ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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進む道

 

 

 八笠竜胆の入部で全国大会で戦う為の頭数が揃った星鳳高校ガンプラ部だったが、ある日の放課後、諒真の呼び出しで学校の会議室に集められていた。

 部員と生徒会の諒真と愛依、顧問の颯太と全国大会のメンバーが皆集められている。

 今日は大我も諒真に無理やり連れて来られたのか、あからさまに不機嫌だが、大人しく座っている。

 呼び出した諒真は両手の肘を机に立てて顔の前で組んでいる。

 会議室は証明を全て付けずていない為、少し薄暗く諒真はただならぬ雰囲気を醸し出している。

 

「諸君。我々は遂に全国大会への切符を勝ち取った訳だが……」

「諒ちゃんは何もしてないけどな」

 

 大我の突っ込みを諒真はまるで聞いていないかのように話しを進める。

 

「我々には最後の試練が残されている……それは……」

 

 勿体ぶる諒真に一同は固唾をのんで待つ。

 

「期末テストだ!」

 

 諒真がそう言うと会議室の空気が一気に軽くなる。

 何の話しかと思えば来週から始まる夏休み前の期末テストの事のようだ。

 諒真がそう言うと愛依が照明を付けて会議室が明るくなる。

 

「俺達を集めて何かと思ったらそんな話し? だったら俺は帰らせて貰う」

「……大我よ。期末テストだからと言って甘く見るなよ。その結果次第では学生にとって最大級の罰とも言える夏休み中の補習があるのだよ!」

「だから? 俺には関係ないね」

 

 大我はそう言い立ち上がろうとする。

 星鳳高校でも成績が悪ければ補習授業を受けなくてはならない。

 しかし、大我にとっては何の関係のない事だ。

 他の部員たちも何事かと思っていたが、大した事ではなかったと安堵している。

 ただ一人を除いては。

 

「会長。その場合。全国大会の方はどうなるんですか?」

「……気づいてしまったようだな。神龍牙君」

 

 軽く挙手をしながら龍牙が神妙な顔つきで質問する。

 諒真はそれを待っていたかのようだ。

 

「残念な事に補習期間と全国大会の期間は重なっている。無論。学校側は全国大会よりも補習を優先させる。つまり……補習を受けねばならない者は全国大会には出られないと言う事だ!」

「なん……だと」

 

 星鳳高校は進学校と言う訳でも部活の強豪校と言う訳ではないが、テストで赤点を取って補習を受けなくていけない場合は補習を優先しなければならない。

 それが全国大会であろうともだ。

 

「会長。ウチは進学校でもないんですから、よほどの事がないと赤点なんて取る訳ないですよ。そんな話しをここで……まさか」

 

 静流がそこまで言うとある事に気が付いた。

 この話しが出た時から龍牙の様子がおかしい。

 そこから静流もある可能性を察した。

 

「そう……そのまさかだ!」

「……すんません」

 

 龍牙も観念したようだ。

 諒真が颯太から紙を受け取り、皆に一枚づつ行き渡らせる。

 そこには龍牙の1学期の中間テストの点が一覧になっている。

 それを見た各々は顔を顰める。

 

「龍牙……」

「9人でも問題はないだろう」

 

 中学時代の龍牙の成績を知る明日香と冬弥は余り驚いてはいないが、他はこの点数が信じられないようだ。

 大我に至ってはすでに龍牙が期末でも赤点と取って全国に出られないと確信を持っている。

 龍牙の1学期の点数は半分近くが赤点で赤点を取っていない教科もギリギリで期末で赤点を取る可能性は十分にあり得る。

 

「藤城……そう言うお前はどうなんだ?」

 

 龍牙は縋るように声を出す。

 だが、現実は厳しい。

 

「藤城君は学年でも10位に入っているよ」

 

 部員の成績を把握している颯太が答える。

 それは龍牙を地獄に落とすには十分な答えだ。

 

「……お前だけはこっち側だと思っていたのに……」

 

 龍牙は明日香から大我の自宅にGBNへのログイン環境が整っている事を聞いている。

 その為、大我は基本的にGBNに入り浸って勉強等ろくにしていないと思っていた。

 だが、実際大我の成績は英語がアメリカで生活していた分、英語教師の微妙な発音の英語が聞き取りにくい等苦手としている以外はほぼ90点を取っている。

 

