愛依が全国大会出場メンバーとなり必要な人数は残り3人となった。
そんなある日の放課後の事だ。
「藤城君」
授業が終わりGBNにログインする為に帰ろうとした大我を明日香が呼び止める。
龍牙はすでに授業が終わると否や飛び出して行った為に珍しく明日香一人で大我に声をかけて来た。
基本的にガンプラ部関連では龍牙と明日香はセットでいる事が多く、明日香が一人で大我に話しかける事は珍しい。
「清水? 何か用?」
大我は少し面倒臭そうに答える。
「この後時間ある?」
「……少しなら」
「話があるの」
大我は早いところ帰ってGBNにログインしたいので早いところ切り上げたかったが、明日香に渋々付いて行く。
そして、明日香に連れられて大我は人気のない校舎裏まで連れて行かれる。
「それで?」
「藤城君……私にガンプラの作り方を教えて欲しいの!」
「ハァ……他を当たってくれ」
大我はため息をつくとそう答える。
大我からすれば明日香にガンプラ作りを教える義理は無い。
「ちょっと! 待ってよ!」
「何で俺なのいつも一緒のアイツとか川澄とかに頼めば良いだろ」
ガンプラ作りを教えて欲しいと言うなら行動を共にする事の多い龍牙やビルダーとしては高い能力を持つ岳がいる。
「先輩達には何か話し辛いし、龍牙には後で驚かせたいから駄目なの。頼めるのは藤城君しかいないのよ」
「そんな事は知らん」
明日香の事情は大我には関係もなければ興味もない。
大我は早いところGBNにログインしてバトルがやりたい。
「そこを何とか!」
「知らん」
大我は早いところ切り上げて帰りたかったが、明日香は食い下がる。
「……分かった。今回だけだからな」
「本当? やった! ありがとう藤城君!」
これ以上、問答をする事の方が時間の無駄に思えて来た大我の方が先に折れた。
大我も渋々、明日香と共に模型店に向かう。
二人が向かった模型店はこの辺りでは大型の店舗であり、模型店ではあるが、ガンプラ専門店で多数のガンプラや買ったガンプラを組み立てるビルドスペースやGBNへのログインも可能なゲームコーナーも併設されている。
「……聞いてはいたけど数が多いよね」
「まぁな。それでガンプラを作りたいって事だが、どれにするんだ?」
ガンプラを作る前にまだ明日香はガンプラを持っていない。
まずは作るガンプラ選びから始めなければならない。
「どれがおすすめ?」
「さぁな。選ぶ基準と言っても色々あるからな。素組でもガンプラによっては武装や特性は異なるからな。それに改造次第で特性も好きなように弄る事が出来る」
ガンプラを選ぶ基準は人によって様々だ。
元々、好きなMSを選ぶ事やガンプラの特性から選ぶ事もある。
ガンプラにもそれぞれ素組でもそれぞれ異なる特性がある。
例えば大我の使っているガンダムバルバトスは作中設定において動力炉であるエイハブリアクターを2基搭載されている為、圧倒的なパワーを発揮できると言うものがある為、素組の状態でもパワーの値が通常値よりも高めに設定されている。
また、武装の面でも特性が出て来る。
バルバトスは標準装備で付いて来るメイスによる接近戦での協力な一撃を得意としたパワー重視の近接戦闘型のガンプラで龍牙のデスティニーガンダムは対艦刀による近接戦闘にビームライフルによる射撃戦、長距離ビーム砲による砲撃戦とどの距離でも戦えるバランスの取れたガンプラと言ったように素組の状態でも特徴がある。
だが、それらは素組の状態での特性であり、岳のように徹底的に作り込むだけのビルダーもいるが、多くのファイターはガンプラを作る上で様々な改造をす事が多い。
改造によりガンプラの特性が大きく変わる事もある。
大我のバルバトス・アステールはバルバトスの持つパワーと一撃の攻撃力を付きつめた改造だが、龍牙のバーニングデスティニーは本来の汎用性を全て捨てて素手による近接格闘戦に特化させている。
静流のアリオスガンダム・レイヴンはアリオスガンダムの持つ可変機構と機動力を生かしつつも火力を上げてどの距離でも戦える汎用性を持たせている。
このように改造する事でガンプラの可能性は無限に広がって行くと言っても過言ではない。
