとっては相手が誰であっても負けたと言う事実が重要なのだ。
チームのエースとしてチームを勝たせる責任がエースにはある。
静流は大我に何も言い返せない。
去年は静流が星鳳高校のエースとして期待されていた。
結果としては3回戦までは勝ち進めたが、そこで負けた。
その時、静流は友軍はあっさりとやられて一人で戦った。
そんな状況では勝てなくても仕方がないと悔しさはあっても静流は割り切って納得した。
敗北を受け入れた時点で静流はチームのエースとしての資格は無かったのだろう。
「全国では今日のような無様な戦いはしない。誰であろうと俺の前に立つ敵は全員ぶっ潰す」
大我はそう言って帰って行く。
その後、観客席でバトルを見ていた史郎たちと合流してその日は解散となった。
GBN主催のガンプラバトル全国大会は東京からは星鳳高校と皇女子高校が出場する事が決まっている。
続々と各都道府県の代表が決まり、それぞれが全国成果を目標に夏の全国大会までその爪を研ぎ澄ますのだった。