ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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エース無き戦い

星鳳高校と前回の優勝チームである闘魂との戦いは星鳳高校が勝利した事で決勝戦は東京地区予選と同じ組合わせとなった。

 地区予選とは違うのは3対3のチーム戦から10体10でのフラッグ戦と言う事だろう。

 ここまでの双方のチームは非常に対称的な戦いで勝ち進んで来た。

 星鳳高校はここまでのバトルは全て大我が相手チームのフラッグ機と仕留めて圧倒的な個の力で勝利して来た。

 それに対して皇女子高校は貴音がフラッグ機を仕留める事が多いが、常にチームの力で勝ち進んで来た。

 決勝戦はそんな個とチームの力のぶつかり合いと言える。

 準決勝が終わり、大会最終日に決勝戦が行われる。

 準々決勝と準決勝の間は時間が余りなかったが、決勝戦までは十分な時間が残されている。

 ホテルに戻り大我が自分の部屋でガンプラの調整を行っている。

 ぶっつけ本番で使って見たが、新しいバルバトスは確かに戦闘能力は格段に上がっていたが、未だに完全な状態とは言えず改善の余地があった。

 

「明日は決勝戦か……」

「なんかあっと言う間だったけどね」

 

 大我と同じように自分のガンプラを龍牙と冬弥も調整している。

 大会自体は数日で予選の方が土日で行われていた分、長く感じる。

 だが、泣いても笑っても明日の決勝戦で大会が終わる。

 

「明日は地区予選の時に負けた皇女子。あの時は俺のせいで負けたから明日のバトルは絶対に勝つ!」

 

 地区予選の時は冬弥は星鳳高校に転校する前だった為、その場にはいなかったがバトル自体は観戦していた。

 地区予選では時間切れとなって残りのガンプラ数で星鳳高校は負けている。

 その時、唯一撃墜されていたのが龍牙で龍牙からすればあの時の敗北は自分のせいで、明日の決勝戦は否応なく気合が入っている。

 そんな龍牙に大我は一切の関心を示す事なく、ガンプラの調整を行っている。

 

「だから明日のバトルも一緒の頑張ろうな。藤城」

 

 龍牙の言葉に大我は一切の反応は無く、ただガンプラを弄っているだけだ。

 龍牙は余り気にしていないが、どこか大我は心ここに有らずと言った感じだが気づく事はない。

 決勝戦を前に各自は自由時間となり、日も暮れて高校生が出歩くには少し遅い時間帯になった頃、大我は一人でホテルの部屋を出る。

 単にホテル内やホテルの近所を散策すると言う訳ではなく、ホテルに持って来た荷物を全て持っていた。

 龍牙や冬弥は史郎達の部屋に遊びに行っていたため、大我がそんな荷物で部屋を出ても怪しまれる事は無かった。

 

「優勝して帰るには少し早すぎないか」

「ちっ」

 

 そんな大我を諒真が呼び止めて、大我は諒真にも聞こえるように舌打ちをする。

 諒真もあからさまな態度に苦笑いを隠せない。

 

「何してんの?」

「いやな……決勝を前に愛しの妹の顔でも見ておこうと思ったのに貴音の奴に殺されかけた」

「馬鹿でしょ」

 

 大我はため息をつく。

 どこまで本気から分からないが、妹の千鶴に会いに行こうとしたらしい。

 尤も、決勝戦を明日に控えているのは星鳳高校だけではなく、皇女子高校もそうである為、実の兄妹だとしても対戦相手のチームである以上はそう易々とは会えない。

 

「そんな事よりも……そんな荷物でどこに行く気だ? ちょっと町に遊びに行くような荷物じゃないよな?」

 

 諒真は急に真面目なトーンで大我を問い詰める。

 大我もこの状況で聞かれないとは思っていない。

 

「……アメリカ」

「……は?」

 

 諒真も大我の答えは予想外だったようだ。

 

「だからアメリカだよ」

「それは聞いた。でもアメリカ? 流石に今か言ってたら明日の決勝には……大我、お前」

 

 諒真も大我の言葉の意味に気が付く。

 決勝前夜にアメリカに行ったとして、決勝戦の時間までに戻って来る事は難しい。

 アメリカに行くと言う事が冗談でなければ、大我は時間までに戻って来る気なのか、または戻る気がないのかのどちらかだろう。

 

