ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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仲間

 

 星鳳高校対岩龍のバトルは星鳳高校がほぼ全滅ながらもフラッグ機を撃墜した事で勝利した。

 完全に岩龍のペースで進みながらもフラッグ機同士の一騎打ちを制して星鳳高校が準決勝へと駒を進めた。

 会場がその戦いの熱気が冷め止まないが、レオは一人会場を去ろうとしていた。

 

「もう帰るのか?」

 

 会場を出たところでレオを大我が止める。

 大我を見たレオは心底嫌そうな顔をする。

 

「嫌味かよ」

「別に……ただ日本に来て久しぶりに面白いバトルが出来たからな。俺が勝ったしな」

「マジで嫌味を言いに来たのかよ?」

 

 勝負は大我が勝っている以上は、敗者のレオに何を言ったところで嫌味にしか聞こえない。

 

「俺もそこまで暇じゃない。やっぱ仲間とするバトルが一番だって事を言いたくてな」

「……仲間? 俺はお前達を裏切って捨てたんだぞ?」

 

 レオはかつては大我たちと同じチームに居ながらもチームを捨てた。

 その際にガンダムアスタロト・アステールを持ち逃げもしている。

 チームからすればレオの行動は裏切り意外の何物でもないだろう。

 

「そうだな……けどな、レオ。それがどうした? お前は自分で考えてチームを出て行った。そんな事は取るに足りない些細な事だ。例え裏切ったとしても思いっきりぶん殴って許してやれるのが仲間って奴だろ。俺はお前の事を今日のバトルで思い切りぶっ飛ばした。だから、お前がチームを裏切った事は終わった事だ」

 

 レオはチームを裏切った。

 だが、大我もチームの仲間もその事でレオを恨んではいない。

 レオは自分の意志でチームを抜けた。

 その意志は理解している。

 それでも少なからず遺恨は残っているが、それも大我がバトルでぶっ飛ばした事で全て終わりだ。

 レオはそんな単純な話しではないと反論しようとするも、大我の目を見て言葉に詰まる。

 大我はかつてと同じように真っ直ぐ、疑う事もなくレオを見ている。

 基本的に誰が相手でも喧嘩腰で威嚇から入る大我だが、唯一チームの仲間にだけは心を開いている。

 今でも大我の中ではレオは仲間だと思っている事がレオにも分かり何も言えないでいた。

 

「お前が思っている以上に仲間の絆ってのは強いんだぜ。お前がチームを抜けた後、レオの事を悪く言う奴はいないしな」

「たく……馬鹿だな」

「知ってる。だから俺達はチームになったんだろ。レオ……今後、俺達とお前がバトルするのはこんなちっぽけな大会なんかじゃない。もっと上の世界でだ。待ってるなんて言わない。俺達は頂点を目指して止まらずに駆け抜ける。お前もそこまで来い。その時、もう一度レオをぶっ潰してやる。今度は俺だけじゃない。俺達チームビッグスター全員でだ」

 

 大我はそれだけ言うと会場に戻って行く。

 レオはしばらくその場から動かない。

 レオはアメリカにチームへの未練は置いて来たつもりだが、チームの方がレオを放っておいてはくれないようだ。

 

「南雲。こんなところにいたのか?」

 

 大我が戻り少しするとレオを探しに来た右京がレオを呼び止める。

 

「あれだけ大口を叩いておいて俺が負けたせいでチームが負けたんで居辛いんですよ」

 

 レオが一人で会場から出て来た理由はそこだった。

 レオは自分の実力に絶対の自信を持っている。

 チーム内でもレオとまともに戦えるのはリーダーの右京くらいだ。

 その為、日ごろから大我程ではないにしても、チームメイトを上から見ている。

 今まではそうするだけの実力を見せて来たからこそ、反感を買いながらもエースとして認められてきた。

 だが、今回は圧倒的有利な状況に持ち込んだが、レオが負けたせいでチーム自体が敗北する結果となった。

 レオが一人で大我と戦わなければ結果は変わっていたかも知れない。

 

「そうだな……今回のバトルで俺とお前だけがやられているからな」

 

 チーム全体で見れば撃墜されたのはレオと右京の二人だけだ。

 尤も、右京はリーダー機ではあるが、フラッグ機ではなく、右京がやられた後は他の仲間が星鳳高校のガンプラを殲滅している為、右京の敗北はチームとしては大した問題ではない。