「んー良くわかんないよ」
「……なら、清水はどうして急にガンプラ作りを教えて欲しいと言い出したんだ?」
機能の面からでは選ぶ基準は選ぶ事は難しいそうだった為、大我は別の方向から選ぶ事にする。
元々明日香は龍牙に付き合ってガンプラ部に入部した。
ガンプラにもガンダムにも興味が薄く、入部してもガンプラを作る事は無かった。
だが、全国大会を前にして明日香は大我にガンプラ作りと教えて欲しいと頼みに来た。
そこには何か理由がある筈だ。
その理由がガンプラ選びに繋がるかも知れない。
「そうだね。前々から龍牙と一緒にGBNにログインする事はあったんだけど、地区予選での龍牙を見ていたら私も龍牙や部の皆のガンプラバトルをやりたくなったんだと思う」
明日香自身、そこまで深い考えがある訳ではない。
だが、全国を目指して戦う龍牙を見ていたら自分もやりたくなったと単純な理由らしい。
「そうか……ならコイツなんてどうだ?」
大我はガンプラの山から一つの箱を持って来て明日香に見せる。
「レ……ジェンド。伝説って意味だよね。なんか私が使っても名前負けしそうだけど……」
「別に機体名は関係ない。それを言えば俺のバルバトスは悪魔の名前だぞ」
明日香は内心、悪魔の名を持つガンプラは大我にぴったりだと思ったが口には出さない。
大我が持って来たガンプラは龍牙のデスティニーガンダムと同じシリーズに登場するレジェンドガンダムだった。
「アイツと並んで戦うのであればコイツがぴったりだ」
「ふーん。分かった。ならこれにする」
明日香は大我の言っている事は理解していなかったが、そこまで選ぶガンプラに拘りがある訳でもない為、取りあえずは大我の進めるままレジェンドガンダムを購入する。
「ビルドスペースで作るの?」
「いや……俺が教えるんだ。半端なガンプラを作る事は許さん」
ビルドスペースには最低限の工具が揃っているが、そこで組み立てても時間の制限がある。
明日香は大我に連れられて模型店を出る。
大我に連れられて来たのは大我の家だった。
そこならビルドスペースで作るよりも工具も揃っており、改造用のガンプラの部品も事欠かない。
「ここって藤城君の家だよね」
「ああ。今日はうるさい奴もいないから静かにガンプラ作りが出来る」
大我の家には大我と明日香以外はいない。
皇女子高校は全国大会出場を決めて夜は遅くまで学校で練習やミーティングを行っている為、大我の家族が帰って来るまでは誰もいない。
今更だが、明日香は異性の家に来た事は龍牙の家くらいだ。
幼い頃から一緒にいた龍牙の家に二人きりでも気にする事は無かったが、クラスメイトで同じ部活の異性である大我の家で大我と二人きりになれば嫌でも意識してしまう。
「ここでガンプラを作るぞ」
案内された部屋を見て明日香は少なからず安堵した。
龍牙の部屋もガンプラだらけだが、案内された部屋はガンプラしかない。
ここまでガンプラ一色だと何か起きるかも知れないと思った事が馬鹿らしくなる。
「今日は取りあえずレジェンドを組み立てる」
「……今日は?」
「馬鹿か。ガンプラを舐めるなよ」
明日香はそこまで力を入れてGBNをプレイしたいとまでは思っていなかったが、大我はやるからにはとことんやるつもりだ。
明日香も観念してレジェンドの箱を空ける。
道具を借りて明日香は説明書を見ながら、時に大我に罵倒されながらもガンプラをくみ上げた。
「中々器用だな」
「……どうも」
明日香は龍牙から最近のガンプラは簡単に作れて素組でも出来が良いと聞いていたため、組み立てるだけなら簡単だと思っていたが、甘かった。
説明書通りに組み立てる中でも大我が細かい部分までも指摘して作っていたため、完成したのは完全に日が落ちてからだ。
「これが私のガンプラ……」
思った以上に苦労して作ったが、実際に完成したレジェンドにはどこか愛着が湧いている。
「今日はここまでだな。明日からは改造の方向性について煮詰めるぞ」
「……うん」
それから次の日の授業が終わるとすぐに大我の家でガンプラ作りの続きを行う。
「まずレジェンドの機体特性だが、機体の一部を分離させて遠距離操作してオールレンジ攻撃を行う事が可能なドラグーンシステムにある」
