ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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ガンプラアイドル

 毎年開催されているGBN主催のガンプラバトル全国大会は学生達の長期休暇である夏休みに行われる。

 各都道府県の地区予選から勝ち抜いた全64校が静岡に集まり激闘を繰り広げられる。

 東京地区予選で準優勝して全国大会に出場する星鳳高校はある問題に直面していた。

 全国大会は10機までのガンプラで行われるフラッグ戦だ。

 星鳳高校ガンプラ部は今年は部員はギリギリで何とか部として認められている状態だ。

 10年ぶりの全国大会出場を決めて学校もある程度はサポートを決めているが、元々余り部活には力を入れていない為、余り当てには出来ない。

 現在は部員は6名で1人はバトルを行わない為、5人に生徒会長の如月諒真を入れても後4人は必要となる。

 全国大会に出場できる為、学内でガンプラバトルをしている生徒達はこぞって大会への参加を希望しているものの実力的な問題で補欠扱いに留めている。

 

「なぁ静流。ガンプラアイドルのアイちゃんって知ってるか?」

「は?」

 

 気温も上がりすっかりと夏に入り生徒達も制服を夏服にして、夏休みがまじかに迫ったある日の事、大我が放課後学内で偶然会った静流にそう尋ねる。

 静流は一瞬、最近の熱さで大我の頭がおかしくなったのかと思ってしまう。

 皇女子高校に判定負けした翌日、大我の事を心配したが本人は全く気にした素振りは無かった。

 本人曰く、あのバトルは時間切れにならなければ勝てたから実質的には自分の勝ちだったと負け惜しみもはだはだしい理論を振りかざして負けた事自体をなかった事にしていた。

 静流としても一度の敗北をいつまでも引きずるよりかはマシだと特に何も言わなかった。

 

「だからアイちゃんだよ」

 

 大我が言い直し静流は自分の聞き間違えではないと思い知らされる。

 

「最近ランキングを上げて来ている?」

「そうそのアイちゃんだよ」

 

 静流もそのハンドルネームには聞き覚えがある。

 ここ一か月くらいで急激にランキングを上げているダイバーの名がアイちゃんだ。

 アイちゃんのGBNでの活動は特徴的で単にバトルを行うのでなく、GBN内でアイドル活動をしているのだ。

 オープンワールド内の都市でライブを行うなど、非公式ではあるが、ガンプラアイドルとしては名が売れて来ている。

 

「そのアイちゃんがどうかしたの?」

「この前GBNで倒した奴が言ってたんだよ。お前程度の奴なんてアイちゃんの敵じゃないってな。だから興味が出て来た」

「成程」

 

 大我がGBNにログインする度に自由同盟のダイバーが大我に絡みバトルで叩きのめすと言う事はもはや恒例となっている。

 そのダイバーの中にアイちゃんのファンがいたのだろう。

 大我がアイちゃんの事に興味を持ったのはアイドルに興味がある訳ではなく、バトルの実力者だから興味を持ったらしい。

 大我がアイドルに目覚めていないと知り静流は内心安堵した。

 

 

 

 

 

 

「そうね。それに詳しい人を知っているから案内するわ。付いて来て」

 

 静流は大我を部室まで連れて行く。

 部室では史郎が全国大会用の資料をまとめている。

 

「部長はアイちゃんのファンクラブの会員でしたよね」

「へ? そうだけど……いきなりどうしたんだい?」

 

 静流の言うガンプラアイドルのアイちゃんについて詳しい人物とはガンプラ部部長の史郎のようだった。

 史郎はアイちゃんのファンでファンクラブにも入る程だ。

 余り学校では公表していない為、ガンプラアイドルが好きだと知られて史郎は少し目が泳いでいる。

 静流は簡単にこれまでの流れを史郎に説明する。

 

「これがアイちゃんだよ。可愛いだろ」

 

 史郎はPCでアイちゃんのライブ動画を流す。

 PCにはピンク色の髪でいかにもアイドルと言った衣装を身に纏いライブザクウォーリアの手の平で踊るダイバーが映される。

 

「こんなのはどうでも良い。肝心なのはバトルの腕前だ」

 

 大我はライブ自体には一切の興味も示さず早送りをする。

 するとライブの後に毎回行われるバトルの様子が映される。

 アイちゃんのガンプラはピンク色に塗装されブレードアンテナの付いたガーベラテトラだ。

 バトルシーンに入りバトルが開始される。

 

