全国大会1回戦を勝ち抜いた星鳳高校だが、バトルフィールドが相手側に有利だったとはいえ苦戦を強いられた。
1回戦を勝ち抜いた事でその日のバトルが終わり、後は運営が用意したホテルで明日の2回戦に備えてガンプラの調整と英気を養う事となる。
「藤城。何だあの戦い方は?」
GBNからログアウトすると竜胆が大我に詰め寄る。
「なんの事だ?」
「敵を仕留める為とはいえ縦脇を巻き込むような攻撃をした事だ」
1回戦で大我は愛依のガンプラを巻き込む攻撃を行った。
その前にも岳のガンプラごと敵を攻撃している。
岳の時は岳のガンプラの装甲が頑丈だった事もあり大事にはならなかったが、愛依のガンプラは撃墜されている。
GBNの一世代前のガンプラバトルとは違い今のガンプラバトルはガンプラをデータ化して戦っている為、ガンプラ自体を傷つける事はないが、それでも仲間を巻き込みかねない攻撃はチーム戦において信頼関係を壊しかねない。
「先輩! 今更藤城に協調性を求めても仕方がないですって!」
「それにチームが勝利したから私は別に気にしてないわ」
竜胆を龍牙と愛依がなだめる。
大我に協調性を求めたところでガンプラ部が正式に活動を始めてから大我は自発的に部室に来る事はほとんどない。
そんな大我に協調性を求める事は無駄なのだろう。
竜胆は納得していないが、被害者の愛依がそう言う以上は何も言えない。
「藤城。これだけは言っておく。お前のやり方は前のチームでは容認されていたかも知れない。だが、今のお前はチームビッグスターのリトルタイガーじゃない。星鳳高校ガンプラ部の藤城大我だ。それだけは覚えておけ」
竜胆の言葉に大我は何も答えない。
大我は何も言わずに歩き出す。
「今までソロプレイをしていたのに良くそこまで言えるようになったわね」
「……まぁな。何だかんだでガンプラ部に入り龍牙達とバトルをして仲間と共に戦うのはただ馴れ合う訳じゃない。共に競い補い合う……それも悪くないとは思えるようにはなった」
静流は今まで部活やフォースに属さずに一人で己を鍛えて来た事を持ち出した少し茶化すが、竜胆からは真面目な答えが返ってくる。
今まではフォースを組んで戦うダイバーの大多数はチームメイトと慣れあい楽をする為の物だと言う印象を持っていた。
だが、実際にガンプラ部に入り仲間と共に戦って見て分かった事がある。
龍牙に色々と指導をして強くなる度に自分も負けてはいられないと鍛練に熱が入る。
バトルの時には自分の弱点を補い合う事で自分の能力を最大限に発揮できる。
だからこそ、一人でも圧倒的な戦闘能力を持つ大我が仲間と共に戦えば更なる力を発揮できると確信している。
「アイツの事を気にかけてくれるのは嬉しいんだが、現実問題として俺達じゃ大我に合わせられないんだよな」
諒真の言葉が竜胆や龍牙に重くのしかかる。
大我の実力はガンプラ部の中では圧倒的にずば抜けている。
個人のランキングで上位である静流や竜胆もサシでのバトルで負けている。
そんな大我にバトル中に連携をしようとすれば、大我に合わせて貰うしかない。
だがそれでは大我の実力を最大限に発揮する事は出来ない。
大我と他の部員との実力差は否応なくそれぞれにのしかかって来る。
1回戦を勝利したものの星鳳高校ガンプラ部の空気は重い中、ホテルにチェックインする事になった。
ホテルでは複数の部屋に分かれる事になり、星鳳高校に割り当てられた部屋は3人部屋が2つと4人部屋が1つ、2人部屋が1つ。
その中の割り振りとしては2つの3人部屋に静流たち女子生徒が3人纏まり、大我や龍牙、冬弥の1年男子となり4人部屋に2、3年の男子、2人部屋に顧問の颯太となった。
部屋には都合よく作業スペースが用意されている訳ではないが、机がある為、自分達で持ち込んだ工具や部品等を使って自身のガンプラの手入れをしているといつの間にか日が落ちていく。