「生徒会長とか黒羽先輩のガンプラが使っている奴みたいな奴でしょ?」
「そうだ。だが、コイツを扱うのは初心者には難しい」
レジェンドを初めとしたファンネルやビットと言ったオールレンジ攻撃の操作方法はオートとマニュアルの2種類ある。
オートは予め組んでおいたプログラム通りの動きをさせて、ファイター側の負担は少ないが、動きが規則的である程度の実力者なら十分に対応できる。
マニュアルは全てをファイターが直接操作するもので、オートに比べれば動きはその場で変える事も可能だが、ファイターへの操作の負担は大きくなる。
諒真もマニュアル操作だが、多数のビットを不規則に動かしていたため、本体を殆ど操作していないと言う弱点を持つ事になった。
「だからコイツは取っ払う」
大我はそう言うとレジェンドのバックパックを取り外す。
明日香にはドラグーンを扱うのは難しいと判断して、難しいならドラグーンを装備する必要はないと割り切ってバックパックを取り外したのだ。
「その変わりにレジェンドには無改造でもインパルスのシルエットが付けられる。それを利用してバックパックはシルエットを使う」
「しるえっと?」
明日香には専門的な用語は分からないが、レジェンドにはインパルスのシルエットがそのまま使える為、外したバックパックの代用が出来る。
「アイツと一緒にガンプラバトルをする事を想定すると同じような近接戦闘型は避けて中遠距離の射撃型か砲撃型の方が相性がいいな」
「うんうん」
大我に明日香は適当に相槌を打つ。
すでに明日香のガンプラの知識では頭が追いついてはいかない。
相槌を打つ明日香を余所に大我はゴソゴソとガンプラのパーツボックスを漁る。
そこには藤城家でガンプラ制作の練習等で出たガンプラを部品単位にばらした物で、その中の物は家族で自由に使っても良い事になっている。
今回はそこのパーツを使いレジェンドを改造する予定だ。
「まぁこんな物だろう」
「おぉ……何か強そう」
明日香と共に色々とパーツを組み替えて行きながら、完成系を模索して行き遂に完成系を見つけた。
レジェンドの特徴とも言えるドラグーンの搭載されたバックパックは外されて変わりにブラストシルエットに変更され、肩のアーマーはストライクの物になり肩にはランチャーストライカーのコンボウェポンポッドが装備されている。
本来は右肩用の装備だが、パーツボックスの中には家族の誰かが左肩用に改造した物を見つけた為、両肩に同じ物が装備されている。
脚部にはジンの物を使いパルデュス3連装短距離誘導弾発射筒が装備されている。
手持ちの火器はベース機のビームライフルをそのまま持たせている。
腰にもドラグーンのユニットが装備されているが、それはそのまま分離させずに固定火器として使えるように大我が可動域を改造している。
「さて……後は塗装だな」
「……まだあるんだ」
これで完成かと思っていたが、最後に塗装作業が残されている。
組み立てたガンプラを一度パーツにばらして、大我の指示の元明日香はレジェンドの塗装を行う。
その日はそれで明日香は帰り、翌日の放課後にはパーツも完全に乾いている為、再び大我の部屋で組み立てを行った。
「なんかここまで改造すると愛着が湧いてくるよね」
組み立てられたレジェンドを見て明日香はそう感じていた。
大我に手伝って貰ったところも多いが、実際に自分で組み立てたガンプラは他のガンプラとは違って見える。
明日香はレジェンドを青や水色を基調に塗装した。
「これで最後だ。コイツに名前を付けてやれ」
組み立てられたレジェンドはこれで完成ではない。
最後に新たな名を与えてレジェンドは初めて明日香のガンプラとして誕生する。
「名前……龍牙がバーニングだから……炎……氷? アイス、ブリザード……」
「グラキエース、グラーフ」
明日香が龍牙のガンプラが炎の名を冠している事から対称的に氷から取ろうと色々と氷を意味する単語を口にしてピンと来る単語を考える。
大我もいくつか挙げる。
「それ! グラーフレジェンド! 何かしっくり来た!」
明日香の中で自身のイメージとしっくり来る名が見つかったようだ。