 それを分かっていながら、持ち出すのは右京なりの気遣いなのだろう。

 

「お前がリトルタイガーと一人で戦う事を認めたのは俺だ。お前に責任があるなら俺にも責任はある。責任を取ると言うのであれば俺達が丸刈りにでもするか?」

「……それはマジで勘弁してくださいって」

 

 恐らくは冗談なのだろうが、右京が言うと本当にやりかねない。

 

「いつまでも負けた事を引きずるな。俺達3年は引退だが、1年と2年には来年もある。余り落ち込んでいる暇なないぞ」

「了解っす。大将。俺、少しやる事があるんでチームには後で合流します!」

 

 レオは吹っ切れたのか、会場に走って戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 岩龍に勝利した星鳳高校だが、準決勝のチーム闘魂と戦う前に更なる難関が待ち構えていた。

 全国大会でもGBNの通常プレイ同様にガンプラを現実世界でバトル後にケアしないと次のバトルで性能に影響が出る仕様は同じだ。

 前回までは時間にある程度の余裕はあったが、今回は午後からの準決勝に間に合わせないといけない。

 準決勝は先にAブロックを勝ち抜いたアリアンメイデンとBブロックを勝ち抜いたブラッドハウンドのバトルが終わった後であるが、星鳳高校は大我を含めて全員のガンプラが手ひどいダメージを受けている。

 それらを準決勝までには万全な状態にしなければならない。

 岳を中心に控室でガンプラのケアを行っている。

 そんな中、大我だけは控室に戻らずに一人で作業をしている。

 始めは岳もバルバトス・アステールを触りたさに手伝いを申し出たが、大我は頑なに拒否した為、一人での作業となっている。

 

「一人で作業とか友達もいないのかよ?」

「必要ないからな」

 

 会場に戻ってきたレオが皮肉を込めてそう言うが、大我は気にした様子もなく作業を進める。

 

「貸して見ろ。俺も手伝う」

「そうか。そっちを頼む」

 

 大我はばらしてあるバルバトス・アステールのパーツを掴むと無造作にレオの方に放り投げる。

 

「……なぁ、言いだしといてなんだが、少しは疑えよ」

 

 大我は何の躊躇いもなく、自分のガンプラのパーツをレオに渡したが、レオは先ほどまで大我と戦い大我に負けた相手だ。

 その負けた腹いせに次のバトルで性能を発揮できないように細工をする可能性もあったが、大我は疑う事もなくレオに渡している。

 流石にレオも警戒心が無さ過ぎるのではないかと心配になって来る。

 

「お前に細工をして俺の邪魔をしようと言う頭があるのか?」

「……本当にしてやろうか?」

 

 大我はレオの事を信じているようだが、信じられ方は少々気に入らない。

 それでもレオもそんな事をする気は毛頭なかった。

 

「レオ。さっきリヴィエールから面白い物が送られて来た」

 

 大我はそう言って、リヴィエールから送られて来た物をレオに見せる。

 リヴィエールもバトル前に大我に言っていたようにバトルに勝った大我に何かを送って来たようだ。

 

「……コイツは」

「面白いだろ?」

「確かに面白いけど……今からやって間に合うのか?」

「間に合わせる。俺一人なら不可能だったが、お前が居れば出来る。違うか?」

 

 大我はまるで挑戦して来ているようだった。

 自分は出来ると思っているが、お前はどう何かと。

 そう言われるとレオも引く訳には行かなかった。

 

「上等だ。間に合わせてやるよ!」

 

 レオもアスタロト・アステールを出すと二人の作業が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星鳳高校が準決勝に備えてガンプラのケアをしている頃、会場ではAブロックとBブロックを勝ち抜いた2校による準決勝第一試合が行われようとしている。

 多くのダイバーは去年の準優勝チームであり、ここまで全ての試合でダインスレイヴによる長距離攻撃から高機動型の2機でのかく乱で勝ち進んで来たアリアンメイデンが優勢だと見ていたが、対戦相手のブラッド率いるブラッドハウンドはランキング4位を倒してここまで勝ち進んで来ている。

 すでにランキング3位のコジロウが無名校に敗れると言う大番狂わせが起きている為、アリアンメイデンを破る可能性もあると言われている。

 