「馬鹿か。ウチの母親は教師なんだぞ。下手な点数を取って見ろ。GBNへのログインはおろかガンプラにすら触らせて貰えなくなる」

 

 大我の母、麗子は皇女子高校で教師をしている。

 当然、息子の成績にも厳しい。

 GBNやガンプラで遊び呆けて成績が落ちたともなればその原因であるGBNやガンプラに制限がかけられる。

 実際、去年貴音がテストで赤点をとって補習を受けねばならなくなった時はレギュラーにも関わらず、全国大会は補習が終わるまでバトルに出させては貰えず、貴音は全国大会の後半からの出場になっている。

 それを回避する最も効率の良い手段はテストで高得点を取る事だ。

 テストで高得点を取って成績を維持していれば麗子も文句は言わない。

 尤も、龍牙の思っているように大我はGBNに入り浸っていて自宅では全く勉強していないが、その分、授業中に教科書の内容と授業内容を全て覚えている。

 ちなみに他のメンバーの成績は、3年の生徒会長の諒真はいい加減に見えて入学時から学年主席をキープしている。

 部長の史郎も上位とまでは言わないが、学年の平均点の辺りをキープしている。

 2年生は静流は平均点以上を取っているものの上位とまではいかず、副会長の愛依は諒真のように常に主席ではないが、常に学年5位に入っている。

 岳は教科によって偏りはあるものの赤点の心配はなく、竜胆も余り成績は良くないが赤点を取る程ではない。

 1年生で大我意外も明日香は得意科目と苦手科目で差はあるものの平均点は取れている。

 冬弥は少し前に転校して来たばかりで中間テストを受けてはいないが、元々都内有数の進学校である秀麗高校に入れただけあって編入テストは満点で、期末テストは学年主席も狙える。

 つまり、全国大会のメンバーの中で補習を受ける可能性が高いのは龍牙だけだろう。

 

「まぁ、お前が居なくても全国大会は俺が全部ぶっ倒しておくからお前は勉強でもしてるんだな」

 

 大我はそう言って会議室を出ていく。

 大我にとっては龍牙が赤点で補習を受けて全国大会に出れなくても何の問題もないと思っている。

 

「龍牙。俺は勉強方面では余り力にはなれないが、期末テストをクリアして補習を回避出来れば後で面白いところに連れて言ってやる」

 

 竜胆が龍牙の肩に手を置いてそう言う。

 竜胆自身、油断して自分の勉強を疎かにしてしまえば自分も赤点を取りかねない。

 

「先輩! 俺やります! テストで赤点を回避して全国大会に出て見せます!」

「その心意気だ! では諸君、ガンプラ部が一丸となってこの窮地を乗り切ろうではないか!」

 

 諒真は高らかに宣言する。

 そこで静流たちはある事に気が付いた。

 これではまるで自分達も龍牙の赤点回避に協力する流れだ。

 だが、流石に龍牙を見捨てる訳にもいかず、部員が持ち回りで龍牙に勉強を教える事となった。

 

 

 

 

 それから期末テストまでの一週間、龍牙はGBNもガンプラも一切触れずにテスト勉強に励んだ。

 初めは余りにも酷い有様で星鳳高校のレベルがそこまで高くないとはいえ受かったと思える程だった。

 それでも大我を除くガンプラ部の面々は辛抱強く、龍牙に勉強を教えた。

 龍牙もそんな仲間達に報いるように勉強し、やがて結果に結び付く。

 

「……これが俺の本気だ」

 

 全てのテストが終わり、龍牙も手ごたえを感じていた。

 採点の終わったテストが順に戻ってきて、龍牙の勉強の成果が表れている事を実感する事になる。

 

「その点でか?」

「まぁ……うん。そうなんだよ。大我君」

「本当に良くやったよ……僕達は……」

 

 明日香と冬弥はどこか遠い目をする。

 大我はガンプラ部が龍牙に勉強を教えている間もテスト期間中も関係なく一人でGBNを満喫していたが、ガンプラ部の面々はEXミッションのEXボス級の手強さを龍牙に感じさせられていた。