夜も遅い時間に大我は一人ホテルのロビーに備え付けられているソファーでタブレットを見ている。
タブレットにはGBNでの過去のバトルデータを再生してるようだ。
過去のバトルでも改めて見直すと幾らでも改善点は出て来る。
「こんな遅くまでずいぶんと勉強熱心だな。大我」
「諒ちゃんこそ、こんな時間まで何で起きてんの?」
大我は視線をタブレットから動かす事はない。
諒真も気にした様子もなく大我の隣に座る。
「大我。別に仲良子よしをしろとは言わないが、もう少し何とかならないのか?」
「ならないし、その必要もないでしょ? 始めから俺は部外者であくまでも利害関係の一致で一緒にいるだけの関係なんだから」
諒真もさすがに多少なりとも大我がガンプラ部に馴染めればと思っていたが、大我にはその気はなかった。
大我にとってガンプラ部は強い相手と戦う為に在籍しているだけで、仲間になったつもりは毛頭ない。
自分が強い相手と戦い、ガンプラ部には勝利を提供している。
それが大我とガンプラ部の関係で、それ以上踏み込む気はない。
竜胆は大我に今はビッグスターのリトルタイガーではなく星鳳高校ガンプラ部の藤城大我だと言ったが、大我にとっては今でもビッグスターのエースとしてここにいる。
「まぁそうなんだけどな」
「だから俺はあいつ等と仲良くする気もその必要もない。俺はただ戦って勝つ。それだけだよ。今も昔もこれからも俺は俺でしかない。だから勝ち続ける」
「それも分かってんだけどな……」
諒真も大我の考えは十分に理解はしている。
理解した上で半ば無理やりガンプラ部に入れて大会に出場させている。
そこには諒真自身の打算もあっての事だ。
「別に諒ちゃんに迷惑をかける気はないから安心しなよ」
諒真からすれば大我が騒ぎや問題を起こしたところで面白く眺めている為、迷惑だとは思っていない。
半ば強制的にガンプラ部に入れた手前、はっきりと言う事は出来ないが、せっかく日本でガンプラバトルをやっている以上は多少なりとも馴染んで欲しいとも思っている。
「今日はそろそろ寝る事にする。明日もバトルがあるから」
大我はそう言い部屋に戻って行く。
星鳳高校ガンプラ部はチームとしてのまとまりがないまま、2日目の2回戦が始まる。
全国大会2日目は大きな波乱は起きずにアリアンメイデンや闘魂、岩龍が勝利し、初日で番狂わせを起こしたブラッドハウンドも圧倒的な力を見せつけて勝利している。
星鳳高校の2回戦目の対戦相手は宮城代表の宮代高校ガンプラ部だ。
事前の情報では地区予選から毎回のように使用ガンプラやメンバーを入れ替えて相手を翻弄するタイプのチームだ。
星鳳高校は昨日の出来事が尾を引いて空気は重い。
それでも時間が来ればGBNにダイブしてバトルしなければならない。
重苦しい空気の中バトルが開始される。
2回戦のバトルフィールドはヴィーナス・グロゥブだ。
宇宙とコロニー内の2種類の戦闘宙域があり、どちらで戦うかも重要な要素となっている。
「相手は策を使って来るチームのようだけど、部長。どうする?」
「そうだね……まずは敵の位置とガンプラを確認してから……」
相手が決まったガンプラを使って来てない以上は、事前に敵の戦力を想定する事は難しい。
まずは敵のガンプラを知る事が重要だ。
だが、バトル開始早々大我のバルバトス・アステールが加速してコロニーの方に向かって行く。
「藤城君! 待つんだ!」
「放っておいても構わないだろう。部長。それよりも敵の大半はコロニーの外にいるようだ」
竜胆の言うようにセンサーにはコロニーの外にガンプラの反応が出ている。
「8機。7と1に分かれているようだけど……」
「1機の方は俺が1年を連れて行くけど構わない?」
「分かった。そっちは如月君に任せるよ」
現在捕捉している敵は8機。
その内1機が単独行動をしている。
