大我と静流のバトルの翌日、史郎は生徒会室に呼び出されていた。
生徒会室には星鳳高校生徒会長である如月諒真が重々しい雰囲気で席に座り、その後ろには副会長である縦脇愛依が立っている。
史郎は自分が呼び出される理由はガンプラ部関連の事である事は分かっている。
だが、人数不足による廃部までの期間はまだ残されている。
「さて……沖田史郎君。ガンプラ部の新入部員は集まりそうかな?」
諒真が重い口を開く。
史郎の知る普段の諒真とは雰囲気が違う事は気になるが、今はそんな事を考えている余裕はない。
「後一人なんだけどね」
「成程……ところで君たちが毎年出場しているGBNにおける中高生部門の公式大会の規定にある各高等学校から出場できるチームは1つのみだと言う事は知っているね?」
「はい」
毎年GBNが開催している中高生を対象にした大会からは各学校から1つのチームしか出場する事が出来ない。
学校を代表して出場する事から他の部活同様の大会と同列に扱う学校が殆どだ。
「うちからも毎年、ガンプラ部が出場しているようだが、結果は君も分かっている通りだ」
元々部活に力を入れていない事もあり星鳳高校ガンプラ部は10年前の全国制覇から年々実力が落ちて来て今では1回戦を突破する事すら困難となっている。
去年は静流の加入で3回戦まで勝ち進む事が出来たが、3回戦では静流以外のファイターがやられた事で判定負けで終わっている。
「この学園にも部活に入る程ではないが、公式戦に出たいと言うファイターは少なくはない」
GBNの開催する大会は必ずしもガンプラ関連の部活に入る必要はない。
だからこそ、星鳳高校でもわざわざガンプラ部に入る気は無いが、公式戦に出たいと思うファイターは少なからず存在する。
「我が校としてもいつまでも実績を残せないガンプラ部ではなく、学校全体から有志を募り大会に出場させてはどうかと言う意見が出ている」
「それは……」
理不尽な事ではあったが、部として実績が残せてはいないと言う事は事実である以上は余り大きく反論は出来ない。
「だが。俺もガンプラ部の面々が大会を目指して日々努力をしている事は知っている。そこで提案なのだが、明日の放課後。君たちガンプラ部と我々生徒会がガンプラバトルを行うと言うのはどうだろうか。そのバトルに勝利すれば生徒会は全面的に君たちガンプラ部を全面的に支援しよう」
史郎はそれも致し方が無いと考え始めていた。
仮に部として出られずとも静流や龍牙なら有志として大会に出る事も出来る。
だが、諒真の提案は史郎の想定の上を言っていた。
生徒会とガンプラバトルで勝てば自分達をバックアップしてくれると言う。
史郎にはその意図が分からない。
「ルールは3対3のチーム戦。出場するファイターはガンプラ部と生徒会に所属している生徒のみで行う。異議は?」
「……ないです」
史郎は諒真に反論する事無く条件を飲んでしまう。
どの道、諒真は反論させる気もないのだと何となくわかっていた。
諒真の意図は分からないが、部として出られないと言うのであれば自分に部を任せて卒業して行った先輩に対して顔向けできないのも事実だ。
「よろしい」
史郎は状況がイマイチ呑み込めないまま生徒会室を出て行く。
「会長。いつそんな話しが出たんですか?」
史郎が居なくなった事を見計らい諒真の後ろに控えていた愛依が口を開く。
愛依も史郎をここに呼び出した理由は聞かされてはいなかった。
その上、GBNの大会にガンプラ部ではなく有志を募ると言うものだ。
「ああ。んな話しは始めから存在してないしな」
諒真は先ほどまでの重々しい態度から豹変して答える。
「は?」
「だってあの位言わないと沖田も本気にならないだろ」
「それだけの事で?」
ガンプラ部の実績が出せていないと言う事は愛依も知っている。