 それ程までに龍牙の成績が酷かったのだ。

 それを1週間で赤点をギリギリ回避できるところまで持って言った事はガンプラ部の努力の賜物だろう。

 

「まぁ……それはそうとして今日先輩とGBNで面白いところに連れて行って貰えるんだけど、藤城も一緒に行かないか?」

 

 龍牙が無事テストを乗り越えた事で竜胆に面白いところに連れて行って貰える事になっている。

 そこには明日香と冬弥も同行する事になっており、龍牙は大我も誘う。

 

「興味ないな」

 

 だが、大我は一切の興味も示さない。

 大我は授業が終わるといつものようにさっさと帰って行く。

 

「聞いてはいたけど、ずいぶんとマイペースだね」

 

 冬弥も大我の付き合いの悪さは龍牙達から聞いていたが、転校して来てそれが良く分かる。

 同じ部活やクラスメイトであるにも関わらず、大我は自分達との関わりを極端なまでに避けている。

 

「アイツの事はここで話していても仕方がないし、先輩と合流してGBNにログインしようぜ」

 

 龍牙達は竜胆と合流するとゲームセンターに向かいGBNにログインする。

 龍牙達が竜胆に連れて来られた場所はオープンワールド内の都市の一つだ。

 そこは近代的からかけ離れた中世のヨーロッパのような街並みで、都市の中央には巨大なコロシアムのような建物があり、その周囲にもいくつかのコロシアムが建てられているエリアだ。

 

「なんか凄いですね」

「先輩。ここって」

「ここのコロシアムではエントリーすればバトルが行えるようになっている。試しに少し見てみるか」

 

 竜胆に案内されてコロシアムの観客席に向かうとコロシアムの中央では2機のガンプラが戦っている。

 普段も他のガンプラのバトルを見る事はあるが、ここで行われているバトルには独特の雰囲気がある。

 

「ここでのバトルは空間が通常のバトルよりも大きく制限されている。限られた空間をどう活かして戦うか。それが試される」

 

 一般的にフリーバトルでもバトルフィールドは十分な広さが用意されている。

 だが、ここではコロシアムの内部でのみしかガンプラを使用してバトルが許可されていない。

 外壁部は特別な設定によりガンプラのいかなる攻撃も通さない為、見ている観客達には危険はない。

 更には観客達も自身のダイバーポイントを賭けて賭けも行われている。

 

「こんなところもあるんですね……」

「お前達もやって見るか? いい練習になるぞ」

 

 竜胆にそう言われて龍牙と冬弥はバトルにエントリーする。

 明日香はガンプラが砲戦用である為、ここでのバトルでは不利になる事もあって不参加だ。

 初めての参加と言う事もあり、龍牙の相手も冬弥の相手も同じように初めてのダイバーとなり、二人は何度か勝利を重ねていく。

 

「中々やるな」

「まだまだですよ」

「油断はするなよ。龍牙。お前の次の対戦相手は少々厄介な相手だ」

 

 すでに龍牙の次の対戦相手が決まっていた。

 ダイバー名「シゲ」所属フォース「闘魂」と表示されている。

 

「闘魂……それって去年の優勝校ですよね。でも去年の全国にはシゲなんてダイバーはいましたっけ?」

 

 所属フォースが闘魂と言う事は去年の優勝校である仙水高校のダイバーなのだろう。

 冬弥の記憶の中には去年の全国大会でそんあダイバーがいた覚えはない。

 

「恐らくは一年だろう。エースのダイモンやリーダーのゴウキと比べればマシかも知れないが、油断は禁物だ」

「分かってます」

 

 龍牙はそう言い次の対戦に向かう。

 

「アレが闘魂のガンプラか……」

 

 龍牙はチーム闘魂のシゲのガンプラと対峙する。

 オリジン版の高機動型ザクⅡのガイア機がベースだが、リアアーマーにはオルテガ機のジャイアントヒートホークが、バックパックにはマシュー機の対艦ライフルが装備されている。

 手持ちの火器はザクバズーカで両肩のシールドに予備の弾倉が付けられている。

 

「アンタ、星鳳のガンプラ部に居た奴だよな」

 

 対峙していると向こうから通信が入る。

 向こうは龍牙の事を知っている口ぶりだ。

 