残りの2機の位置は分からないが、1機が単独行動ではない可能性も考えられる。
その為、諒真が大我を除く1年を連れて1機の方を諒真が当たり、残りの5機で敵の主力と思われる7機の方を当たる事で話しが纏まる。
「そっちは黒羽と八笠がいるとはいえ、数の上では劣ってるんだ。こっちが来るまであんまり無茶するなよ」
諒真はそう言い龍牙達と共に1機の方に向かって行く。
「さて……単独で行動してるんだ。何が出て来るかな……」
諒真たちが補足している1機の方のガンプラに向かっていると一瞬光、強力なビームが飛んでくる。
「各機散開! 神は突っ込め! 俺と日永が続く。清水は援護を任せる」
諒真たちは散開する。
そして、素早く指示を飛ばして戦闘が開始される。
「GNアームズ付きのデュナメスか……」
「デカいけど扱いはどっちなんですかね?」
モニターに映るのはガンダムデュナメスだが、GNアームズを装備している。
GNアームズは右腕がGNツインライフルからエクシア用のGNアームズの大型GNソードに変更され機体のいたるところにGNホルスタービットが増設されている。
敵のガンプラを確認した冬弥が疑問を投げかける。
デュナメスはGNアームズを装備する事で大型化されている。
地区予選では大型機はある一定以上になると大型MA扱いとされて3人で1機を操る。
全国大会でも大型MAは1機で3機扱いとなっている。
見た限りではデュナメスのサイズは大型MA扱いになるかどうか微妙なところだ。
仮に大型MAとしてこのデュナメスを投入しているのであれば、史郎たちが向かった7機の方と合わせると8機で全部と言う事になる。
「考えている暇はなさそうだ。ビットが来るぞ」
デュナメスのGNアームズに増設されたGNホルスタービットが展開される。
GNホルスタービットの数は約20基、そこにそれぞれにGNライフルビットⅡが内蔵されているとすれば、敵のビットの数は40基となる。
それを全て手動で操作する事は難しいが、オート制御だとしてもデュナメス本体はGNアームズを装備して高出力のGNフィールドと大火力を持ち、40基のビットを相手にしながら戦うには4機でも骨が折れるだろう。
それでも今はやるしかなかった。
一方その頃、8機の方に向かった史郎たちも敵のガンプラと遭遇していた。
「アレはセラヴィー? それに……」
「セム……まさか無人機か!」
モニターに映し出されたのはセラヴィーガンダム。
その周囲には7機のセムがいた。
セムはGNサブマシンガンとGNドライヴ、GNフィールド発生装置が増設されている。
セムは設定上は無人機だ。
そこで史郎たちはある可能性に気が付く。
敵はセラヴィーにセムを強引に7機装備させて来た。
そのセムを分離させてレーダー状では1機しかいなかったところを8機に見せていたと言う可能性だ。
「部長。アレが1機だけなら……」
「やられたな。こいつらは囮か!」
レーダーで8機も入ればある程度の戦力を投入する事は十分に考えられる事だ。
それを見越して1機を8機に誤認させた。
そうなると諒真たちが向かった方の1機とセラヴィー以外の8機の居場所が分からない事になる。
同時にある可能性も考えられた。
残りの8機は全て大我と遭遇する可能性だ。
幾ら大我の実力が飛び抜けていたとしても、独りで8機を相手にする事は難しいだろう。
向こうはここまで手の込んだ策を用意して大我に狙いを絞って来ている。
「やってくれたな……部長。俺がコロニーに行って藤城と合流する。援護してくれ」
「分かった」
「良いの? 昨日はあんなことがあったのに?」
静流の疑問も尤もだ。
竜胆は昨日大我と揉めている。
そんな竜胆が真っ先に大我の援護に向かうと言っている。
向こうはここまでのバトルから大我が実力がずば抜けているものの連携を殆ど取らず単独で戦う傾向にあると予測しての策である事は間違いない。