「俺は明日の決勝には出ない」

 

 大我そう言い切って諒真の嫌な予感は的中する。

 大我は本気で決勝に出る気はないらしい。

 

「ダイモンに勝ったからか? けど地区予選で珠ちゃんたちに負けてるだろ?」

 

 大我が決勝に出ない理由として考えられるのはランキングトップのダイモンに勝ったからなのだろう。

 元々、大我が全国制覇に興味はなく、全国の猛者と確実に戦える場として、大会に出ている。

 その中でも最強とも言われているランキングトップのダイモンに勝った時点で大我が大会に出続ける理由もない。

 しかし、大我は大会の中で一度だけ敗北している。

 それが地区予選だ。

 判定で負けただけで、バトル自体は実質的に勝利しているが、負けは負けだ。

 

「そんな事は些細な事だよ。今日のバトルが終わった時にルークからメールが来てたんだよ。世界大会のアメリカ予選の日程が決まったってね」

「世界大会……そう言えば全国大会の後だったよな」

 

 GBNのジュニアクラスにおいて最大級のイベントがある。

 それが世界大会だ。

 各国のサーバーから代表フォースが集結して世界一のフォースを決める大会だ。

 毎年、10月に行われそれまでに各国のジュニアクラスのダイバー達の中から代表が選抜される。

 そして、アメリカサーバーの代表フォースを決める予選の日程が決まり、アメリカにいるルークからその知らせが闘魂とのバトル後に大我に送られて来た。

 

「だからルークに頼んでアメリカに戻れるように手配して貰った。少しでも早くチームに合流する必要があるからな。それに比べたら俺の個人的な感情は些細な事なんだよ。どの道、俺が出ないと明日の決勝戦はアリアンメイデンの勝ちは決まったも同然。そうなればどの道世界大会で戦えるかも知れないからな」

 

 代表フォースを決めるやり方は各国のサーバーでは異なる。

 日本サーバーでは全国大会の優勝チームがそのまま日本代表となり、去年も闘魂が出場している。

 一方のアメリカサーバーでは代表フォースを決める大会があり、そこで優勝したフォースがアメリカ代表となる。

 大我もアメリカ予選にビッグスターのメンバーとして参加する予定だ。

 アメリカサーバー自体には日本からGBNにログインしても行くことは可能だが、日本とアメリカには時差があり、チームメイトとはどうしても実際にログインする時間を合わせる事が難しい。

 だからこそ、大我はアメリカに戻りチームと合流する必要があった。

 大会まで残された時間で少しでも個人の技量だけでなく、チームの練度やガンプラの完成度を上げなくてはならない。

 予選大会までは十分な時間はあり、明日の決勝戦を終えてからアメリカに向かう事も出来たが、大我は1秒でも早くチームと合流して世界大会に向けた準備をしたいと思っている。

 

「……どうしても行くんだな?」

「止めても無駄だから。もしも止めると言うのであれば俺は学校を止める。それなら幾ら諒ちゃんでもどうにも出来ないし、星鳳高校の生徒でなければ大会に出る事は出来ない」

 

 大我も冗談で言っているのではない。

 生徒会長とはいえ、生徒の退学には何かを出来る事もなく、大我が学校を止めてしまえば全国大会に出る事も出来なくなる。

 例え大我が星鳳高校を止めたところで、全国大会の予選に出る事は出来る。

 ここで無理やりにでも大我を引き留めるような事をすれば大我は間違いなく、学校を退学するだろう。

 

「そっか……まぁここまで来れたのも大我のお陰だからな。悪かったな。ここまで俺の我がままに付き合って貰って」

 

 大我が全国大会に出る事になったのは、諒真に嵌められたからだ。

 諒真もここまで自分の我がままに大我を突き合わせた事には多少なりとも罪悪感を持っている。

 だから、自分も全国大会に出ている。

 

「別にいつもの事だろ? 諒ちゃんだけで姉ちゃんとかがいないだけマシだよ」

 

 大我が日本にいた頃は良く諒真と千鶴と遊んでいた。

 その時は珠樹や貴音も一緒で、いつも諒真や貴音に振り回されて来た。

 それに比べれば諒真一人に振り回されるくらいはまだマシだ。

 