「そうだけど」

「ダイモンさんがアンタ等のエースの事をかなり気にしているからな。全国を前に格の違いって奴を見せてやるよ!」

 

 バトルの開始の合図と共に高機動型ザクⅡはバズーカを連射する。

 バーニングデスティニーはかわしながら、壁の方に向かい飛び上がって壁を蹴って距離を詰める。

 

「俺だってそうそうやられる訳には行かないんだよ!」

 

 懐に入り込んだバーニングデスティニーの蹴りを高機動型ザクⅡは左腕でガードする。

 高機動型ザクⅡは後ろに飛び上がるとバズーカを連射してそれをビームシールドで防ぎながらバルカンと応戦する。

 バーニングデスティニーのバルカンがバズーカに被弾して高機動型ザクⅡはバズーカを捨てる。

 バズーカは空中で爆発し、高機動型ザクⅡは両肩のバズーカの弾倉もパージして少しでも身軽になると、リアアーマーのジャイアントヒートホークを構えて突撃する。

 ジャイアントヒートホークの攻撃をいなしながら反撃するが、決定打を与える事は出来ない。

 

「ちっ……意外とやる!」

「これだけデカイ武器をここまで扱えるとか同じ一年かよ!」

 

 シゲも自分の攻撃をここまで防げている事に驚いている。

 龍牙も巨大なジャイアントヒートホークを巧みに扱う事に驚いているが、大型の武器を手足のように扱っている大我のバトルを何度も見ている為、動揺する事なく冷静に対処できている。

 ジャイアントヒートホークの攻撃をかわして、バーニングデスティニーは右足を蹴り上げる。

 その一撃が高機動型ザクⅡの胴体に入るが、攻撃は浅くダメージは余りない。

 

「当てて来た!」

「確かに強い。それにその武器をそこまで扱えるのは凄い……だけど、アイツには届かない!」

 

 バーニングデスティニーの拳が高機動型ザクⅡの胴体に入り、続けざまに右足を蹴り上げてジャイアントヒートホークを蹴り飛ばす。

 接近戦用の武器を失った高機動型ザクⅡは肩のシールドでバーニングデスティニーの攻撃を防ぎながら、素手で応戦するが、素手での格闘戦には龍牙の方に分があるようで追い詰められていく。

 

「コイツで!」

 

 バーニングデスティニーの渾身の蹴りが高機動型ザクⅡのシールドを粉砕して後ろに飛び退く。

 そこを龍牙は逃がさずに追撃する。

 

「舐めるな!」

 

 追撃をかけるバーニングデスティニーをギリギリまで引きつけた高機動型ザクⅡはバックパックの対艦ライフルを構えて反撃する。

 

「しまっ!」

 

 完全に攻めて転じていた龍牙は反応しきれずに対艦ライフルの銃弾を右肩に直撃させられて右腕が肩から吹き飛ぶ。

 そして、シゲは一気に反撃する。

 狙いを付ける余裕のないシゲは対艦ライフルを弾が切れるまで連射する。

 狙いを付けていない銃撃だが、銃弾の殆どはバーニングデスティニーに直撃しており、弾切れになる頃には戦闘不能となりシゲの勝利となる。

 

「悪かったな。馬鹿にするような事を言って」

 

 バトルが終わり、龍牙の対戦相手だったシゲが龍牙の元を訪れる。

 そして、バトルの前に格の違いを見せつけると下に見ていた事を誤った。

 バトルはシゲの勝利だったが、途中はかなり追い込まれていた。

 

「いや、そっちも強かったよ。俺の負けだ」

 

 龍牙も日頃から大我に馬鹿にされ続けている為、シゲに馬鹿にされたくらいでは気にしてはいない。

 龍牙自身もシゲの実力を素直に認める。

 

「油断したな」

「ダイモンさん! 見てたんですか!」

 

 互いに実力を認めているとシゲに手厳しい指摘をダイモンがする。

 シゲはダイモンがバトルを見ていた事は知らないようだ。

 ダイモンと共に2メートル近い巨体の男がいるが、彼こそがダイモンやシゲの所属している仙水高校のチーム闘魂のリーダーであるゴウキだ。

 

「レギュラーになって調子に乗ったお前には良い薬だったな」

「うっす」

 