「対戦相手のブラッドハウンドは過去のバトルログでもまともな情報がないチームよ」

 

 アリアンメイデンの控室で最後のミーティングが行われている。

 監督の麗子の方でも過去のバトルログからブラッドハウンドの情報を探ろうとしていたが、見つかるログは参考になりそうな物は殆どなかった。

 ここまでのバトルでも殆どがリーダーであるブラッドのアルケーガンダムの改造機であるブラッドロードガンダムが単機で敵を殲滅している。

 

「とはいえ、貴女達は私が鍛えた自慢の生徒達よ。今まで教えた事をいつも通りに発揮できれば絶対に勝てるわ」

 

 アリアンメイデンは連携の他に相手の情報を分析して戦う事にも長けたチームだ。

 その情報が殆どなければ生徒達も少なからず不安になるが、麗子は問題ないと言い切る。

 そうする事で生徒達の不安を取り除き、いつも通りの戦いをさせる為だ。

 監督の麗子に絶対的な信頼を置く生徒達はそう言い切られる事で自信を持って準決勝に望む事が出来る。

 

「だから……全力で叩き潰して来なさい」

 

 麗子のバトル前、最後の指示にアリアンメイデンの生徒達は力強く頷く。

 不安要素はあるが、アリアンメイデンは決勝を賭けた準決勝へと赴く。

 準決勝のバトルフィールドは宇宙空間。

 アリアンメイデンにとっては地上ステージよりも遮蔽物の少ない宇宙空間での戦いが最も得意としている。

 今回も上手い具合に宇宙でのバトルとなり、アリアンメイデンにとっては戦い易いフィールドとなった。

 

「そんないつも踊りによろしく!」

 

 バトル開始早々、貴音のガンダムキマリス・トライデントと珠樹のガンダムエルバエルが飛び出す。

 そして、後方から5機のレギンスレイヴがダインスレイヴによる長距離射撃を行う。

 

「手応えなし」

「まぁそう簡単にはやられてはくれないっしょ」

「来る」

 

 ダインスレイヴによる攻撃で敵に損害は与えられてはいないようだった。

 そして、2機にビームが放たれる。

 貴音と珠樹はビームを回避し、敵を補足する。

 

「アシュタロン?」

「でも、本体がない」

 

 ブラッドハウンドの先陣を切って来たのはガンダムアシュタロンハーミットクラブの改造機のハーミットクラブだ。

 ハーミットクラブはバックパックのみで本体を外されて純粋はMAとして改造されている。

 バックパックのサテライトランチャーは通常のビームランチャーに変更されており、高い機動力と火力を備えている。

 

「行かせないよ!」

 

 キマリス・トライデントがハーミットクラブのビームランチャーをかわしてデストロイヤーランスの銃口を向ける。

 だが、別方向からのビームが飛んで来てかわす。

 その間にハーミットクラブ、レイダーガンダム、バンシィノルンが2機を突破して後方の狙撃部隊へと向かって行く。

 

「やば!」

「あっちは平気。私達はこっちに集中」

 

 珠樹は自分達が逃した3機の事は向こうに任せると判断する。

 貴音も珠樹の指示に従い突破したガンプラを追撃する事はしない。

 

「さてさて……馬鹿大我がそこまでのバトルをやったんだから、私達おねーちゃんズも負けてられないってね」

 

 キマリス・トライデントはデストロイヤーランスを構えて突撃する。

 

「相変わらず藤城姉妹による馬鹿の一つ覚えのように突撃して来るか……まぁ良い。群れなきゃ何も出来ない奴らの狩りの時間だ!」

 

 ブラッドロードガンダムはGNブラッドソードを構えてキマリス・トライデントを迎え撃つ。

 

「アンタが大将機の厨二ガンダム? ソッコーで潰す!」

「やって見ろよ」

 

 ブラッドロードガンダムはキマリス・トライデントの突撃を軽くかわす。

 キマリス・トライデントはビーム拡散弾をばら撒きながら近くのベルガ・ギロスに向かって行く。

 ベルガ・ギロスはショートランスのヘビーマシンガンで応戦するが、構わずに突っ込み接近してデストロイヤーランスを振り下ろす。

 ベルガ・ギロスはビームシールドを展開して防ぐが、左腕が潰されて後退する。

 