「それに星鳳でバトルして来て分かった事がある。ここでのバトルはつまらない。レオと戦って分かったんだよ。相手が弱いどうこうの問題じゃない。ダイモンと戦った時にも何も感じなかった。向こうでは相手がどんなに弱くてもつまらないとは思わなかった。多分、ここにはアイツ等がいない。だからつまらなかったんだよ。それが分かっただけでもここでバトルして来た意味はあったと思う」

 

 大我が日本でバトルして来たが、つまらなかった。

 アメリカでは1度でもそんな事は無かった。

 だが、レオとのバトルではそれが無かった。

 単にレオが自分と拮抗するだけの実力者であった事以外でもレオを今でも大我たちは仲間だと思っている。

 だからこそ大我は気が付いた。

 日本でのバトルがつまらなかったのは仲間がいなかったからだと。

 それを知る事が出来ただけでもチームを離れて諒真に嵌められて大会に出た意味はあったのかも知れない。

 

「なら良いんだけどさ……けど何も黙って行くことはないだろ?」

 

 大我の事情は諒真も理解した。

 それならば、黙って行くこともない。

 ここまで大我の活躍で勝ち進んで来た事は誰も否定は出来ない。

 アメリカに戻るのも大我にとっては仲間の為で重要な事である為、全員の理解を得られずとも黙っていなくなるよりかはマシだ。

 黙っていなくなれば、後で全員の恨みを買いかねない事くらい大我にだって分かっているはずだ。

 

「良いんだよ。どんなに取り繕ったって俺は仲間の為にアイツ等を見捨てるんだ。変に理解されるよりも恨まれてくれた方が楽で良い」

 

 大我も黙っていなくなればどうなるかは分かっている。

 同時に大我の行動は星鳳高校を見捨てる事だとも思っている。

 出場メンバーが10人から9人になる事は大きなハンデとはならないが、その1人が大我だと言う事は大きな影響を与える。

 星鳳高校にも諒真や静流、竜胆と言った実力者はいるが、アリアンメイデンを相手にするのには3人だけでは厳しいだろう。

 

「そっか……そこまでの覚悟があるなら何も言わない。こっちを見捨てて行くんだ。絶対に代表になって来いよ」

「分かってる。俺達にとってはようやくめぐって来た最初で最後のチャンスだから負けるつもりはないよ。予選でも世界大会でもね。全てに勝って俺達は世界の頂点を掴みとる」

 

 諒真も大我を引き留める事は出来ず、大我は大我の仲間の為に恨みを買ってまでアメリカに向かうだけの覚悟をしている。

 諒真が出来る事は大我を応援する事くらいだ。

 ここから先は大我が自分で決めて自分の力で進む事を決めた道なのだから。

 諒真は大我を見送る。

 

「さて……どうすっかな」

 

 大我が都合よく、ギリギリになって戻って来るような事は期待できない。

 当日になって大我がいなくなれば士気にも影響するだろう。

 ただでさえ厳しい戦いとなる決勝に大我を欠いた状態での戦いは絶望的だろう。

 

「まぁやるしかないっしょ」

 

 どの道、始めから楽に勝てたバトルは無かった。

 大我がいないからと言って今更ジタバタしたところでどうにもならない。

 諒真は腹を括り決勝前夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 大我がいない事に龍牙も冬弥も余り気には留めていなかった。

 元々、大我は単独行動が多く、一人でどこかに出かけた程度で大我の荷物が全てなくなっていると言う事にも気が付かなかった。

 大我がいなくなっている事に気が付いたのは決勝戦の当日になってからだ。

 それでも決勝の時間は待ってはくれない。

 

「どういう事だ? 藤城の奴は本気で決勝に出ないつもりなのか?」

 

 会場で竜胆が苛立ちを隠さずにそう言う。

 

「アイツは口も悪いし態度もデカいけど、大事なバトルを放りだしてどこかに行くような奴じゃ……」

 

 大我をフォローする龍牙も不安を隠せない。

 未だに大我とは連絡も付かず、行方も分かっていない。

 

(だから大我はここには戻る事はないんだよな)

 

 その中で唯一、諒真だけは事情を知っている。

 とはいえ、本当の事を言うも出来ない。

 

「はいはい。落ち着けっていない奴を当てにしても仕方がない。決勝は9人でやる」

 