だが、史郎と諒真は同級生と言うだけで特別接点がある訳ではない。
それなのにガンプラ部にそこまでの思い入れが諒真にあるとも思えない。
「俺も今年で卒業だからな。丁度、今年はアイツがウチに入学して来た事だし、俺としてはここらで一発面白い事でもやっておきたかったしな」
そう言う諒真の笑みを愛依は知っていた。
その笑みをする時の諒真は大抵厄介事をする時にする悪巧みを考えている時の顔であった。
どこの誰かは知らないが、諒真の悪巧みに巻き込まれる事を愛依はここの中で合掌するのだった。
「それで彼の方はどうなったの?」
史郎が生徒会室にいる頃、部室には史郎を除く他の部員が集まっていた。
だが、史郎がいない以上活動をする訳にもいかず、明日香は部室に並べられているガンプラを適当に眺め、静流は自身のガンプラを調整しながら龍牙に今日の戦果を訪ねる。
静流の言う彼とは龍牙と明日香のクラスメイトである大我の事だ。
昨日は完全に拒絶されたものの、大我の実力は本物で大会を勝ち抜くには少しでも実力差を勧誘した方が良い。
その為、静流は同じクラスの龍牙に部に勧誘するように言っていた。
「ああ……全然ダメだったっすよ」
「途中から完全に無視されてたからね」
龍牙は今日一日を思い出して答える。
龍牙も渋々ながら、大我をガンプラ部に誘うが、答えは昨日と変わらなかった。
それでもめげずに休み時間になる度に勧誘するが、次第に大我の返答は雑になって行き、最終的には完全に無視された。
「まぁ……でしょうね」
静流も上手く行くとは思っていなかったらしい。
あの手のタイプの人間は自分の意志を捻じ曲げさせるには相当骨が折れる。
最も確実なのはガンプラバトルで負かして言う事を聞かせる事だが、昨日の今日で大我に勝つ事は無理だろう。
仮にガンプラ部が総動員でバトルしても勝てるかどうか分からない。
そこまでの実力差を昨日のバトルで実感した。
「でも俺はアイツを誘うのはやっぱ反対ですよ。アイツ……全国を全国程度って言ったんですよ! 幾ら実力があっても皆が必死に目指す場所をあんな風に……」
龍牙が大我の事を気にいらないのは態度よりも、昨日断る際に言った全国程度と言う言い方だ。
龍牙を初めとして多くの中高生は全国大会に出場して優勝する事を目標に日々努力している。
それを大我は全国程度と称した。
まるでそこを目指している自分達の努力を馬鹿にされたような気がした。
「海外で活躍してあれだけの実力を持っているんだから、彼の目指す先はプロってところでしょうね。悔しいけど彼にはそう言うだけの実力があったわ」
GBNが一大コンテンツと化した事で一部のファイターはプロのライセンスが発行されてガンプラバトルのプロファイターとして活躍している。
恐らく大我の目指す先はそのプロなのだろう。
そして、大我には大口を叩くだけの実力を持っている。
だが、龍牙は納得は行かないようだ。
そうしていると、史郎が生徒会室から戻って来る。
浮かない顔をしていた史郎は生徒会室での話しを皆に話した。
「成程ね……ウチが成績を残していない事は事実だけど、ずいぶんと思い切った事をして来たわね」
「部長! やってやりましょうよ!」
静流は冷静に受け止めるが、大我の件で頭に血が昇っている龍牙はやる気だ。
「そうね。生徒会の思惑は分からないけど、勝てば良いだけの話しね」
「黒羽さん。神君……分かったよ」
静流も龍牙もその気である以上は史郎も何も言わない。
各々は明日に備えて準備を始める。
翌日に授業後、ガンプラ部の面々はGBN内のロビーで生徒会と対峙していた。
生徒会からは生徒会長の諒真と副会長の愛依、3人目のファイターも生徒会の役員のようだが、余りにも影が薄いのか静流も史郎も見覚えはない。
「良く来たガンプラ部の諸君」
