龍牙が星鳳高校に入学して一週間が経った。
それにより正式に部活も始動し、休み時間ともなると校内や校門付近では様々な部活が新入生を獲得しようと躍起になっている。
部活の差ほど盛んではない星鳳高校でもこの時期だけは部活が盛り上がる。
だが、龍牙にはそんな事は関係なかった。
部活の勧誘を軽く断りながら、ガンプラ部の部室に明日香と向かう。
「紹介するよ。2年の黒羽静流さん」
「よろしく」
龍牙と明日香はガンプラ部の部員を紹介される。
史郎の他には部員は一人だけで2年生らしい。
紹介された静流は腰まで伸びた黒い髪にキリっとして気の強そうな目が印象的だ。
龍牙と明日香は少し緊張気味にお辞儀をする。
その後、龍牙と明日香の事も軽く紹介して新入部員の紹介も終わる。
「紹介も済んだところで、まず当面の目標だけど……」
「やっぱ全国制覇っすよね!」
「そう言いたいのは山々なんだけど。今のガンプラ部にはもっと根本的な問題があるのよ」
龍牙は気合も十分に全国制覇を掲げるも、静流が水を差す。
「うちの学校は部として正式に認められるには最低5人は必要なのよ。現在うちの部は私と部長の2人に貴方達を入れても4人。部として正式に認めて貰って大会に出るには一人足りない」
去年の段階で3年生が卒業した事でガンプラ部は部員が足りなくなった。
今はまだ去年からの引き続きで部と言う事になっているが、次期に部員不足で廃部になる。
そうなる前に最低1人は新入部員を入れなければならない。
「貴方達の友達でも良いから名前だけでも貸してくれそうな人はいないの?」
最悪の場合、部活に参加しなくても名前だけ部員として貸して貰えれば何とか廃部は回避できる。
「済んません。俺には貸してくれそうな友達はいなさそうです」
「私もです」
龍牙もこの一週間でクラスである程度は話しをする友人はいるが、ガンプラ部に名前を貸して欲しいと頼める程親しい友人はいない。
明日香も同様だ。
「まぁ、そんな手を使うよりも地道に勧誘した方が部の為でもあるよ」
「そうは言いますけどね。部長。部員が揃わなければ大会に出る事は出来ないんですよ。私には来年がありますけど。部長は今年が最後なんですよ」
「それは分かってるんだけどね」
苦笑いをする史郎に静流はため息をつく。
現状のガンプラ部は部員不足で正式な部ですらない。
このままでは公式大会に出場する事も危ぶまれる。
静流は2年生である為、今年の公式大会に出られずとも来年があるが、史郎は今年が最後の大会だ。
この中で最も焦らなければならないのは史郎なのだろうが、史郎は本人の気質もあってかそこまで焦ってはいない。
静流も史郎とはこの一年の付き合いがある為、史郎が自分の都合に部員を巻き込もうとしないと言うのは分かっている。
そうしていると部室のドアが勢いよく空く。
龍牙達の視線は否応なく部室の出入り口の方に向く。
そこにはどこか無愛想で不機嫌そうな大我が立っている。
「中学生?」
龍牙はポツリと零す。
大我は同年代よりも小柄で一見すると中学生に見えなくもないが、龍牙や史郎と同じ星鳳高校の制服を着ている。
そんな龍牙を明日香が軽く肘で小突く。
「同じクラスの藤城君でしょ」
「……そうだっけか?」
大我とは龍牙と明日香は同じクラスで明日香は大我の事は知っているが、龍牙は知らないようだった。
実際、大我はクラスメイトとも必要以上に話す事も無い為、龍牙が知らなくても無理はない。
「藤城もガンプラ部に入るのか?」
大我がクラスメイトだと知り出来る限り愛想良く龍牙が言うが、大我は龍牙を完全にスルーして静流の方に歩いて行く。
明らかに意図的に龍牙を無視した大我に静流も少し怪訝そうな表情をする。
「アンタが7位?」
「は?」
大我は完結に質問するが、質問の意図が静流には伝わらない。
それを見て大我は少し面倒臭そうにする。
「アンタが国内ジュニア部門の7位のレイヴンかって聞いてんの?」
そこまで言うと静流にも大我の言いたい事が伝わった。
GBNにおいてフリーバトルや公式大会を初めとして利用するごとに成績に合わせて個人のアカウントにポイントが振り分けられる。