「へぇ。以外とやるわね」

 

 静流もアイちゃんのバトルを見て素直に関心している。

 アイちゃんのガーベラテトラの動きは素人のものではない。

 バトル相手もそれなりの実力者だが、アイちゃんは優位にバトルを進めている。

 有名なガンプラアイドルがランキングで上がって来ていると言うだけでは、対戦相手がわざと手を抜いた接待バトルも考えられたが、それを抜きにしても実力者だと言う事は確かだだろう。

 大我もその様子を見ている。

 

「この動き……どこかで。アイちゃん……成程な」

 

 大我はボソボソと何かを呟いていると何か思いついたようだ。

 

「藤城君?」

「ああ……助かった」

 

 大我はそう言うと部室を出ると学校内のある場所に向かった。

 そこは生徒会室。

 中では諒真たちが生徒会の仕事をしている。

 

「大我? 悪いが全国のメンバーは思うように集まってないんだよ」

「それはどうも良い。諒ちゃん。少し副会長を借りても良い?」

 

 諒真は大我の頼みに少し怪訝そうな顔をする。

 指名された副会長の縦脇愛依も自分に大我が何の用があるのか分からずに首をかしげている。

 

「余り時間は取らせないからさ」

「分かった。縦脇」

「はい」

 

 愛依は諒真も了承した事で、余り気のりはしないが席を立ち廊下に出る。

 

「それで藤城君。私に何の用ですか?」

「アイちゃん」

 

 大我がそう言うと愛依はびくりとする。

 その反応を大我は見逃さない。

 

「やっぱりアンタだったのか」

「……何の事です? 私がアイドルな訳……」

 

 あからさまに目を反らしながら愛依は自分の失言に気が付いた。

 大我はアイちゃんとしか言っていない。

 そこから必ずしもガンプラアイドルを連想する訳ではない。

 

「この前のバトルで動き……上手く誤魔化していたようだけどアイちゃんの動きの癖といくつか共通点があった」

 

 大我は部室で見た動画から以前に大我がガンプラ部に入るハメになったバトルで愛依のシュトゥルムケンプファーの動きとアイちゃんのガーベラテトラの動きの癖が同じだと気が付いた。

 それは意図的に真似出来るものでも愛依がアイちゃんのファンだとしてもまず意識して真似は出来ないレベルの癖だ。

 

「そんでアンタの下の名前は「めい」……これは「あい」とも読めるよな」

 

 動きの癖を見抜いた後、大我はそこに気が付いた。

 GBNを始める際にゲーム内でのハンドルネーム、通称ダイバーネームを決める際には色々な法則がある。

 語呂や好きな言葉や物、人物から取るパターン。

 史郎や龍牙のように自分の名前や苗字をそのままやカタカナやひらがな、一部を英語化するパターン。

 現実世界でのあだ名を使うパターン。

 そして、自分の名前の別の読み方を使うパターン等だ。

 愛依は読みはめいだが、一目見ただけではあいとも読める。

 動きの癖とダイバーネームの付け方の法則からその可能性に辿りついた大我はカマをかけて見たら面白いくらいに引っかかった。

 以前にバトルした時とはアバターやダイバーネームが違ったが、同じアカウントでも複数のアバターを使い分けるダイバーもいる為、不正行為ではない。

 

「……何が目的なの?」

 

 愛依も自分の失言で完全に気づかれたと確信して敵意を見せる。

 大我の目的は分からないが、素性を隠しているアイドルの素性を知った人間の取る行動は大体ゲスだと愛依は思っている。

 

「俺と戦え。前のような手抜きじゃない。本気のお前と」

「断ると言えばどうなるのかしら? 私の正体を拡散でもするのかしら? それでも私は構わないわ」

 

 愛依は強がってそう言う。

 

「そんな事はしない。ただ、それだとこの後が暇になって諒ちゃんと話しでもしに行こうかと思っている。最近にGBNでの事とか話したい事は山ほどあるしな」

 

 大我は遠回しに言うが、要するに大我は諒真にその事を話す気だと言う事だ。

 ネット上で拡散される程度なら愛依は幾らでもやりようはあった。

 しかし、諒真に知られると言う事は愛依にとっては最も厄介な事だからだ。

 諒真の性格上、不用意に言いふらしたりはしないが、顔を合わせる度にその事をネタにしてからかって来る事は分かり切っている。

 大我もそれを知っているからこそ、諒真に言うと脅しに来ているのだろう。

 