 ゴウキの指摘にシゲは返す言葉もない。

 去年の全国制覇チームに1年で全国大会のレギュラーになった事でシゲは調子に乗っていたが、それが原因で龍牙に追い込まれた。

 シゲもその自覚は十分に持っている。

 

「次のバトルは驕るなよ」

「はい! ジンとか言ったな。全国ではこの借りは返す! それまで負けるなよ!」

「ああ。お前もな」

 

 シゲは次のバトルに向かう。

 龍牙達は流れからダイモンとゴウキと共に次のシゲのバトルを観戦する事になり、観客席に移動する。

 

「シゲの次の対戦相手は……アレは辟邪か」

 

 シゲの高機動型ザクⅡの相手は辟邪の改造機のようだ。

 全体的に黄色く塗装され、肩のブースターが大型化され、サイドスカートや脚部にもブースターが増設され機動力が大幅に強化されている。

 両腕には百里のナックルシールドが装備され、リアアーマーにはヘビークラブ、サイドスカートのブースターにはハンドガンが内蔵されている。

 手持ちの火器はベース機のバヨネットライフルを持っている。

 コロシアムのモニターには辟邪の改造機の名である雷邪と表示されている。

 

「あのガンプラ。相当な出来だな」

「こりゃ少し手こずるかもな」

 

 ダイモンもゴウキもシゲは早々負けるとは思ってはいない。

 それでも対戦相手のガンプラは並のガンプラではない。

 油断すれば龍牙の時のように厳しい戦いになる事は間違いない。

 そんなダイモン達の心配を余所にバトルが開始される。

 高機動型ザクⅡが先制バズーカを放つ。

 だが、雷邪はブースターを全開にして突っ込んで来る。

 両腕のナックルガードで身を守り一瞬にして距離を詰める。

 

「速い!」

 

 高機動型ザクⅡは距離を取ろうと後ろに下がるが、機動力では雷邪の方が上で振り切れず左腕のナックルガードの一撃をまともに受ける。

 何とかシールドで身を守る事が出来たが、シールドは一撃で粉砕される。

 

「コイツ!」

 

 高機動型ザクⅡはバズーカを向けるが、雷邪はバヨネットライフルを先に撃ってバズーカを破壊する。

 バズーカが破壊された事で残っているシールドの弾倉をパージするが、パージする僅かな隙を付いて再び距離を詰められる。

 

「なんだよ! コイツ!」

 

 ジャイアントヒートホークで迎え撃つが、振り下されたジャイアントヒートホークを雷邪はナックルガードで受け止めると至近距離からバヨネットライフルを撃ち込まれる。

 

「くそ!」

 

 高機動型ザクⅡはとにかく距離を取ろうと後ろに下がる。

 雷邪はバヨネットライフルを捨てるとヘビークラブを手に追撃する。

 距離を取って対艦ライフルで反撃を考えていたシゲだが、高機動型ザクⅡの後ろにすでに退路は無い。

 コロシアムの外壁により高機動型ザクⅡはこれ以上下がる事は出来ずに雷邪はヘビークラブを振るう。

 とっさにシールドで身を守るが、シールドはヘビークラブに粉砕されて、そのまま頭部がヘビークラブで潰される。

 

「俺は……」

 

 体勢を崩す高機動型ザクⅡの胴体を雷邪は左のナックルガードで殴り上げる。

 胴体に直撃し、そのまま高機動型ザクⅡは軽く足が地面から離れる。

 そして、落ちて来るところ雷邪は両手でしっかりとヘビークラブを持ち振り下す。

 その一撃は高機動型ザクⅡを容赦なく地面にうつ伏せで叩きつけてバトルの勝敗が付いた。

 

「済みませんでした!」

「いや気にするな」

「アレは相手が悪かったな。俺でも苦戦するさ」

 

 バトルが終わり、手も足も出せずに負けてた事をゴウキやダイモンにシゲは頭を下げる。

 だが、今回はシゲに落ち度はなく単に相手が強かっただけの事だ。

 

「それにジンも情けないところを見せたな」

 

 少し前に互いに負けるなと言ってすぐに完敗してシゲも少しバツが悪そうで、龍牙もなんと声をかけたらいいか分からない。

 

「この程度で全国制覇のチームの一人ってんだから日本のガンプラバトルも終わってるな!」

 