「ちっ……」

 

 ブラッドロードガンダムはキマリス・トライデントを追いかける。

 

「逃げる気か!」

「悔しかったら追いついてきなよ」

 

 キマリス・トライデントは更に加速する。

 機動力においてはブラッドロードガンダムではキマリス・トライデントには追いつく事は出来ない。

 2機の距離はどんどん離れていくが、キマリス・トライデントは進路を変えてブラッドロードガンダムに向かって行く。

 

「希望通りに相手して上げるわよ!」

 

 突っ込んで来るキマリス・トライデントにブラッドロードガンダムはGNブラッドソードで迎え撃つ。

 

「なんてね!」

 

 突っ込んで来るキマリス・トライデントはブラッドロードガンダムの目前で軌道を変えると左腕を潰されたベルガ・ギロスに向かい、3本の槍の火器で集中砲火を浴びせて撃墜する。

 

「舐めた真似しやがって!」

「舐められる方が悪いんだよ。ボーヤ」

 

 ブラッドロードガンダムがキマリス・トライデントを追いかけようとするが、エルバエルがバエルライフルで足を止めさせる。

 

「行かせない」

「次はお前か!」

「でも、相手はしない」

 

 ブラッドロードガンダムの足を止めさせるとエルバエルはトトゥガに向かって行く。

 トトゥガにバエルライフルを撃ち込むが、トトゥガの重装甲を破る事は出来なかったが、珠樹の狙いは装甲を貫く事ではなく、攻撃する事でトトゥガのダイバーの注意を自分に向けさせることにあった。

 トトゥガのダイバーは珠樹の思惑通りにエルバエルに気を取られている間に背後からキマリス・トライデントが勢いをつけて突撃して来る。

 トトゥガの重装甲も勢いをつけて突撃して来たキマリス・トライデントには耐え切れず一撃で粉砕された。

 

「これで2機目。あっちの方は大丈夫かな?」

「大丈夫。どっちも問題ない」

 

 貴音は後方に向かった3機のガンプラの事を気にかけるが、珠樹は全く問題にはしていなかった。

 珠樹と貴音を突破して来たハーミットクラブ、レイダー、バンシィノルンはレギンスレイヴを補足していた。

 

「誰が一番撃墜出来るか勝負しようぜ」

「良いね。まっ俺が一番だけどな」

 

 バンシィノルンが加速しようとしたその時、バンシィノルンの頭部が吹き飛ばされて体勢を崩したところに右腕が吹き飛び胴体に風穴が空いて撃墜された。

 

「お見事」

「一発目でメインカメラを潰して二発目で武器を持つ右手を潰した上で止めね……正確な射撃にえげつなっ」

 

 バンシィノルンは後方に控えていた千鶴のガンダムグシオンリベイクフルシティシューティングスターによって撃墜された。

 それも一撃目でメインカメラを潰されて視界を一時的に奪った上で体勢を崩して、ビームマグナムを持っていた右腕を吹き飛ばす事により戦闘能力を著しく奪った上で止めの一撃を入れた。

 最初の2発の狙撃で相手はまともに攻撃を見切る事も反撃する事も封じられている為、3発目に対処のしようがなく、奇跡的に3発目をかわせたとしても戦闘能力は殆ど残されてはいない。

 

「先輩方。来ます」

 

 バンシィノルンを撃墜されたもののハーミットクラブとレイダーのダイバーは動揺した様子を見せてはいない。

 ハーミットクラブがビームランチャーで反撃して来る。

 レギンスレイヴを狙っているようだが、狙いはいい加減でレギンスレイヴは微動だにしないでビームが当たる事はない。

 

「真澄」

「分かってる。姉さん」

 

 真澄のレギンレイズシュバルベタイプMはライフル下部の多目的ランチャーからキマリス・トライデントが使っているビーム拡散弾を撃って敵のビーム兵器を封じる。

 

「ちっ……ビームが!」

「お先に!」

 

 レイダーがMS形態に変形するとミニョルを射出する。

 ビーム兵器を封じてもレイダーには十分に戦う術は持っている。

 射出されたミニョルだが、グシオンシューティングスターのリニアライフルで瞬時に破壊された。

 