グラーフレジェンドガンダム、それが明日香のガンプラの名だ。
「そうか。それとコイツをやろう」
大我は何かを取りだす。
それは大我が取り外したバックパックを使って一晩で制作した物だ。
ドラグーンを腰の物同様に固定の火器として使用するドラグーンシールドだ。
その名の通りクラーフレジェンドの左腕に装備する。
大小8基のドラグーンは切り離さずに使えるように可動域を改造し、そのまま相手に向けるだけでなく、シールドで身を守りながらも攻撃出来るようになっており、先端の2基の大型ドラグーンの先端からビームスパイクを出せば格闘戦にも対応し、大型ドラグーンはビームスパイクを出した状態で敵に射出して使う事も可能だ。
「本当? ありがとう! 大我君!」
「どの道、お前のガンプラの部品だからな。さて、ガンプラも完成したんだ。ここからが本番だ」
大我はそう言うとダイバーギアを出した。
レジェンドガンダムを買った時に明日香用のダイバーギアも購入していた。
今まではガンプラを使わずにダイブ出来るゲスト用の物を使っていたが、実際に自分のガンプラを使う際はゲスト用の物ではなく、自身のアカウントを取れるように自分用のダイバーギアが必要となる。
ダイバーギアを受け取って明日香は大我と共に大我の家からGBNにログインする。
「ガンプラの操縦のやり方も教えてくれるんだ」
「本来ならチュートリアルミッションを受けるのが定石だが、そんな温いバトルなんかやってられるか」
大我はコンソールパネルを出していくつかの設定を行う。
GBNにはフリーバトルの他にもオープンワールドを使ったミッションが用意されており、その中にはGBN初心者用のチュートリアルミッションも用意されている。
だが、大我はそれで戦い方を覚えさせる気はないようだ。
「終わった。俺もゲストモードでレジェンドに乗る。お前もコックピットに移動しろ」
大我から操作指示を受けて明日香はクラーフレジェンドのコックピットに移動する。
そのすぐ後ろには大我も乗っている。
「これがクラーフレジェンドの中かぁ……」
「さっさとしろ」
初めて作ったガンプラに乗り込んで感慨にふける明日香を大我が焦らす。
明日香は取りあえず操縦桿を握る。
最低限の操縦方法は分かる。
クラーフレジェンドはカタパルトに移動する。
「清水明日香。クラーフレジェンドガンダム。行きます!」
カタパルトからクラーフレジェンドが射出されると宇宙空間に出る。
「敵はアイツ等だ。設定は実戦レベルにしてある油断するとやられるぞ」
モニターには3機のリーオーNPDが映されている。
リーオーNPDはダイバーが乗っていない所謂NPCであり、練習相手として使われる。
リーオーNPDはクラーフレジェンドに接近しながらマシンガンを撃って来る。
「きゃ! 撃って来たよ!」
「当たり前だ。一々ビビッて目を瞑るな」
いきなり攻撃を受けた事でびっくりしている明日香を大我は後ろからシートを蹴りながら叱る。
「だって……」
「どうせアバターなんだ死にはしない。それに向こうのレベルも低いから当たり所が悪くなければ早々やられる事もない」
大我たちは見た目こそ、普通の人間だがGBNにおいてはデータの塊であるアバターに過ぎない。
その為、胴体を叩き潰されても、ビームサーベルで貫かれても決して死ぬことはない。
やられた時の対価は命ではなく、ダイバーポイントで支払われるだけの事だ。
クラーフレジェンドはリーオーNPDにビームライフルを撃つがビームは当たらない。
「当たらないよ!」
「下手くそなんだ。無理に一発で当てようとするな」
明日香の射撃は一発一発が相手を撃墜する気で撃っている。
だが、明日香自身はまだ射撃能力も高くはない為、リーオーNPDには当たらない。
大我の指摘を受けて、明日香はドラグーンシールドを前に向ける。
先端の2基の大型ドラグーンにはそれぞれ9門のビーム砲が付いており、両方で18門のビーム砲が一斉に放たれる。
それだけの数を撃てば幾ら下手くそでも一発くらいは当たるだろう。
ビームがリーオーNPDに当たると爆発する。
「やった! 倒したよ! 大我君!」