そのポイントはラインキング付がされており、国内ジュニア部門は日本国内における中高生のランキングだ。
ランキングはユーザー自身は自分の現在のランキングが分かるが、上位100人はGBN内において公表されている。
そして、大我の言う『レイヴン』と言うのは静流のハンドルネームなのだろう。
「どこでそれを?」
「そんな事はどうでも良い。アンタは強いんだろ? だったら俺とバトルしろよ」
静流も大我の意図が読めて来た。
静流は国内ジュニア部門で現在は7位と上位100人の中でもトップ10に入っているファイターだ。
どこで静流がレイヴンだと知ったかはともかく、大我は実力者でもある静流に挑みに来たのだ。
ランキング上位のファイターともなれば他のファイターから尊敬を集め、腕に覚えのあるファイターから挑まれる事も珍しくはない。
尤もそれはGBN内での事でリアルで勝負を挑まれると言う事は初めてだ。
挑戦自体は静流も気にするような事は無い。
だが、大我の態度が静流は少し気に入らない。
静流も自分のラインキングにそこまで固執はしていない。
しかし、ランキングでトップ10入りしていると言う事実は今まで大会やバトルで残して来た成績の成果でジュニア部門のトップファイターの一人としての誇りはある。
大我のバトルを挑む態度はトップファイターに挑戦する挑戦者の物ではなく、明らかに自分の方が上だと思っている。
大我の実力は分からないが、あからさまに自分を下に見られると言うのは静流は面白くはない。
「そうね……バトルをして上げても良いけど、もしも私が勝った場合、ガンプラ部に入って貰うわ」
「黒羽さん。流石にそれは……」
静流が条件を出すが、史郎が止めようとする。
だが、静流は史郎の腕を掴んで部室の隅まで連れていくと周りには聞こえないように話す。
「丁度良いじゃないですか? 彼の実力がどうであれ部員が揃えば大会に出られます」
「それはそうだけど……」
史郎が何を危惧しているかは静流も分かっている。
静流がバトルで勝てば強制的に大我をガンプラ部に入部させる事になる。
ガンプラ部のモットーは『ガンプラを楽しむ』だ。
バトルで無理やり部に入れると言うのは史郎は余り歓迎できる事ではない。
「俺はそれで構わない。どの道、意味のない事だからな」
「……そう。それじゃ君が勝った時の事も決めておかないと」
「必要ない。始めから負けるバトルに追い打ちをかける程俺も鬼畜じゃないからな」
過去に挑んできたファイター達も少なからず静流に勝つ気でいたが、ここまではっきりと勝てる気でいる相手は初めてだ。
流石にこれ以上、大我の発言に反応すれば冷静さを欠きかねない。
「分かったわ。それじゃ始めましょう」
話しが纏まり静流と大我はGBNにログインする。
龍牙達もバトルを観戦する為にログインする。
GBNのエントランスでバトルの申請を行う。
一般的な1対1のフリーバトルは3つの中から行われる。
一つ目は自分の獲得ポイントと比較的近いレベルのファイターとランダムでマッチグングされる。
それによりお互いの実力に極端な差が無くなりバトルで惨敗する事も少なくなるが、獲得ポイントもそれ程多くはない。
二つ目は獲得ポイントに関係なくランダムでマッチングされる。
それにより自分よりも大量に獲得ポイントを持つファイターと戦う事も出来、場合によっては獲得ポイントを一気に稼ぐ事が出来る。
そして、最後は対戦相手を指定して行われるバトルだ。
これは初めから現実世界GBN内でバトルする事を決めて行われる時に選択する。
他の2つによりも対戦相手が選べる分、バトル時の獲得ポイントはかなり少なくなっている。
今回は大我と静流が選択するのは3つ目となる。
バトルの申請が受理されて二人は自身のガンプラのコックピットに転送される。
また、フリーバトルはバトルを行うファイターのどちらかが非公開に設定しない限りユーザーは自由に観戦する事が出来る。
今回はどちらも非公開にしていない為、誰でもバトルを観客席から見る事が出来る。
「やっぱトップランカーのバトルともなると観客が結構いますね」