 諒真は手を叩いて自分に注目させてそう言う。

 諒真は大我が戻ってこない事を知っている。

 だからこそ、戻らない大我を待たせるよりも、戻らないとして行動した方が良い。

 

「相手は前回の準優勝校って言っても俺達と同じ高校生だ。大我の一人や二人いなくても勝てない相手じゃない。観客の殆どが星鳳高校は大我のワンマンチームだと思っているだろう。大我がいなくても俺達はやれるってところを観客に見せてやろうぜ」

 

 諒真がそう鼓舞する。

 アリアンメイデンを諒真は格上ではなく同じ高校生として同格だと言う。

 実際、個人の実力も高くチームとしての練度は圧倒的に向こうの方が上だが、大我がいない上に格上相手で萎縮するくらいなら、実力差がある事に目を瞑った方がマシだろう。

 

「そうだね。ここまで勝ち進んで来たんだ。最後も頑張ろう」

 

 史郎が締めて決勝戦が開始される。

 決勝戦のバトルフィールドはオーソドックスな宇宙空間でのバトルだ。

 地上ステージならある程度は楽になったが、最後までツキは向こうにあるようだ。

 これまでのバトルは全て大我がフラッグ機だったが、今回は諒真のガンダムクロノスXがフラッグ機となっている。

 

「……撃って来ない?」

「まぁ毎回のようにやっているからね。流石に今回はやらないんだろうね」

 

 バトル開始早々に全員がレギンスレイヴによるダインスレイヴの長距離砲撃を警戒した。

 ここまでの全試合で開幕早々ダインスレイヴを撃って来ているからだ。

 しかし、今回はそれを行わなかった。

 ここまで毎回していれば相手も分かっている為、ダインスレイヴの弾を無駄使いしない為なのだろうと史郎たちは思ったが、それは間違いであった。

 初手のダインスレイヴが来ないと気が緩んだ瞬間、史郎のガンダムAGE-3 オービタルにダインスレイヴの杭が突き刺さる。

 

「撃ってきやがった! 各機散開! とにかく避けろ! 死んでも当たるなよ!」

 

 AGE-3 オービタルがやられて次々とダインスレイヴが撃ち込まれて来る。

 向こうも毎回のように開幕早々のダインスレイヴを行う事で決勝でも使うと思わせていた。

 そこで警戒しながらも撃って来ないと思わせて安心した隙を付いて開会早々のダインスレイヴを撃って来た。

 星鳳高校のガンプラはそれぞれがダインスレイヴの狙撃をかわそうとする。

 

「初手は収まったか……状況は?」

「私は無事です。会長」

「こっちもだ」

「時間差とはやってくれるわね」

 

 諒真はすぐに被害状況を確認する。

 愛依と竜胆、静流は無事なようだ。

 

「他は……くそ! 無事なのは神だけか! 千鶴がやったか」

 

 レギンスレイヴのダインスレイヴで陣形を乱されたドサクサに紛れて千鶴が明日香のクラーフレジェンドと岳のジムHSC、冬弥の百騎士を同時に狙撃して撃墜していた。

 応答はないものの龍牙のバーニングデスティニーの反応はある為、やられてはいない。

 最初のAGE-3 オービタルを含めると開始数秒で9機中4機が落とされて残りは5機と半数にまで減らされてしまった。

 バーニングデスティニーは一直線に突っ込んでおり、その先には敵影の表示がある。

 

「おっと! 中々活きの良い子がいるみたいだね!」

「行かせない!」

 

 バーニングデスティニーは敵陣に切り込んで来た貴音のキマリストライデントに突っ込み殴りかかる。

 キマリストライデントはデストロイヤーランスでバーニングデスティニーの拳を受け止める。

 

「良い判断だ。神! 黒羽と八笠は神と貴音を叩け。俺と縦脇で珠ちゃんを叩く。この2機を優先して仕留める。乱戦になっても向こうは撃って来るからな後方の狙撃部隊は常に意識しとけよ」

 

 諒真がすぐさま指示を出す。

 アリアンメイデンの射撃精度はずば抜けている。

 乱戦に持ち込めば同士討ちを避ける為に撃って来ないと言う事はあり得ない。

 龍牙の元に向かおうとした静流と竜胆の行く手を2機のレギンレイズシュバルベが遮る。

 