「ガンプラ部からは僕達3人が戦うよ」
「フム……成程」
諒真はそう言うと少し考え込む。
「廃部をかけたこの一戦。覚悟を決めて来たと見える」
「廃部? 如月君。昨日と話が……」
史郎は昨日は大会に出場権をかけたのバトルだと聞いているが、何故か今は部の存続をかけた物になっている。
「公式大会に出られぬ部など、学校側からすれば部費の無駄である以上は存在する価値はない。そもそも……」
史郎の抗議を無視して諒真は様々な持論を展開して行く。
同じ生徒会の役員も止める気配もなく諒真の演説は続く。
それから10分程経過しても尚、諒真は延々と話し続ける。
そろそろ、龍牙の我慢の限界に達しようかと言う時、諒真は演説の途中だが話すのを止めた。
「ようやく役者がそろったようだ」
諒真がそう言い視線を向けるそこには大我がふてぶてしく立っていた。
「お前……」
大我は龍牙に気にする事無く、史郎の方に歩いて行く。
「アンタが部長?」
「そうだけど……」
大我は手を差し出すとそこには現実世界で書かれたであろう、入部届の画像データが表示される。
そこにはガンプラ部と藤城大我の名が書かれている。
「これで俺もガンプラ部って訳だ。だから俺がこのバトルに出ても問題はないよな? 諒ちゃん」
「ああ。問題ない。待ちわびたぞ。大我」
そのやり取りから、大我と諒真は知り合いのようだが、龍牙はそんな事はどうでも良い。
「ちょっと待てよ! 藤城。昨日と一昨日は断って置いていきなり!」
「お前に用はない。邪魔だからすっこんでろ」
「んだと!」
龍牙は思わず大我に掴みかかろうとするが、それを静流と明日香が止める。
「止めさない。藤城君。つまり、君はガンプラ部の側で生徒会と戦うと言うの?」
「そう言う事になるな。諒ちゃんとバトルする為にわざわざ言われた通りに前座であるアンタを倒したんだ」
大我の言っていた前座とは諒真と戦う為の物らしい。
だが、これではっきりとした。
細かい事情は分からないが、少なくとも大我はこの場面においては味方だと言う事だ。
「部長」
「構わないよ。彼には僕の変わりに出て貰う」
「部長!」
龍牙が声を上げて静流も顔を少し顰める。
静流も大我をバトルに出す事は賛成だが、その場合バトルが外れるのは龍牙だと考えていた。
だが、史郎は大して考える事も無く自分が外れた。
確かにこの場面で龍牙に外れるように言えば龍牙は断るだろう。
無用な争いを回避する為には自分が外れるのが最も良いと言うのが史郎の判断なのだろう。
「部の事を頼むよ」
「部長……分かりました。部長の分もやってやります! 藤城! 足は引っ張るなよ」
大我が答える事は無い。
そのままロビーでバトルの申請が行われる。
フリーバトルは1対1でのバトルの他にも複数人でのチーム戦を行う事が出来る。
数は2人から最大で10人までのチームでバトル出来るほか、場合によっては双方の数の合わないハンデ戦を行う事も可能だ。
今回はオーソドックスな3対3でのバトルの申請をする。
バトルが開始されガンプラ部のガンプラがバトルフィールドに現れる。
今回のバトルフィールドはオーソドックスな宇宙となっている。
「どうしますか? 先輩」
「そうね……向こうの戦力は未知数だからまずは単独では行動しないで様子を見るわ」
チーム戦においては個人の実力だけではどうにもならない場合がある。
幾ら実力があっても単独で複数の敵を相手にすれば不利になる事は珍しくはない。
その上、バトルの制限時間が尽きた時の残りのガンプラ数で勝敗が付くため、一人撃墜されるだけでも不利となる。
去年の大会においても、相手の実力は静流には遠く及ばないものの僚機が2機とも撃墜された状態で3対1でもバトルを強いられた結果、全機を撃墜しきれずに判定負けをしている。