「馬鹿か。一々敵を落としただけで浮かれるな」
初めて敵を撃墜して明日香はレバーから手を放して喜ぶが大我はシートを蹴る。
そうしている間にも残ったリーオーNPDがマシンガンを撃って来る。
「敵を仕留めるなんてのはただの作業だ。一々一喜一憂する必要はない」
大我にとっては多くの敵を相手にする事が多く、敵を仕留める事は作業に過ぎない。
「来るぞ」
残り2機のリーオーNPDがマシンガンで反撃して来る。
クラーフレジェンドはドラグーンシールドを向けるが2機のリーオーNPDは散開する。
「わわっ!」
「落ち着け。常に自分と相手の位置を把握して立ち回れば2機程度ならどうとでもなる」
「そんな事言ったって!」
大我は簡単に言うが今日初めてGBNでガンプラを操縦する明日香には言いたい事は理解出来ても、すぐに実践は出来る訳もない。
クラーフレジェンドはビームライフルを連射するが、当たりはしない。
「攻撃が当たらないなら当てられる状況を作れば良い」
「当てられる状況……」
明日香もある程度は戦いに慣れて来て考えるだけの余裕が出て来た。
バトルの前にクラーフレジェンドの装備は一通り大我からレクチャーされている。
クラーフレジェンドは多数の火器を装備している為、きちんと武器の特性を把握していれば様々な戦い方が出来る。
クラーフレジェンドはブラストシルエットと脚部のミサイルを一斉掃射する。
リーオーNPDの1機はマシンガンでミサイルを迎撃する。
その間に明日香はビームライフルで狙いを定めていた。
クラーフレジェンドがビームライフルを連射して、ビームはリーオーNPDに数発直撃して撃墜された。
「2機目……」
「残り1機から目を逸らすな」
明日香は2機の内片方にのみ意識を集中させていたせいで残り1機のリーオーNPDがビームサーベルで接近していた。
ビームサーベルの一撃をとっさにドラグーンシールドで受け止める事が出来た。
クラーフレジェンドはリーオーNPDを押し戻すと至近距離から両肩の対艦バルカンを撃ち込む。
シールドで身を守りながら後退するが距離が近かった為、リーオーNPDはダメージを受ける。
そこで明日香は思い切って前に出る。
「えぇぇい!」
ドラグーンシールドの先端の大型ドラグーンからビームスパークを出してリーオーNPDに突き刺す。
すでに受けていたダメージもあり、リーオーPNDは撃破された。
「やったよ! 大我君!」
「だから一々喜ぶな。それとリーオーは全機仕留めたが、オープンワールド内では基本的に戦闘行為は自由だ。油断していると不意を付かれて終わるぞ」
リーオーNPDを全機倒した事で喜ぶ明日香を大我が窘める。
初めての勝利に浮かれていた明日香は大我に対して不満そうにしている。
「だが、見どころはある。後は実戦経験を積めばそれなりに戦えるようにはなるだろう」
落とした上で大我は明日香の戦いを評価する。
クラーフレジェンドは重装備の高火力のガンプラだ。
接近戦は余り得意ではなく距離と取って火力で押す事が基本的な戦いとなる。
だが、最後は距離と取ろうとしたリーオーPNDを逃がさずに素早く近接戦闘に切り替えて仕留めた。
その切り替えは大我も初心者にしてはと関心した。
初めてのバトルに勝利したのもつかの間、レーダーに接近するガンプラがあると警報がなる。
「え? まだ終わってないの?」
「いや……違うな」
大我はコックピット内のボタンを操作してモニターを切り替える。
モニターには黒く塗装されたマン・ロディがこちらに向かって来ている。
大我も予定ではリーオーNPDを3機倒すだけだった為、この黒いマン・ロディは大我の用意したガンプラではない。
「マン・ロディか……こっちに来るぞ」
マン・ロディはクラーフレジェンドにサブマシンガンを向けて突っ込んで来ている。
明らかに敵意を持っての行動だろう。
マン・ロディはサブマシンガンを連射して来る。
「撃って来たよ!」
「なら撃ち返せ」
クラーフレジェンドはケルベロスをマン・ロディに向けて放つがマン・ロディは回避する。
すると更に新たなガンプラの反応が現れる。