「何!」

「ウチのルーキーの変態射撃を甘く見ないで!」

 

 ミニョルを破壊されたレイダーに香澄のレギンレイズシュバルベタイプGが接近する。

 レイダーは口部のビーム砲を撃とうとするも、ビーム拡散弾の影響でまともな威力はない。

 レギンレイズシュバルベタイプGはランスユニットでレイダーを貫き破壊する。

 

「はっ! 馬鹿な奴だ!」

 

 レイダーがやられている隙にハーミットクラブがレギンスレイヴに向かって行く。

 

「さて……どいつから仕留めるかな」

 

 レギンレイズシュバルベタイプMがライフルを撃ってビームランチャーを破壊するが、ハーミットクラブは止まらない。

 ハーミットクラブのダイバーが獲物を物色してレギンスレイヴの1機に向かって行く。

 

「棒立ちかよ! 狙撃以外は出来ませんってか! お嬢様が!」

 

 ハーミットクラブがギガンティックシザースでレギンスレイヴを挟み込もうと振り上げるとギガンティックシザースのアーム部分がグシオンシューティングスターによって狙撃される。

 

「私のどこが変態射撃なんですか? 先輩」

「そう言う所よ」

 

 ギガンティックシザースを破壊されたハーミットクラブだが、レギンスレイヴは狙撃しか出来ないから棒立ちしていた訳ではなかった。

 レギンスレイヴの役目はダインスレイヴによる攻撃。

 それを守るのが2機のレギンレイズシュバルベと多彩な火器を持つグシオンシューティングスターだ。

 レギンスレイヴを任されている彼女たちは仲間が自分達を守ってくれると言う信頼から無意味に動く事は無く、自分の役目に徹する事が出来ている。

 ハーミットクラブに狙われたレギンスレイヴのダイバーもギリギリまでハーミットクラブを引きつけた上でダインスレイヴをハーミットクラブに撃ち込む。

 ダインスレイヴの弾丸がハーミットクラブを貫きハーミットクラブが破壊された事で、後方の狙撃部隊は難なく3機を処理する事が出来た。

 

「ちょこまかと!」

 

 実体の刃を持つツインサイズをガンダムデスサイズヘルがエルバエル目掛けて振るう。

 だが、エルバエルはヒラリとかわす。

 その背後からゼイドラがゼイドラソードを振るいエルバエルはバエルシールドで受け止めると蹴り飛ばしてバエルライフルを撃つ。

 銃弾はゼイドラのゼイドラガンを破壊する。

 

「こっちこっち」

 

 バエルライフルでゼイドラとデスサイズヘルを抑え込む。

 2機は挟み込むように同時攻撃するが、エルバエルはかわしてバエルシールドの先端を射出する。

 その先にはウェブライダー形態に変形してキマリス・トライデントの方に向かおうとするZⅡがいる。

 ZⅡにワイヤークローを付けると思い切り引っ張ってシャイターンにぶつける。

 

「私が全部相手する」

 

 シャイダーンが全身のビーム砲を撃ち、エルバエルはかわしながら腰部のレールガンを撃ち込む。

 直撃したシャイダーンは体勢を崩し、ゼイドラがゼイドラソードを振るい、バエルソードで受け止める。

 ゼイドラを蹴り飛ばしてバエルライフルを撃ち込む。

 

「このアマが!」

 

 デスサイズヘルはツインサイズを振るいエルバエルは回避してレールガンを撃ち込む。

 アクティブクロークで防ぐが、アクティブクロークがダメージでヒビが入る。

 エルバエルが4機のガンプラを抑えている間にブラッドロードガンダムをキマリス・トライデントが相手をしている。

 キマリス・トライデントは機動力を活かしてブラッドロードガンダムにヒット&ウェイで戦っている。

 

「小賢しい真似を……」

「だったら追いついてきなよ」

 

 キマリス・トライデントは速度を緩める。

 ブラッドロードガンダムがキマリス・トライデントに追いつきかけると一気に加速して引き離す。

 

「ふざけやがって……」

(効いてる。効いてる。ほんとママは男を見る目は無いけど人の嫌がる戦い方を見抜くのは上手いんだら)

 