「……分かったわ。貴方と戦えばこの事は黙っていてくれるのね」

「ああ。約束する」

「私はまだ生徒会の仕事があるから今夜7時にGBNのディオキアで待ち合わせをしましょう」

「分かった」

 

 大我もアイちゃんとバトルさえできれば場所はどこでも良かった。

 バトルの約束を取り付けた大我は愛依と別れて下校する。

 

 

 

 

 

 

 

 大我は早めに夕食を済ませると家のガンプラルームに向かう。

 そこには家族の共有のガンプラ制作用の道具が一式揃えられているだけではなくGBNへのログイン用の機材が家族5人分が完備されている。

 皇女子高校のようなガンプラバトルの強豪校では学校でログインできるように設備が整えられているが、個人宅で完備されている事は珍しい。

 藤城家は母方の祖父が大のガンプラ好きであり、大我の家にも家族分のGBNへのログイン用の端末を買い与えた。

 大我は普段GBNにログインする時は大抵家からログインしている。

 大我は指定された時間の少し前にログインして指定されたディオキアに向かう。

 

「来たぞ」

 

 ディオキアに到着するとそこにはすでにアイちゃんこと愛依のピンク色のガーベラテトラが待っている。

 

「みんな~!」

 

 普段の愛依を知る者からは想像の出来ない甲高い声で愛依はそう言うと周囲から多数のライブザクウォーリアが出て来る。

 ライブザクウォーリアはそれぞれがブレイズ、スラッシュ、ガナーのウィザードを装備し、肩のシールドにはアイちゃんの姿が描かれている。

 

「誰も一人で来るとは言ってないよね~」

 

 ここに集まったライブザクウォーリアのダイバーたちは皆アイちゃんのファンクラブのメンバーたちだ。

 愛依は大我に勝負を挑まれたてから時間までの間に自分のファンをここに集めた。

 

「別に構わないさ」

 

 完全に嵌められた形になるが、大我は別に気にしてはいない。

 大我にとっては倒せる相手が一人から大勢になったに過ぎないだけで寧ろ好都合とも言えた。

 

「いつまでそんな強がりが言えるのか楽しみだな~」

 

 愛依はそう言うとライブザクウォーリアの大軍の後ろに隠れる。

 

「まぁ良いが……」

 

 軽く見ただけでもライブザクウォーリアの数は100機近い。

 場合によっては更に増える可能性もある。

 周囲がピンク一色で少々目に悪いが、大我は戦いを始める。

 手始めに近くのライブザクウォーリアをバーストメイスで潰す。

 背後からビームアックスを振るうライブザクウォーリアをテイルブレイドで貫く。

 

「よくもアイちゃんに付きまとって!」

「アイちゃんは僕達は守る!」

 

 圧倒的な力を見せるバルバトス・アステールにライブザクウォーリアは果敢に挑む。

 恐らくは愛依はファン達に性質の悪いダイバーに粘着されているとでも吹き込んだのだろう。

 元々、自由同盟との一件で少なからず悪評の広まっている事や彼らにとってはアイちゃんの言う事は絶対正しいと盲信している事もあり、大我を何としてでも倒そうと言う気概を感じる。

 

「まさか……君がそんな事をしていたなんて……僕は部長として君を……」

 

 バルバトス・アステールは近くのライブザクウォーリアをバーストメイスで潰す。

 潰す前に聞き思えのある声で通信が入って来たような気もしたが、大我は気にする事もなく次から次へと湧いてくるライブザクウォーリアを潰してはまた潰していく。

 

「成程……ドルオタもここまで来ると大した物だな」

 

 バルバトス・アステールがバーストメイスを振るいライブザクウォーリアがシールドで身を守ろうとするが、攻撃が当たる前にシールドをどけて胴体が潰される。

 すでに同じようにシールドで守ろうとする動作とした後に攻撃をシールドで守らずにやられるダイバーが何人もいる。

 彼らは皆、シールドに描かれているアイちゃんで自らの身を守るくらいならやられた方がマシだとして誰一人としてシールドで身を守ろうとはしない。

 すでに何十機と撃破した中で、一人としてシールドで身を守ろうとしないのは大我も関心するしかなかった。

 それから一時間以上もの間、大我は休む事無くライブザクウォーリアを倒し続けた。

 一見無限に湧いて出るかのように思われたライブザクウォーリアだがついには増える事もなくなり、バルバトス・アステールは最後のライブザクウォーリアをバーストメイスで叩き潰した。