「ジュリアも前に!」

「ちっ……突破するぞ」

 

 ドラゴンガンダムオロチは青竜偃月刀を構える。

 アリオスガンダムレイヴンもGNスナイパーライフルⅡを構えて撃つ。

 

「私がリンドウの方を抑えるわ。真澄はレイヴンを抑えて」

「分かったわ。姉さん」

 

 それぞれ香澄のタイプGが牽制射撃を入れながらドラゴンガンダムオロチの方に向かい、真澄のタイプMがアリオスガンダムレイヴンの方に向かって行く。

 

「お前の相手をしている暇はない!」

「悪いけど、抑えさせて貰うわよ!」

 

 ドラゴンガンダムオロチはドラゴンヘッドを全て展開してビームを撃つ。

 レギンレイズシュバルベタイプGは距離を保ったままライフルで応戦する。

 竜胆も香澄の相手はほどほどに龍牙の方に向かって行こうとするが、香澄はそれをさせない。

 レギンレイズシュバルベタイプGは一気に加速するとライフルに付いているランスユニットを突き出す。

 ドラゴンガンダムオロチは青竜偃月刀でランスユニットを受け止める。

 

「押しと通る!」

「貴女の相手は私よ」

 

 レギンレイズシュバルベタイプMはライフルをアリオスガンダムレイヴンに連射する。

 アリオスガンダムレイヴンは機動力を活かしてかわしながら突破を試みる。

 

「流石に7位と言うだけはある……それでも!」

 

 MA形態だったアリオスガンダムレイヴンはMS形態に変形すると肩のビームシールドで攻撃を防ぐ。

 

「面倒な位置に撃って来る……そう言う事。厄介な事を……」

 

 静流はアリアンメイデンの思惑に気が付いた。

 今までは後衛にいる事の多かった2機のレギンレイズシュバルベが前に出て来たのは静流と竜胆の足止めをする為だ。

 星鳳高校で大我の影に隠れているが、静流と竜胆も上位ランカーだ。

 大我一人でも厄介なところに上位ランカーが2人と合わせて3人を同時に戦うのはアリアンメイデンでも厳しい。

 だからこそ、静流と竜胆を香澄と真澄が足止めをして、その間に大我を仕留める手筈だったのだろう。

 香澄と真澄も個人での実力は高いが、それでも上位ランカーの2人をサシで戦えば勝ち目は薄い。

 それはあくまでも倒すつもりで戦えばの話しだ。

 勝つのではなく足止めをして時間を稼ぐのであれば十分に可能だ。

 2機のレギンレイズシュバルベは静流と竜胆の上位ランカーを完全に抑えていた。

 

「黒羽と八笠が抑えられたか……なら俺達が行くしかないか……」

「会長! 来ます!」

 

 静流と竜胆の代わりに龍牙の援護に向かおうとした諒真と愛依の前に珠樹のガンダムエルバエルが向かって来る。

 エルバエルはバエルライフルを撃って来る。

 

「珠ちゃん!」

 

 ガンダムクロノスXはクロノスキャノンで迎え撃つ。

 エルバエルはビームをかわしながらバエルソードを抜くとガンダムクロノスXを素通りしてシュトルゥムケンプファーに切りかかる。

 

「縦脇!」

「会長は先に!」

 

 エルバエルの斬撃をかわしたシュトルゥムケンプファーはビームマシンガンをエルバエルに撃つ。 

 エルバエルはかわしながらバエルライフルを撃ち、ビームマシンガンを破壊する。

 シュトルゥムケンプファーはビームサーベルを抜くとエルバエルに向かって行く。

 

「……任せた」

 

 優先順位ではチームのエースであり野放しにすれば好き勝手に暴れるであろう貴音のキマリストライデントだ。

 この場は愛依に任せて諒真は龍牙の方に向かって行く。

 珠樹の妨害があるかと思ったが、すんなりと珠樹は諒真を行かせた。

 

「神!」

「会長!」

「諒ちゃんも来た事だし、坊やはどいてな」

 

 キマリストライデントはバーニングデスティニーをデストロイヤーランスで弾き飛ばすとガンダムクロノスXに向かって行く。

 デストロイヤーランスとクロノスアックスをそれぞれが振い激しくぶつかる。

 