 そこに金髪リーゼントで黒い短ランにボンタンといかにも昔の不良のようなアバターのダイバーが声を上げる。

 何となくだが龍牙達にはこの男がシゲを倒した雷邪のダイバーだと言う気がした。

 

「なんなんだよアンタ一体?」

「はっ雑魚に名乗る名なんてねぇよ!」

 

 相手は明らかにこちらを見下した態度で、龍牙のみならずダイモンも不快感を露わにしている。

 

「いつからお前はそんな口を叩けるようになった? ジョー」

 

 一触即発の空気の中、大我が割って入る。

 星鳳高校の面々は大我の登場に頭を抱えたくなる。

 ただでさえ空気が一触即発で問題になりかねない状況で、基本誰に対しても喧嘩腰で相手をする大我は事態をこれ以上ややこしくし兼ねない。

 だが、それは杞憂に終わった。

 

「タタタタタイガーさん!」

 

 先ほどまで龍牙達を馬鹿にしていたダイバーが背筋をピンと伸ばして大我の登場に驚いている。

 大我は無言のまま近づくと一発蹴りを入れる。

 

「たく……敵に喧嘩を売るのもチームの面子を守るのも敵をぶっ潰すのも誰の仕事だ?」

「タイガーさんです!」

 

 ジョーと呼ばれたダイバーは背筋を伸ばしたまま答える。

 

「それになんだ? そのダサいアバターは?」

「そんな事ないっすよ! ちゃんとタイガーさんの一の舎弟として相応しい恰好を研究してデザインしたんですから!」

「馬鹿か」

 

 大我は心底呆れている。

 その様子からもジョーが大我と知り合いのようだ。

 

「ああ……藤城? そいつは知り合いなのか?」

「あ? オイてめぇ……誰に向かって口聞いてんだ。こちらにおわす方をどなたと心得る。畏れ多くも我らがビッグスターのエース。リトルタイガーさんだぞ!」

「お前は少し黙ってろ」

「了解っす!」

 

 明らかに大我と龍牙達との態度に差がある。

 大我の命令でジョーはしっかりと口を閉ざす。

 

「悪かったな。俺の馬鹿は俺のチームメイトだ。チームメイトが迷惑をかけた」

 

 龍牙達は驚いて声も出なかった。

 あの大我が自分達に謝罪する事等あり得ないと思っていた。

 余りのもあり得ない事が起きた為、気づいてはいない。

 大我はジョーを龍牙達にチームメイトとして紹介している。

 その言い方はまるで龍牙達がチームメイトではない言い方をしている。

 

「それとキングも全国大会ではお前を今度こそちゃんとぶっ潰す」

「望むところだと言わせて貰う」

 

 大我はダイモンにそう言うとジョーを連れて行く。

 

「シゲを倒した奴も相当な実力者だが、そんな奴をあそこまで従えるダイバーか……」

「な? 凄いだろ」

 

 ゴウキもダイモンからEXボスガンプラを一人で倒したリトルタイガーの話しは聞いていた。

 GBNでもかなりの噂になっていたが、シゲを圧倒したジョーがあそこまで下手に出ている辺り、それ以上の実力者だと言う事は確実なのだろう。

 今年も皇女子を初めとした強豪校は順当に全国まで勝ち上がっている。

 その中の星鳳高校は全国大会のダークホースとなり得る要注意校だと言わざる負えない。

 しかし、それ以上にそんなダイバーの出現に珍しく闘志をむき出しにしている自分達のエースの存在を頼もしくも思っていた。

 

 

 

 

 

 

 ジョーを連れた大我は人気のない路地裏まで来るとジョーを解放する。

 

「何でお前は日本のサーバーに居るんだ?」

 

 GBNは基本的に国ごとにサーバーで管理されている。

 サーバー同士の移動は可能だが、大抵のダイバーは自分の国のサーバー内で活動している。

 ジョーも今まではアメリカのサーバーでチームで活動している為、一人で日本のサーバーに来る事等無かった。

 

「タイガーさんに会いに来たんすよ」

「俺に?」

「何でチームを離れて日本になんて行くんですか?」

「その話しか」

 