 

「これで最後か……副会長はどこだ?」

 

 ライブザクウォーリアを殲滅したが、すでに周囲にはガーベラテトラの姿はない。

 だが、モニターの端にディオキアの基地の方に逃げていくガーベラテトラが見える。

 

「基地に誘っているのか」

 

 逃げる気であればライブザクウォーリアを殲滅している時に逃げる事も場合によってはログアウトする事も出来た。

 それでも大我に見つかるタイミングで基地の方に逃げたと言う事は逃げたのではなく、基地に誘い込む事が目的なのだろう。

 向こうが基地に誘い込むと言う事は基地での戦いで有利に事を運ばせる算段があると言う事だ。

 大我は誘われていると知りつつもその誘いに乗る事にした。

 

「まさかあれだけの数を一人で殲滅しちゃうなんてね~」

 

 ガーベラテトラは追いかけて来るバルバトス・アステールにビームマシンガンを撃ち込んで身を隠す。

 

「まぁ分かってたけどね」

 

 建物の影から腕部の機関砲を撃つとすぐに身を隠す。

 

「そう来るか」

 

 バルバトス・アステールはガーベラテトラを追う。

 次にガーベラテトラを見つけた時には左手にビームランチャーが握られていた。

 ガーベラテトラのビームをバルバトス・アステールはシールドスラスターで守り200ミリ砲で反撃する。

 ガーベラテトラは持っていたビームランチャーを投げつけて200ミリ砲を防ぐ。

 ビームランチャーは空中で破壊されて爆発して、ガーベラテトラは爆風に紛れて建物の影に姿を隠す。

 

「また姿を隠したか……それにさっきの火器は」

 

 姿を隠したガーベラテトラを探していると、ガーベラテトラはスキウレをバルバトス・アステールに向けていた。

 スキウレのビームをバーストメイスで弾く。

 ガーベラテトラはすぐにスキウレから離脱してバルバトス・アステールはシールドスラスターの機関砲でスキウレを破壊しておく。

 

「成程な」

 

 大我は愛依が基地に誘い込んだ理由が読めて来た。

 この基地内には予め大量の武器がいたるところに隠してあるのだろう。

 1機のガンプラに装備出来る武器の数には限界がある。

 一般的にガンプラの装備を変えるには格納庫で設定を変えるしかない。

 大量の武器を装備させればその分、機動力が落ちる。

 千鶴のグシオンシューティングスターのように始めから余り動かないで砲撃に徹する事を前提としたガンプラならともかく、高い機動力が売りのガーベラテトラでは重装備は足かせとなる。

 それを克服する為に事前に基地に武器を隠して身を隠しながら武器を回収して使っては捨てているのだろう。

 通常のフリーバトルなら事前に武器をフィールドに隠す事は不正な手段を使わねば出来ないが、オープンワールド内でなら可能だ。

 

「そろそろこっちの狙いも気が付いた頃だしどう出る? エース君」

 

 ガーベラテトラは隠していたバズーカを取りだす。

 するとバルバトス・アステールが基地の格納庫の壁をブチやぶって出て来る。

 とっさにバズーカを向けるが、バーストメイスに弾き飛ばされて止む無くビームマシンガンを撃ちながら大きく後退して逃げる。

 

「次の武器は……」

 

 愛依は逃げながらも基地内のマップを表示する。

 そこには事前に隠しておいた武器の在り処と種類も表示されている。

 そこからバルバトス・アステールと遭遇しないようにルートを選んで武器を取りに行く。

 

「お次はこれにしよっかな~」

 

 隠していたコンテナから対艦ライフルを取りだそうとするが、コンテナを開けた瞬間にバルバトス・アステールのテイルブレイドが対艦ライフルを破壊する。

 

「もう追いついてきちゃったようね」

「ここでなら時間切れは無いんだ。俺にいつまでも付き合って貰うぞ」

 

 隠した武器を探して戦うガーベラテトラだが、バルバトス・アステールにまともにダメージを与える事が出来ない。

 一方のバルバトス・アステールは基地の損害等まるで気にしないで暴れている。

 その暴れっぷりから近くに来ていた他のダイバーが何事かと様子を見に来て暴れているバルバトス・アステールを見つけて止めようとしたところを有無を言わさず叩き潰したガンプラは1機や2機ではない。