大我と静流のバトルが受理されてからものの数分の内に観客席には龍牙や史郎、明日香の他にも観客が入っている。
フリーバトルの観客は基本的に多くはないが、バトルを行うのはランキング上位者ともなれば話しは別だ。
誰もがトップランカーのバトルを生で見ようと集まって来る。
「始まるようだよ」
観客席のモニターにはバトルを行うファイターのハンドルネームとガンプラが表示される。
静流のガンプラはアリオスガンダム・レイヴンと表示されている。
アリオスガンダムがベースにレイヴンと言うだけあって黒く塗装されている。
背部にはガンダムハルートのGNキャノンとミサイルコンテナが増設されており火力を強化し、手持ちの火器は飛行形態でも使えるように改造したGNスナイパーライフルⅡだ。
ベース機の可変機構による高速戦闘と底上げされた火力で中遠距離での戦闘を得意とするガンプラだ。
そして、大我のハンドルネームとガンプラを見て龍牙と史郎は驚く。
「あのバルバトスは!」
ガンダムバルバトス・アステール。
以前にも二人はバトルロワイヤルで戦い成す術もなく大敗した相手、リトルタイガーのガンプラだ。
あれだけの実力を持っているなら静流に対しても絶対的な自信を持つのも頷ける。
「藤城君って強いの?」
「ああ……」
龍牙はその実力を身を持って知っている。
静流がそれを知っているかは分からない。
だが、観客席からそれを伝える事は出来ない。
そんな観客席でのやり取りも知らずに大我と静流のバトルが始まる。
バトルフィールドはデブリベルトだ。
大小様々なデブリが漂うフィールドで障害物も多い。
「さて……7位の実力はどの程度なのか確かめさせて貰うとするか」
大我がそう呟いているとデブリの隙間からビームが飛んで来る。
バルバトス・アステールはヒラリとかわす。
一射目をかわすと時間を置いて2射、3射とビームがバルバトス・アステールを襲う。
それをかわすか、肩のシールドスラスターで受けて防ぐ。
「射撃はそこそこ正確……狙撃タイプか? いや違うな」
大我はビームを避けながら情報を分析して行く。
すると高出力のビームがデブリを吹き飛ばしながらバルバトス・アステールに向かって来る。
「成程」
攻撃をかわしながら腕部の200ミリ砲で迎撃する。
だが、飛行形態のアリオスガンダム・レイヴンに当たる事はない。
「アリオスの重装備タイプ。重装備にしては結構速いな」
バルバトス・アステールはアリオスガンダム・アステールを追いかけながら200ミリ砲で攻撃する。
「けど……ディランのゼータ程でもないか」
機動力ではアリオスガンダム・レイヴンの方に分があるが、バルバトス・アステールの放った砲弾がアリオスガンダム・レイヴンを掠める。
「大口を叩くだけの事はあるわね」
アリオスガンダム・レイヴンは追いかけるバルバトス・アステールの足を止めさせる為にGNミサイルをばら撒く。
それをバルバトス・アステールはシールドスラスターに内蔵されている機関砲で迎撃する。
「ミサイルはフェイク。本命はビットか」
GNミサイルを迎撃するが、その間にアリオスガンダム・レイヴンのGNキャノン下部に内蔵されているGNシザービットが展開されており、バルバトス・アステールに一斉に襲い掛かる。
「生憎とビットの類の対処には慣れてるんでね」
バルバトス・アステールは最小限の動きでGNシザービットをかわしながら機関砲と200ミリ砲で撃ち落として行き、残ったGNシザービットを一気にテイルブレードで破壊する。
「ビットをこうも易々と……」
静流もGNミサイルを囮に使ってのGNシザービットがここまで軽く対応された事は想定外だった。
次の手を考えるよりも先に大我が仕掛けた。
バルバトス・アステールは持っていたバーストメイスを逆手に持ち帰ると勢いよく投擲した。
バーストメイスは射線上のデブリを次々と粉砕して行き、アリオスガンダム・レイヴンの移動先を的確に向かう。
「移動先を読むん出来たって訳ね!」
アリオスガンダム・レイヴンはMS形態に変形すると急制動をかけてバーストメイスをやり過ごす。