 大我は高校入学を期にアメリカから日本に戻ってきている。

 それによりGBNの活動拠点も日本サーバーになっている。

 日本に来てから数か月が経つが、一度もアメリカサーバーには来ていない。

 チームを離れた大我の真意を聞く為にジョーは日本のサーバーまで来て大我に自分を見つけさせる為にコロシアムでバトルをしていた。

 

「これもチームの為だ」

「チームの?」

「そうだ。今のチームはエースである俺を中心に動いている」

 

 チームビッグスターのエースは大我であると自他ともに揺るがない事実で、チームは大我を中心に戦い方を決めている。

 常に大我が戦い易いように戦場を整えて、大我に敵のエースや大将を仕留めさせる。

 その為なら他のチームメンバーがどうなろうと優先すべきは大我。

 それがチームビッグスターなのだ。

 

「俺の敵を倒せるか否かでチームの勝敗が変わって来る。だからこそ、俺自身の実力を上げる必要がある」

「それはアメリカじゃ出来ないんですか? こっちのガンプラバトルのレベルは昔と比べて低いのに……」

 

 かつて日本はガンダムやガンプラを生んだ国としてガンプラバトルを引っ張っていた。

 今でもガンプラバトルでトップクラスのダイバーには日本人も多い。

 だが、それは大我たちの父親世代の話しで、若い世代の実力は世界でも低くなっている。

 尤もそれはファイターの話しでビルダーの実力はリヴィエールのような一部を除いては日本の技術は他の国々の追従を許さない。

 

「敵が弱いと言う事は友軍も同じ事が言える。今までは仲間によって支えられて来た部分はここでは一切受けられない。それどころか足手まといすらいる。そんな中で戦い続ける事で俺は更に強くなる」

 

 大我にとっては静流や竜胆と言った国内でもトップレベルのダイバーはチームを組んでいても邪魔ではなく静流たちも大我の動きに合わせる事も出来るが、アメリカに居た時に比べると劣る。

 今まではチームが大我のやりやすい状況を作ってくれたがここではそれが無い。

 そんな状況で自分を追い込む事で大我は更に強くなろうとしている。

 それは決してアメリカでチームの中に居ては出来ない事だ。

 

「だから俺は日本に来た。ルークたちもそれが分かっているから何も言わない。俺のいない間に俺が居なくても世界を相手に戦えるだけの実力を付けていれば俺が戻ってきた時どうなる?」

 

 ジョーはここ数か月のルークたちを思い出す。

 チームの要である大我が抜けた穴を埋めようと実力を付けている。

 そうして個々の実力が上がって来ている。

 そうやって実力を付けたチームに大我が戻ってきた時の事をジョーは思い浮かべる。

 大我も大我で日本で強くなって戻り、チームメイトも大我のいない分の穴埋めで実力を付けている。

 

「……最強です」

「そうだろう。俺達チームビッグスターが目指すところはただ一つ世界の頂点。俺達が世界を取る為にこれは必要な事だ。お前もこんなところで馬鹿な事やってないでアメリカサーバーに帰って鍛えてろ。さっきのバトルを見ていたがなんだあれは? あの程度のガンプラならシールドごと一撃で仕留めろ。俺なら余裕で出来る」

 

 いつの間にかシゲとのバトルの駄目だしになっているが、大我がアメリカに居たところから容赦なく駄目だし言われ続けてきたことで、ジョーにとっては大我が自分のバトルをきちんと見て強くなる為に考えてくれていると久しぶりの駄目だしに嬉しさがこみあげてくる。

 

「ビッグスターはこれからも世界の頂点を取る為に強くなる。それでもどうしようもない壁にぶちあがった時は俺が宇宙の果てからでも駆けつけてチームを阻むものをぶっ潰してやる。俺達の道は俺は切り開く。だからお前達は何も迷わずただ前に進み続けろ。俺が進み続けた先に居なかったら置いて行くぞ」

「……分かりました! タイガーさんの一の舎弟としてとことんタイガーさんに付いて行きます!」

 

 ジョーも大我やルークたちのチームとしての真意を知り納得したようだ。

 大我にケツを蹴り飛ばされながらジョーはアメリカサーバーへと帰って行く。

 

「そうだ。俺は進み続ける。世界で一番のファイターになる為に……もう誰にも負けない為に」

 

 大我は一人そう言うとログアウトする。

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