今回も大我が勝手に先行した結果で、友軍と連携を取っていれば孤立させられる事もなかった。
「今はそんな事を言っている場合ではないだろう。孤立したのはアイツの自業自得だが、だからと言って仲間を見捨てて良い理由にはならないだろ」
「確かにね。川澄君も縦脇さんも構わないわね。聞いての通りよ」
「了解」
「確かにフラッグ機をやられる訳にはいかないからね」
話しが纏まり戦闘が開始される。
先行した大我はコロニーの内部に入り込んでいた。
「隠れるとしたらこの辺りだと思うんだがな」
大我はレーダーに1機と7機の反応があった時点で、それは囮だと気付いていた。
戦力を分散させるにしても1機と7機では戦力に差があり過ぎる。
そこまで偏らせた事で1機の方には何かあると警戒させ戦力を余計に裂かせる目的でそうすれば7機の方は数で優位に立ちやすい。
そうして、7機の方は数の有利で敵を殲滅して1機の方に合流して残りも叩く算段だと考えれば、すでに捕捉している8機の中にフラッグ機はいないと推測できる。
数で有利に立ったところで損害は無しで行けると考える程、向こうは馬鹿ではない。
そうなると万が一にもフラッグ機がやられた場合、その時点で敗北となる為、フラッグ機は前線には出て来ないで隠れていると考えた。
捕捉していない2機の内1機がフラッグ機でもう1機はフラッグ機の護衛機と大我は見ている。
コロニーの外にいる8機の中にフラッグ機がいないのであれば、戦う意味はないから大我は外の8機は無視して残り2機の捜索を優先した。
隠れている場所として可能性が高いはコロニーの中だろう。
コロニーの中ならば外からはそう簡単には捕捉は出来ず、隠れる場所もトラップを仕掛ける場所も多い。
コロニーの中に入ると一面に海が広がっていた。
「ヴィーナス・グロゥブのコロニーならやっぱり内部には海があるか……隠れるなら海の中に居そうだが、それはそれで面倒だな」
大我は一度、機体を小島に着陸させようとする。
だが、小島に着陸した瞬間に小島が崩れてバルバトス・アステールは海の中に落ちる。
「ちっ……やってくれたな……それに中々面白い趣向を用意してくれたようだ」
小島には事前に細工がされて崩れやすくなっていたのだろう。
飛行能力の持たないバルバトス・アステールが直接海の中に入らずに一度小島に降りて様子をうかがうと予測しての事だろう。
それにまんまとはまりバルバトス・アステールは海の中に落ちた。
大我は外のガンプラが8機ではなく2機だった事を知らなかったが、海の中には8機のガンプラが大我を待ち構えていた。
隊長機はアビスガンダムの改造機、アビスガンダムポセイドン。
元々水中戦を想定していたアビスガンダムを更に水中戦に特化させたガンプラだ。
背部のビーム砲をレールガンに変更し、シールドの裏のビーム砲も水中で使えるフォノンメーザー砲に変更され、手持ちの武器もビームランスから三俣のトライデントになっている。
胸部のビーム砲も上から砲門を塞ぐように増加装甲が取り付けられている。
他のガンプラも赤く塗装されてブレードアンテナの付いたズゴッキーに小型化されたトリロバイト、キャンサーにゼー・ズール、ハイゴック、ドーシートⅢ、アッシュと水中用のガンプラで揃えられている。
「力で敵わないから自分の得意のフィールドの持ち込み数で責めるか……だが、8機だけとは俺も舐められた物だな」
バルバトス・アステールはバーストメイスを構える。
大我が海中での戦闘を始めた頃、コロニーの外でも戦闘が続いている。
デュナメスのGNホルスタービットとGNライフルビットⅡの猛攻をかわすので精一杯だ。
「ある程度は規則性があるとはいえ……」
「数が多い!」
百騎士がビームライフルを放ち、バーニングデスティニーがバルカンを撃つ。
だが、GNホルスタービットが盾となり攻撃が阻まれる。