「一つ聞きたいんだけどさ! 何で大我がいないのよ! 地区予選の借りが返せないじゃない!」

「そいつは残念だったな。まぁ切り札を温存ってところだよ」

「決勝で何言ってのさ!」

 

 キマリストライデントはガンダムクロノスXを弾き飛ばす。

 ガンダムクロノスXはクロノスビットを展開して差し向ける。

 だが、キマリストライデントは一気に加速してクロノスビットを振り払う。

 

「会長!」

 

 バーニングデスティニーがキマリストライデントに向かおうとすると別方向から新たな敵影を補足した。

 

「ジン……君の相手は私だ!」

 

 それは後衛から前に出て来た千鶴のガンダムグシオンリベイクフルシティシューティングスターだった。

 グシオンシューティングスターは両手にグシオンチョッパーを持ちバーニングデスティニーに切りかかり、ビームシールドで受け止める。

 

「千鶴まで前に出て来たのか。各個撃破する気か」

 

 諒真もチームプレイを得意とするアリアンメイデンがチームプレイではなく、ぞれぞれを分断しての各個撃破をして来るとは思ってもなかった。

 だからこそ、麗子は事前に星鳳高校を分断して各個撃破するように指示を出していた。

 

「フラッグ機は後方のレギンレイズのどれかか? この距離じゃ遠距離攻撃で仕留める事は出来そうにないか……」

 

 ガンダムクロノスXはクロノスキャノンを連射する。

 キマリストライデントはかわしながら加速してガンダムクロノスXに突っ込んで行く。

 すでに半数がやられて連携を取ろうにも各機は完全に分断されて孤立させられている。

 状況を打開するにはアリアンメイデンのフラッグ機を仕留めるしかない。

 諒真はフラッグ機は後方からダインスレイヴでこちらを狙っている5機のレギンスレイヴのどれかだと見ている。

 各個撃破はこちらの連携を封じるが、同時に向こうも単機で抑えているせいで連携が取れない。

 その為、返り討ちに合うリスクも生じている。

 フラッグ機が返り討ちに合えばその時点で敗北となる為、こちらと直接戦闘になる5機はフラッグ機にするとは考え難い。

 だからフラッグ機はこちらと直接戦闘にならず、前衛を突破されても5機で戦えるレギンスレイヴのどれかだと諒真は予測していた。

 だが、そう予測する事はアリアンメイデンの監督である麗子も予測していた。

 決勝戦のアリアンメイデンのフラッグ機は千鶴のグシオンシューティングスターにしていた。

 今回は千鶴も前線まで出て交戦する為、返り討ちに合うリスクはあるが、千鶴なら普段は後衛で狙撃をしている為、前線に出て引き気味に戦っても不自然にはならない。

 多少のリスクを背負う事でフラッグ機を狙い一発逆転のリスクを最小限に抑えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 初手の攻撃で4機が落とされて残る5機も分断され、静流と竜胆は2機のレギンレイズシュバルベに抑えられている。

 個々の実力では静流と竜胆の方が上だが、香澄と真澄は2人を倒すのではなく、仲間と合流させないように抑え込む事を優先している為、戦いその物は殆ど拮抗している。

 アリオスガンダムレイヴンは飛行形態を駆使してレギンレイズシュバルベタイプMを振り切ろうとするが、そうやすやすとは振り切らせてはくれない。

 

「行かせない」

 

 レギンレイズシュバルベタイプMはライフルを連射する。

 その内の1発がGNスナイパーライフルⅡに掠りアリオスガンダムレイヴンは手放すと爆発する。

 

「っ! なら!」

 

 アリオスガンダムレイヴンはGNシザービットを展開する。

 レギンレイズシュバルベタイプMはライフルに付いている多目的ランチャーの弾頭を選択して撃つ。

 撃たれた弾頭が破裂すると周囲に粒子をまき散らす。

 GNシザービットが粒子の中に入るとGNシザービットが静流の方からはコントロール不能となる。

 これは多目的ランチャーに装填されている弾頭の一つでまかれた粒子の中ではファンネルやビットと言った武器の制御を不能にする効果がある。

 それによりGNシザービットのコントロールを出来なくした。

 

「ビットを封じた? 余り時間をかける訳には行かないわね……トランザム!」

 

 アリオスガンダムレイヴンのトランザムが起動して赤く発光すると一気に加速する。

 