やり過ごされたバーストメイスはそのまま戦艦の残骸に直撃すると残骸は吹き飛ぶ。
それだけでもしもバーストメイスが直撃していたらアリオスガンダム・レイヴンは一溜りもなかったと言う事が分かり、静流も冷や汗をかく。
だが、同時にそれ程までの威力を持つ武器を自ら手放した事は静流にとっては有利に事が運ぶと確信していた。
しかし、大我の狙いはただバーストメイスを投げて攻撃するだけではなく、デブリベルトで回避する為には急制動をかけて止まらないといけないと場所を狙っていた。
バルバトス・アステールはすでに別ルートから先回りをしていた。
「幾らメインウェポンを捨てたとしても接近させる気は無いわよ!」
アリオスガンダム・レイヴンはGNスナイパーライフルⅡをバルバトス・アステールに向ける。
静流が引き金を引くよりも早く、バルバトス・アステールの腕部に内蔵されているワイヤーアンカーがGNスナイパーライフルⅡに絡みつく。
「捕まえた」
「何なの!」
バルバトス・アステールが勢いよくワイヤーアンカーを引き戻すと、アリオスガンダム・レイヴンのパワーではどうする事も出来ない。
仕方が無くGNスナイパーライフルⅡを手放すと腕部に内蔵されているGNサブマシンガンで弾幕を張る。
ワイヤーアンカーで引きよせたGNスナイパーライフルⅡの銃身を掴み、それを握りつぶして完全に破壊される。
GNサブマシンガンによる弾幕はバルバトス・アステールの表面に施されている塗装により弾かれてダメージを受ける事は無い。
「ビームが弾かれている! なら!」
アリオスガンダム・レイヴンは全弾使い切っ空となったミサイルコンテナをパージするとGNキャノンでコンテナを破壊して爆風を起こす。
その際に周囲にGN粒子がばら撒かれ目暗ましをなる。
「これならどう!」
飛行形態となったアリオスガンダム・レイヴンは一直線にバルバトス・アステールに向かって行く。
200ミリ砲の迎撃を被弾覚悟で最小限の動きで避けながらアリオスガンダム・レイヴンは機首がクローのように展開すると、バルバトス・アステールに突っ込む。
機首のクローの刃からビームシールドを展開しながらバルバトス・アステールの胴体を挟み込む。
「思った以上に固いけど……これで捕まえたわ!」
「そいつはどうかな」
バルバトス・アステールを腕ごと挟み込んで拘束して後はこのまま挟み切るだけだったが、静流の想像以上にバルバトス・アステールは強固で中々挟み切る事が出来なかった。
そして、大我も追い詰められているとは思っていなかった。
むしろ、向こうからこちらの間合いに入って来て好都合だと思っているくらいだ。
バルバトス・アステールの膝の追加装甲が稼動するとそこからはピンバイス状の杭が出て来る。
これはガンダムキマリス・ヴィダールに装備されていたドリルニーを元にバルバトス・アステールにも追加した物だ。
これなら、両腕ごと拘束されていても密着状態なら膝を上げるだけで、無防備な胴体部に風穴を開ける事が出来る。
杭が高速で回転を始めて、バルバトス・アステールは膝を勢いよく上げる。
「隠し武器!」
静流もとっさに飛行形態からMS形態へと機体を変形させてバルバトス・アステールの拘束を解くがドリルニーを完全にかわし切れずに胴体を掠める。
幸いにも致命傷にはならずに済んだが、胸部が抉られてしまう。
「くっ! まだ!」
バルバトス・アステールの不意打ちを何とかかわすが、大我の攻めは終わらない。
今度は大我の方から距離を詰めようと一気に加速する。
この状態で距離を取る事が難しいと判断した静流は接近戦で受けて立とうちビームサーベルを抜こうとする。
だが、突如横から何かがぶつかるような衝撃を受けて抜きかけていたビームサーベルを抜くだけ抜いて手放してしまう。
「何なの!」
周囲にはデブリが多数漂っていて操縦を誤るとデブリにぶつかる事はあるが、追い詰められていたとしても流石に周囲のデブリの位置を静流も把握している。
静流は視線だけで確認するとそこには大我が自ら手放したバーストメイスが漂っていた。
「メイスが……」