「シャルドールローグにフリント、グリモア。それにフルクロス。この辺りを根城にしている海賊ってところか」
モニターに映されたのは全部で4機、マン・ロディを入れると5機編成の敵だ。
シャルドールローグは右腕を通常の物に換装し、シールドとアデル用のドッズライフルを装備している。
フリントは黒く塗装されピーコックスマッシャーを装備している。
グリモアも黒一色で塗装されシールドとビームライフルを装備している。
そして、それらの後方からクロスボーンガンダムX1フルクロスが迫って来ている。
「どうしよう! 大我君!」
流石に明日香もこれだけを一人で相手にする事は難しいと言う事は考えるまでもない。
そうしようかと大我に指示を仰ごうとするが、いつの間にかコックピット内には大我の姿は無かった。
その間にマン・ロディがハンマーチョッパーを手に殴りかかって来る。
マン・ロディがハンマーチョッパーを振り下そうとした時、横から何かがマン・ロディの頭上に落ちて来た。
「邪魔だ」
それが何なのかを明日香が認識するよりも早く、コックピット内に衝撃が走る。
明日香の窮地を救ったのは大我のバルバトス・アステールだった。
大我はゲストとしてクラーフレジェンドのコックピットに乗っていたため、一度ガンプラから降りてGBNのエントランスに戻った後に自分のガンプラで戻って来たのだ。
そして、クラーフレジェンドを攻撃しようとしていたマン・ロディにバーストメイスを振り下して破壊した。
その後、バルバトス・アステールは邪魔だった明日香のクラーフレジェンドを蹴り飛ばして海賊のガンプラの方に突っ込んで行く。
近くのシャルドールローグに向かい、ドッズライフルで迎撃されるが、かわして接近するとバーストメイスでシールドごとシャルドールローグを叩き潰した。
バルバトス・アステールを後ろからフリントがピーコックスマッシャーで狙っていたが、テイルブレイドで胴体を貫かれて破壊する。
2機を瞬く間に撃墜したバルバトス・アステールはすぐにグリモアの方に向かう。
グリモアのビームを肩のシールドスラスターで防ぎ、バーストメイスで破壊する。
「凄い……」
今までは大我の事は漠然と強いと思っていたが、実際にガンプラバトルをやって見て大我の実力が良く分かる。
敵を撃墜しても、一切の油断もなく次の獲物を狩りに向かい、それでいて常に他のガンプラとの位置を気にして死角はテイルブレイドを使って補っている。
「これがファイターの世界。龍牙達が見ている光景なんだ……」
観客席からモニターしているだけでは見えて来ない世界。
ここにはそれが広がっていた。
それは明日香がガンプラバトルの世界に足を踏み入れた証拠でもあった。
「それでどうだった?」
襲撃して来たガンプラを退けて大我と明日香はGBNからログアウトした。
ログアウトして、明日香にはバトル後のガンプラのケアを仕方を一通り教えている。
「何か凄かったとしか良いようは無いよ」
「……そうか」
明日香は自分のクラーフレジェンドを手入れしながら今日のバトルを振り返る。
「そう言えば大我君はどうしてガンプラバトルを始めたの?」
「さぁな。特に理由はないな。ウチは爺さんも好きで両親も姉たちもやってたんだ。物心ついた時からガンプラもGBNも身近にあったんだ」
「そっか……そうだよね」
大我の両親はかつてGBNで伝説となったチームのメンバーだ。
その上、姉たちも親の影響でガンプラバトルをやっていれば大我がこの道に進む事は必然だったのだろう。
「それよりもメンテはそのくらいで大丈夫だろう」
「分かった」
明日香はばらしていたクラーフレジェンドを組み立ててしまう。
すでに日も暮れている為、大我は明日香を玄関まで送る。
「今日までありがとう。大我君。また明日学校でね」
「ああ」
明日香を見送った大我は部屋に戻る。
「さて、面倒事も片付いた。今日も一狩り行こうか」
大我は明日香にガンプラ制作を教えて、帰った後にGBNにログインしてオープンワールド内で、名のあるダイバーにバトルを挑んでいる。
今日で明日香にガンプラ制作を教える必要がなくなった事で大我の気分は軽い。
その日は夜遅くまで大我はGBNでバトルを続けた。