「だが、一つ一つ落として行くしかない」
ガンダムクロノスXがクロノスアックスを振るうがGNホルスタービットは避けてGNライフルビットⅡの集中砲火を浴びる。
「会長!」
クラーフレジェンドがケルベロスを前方に向けて放つが、GNホルスタービットは避ける。
だが、ガンダムクロノスXがクロノスビットを数個出してGNライフルビットⅡを一つ落とす。
2種類のビットの相手をしているとデュナメスが大型GNキャノンを放つ。
それを百騎士がビームマントで受け止めるが防ぎ切れずに百騎士の左腕が肩から吹き飛ぶ。
「冬弥!」
「俺がフォローする。神は突っ込め!」
被弾した百騎士の前にガンダムクロノスXが入ると左手のビームバルカンを連射してGNホルスタービットが盾となり攻撃を防ぐ。
その間にバーニングデスティニーが突っ込んでデュナメスに殴りかかる。
デュナメスはGNフィールドを張り攻撃を防ぐと大型GNソードでバーニングデスティニーを振り払う。
「くそ! GNフィールドが硬い!」
デュナメスはGNアームズの左腕のGNミサイルを一斉掃射する。
「下がってろ! 神!」
ガンダムクロノスXはクロノスビットを大量に展開するとバーニングデスティニーと百騎士、クラーフレジェンドを守る。
だが、デュナメスはGNスナイパーライフルでガンダムクロノスXを狙撃する。
粒子ビームはガンダムクロノスXの肩を掠めただけで損傷は大した事はない。
「会長!」
「大丈夫だ。心配すんな。来るぞ」
諒真たちと同様に史郎たちも7機のセムとセラヴィーに苦戦を強いられていた。
セム達はGNフィールドを展開しながらGNサブマシンガンで攻めて来る。
「ちぃ!」
ドラゴンガンダムオロチが青竜偃月刀で切りかかるも、セムは後退しながらGNサブマシンガンを撃って来る。
アリオスガンダムレイヴンがGNスナイパーライフルⅡで狙いもGNフィールドを抜く事は出来ない。
「どうやら向こうのガンプラは防御能力に特化しているみたいだ」
ジムHSCがシールドを掲げながらビームスプレーガンを連射する。
ガンダムAGE-3 オービタルもシグマシスロングキャノンを撃ち、シュトゥルムケンプファーがビームマシンガンを連射する。
だが、それもセムのGNフィールドを突破する事が出来ない。
「とにかく、こいつらは私達が抑えるから八笠君は……」
「分かってる!」
ドラゴンガンダムオロチがコロニーに向かおうとするが、セラヴィーが4門のGNキャノンⅡを一斉照射して行く手を遮る。
これの繰り返しだ。
セム達は無理に攻めては来ないで、GNフィールドで身を守り、後退しながら接近させずにGNサブマシンガンで牽制攻撃を繰り返す。
強引に突破しようにもセラヴィーの大火力で妨害される。
セラヴィーを倒せばセム達の動きが止まるかも知れないが、セラヴィーは7機のセム達の後ろにいる為、そう易々とは攻撃させて貰えない。
「まるでこっちの足止めが目的のよう」
シュトルムケンプファーがバスーカとミサイルを放つ。
セラヴィーがGNバズーカⅡをGNキャノンⅡと接続したGNバズターキャノンが放たれる。
そのビームがシュトゥルムケンプファーの両足を吹き飛ばす。
「縦脇さん! 大丈夫?」
ガンダムAGE-3 オービタルがビームサーベルでセムに切りかかる。
セムはGNサブマシンガンを撃ちながら後退してかわす。
それをシグマシスロングキャノンを撃って反撃する。
しかし、構えていたシグマシスロングキャノンにセムのビームが直撃して破壊される。
「邪魔よ!」
アリオスガンダムレイヴンがトランザムを使いGNキャノンとGNスナイパーライフルⅡの一斉射撃を行う。
セムはGNフィールドで防ぐが、火力で押し切り撃破する。
「これで一機!」
ようやく一機目のセムを仕留めたが、セラヴィーはGNバズーカⅡを合体させたバーストモードの一撃が迫る。