 

「次の武器は……」

 

 すでにバトルと言うよりも基地を無差別破壊しているバルバトス・アステールから逃げながら愛依は次の武器を探そうとする。

 何回か前から探す事も一苦労になっていたが、ついには隠している武器が全て使用済みかバルバトス・アステールの無差別破壊で使えない状態となっていた。

 

「まさか!」

「さぁ……そろそろ終わりなんじゃないか?」

 

 愛依はそこで大我の思惑に気が付いた。

 愛依の策は通常のガンプラが装備出来る装備数を大きく超える事が出来るが、それでも有限だ。

 有限であろうとも一度の戦闘で使う火器の量を遥かに超えている為、考えてはいなかった。

 戦闘時に武器を全て使い切ると言う可能性を。

 

「やってくれるじゃない……」

「そっちが先に長期戦を仕掛けて来たんだろ」

 

 元々、愛依が自身のファンを使って物量で攻めて、その後も勝って知ったる基地で大量の武器を用意して挑んでいる。

 大我は愛依の策に乗り、愛依の方が先に手が尽きた。

 ただそれだけの事だった。

 

「どうするアイちゃん?」

「……あんまり舐めるんじゃないわよ!」

 

 愛依は逃げる事を止めた。

 ガーベラテトラはビームサーベルを抜いてバルバトス・アステールに突っ込む。

 だが、それはテイルブレイドにより腕を破壊されてしまい武器を失ったまま、突っ込む事になりバルバトス・アステールはバーストメイスを振り上げてガーベラテトラを吹き飛ばす。

 バーストメイスを胴体に受けたガーベラテトラは胴体がひしゃげながらも基地の格納庫のシャッターに叩き付けられる。

 それほど勢いをつけてなかった事もあり、完全に撃墜はされていなかったが、もはやガーベラテトラに戦闘能力は残されてはいない。

 バルバトス・アステールは周囲に気を配りながらガーベラテトラに近づく。

 

「煮るなり焼くなり好きにしなさいよ」

「そうだな。その前に提案がある」

 

 愛依もすでに勝ち目はないとふんで大人しく敗北を認めて止めを待っている。

 この状況でもログアウトをしないのは愛依のせめてでも抵抗なのだろう。

 

「何よ」

「アンタは中々面白い戦い方をする。実力もまぁまぁだ」

「それはどうも」

 

 その戦い方も大我には通用しなかった今の状況で言われも馬鹿にしているようにしか聞こえない。

 

「それでだ。アンタもガンプラ部に協力してやって全国に出て見ないか?」

「は?」

 

 愛依は大我の言葉に目を丸くする。

 ガンプラ部が全国大会出場を決めて、諒真も大会に出て足りないメンバーを諒真が探している事は愛依も知っている。

 諒真も愛依がアイちゃんとしてGBN内でアイドル活動をしている事は知らないが、ガンプラバトルでそれなりの実力者だと言う事は知っている。

 それでも諒真が頼めば会長として強制させてしまいかねない為、諒真も敢えて生徒会のメンバーを自分からは誘ってはいない。

 

「この状況で断る事は出来ると思っているの?」

 

 状況的に大我がその気になれば止めを刺せる。

 その上、大我は愛依の弱みを握っている。

 そんな状況では強制しているも同義だ。

 

「別に強制はしない。その気がないのなら別に構わない。無理やり入れたところで邪魔でしかないからな」

 

 半ば脅迫しているも同然の状態だが、大我はその気はないと言う。

 

「アンタとまともに話せる時は余りないからな。だから話せる時に言っておきたかっただけだ。大会まではまだ時間はある。ゆっくりと考えて置いてくれ」

 

 大我がそう言うとバルバトス・アステールはバーストメイスを振り上げる。

 大我は愛依にその事を伝える為に止めを刺さずにいたが、バトルと大会参加の勧誘は別だ。

 言いたい事を言った大我にこれ以上待つ理由はない。

 動けないガーベラテトラの胴体にバーストメイスを振り下して止めを刺した。

 その翌日、愛依は諒真に自分もガンプラ部に協力する事を伝え、正式に全国大会出場メンバーとなった。

 残りの必要人数は3人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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