「トランザム! 流石に早い!」

 

 トランザムで加速したアリオスガンダムレイヴンの機動力を真澄には完全に追い切れてはいない。

 アリオスガンダムレイヴンはGNミサイルを全弾撃ち尽くす。

 レギンレイズシュバルベタイプMはライフルと大型シールドの裏側のバルカンで迎撃するが、完全には迎撃しきれずに大型シールドで防ごうとする。

 GNミサイルが大型シールドに直撃してシールドの内部にGN粒子を流し込み内部から破壊し脆くなったところに飛行形態のアリオスガンダムレイヴンがミサイルポッドをパージしてGNキャノンを撃ち込む。

 レギンレイズシュバルベタイプMは大型シールドごと左腕が吹き飛び、アリオスガンダムレイヴンは先端のGNビーククローで挟むとそのまま切断してレギンレイズシュバルベタイプMを撃墜する。

 

「これで……」

 

 真澄を倒して龍牙の援護に向かおうとするが、アラートが鳴り響く。

 とっさにMS形態に変形して、後方からのダインスレイヴをかわす。

 一発目をかわしてすぐさま二発目をかわしたが、続く三発目をかわし切れずに右肩に直撃してダインスレイヴの弾頭が突き刺さる。

 

「くっ!」

 

 その衝撃でトランザムは解除され、体勢を崩したところに四発目のダインスレイヴの弾頭が直撃する。

 

「ここまで来て……」

 

 四発目は胸部に直撃してアリオスガンダムレイヴンは撃墜された。

 

「黒羽がやられた! ちっ……お前の相手をしている暇はない!」

 

 香澄のレギンレイズシュバルベタイプGと交戦中の竜胆も静流がやられた事は把握していた。

 静流と交戦していたレギンレイズシュバルベタイプMも仕留めている為、状況に大きな変化はない。

 

「竜胆先輩! 俺の方よりも会長の方に!」

「済まないがそうさせて貰う。お前もやられるなよ」

 

 アリアンメイデンのエースである貴音は現在は龍牙のバーニングデスティニーではなく、諒真のガンダムクロノスXと交戦している。

 ガンダムクロノスXは星鳳高校のフラッグ機である為、諒真がやられればその時点で敗北となる。

 その為、龍牙の援護よりも諒真の援護に向かう方が優先される。

 ドラゴンガンダムオロチが進路をガンダムクロノスXの方に変えるが、レギンレイズシュバルベタイプGがライフルを撃ちながら突撃して来る。

 

「邪魔をするな!」

 

 ドラゴンガンダムオロチはランスユニットを青竜偃月刀で受け止めると蹴り飛ばしてドラゴンヘッドを全て差し向ける。

 レギンレイズシュバルベタイプGはランスユニットを振るって一つは弾くが、残り7基のドラゴンヘッドは捌き切れなかった。

 大型シールドで胴体を守るが、レギンレイズシュバルベタイプGはいたるところをドラゴンヘッドに噛みつかれて損傷する。

 その損傷でまともに戦闘は出来ないと判断した竜胆は止めを刺すよりも、諒真の援護を優先して加速する。

 

「珠ちゃん! 突破されたわ」

「こっちは片付いたから問題ない」

 

 レギンレイズシュバルベタイプGを突破したドラゴンガンダムオロチの前に愛依のシュトルゥムケンプファーを仕留めて来た珠樹のエルバエルが立ちふさがる。

 エルバエルはバエルライフルを連射してドラゴンガンダムオロチの足を止めさせる。

 

「バエル! 敵の隊長機か」

「貴音の邪魔はさせない」

 

 ドラゴンガンダムオロチはドラゴンヘッドを差し向けるが、エルバエルは腰のレールガンで2基落としてバエルライフルを連射いてドラゴンヘッドを確実に破壊して行き、残る2基はバーニングデスティニーと交戦しているグシオンシューティングスターが背部レールガンで撃ち落す。

 

「ちっ! 厄介だな。先に仕留める!」

 

 ドラゴンガンダムオロチはスーパーモードを起動させてグシオンシューティングスターの方に向かう。

 グシオンシューティングスターは背部のサブアームに武装コンテナからマシンガンを取り出して迎え撃とうとする。

 

「竜胆先輩はやらせない!」

 