とっさにGNビームシールドで守るが、アリオスガンダムレイヴンの左腕が肩から吹き飛ぶ。
やられながらもGNスナイパーライフルⅡで近くのセムを牽制する。
竜胆も何とか離脱しようと試みるがセラヴィーとセムに妨害されてドラゴンヘッドを一つ破壊される。
外では長期戦に持ち込まれている間にコロニー内では8機の水中用ガンプラで大我を仕留めにかかっている。
水中ではガンプラの水中適正が大きく戦いに左右する。
バルバトス・アステールの水中適正は一般的なガンプラよりかは高いが、それでも水中専用のガンプラと比べると劣ってしまう。
その上水中では武器も大きな制限がかけられてくる。
水中ではビーム兵器は余程高出力の物でなければ殆ど使えず、実弾系の火器も威力や弾の速度が水中適正により変化する。
バルバトス・アステールの200ミリ砲や機関砲も水中では使えるが余り役には立たない。
テイルブレイドも直線的になら多少速度は落ちるものの使えるが、普段のように軌道を変える事は水の抵抗で殆ど出来ない。
バルバトス・アステールは近くのハイゴックとアッシュの方に向かってバーストメイスを振るう。
だが、水中ではバーストメイスを振るう速度も普段と比べると目に見えて遅くなっている。
「ちっ……やっぱ水中だとコイツは重い」
ハイゴックとアッシュは易々とかわすが、バーストメイスを振るう圧力でハイゴックとアッシュは体勢を崩される。
「水中でここまでのパワーとは!」
「怯むな! 水中ではこちらが圧倒的! まずは動きを封じろ!」
トリロバイトがバルバトス・アステール目掛けてケミカルジェリーボムを放つ。
着弾したケミカルジェリーボムが硬化してバルバトス・アステールの動きを止める。
そこにすかさずミサイルを撃ち込む。
「その程度で落とされるか」
ミサイルの集中砲火を浴びるが、バルバトス・アステールは殆どダメージを受けている様子はない。
「なんと言う装甲! 奴のガンプラは化物か!」
「ならば直接叩くまで!」
「待て! うかつに近づくな!」
キャンサーが近接戦闘を仕掛ける為にバルバトス・アステールに接近する。
バルバトス・アステールは背部の太刀と滑空砲をパージすると、バーストメイスまでも手放す。
バーストメイスは内部に予備の杭が入っている為、見た目以上に重量がある。
普段ならその重量が打撃時の威力の増加に一役買っているが、水中ではただの重りでしかない。
キャンサーの腕部のハサミによる攻撃をバルバトス・アステールは簡単に受け止めて、もう片方の腕もしっかりと握る。
「水中だろうとバルバトスのパワーを舐めるなよ」
「なんだ! やめっ!」
キャンサーを掴んだバルバトス・アステールは力いっぱいキャンサーを左右に引っ張り、キャンサーは胴体から真っ二つに引きちぎられる。
水中と言えどもバルバトス・アステールのパワーまでは低下させる事は出来ない為、ガンプラを引きちぎる事など造作もない。
キャンサーを撃破して次はゼー・ズールの方に向かっている。
ゼー・ズールはビームマシンガンで迎撃するが、ビームマシンガンではバルバトス・アステールにダメージを与える事は出来ない。
「ちっ……だが、遅いんだよ!」
掴みかかろうとするバルバトス・アステールをゼー・ズールはギリギリのところでかわす。
しかし、すれ違う瞬間にバルバトス・アステールは自身の背をゼー・ズールの方に向けてテイルブレイドを射出する。
攻撃をかわして油断していたゼー・ズールのダイバーが気づく前にテイルブレイドを絡ませると自身の方に引き寄せて左手でゼー・ズールの肩をしっかりと掴むと右手の爪でゼー・ズールを貫こうとする。
「やらせるか!」
それを見たドーシートⅢとズゴッキーがバルバトス・アステールの右腕と腰にしがみついて攻撃を阻止する。
「甘いな」
バルバトス・アステールは膝のドリルニーをゼー・ズールにお見舞いする。