 貴音はブラッドの食いつきからバトル前に麗子からの指示が上手く決まっていると確信していた。

 ブラッドハウンドは参考になりそうなデータは無かったが、現状のデータから麗子はブラッドハウンドの事を分析していた。

 ブラッドハウンドはここまでブラッドのブラッドロードガンダム単機で勝って来た。

 そこからブラッドハウンドはアリアンメイデンのようにチームで戦う事よりも個人で戦うチームであると予測した。

 更にチーム名や使用ガンプラの名前にダイバー名が入っており、ここまで一人で戦って来た事からリーダーのブラッドは自信家で自己顕示欲が強いダイバーだと考えた。

 そこまで分析すればブラッドハウンドのフラッグ機はリーダー機であるブラッドのブラッドロードガンダムである事はまず間違いない。

 この手のダイバーが落とされたら負けるフラッグ機を自分以外に設定する事は考え難い。

 自分なら絶対に落とされないと言う自信があるからだ。

 だからこそ、アリアンメイデンはまずブラッドロードガンダムを孤立させる事にした。

 序盤でハーミットクラブ等3機のガンプラが珠樹と貴音を突破出来たのもそのせいだ。

 後方の部隊を狙っているのであれば、無理に足止めをしないで通させて後方の部隊で仕留めさせる。

 そうする事で前線で二人が戦うガンプラの数も減らす事が出来る。

 後は珠樹がブラッドロードガンダム以外のガンプラを全て抑えて貴音がブラッドロードガンダムを仕留める手筈だ。

 珠樹が4機のガンプラを抑えられると言うのも、麗子の目論見通りの展開だった。

 チーム戦よりも個人戦を重視するチームならフラッグ機とはいえ孤立した仲間を無理にでも援護に向かわずに目の前の敵を仕留めようとする可能性が高いと読んでの事だ。

 実際に読み通りに珠樹が抑えている4機のガンプラはブラッドロードガンダムの援護に行こうとはしないで、珠樹のエルバエルを仕留めようとしている。

 尤も、それは麗子の読み以上に4機のガンプラはわれ先にエルバエルを仕留めようと躍起になっており、全く連携を取る事無く攻めて来る。

 これが少しでも連携を取られると面倒だったが、個人の実力は香澄や真澄と比べても大したことは無く、珠樹の実力なら何時間でも足止めは可能だろう。

 

「逃げてばかりかよ! 一人じゃ何もできねぇのか!」

 

 ブラッドロードガンダムはGNブラッドソードを振るうが、キマリス・トライデントはかわす。

 

「はい。残念。もうちょっと頑張ろうか」

 

 ブラッドの性格を分析したところで相手をするのに最も適任だったのが貴音だった。

 実体験からこの手のダイバーは自分の自信を突いて煽ればムキになって来る。

 大我がそうだったようにだ。

 だが、大我とブラッドには大きな違いがある。

 大我はムキになって意地を強引に押し通せるだけの実力があるが、ブラッドにはそれがない。

 全国大会でランキング4位を倒しているものの、その程度の実力ではランキングでは上位に入っていないものの貴音の実力なら容易に相手をする事も出来る。

 

「糞が!」

 

 ブラッドロードガンダムの動きが目に見えておおざっぱとなっている。

 

「一人じゃ何も出来ないって? 一人じゃ勝てない奴が言っても説得力がないよ?」

「舐めんなよ! トランザム!」

 

 ブラッドロードガンダムはトランザムシステムを起動させる。

 ブラッドロードガンダムがGNドライヴ搭載機であるアルケーガンダムの改造機の時点でトランザムシステムが使える可能性は事前に考えられる事だ。

 そして、この状況で使うと言う事はそれだけ追い詰められている為、流れを変えようとして使って来るのだろう。

 

「ぶっ殺す!」

「無理……だって勝負は付いたから」

 

 トランザムを使い突っ込んで来るブラッドロードガンダムに対してキマリス・トライデントは足を止めた。

 その上で事もあろうか持っているデストロイヤーランスを構える事もない。

 この状況で勝負を諦めたとは考え難い為、ブラッドは舐められていると頭に血が上り視野がいつも以上に狭くなっていた。

 それこそが貴音の狙いだった事にブラッドは気がつかずにブラッドロードガンダムはGNブラッドソードを振り上げる。

 そのまま隙だらけで無防備なキマリス・トライデントにGNブラッドソードを振り下そうとした。

 だが、キマリス・トライデントは微動だにしていなかったが、ブラッドロードガンダムの攻撃は空振りに終わった。

 キマリス・トライデントは何もしていないそれなのに攻撃が当たらなかった。

 ブラッドも始めは何が起きたのか分からなかったが、モニターの視界の端にGNブラッドソードが漂っているのを見つけて悟った。

 ブラッドロードガンダムの両腕が手の付け根からなくなっていたのだ。

 