バーストメイスは確かに戦艦の残骸に突っ込んで行った。
これ程までの大きさの武器を隠し持つ事は不可能だ。
だとすると何故、バーストメイスがここにあるのかと言う疑問はすぐに解決した。
バーストメイスの柄の先端にはパイルバンカーとしての機能を排してテイルブレードとの接続機構が追加されている。
バーストメイスのみならず、バックパックに装備されている太刀や滑空砲にも同様に接続機構が追加されている。
それにより一度手放した後にテイルブレードを使って引き寄せる事が可能だ。
それを使い死角から攻撃して来たのだろう。
テイルブレードを使っての攻撃である為、普段のように振るった時と比べても直撃したところで損傷は致命的ではない。
「終わりだ」
テイルブレードを使っての攻撃は静流の死角から不意と突くだけの物ではなかった。
引き寄せられたバーストメイスは再びバルバトス・アステールの手元に戻って来た。
バーストメイスを手にしたバルバトス・アステールは力の限りバーストメイスを振るう。
静流は回避をしたところでかわし切れる保証はない。
そう判断した静流は奥の手を使う。
「トランザム!」
アリオスガンダム・レイヴンはトランザムシステムが起動し赤く発光する。
そして、肩からGNビームシールドを最大出力で展開する。
GNビームシールドは盾としてだけではなくビームサーベルとしての機能を持つ。
トランザムで威力を底上げしてバルバトス・アステールのバーストメイスを迎え撃つ。
これならばうまく行けばバーストメイスを逆に破壊する事が出来る。
そうなればそこから一気にトランザムが切れる前に畳み掛ければ勝機はある。
しかし、そんな静流の最後の望みすらもバルバトス・アステールのバーストメイスは無残にも打ち砕く。
バーストメイスはアリオスガンダム・レイヴンのGNビームシールド等無かったかの如く、一撃でGNビームシールドごとアリオスガンダム・レイヴンを粉砕した。
その結果を観客席では誰もが唖然と見ていた。
観客の殆どは静流のバトルを見る事が目的だった。
相手はランキング外のファイターで海外で活躍しているファイターだとは誰も気づいてはいなかった。
だからこそ、誰もが静流の勝利は確定しており、挑戦者がどこまで静流に喰らい付けるかが見ものだと思っていた。
だが、結果として静流は負けた。
それも誰が見ても、静流の敗北は偶然や僅差での敗北ではない。
完全に相手に翻弄されての完敗だった。
「話しは部長から聞いたわ。私の完敗よ」
バトルが終わり大我と静流はGBNのロビーで合流する。
すでに静流も史郎から大我の素性に付いては聞いている。
静流もチームビッグスターやビッグスターのエースであるリトルタイガーの事は噂では知っている為、大我の実力に納得が行っていた。
「アンタも前座にしては少しは楽しめた。また腕を上げたら相手をしてやっても良い」
「前座?」
相変わらずの上から目線だが、それよりも気になる事を大我は言っている。
「なぁ藤城。お前もガンプラ部に入って全国を目指そうぜ!」
静流の疑問を余所に龍牙が大我をガンプラ部に誘う。
大我の言葉の意味は気になるところだが、龍牙の誘いの言葉の返事を待つ事にした。
星鳳高校のガンプラ部は静流がトップランカーの一人だが、それだけで勝ち進める程甘くは無く、去年もまともな成績を残してはいない。
そこに大我が加われば一気に戦力が増強されて全国大会を目指す事も夢ではない。
「なんで? 俺は全国程度に興味はない」
中高生でGBNでガンプラバトルをしていれば毎年恒例の大規模なイベントである全国大会は少なからず興味があると思っていたが、大我の答えは完全なる拒絶だった。
大我はそれだけを言うともはや彼らに興味がないのか、早々にログアウトする。
大我の勧誘に失敗して龍牙達もこの日はお開きとなりログアウトする。
このバトルによりランキング7のレイヴンがアメリカから来たリトルタイガーに敗北したと言う情報はGBN内で拡散されて話題となり、他のトップランカーや強豪校の耳に入り一気に注目を受ける事になるが、この時の彼らは知るよしもなかった。