ドリルニーはピンバイス状の杭を回転させる為、水中では唯一まともに使える武器だ。
普段は膝蹴りと合わせて威力を底上げしているが、水中では膝蹴りもまともに威力が出せない。
それでも胴体に杭を押し付けて回転させれば、敵の装甲を貫くには十分だ。
ゼー・ズールを落として空いた左腕でドーシートⅢの頭部を掴んで頭部を潰しながら、強引に右腕から引き離すと右腕の爪で腰にしがみついているズゴッキーを背中から胴体を貫く。
ズゴッキーを始末して左腕で掴んでいるトーシートⅢの胴体に至近距離から200ミリ砲を撃ち込んで胴体を潰す。
「馬鹿な……4機もやられたと言うのか!」
すでに8機中4機が撃墜されて残るはアビスガンダムポセイドンとトリロバイト、ハイゴック、アッシュだけだ。
「怯むな! 撃て! 撃て!」
圧倒的有利な状態で半数が撃墜されて相手のチームは完全に大我に飲まれているが、4機が火器を総動員してバルバトス・アステールに集中砲火を浴びせる。
ここまで数を減らされた大きな原因は地の利がある事で油断して不用意に接近を許したせいだ。
バルバトス・アステールも水中では遠距離攻撃は出来ない為、距離を取って戦えばまだ勝ち目はある。
集中砲火が止むとバルバトス・アステールも流石に装甲にダメージを受けており、海底へと沈んで行く。
「は……ははは! やったか! 流石のリトルタイガーも海の藻屑に!」
「隊長!」
バルバトス・アステールを仕留めたと確信していたが、バトル終了のアナウンスがまだ入らず、海底に沈んだバルバトス・アステールを確認する。
そこにはまだバルバトス・アステールが動いている。
バルバトス・アステールの手には捨てた筈のバーストメイスが握られている。
バーストメイスは手放された事で海底へと沈み、ここではテイルブレイドを使って回収する事も出来ない為、大我は自ら取りに行った。
「今更そんな物を持ったところで!」
バーストメイスは普通のバトルフィールドなら最も警戒すべき凶器だが、水中では何の役にも立たない重りでしかない。
現状で考えられるのはダインスレイヴでの一発逆転だ。
しかし、それも水中では普段の速度は出せず、注意していればかわせない攻撃ではない。
ダインスレイヴを警戒していたが、バルバトス・アステールは先端を海底に突き刺した。
「中々趣向を凝らしていたからな。今度はこっちのフィールドに招待するぞ」
コロニー内に大きな衝撃が走る。
バルバトス・アステールは敵にではなく、海底にダインスレイヴを撃ち込んだのだ。
それによりコロニーの外壁までダインスレイヴがぶち抜き大穴が空く事になる。
「先に行って待ってるぞ」
バルバトス・アステールは空いた大穴からコロニーの外に出る。
「馬鹿な!」
大穴から海水も外に吹き出し、4機のガンプラもまたコロニーの外まで海水と共に流されてしまう。
何とか踏ん張ろうとするも、流れる勢いに逆らう事が出来なかった。
「何が起きたの?」
「コロニーの外壁が吹き飛んだのか?」
コロニーの外でセラヴィーと交戦していた史郎たちは突然の事に驚く。
完全に足止めと時間稼ぎに徹していたセラヴィーだったが、コロニーの外壁が何かにぶち抜かれて、ぶち抜いた何かがセラヴィーのGNフィールドをも貫きセラヴィーに突き刺さる。
それがバルバトス・アステールのバーストメイスの杭だと言う事に気が付く前にコロニーの大穴から大量の海水が飛び出してくる。
大我は狙っていた訳ではないが、海底やコロニーの外壁をぶち抜いたダインスレイヴは運悪くセラヴィーに直撃してセラヴィーも撃破する結果となった。
セラヴィーが落とされた事で残っているセム達も機能を停止している。
「なんだか分からんが」
何が起きたのか分からないが、厄介な敵がいなくなった事は事実だ。
竜胆はすぐにコロニーの方に向かう。
飛び出して来た海水からバルバトス・アステールを含めた5機のガンプラの反応を補足している。