 横からバーニングデスティニーが光の翼を展開してグシオンシューティングスターに突撃する。

 

「ジン!」

 

 バーニングデスティニーはグシオンシューティングスターの懐に飛び込むと右手で背部レールガンの砲身を掴んで、左手で頭部を殴り取っ組み合いに持ち込む。

 その距離ではサブアームのマシンガンでは狙えない。

 グシオンシューティングスターは持っていたグシオンチョッパーで殴るも余り勢いを付けられずバーニングデスティニーの装甲を傷つけているものの離す事は出来ない。

 龍牙はグシオンシューティングスターに千鶴得意の射撃を封じている最大のチャンスに死にもの狂いで離れないように喰らい付いている。

 バーニングデスティニーはグシオンシューティングスターの胴体を殴りながら、バルカンも至近距離で撃ち込む。

 

「コイツだけでも!」

 

 バーニングデスティニーはマニュピレーターが潰れる事もお構いなしに力の限り殴り突ける。

 次第にグシオンシューティングスターの胴体がへこみ始める。

 それでも千鶴は冷静を保とうとする。

 ここで下手に取り乱せば自分がフラッグ機である事を見破られ兼ねない。

 

「千鶴」

 

 すると、珠樹から通信が入りモニターに画像が表示される。

 

「……了解」

 

 千鶴は殴られ揺れながらアラームの鳴るコックピットの中で精神を集中させる。

 これまでも難易度の高い狙撃をいくつも成功させてきた。

 それもその中の一つに過ぎない。

 千鶴は背部レールガンのエネルギーゲージを確認し、残弾とダインスレイヴが使用可能だと言う事を確かめる。

 殴られ続けるグシオンシューティングスターはもがきながら体勢を変える。

 背部レールガンの片方はバーニングデスティニーが掴み、砲身が歪みまともに狙撃が出来ないが、もう片方は使用できる。

 グシオンシューティングスターは何とか砲身をドラゴンガンダムオロチの方に向ける。

 

「やらせるかぁぁぁ!」

 

 千鶴がドラゴンガンダムオロチを狙っている事に気が付いた龍牙はとっさに左手でグシオンシューティングスターの胴体を押して頭部で背部レールガンを下から押し上げて方向を変える。

 バーニングデスティニーガンダムが砲身をずらした直後、グシオンシューティングスターからダインスレイヴの一撃が放たれた。

 その一撃はドラゴンガンダムオロチを完全に逸れていた。

 

「っし!」

「……やられた!」

 

 龍牙は何とか砲身を逸らせて竜胆を助けたが、竜胆は離れたダインスレイヴの方向に何があるのか気が付いた。

 その先にはガンダムクロノスXとキマリストライデントが交戦している。

 

「会長! 危険だ! 逃げろ!」

 

 デストロイヤーランスとクロノスアックスで激しくぶつかり合う2機。

 しかし、不意にキマリストライデントが横に移動するとキマリストライデントの横っ腹をダインスレイヴが横切り、竜胆の声も空しくガンダムクロノスXにダインスレイヴが直撃して上半身が吹き飛ぶ。

 

「なっ!」

「これが狙いだったのか……」

「あっぶな……」

「グッジョブ」

 

 珠樹の指示はドラゴンガンダムオロチを狙うように見せかけてバーニングデスティニーに砲身をずらさせてガンダムクロノスXを狙えと言うものだった。

 星鳳高校のガンプラは静流と愛依がやられて残りは3機だった。

 その中でも近接戦闘を重視して敵と激しくぶつかり合うバーニングデスティニーとドラゴンガンダムオロチはフラッグ機である可能性は低いと珠樹は見ていた。

 仮にガンダムクロノスXがフラッグ機でなかったとしても、残り2機な上に逸らしたと思った攻撃が味方を仕留めたとなれば少なからず動揺して、バーニングデスティニーを仕留めるのは難しくなく、ドラゴンガンダムオロチも千鶴に退かせてキマリストライデントと2機がかりでレギンスレイヴの援護もあれば十分に勝機は見込めた。

 尤も、珠樹の読み通り、ガンダムクロノスXがフラッグ機であった為、バトルはアリアンメイデンの勝利となった。

 その後、表彰式も問題なく終わり、龍牙達の全国大会は準優勝と言う形で終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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