「あんなに目立ってちゃ私の妹(未来の)ならよゆーで狙い撃てるんだよね」

 

 ブラッドロードガンダムがトランザムを使った事で赤く発光した。

 後方の狙撃部隊には前線の相手のガンプラの位置は殆ど把握していない。

 だが、トランザムで赤く発光したブラッドロードガンダムは後方からでも良く見えた。

 後は貴音が逃げながら後方の部隊が狙撃しやすい場所に誘い込んで狙撃させた。

 攻撃させる時に何も動かない事で舐められていると思わせた事で視野が狭くなっていたブラッドには狙撃されてもすぐにはそれに気が付く事は無かった。

 

「一人で勝とうとするのは結構だけどウチの大我くらいの実力がないとね。私らの事あんまり舐めないで貰える? その程度の実力で一人で私らに勝とうなんて100億光年早い」

「……ふざけるな!」

 

 ブラッドロードガンダムはつま先からビームサーベルを出して蹴りかかろうとする。

 ブラッドロードガンダムの最後の悪足掻きではあったが、その攻撃もキマリス・トライデントに届く事は無かった。

 千鶴のグシオンシューティングスターの狙撃から時間を少し開けて5機のレギンレイヴもダインスレイヴを撃っていた。

 その弾頭が5発ブラッドロードガンダムに直撃した。

 1発でも致命傷になり得るダインスレイヴを5発も直撃すればブラッドロードガンダムは簡単に撃墜された。

 麗子の読みは最後まで完璧に的中し、ブラッドがフラッグ機だった為、フラッグ機が撃墜されバトルはアリアンメイデンの勝利で終わった。

 バトル前はブラッドハウンドがもしかしたら星鳳高校のように番狂わせを起こすのではないかと言われていたが、バトルが始まって見ればアリアンメイデンの圧勝で終わった。

 アリアンメイデンは決勝戦に駒を進めて、次は仙水高校と星鳳高校とのバトルだ。

 準々決勝で岩龍を破った事もあり、準決勝は闘魂がやや有利とされているが、単機で圧倒的な戦闘能力を見せて来た大我のいる星鳳高校が勝つ可能性も十分に考えられた。

 アリアンメイデンとブラッドハウンドとのバトルが始まってもガンプラのケアを行い、準決勝第二試合までに全機が万全な状態で戦えるまでになっている。

 大我は別行動をしていた為、レオとの作業が思った以上に時間がかかり開始ギリギリになっていた。

 

「あ」

 

 大我は通路で準決勝を勝って来たアリアンメイデンと遭遇する。

 準決勝の結果はまだ確認していないが、大我が見る限りではアリアンメイデンに負ける要素はない。

 彼女たちの様子からも決勝戦に進出した事は確かだろう。

 向こうの方が先に大我の事に気が付いていたが、大我は話しをする気はない。

 全国大会が始まってからは身内とはいえ別のチームにいる以上は一切の連絡もしていない。

 お互いに必要以上に馴れ合う気はなく、一言も口を利かずにすれ違う。

 

「たいちゃ……藤城君」

 

 すれ違った後に千鶴が意を決して大我を呼び止める。

 大我は準決勝に出ないといけない為、少し面倒そうにしていたが、足を止めて振り返る。

 

「……頑張って」

「ああ」

 

 それが今の千鶴にとっての精一杯だった。

 大我も短く返事をする。

 

「次の闘魂とのバトル。面白い物が見れるから見た方が良いぞ」

 

 大我はそれだけ言うと速足で歩き出す。

 呼び止められて時間を食った事もあり、大我はバトルに出れなくなるギリギリのところでガンプラ部と合流する。

 ギリギリまで姿を見せなかった為、心配された物の大我は気にした様子もない。

 全員揃い、時間となり星鳳高校と去年の優勝校である仙水高校チーム闘魂とのバトルが開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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