史郎たちの推測通り、敵は大我に狙いを絞っていたようだ。
セラヴィーが撃墜された事で竜胆だけでなく史郎や静流、愛依、岳も大我の援護に向かう。
「奴はどこだ!」
宇宙に出たアビスガンダムポセイドンはバルバトス・アステールを探していた。
アビスガンダムポセイドンはより水中戦に特化した改造をしているが、元々は宇宙でも使える機体だ。
その為、宇宙でも問題なく戦えるが、他のトリロバイト、ハイゴック、アッシュは水中での戦いに特化している。
宇宙でも戦えない事もないが、水中での戦いに比べたら多少動ける移動砲台程度の戦力でしかない。
「隊長! うぁぁぁあ!」
宇宙に放りだされたトリロバイトがバルバトス・アステールのバーストメイスの餌食となり叩き潰されていた。
アッシュがビーム砲でバルバトス・アステールを狙うが、肩のシールドスラスターで防がれてテイルブレイドで両断される。
ハイゴックもミサイルを撃とうとするがアッシュを破壊したテイルブレイドがそのままハイゴックも破壊する。
「あり得ない……こんなのは嘘だ」
囮により星鳳高校のガンプラを分散させて、大我が囮に気づいて単独行動をしたところを水中戦に持ち込んで8対1と圧倒的な数の暴力で仕留める。
作戦は完璧だった。
自分達の策は面白いくらいに上手く行き、後はフラッグ機である可能性の最も高い大我を仕留めるだけだった。
ただそれだけ……それだけの事が全く上手く行かず用意した水中用のガンプラは7機がやられた。
外の囮の2機はセラヴィーがやられている。
外の2機は時間稼ぎが目的である為、無理に攻める事もなかった事もあり星鳳高校のガンプラは損傷しているガンプラを含めて全機が健在だ。
この状況ではどれだけ考えても勝ち目がない事は明白だ。
「ふざけるな! 作戦は完璧だった! それなのに!」
「知るかよ。幾ら完璧な作戦だろうと関係ない。どんな相手も真っ向からぶっ潰す。それが俺の……俺達ビッグスターのやり方だ」
3機を仕留めたバルバトス・アステールがアビスガンダムポセイドンに向かって来る。
胸部の増加装甲をパージして胸部のビーム砲、シールドの裏のフォノンメーザー砲、背部のレールガンを使ってバルバトス・アステールを迎える。
だが、そんな抵抗も空しくバルバトス・アステールは自身の間合いまで距離を詰めるとバーストメイスを振り上げる。
最後の抵抗に肩のシールドで身を守ろうとするが、今までもバーストメイスの一撃をシールドで身を守ろうとしたガンプラは数知れない。
しかし、それで身を守れたガンプラ等殆どいない。
アビスガンダムポセイドンの最後の抵抗は何の意味も成さなかった。
アビスガンダムポセイドンがフラッグ機だった為、バトルは星鳳高校の勝利となった。
バトルが終わり、それぞれがGBNからログアウトする。
「竜胆」
ログアウトすると竜胆に大我が声をかける。
昨日の事もあり、龍牙や史郎は身構えるが、同時に敵の策に嵌り大我は独りで水中戦をやる事になり、多少なりとも仲間のありがたみを感じて歩み寄るのではないかと言う期待もあり、ただ事の次第を見守る。
「なんだ?」
「お前は昨日、言ったよな? 今の俺はビッグスターのリトルタイガーではなく星鳳高校の藤城大我だと」
「ああ」
「お前は俺が入部した時にその場にいなかったから勘違いしているようだから、この際はっきりと言っておく。俺がガンプラ部に入部したのはあくまでも公式大会に出て強い相手と戦う為だ。沖田達とは仲間ではなく利害関係が一致しているだけでそれ以上でも以下でもない。俺にとってのチームはビッグスターだけだ。今のこれからも俺はビッグスターのエースの大我だ。それはこれからも変わる事はない」
苦戦から歩み寄れるのではないかと言う希望は跡形もなく打ち砕かれる。
それは明確なガンプラ部の仲間である事に対しての拒絶の言葉だった。