「了解っす。藤城! 聞いてたな。勝手な行動は避けて……っていねーし!」
龍牙が大我にも単独行動を避けるように言うおうとするが、すでに大我はどこかに行っていた。
静流も大我が大人しく自分達と連携を取るとは思っていなかったが、バトル開始早々に勝手にどこかに行くとまでは思っていなかった為、頭を抱える。
「……とにかく、彼の事はこの際放っておきましょう」
静流はそう判断する。
一方の大我は始めから静流と龍牙の事は始めから共に戦うつもりは無かった。
早々に単独行動をして敵を探していた。
「見つけた。2機……諒ちゃんじゃないか」
大我は目当ての相手ではなく、少なからず落胆する。
モニターに敵のガンプラが映される。
「ケンプファーとアレックスか……まぁ良い。先にぶっ潰しておくか」
モニターに映されているのはケンプファーの改造機とガンダムNT-1の改造機だった。
愛依のガンプラはケンプファーを改造したシュトゥルムケンプファーだ。
パックパックのジャイアントバズの片方が大型ミサイルポッドとなり、太股にはザクマシンガン、手持ちの火器に長距離射撃用の対艦ライフルを装備している。
もう片方のガンプラはガンダムNT-1を改造したフルアーマーアレックス。
全身をチョバムアーマーに身を包み、背部にはアームにより2枚のシールド、肩にはビームキャノンが増設されて火力と防御力を強化されている。
「見つけた。バルバトスだから会長に言われた通り足止めをして時間を稼ぐわ」
「はいはい」
シュトゥルムケンプファーは対艦ライフルでバルバトス・アステールに狙いを定める。
フルアーマーアレックスはビームライフルを撃ちながらバルバトス・アステールに向かって行く。
「ケンプファーの方はともかく、アレックスの方は大したことないな」
バルバトス・アステールは攻撃をかわしながら向かって来るフルアーマーアレックスを迎え撃つ。
フルアーマーアレックスにバーストメイスを振るい、フルアーマーアレックスは2枚のシールドで防ごうとする。
だが、バルバトス・アステールの一撃は2枚のシールドも全身を覆うチョバムアーマーも意味を成さず、一撃でフルアーマーアレックスを粉砕する。
「シールドごと重装甲のアレックスを一撃……会長に聞いていた通りの実力のようね」
シュトゥルムケンプファーはバルバトス・アステールとの距離を取りながら対艦ライフルで応戦する。
バルバトス・アステールは回避しながらシュトゥルムケンプファーを距離を詰める。
「対艦ライフルでは駄目ね」
シュトゥルムケンプファーは対艦ライフルを捨てるとミサイルを一斉掃射するとジャイアントバズを連射する。
バルバトス・アステールはシールドスラスターの機関砲でミサイルを迎撃し、テイルブレイドで砲弾を叩き落とす。
そして、そのまま一気に加速するとシュトゥルムケンプファーに詰め寄る。
バーストメイスの柄を短くして振るう。
「まだ!」
シュトゥルムケンプファーは回避しようとするが、かわし切れずに左肩に直撃する。
幸いにも致命傷にはならなかったが、シュトゥルムケンプファーの左腕が肩から潰れる。
体勢を崩したシュトゥルムケンプファーを大我は逃がす事は無い。
すぐさま空いている左手を伸ばし、シュトゥルムケンプファーの頭部を掴む。
頭部を握り潰しながら、自身の方に引き寄せるとドリルニーを胴体に突き刺す。
「会長……申し合分けありません……時間稼ぎすらできませんでした……」
コックピットのある胴体を潰した事でシュトゥムケンプファーは戦闘不能となる。
「さて……行くか」
戦闘不能のシュトゥルムケンプファーを手放すと最後の1機である諒真のガンプラを探し始める。
大我が生徒会の2機のガンプラを葬っていた頃、静流と龍牙は諒真のガンプラと対峙していた。
諒真のガンプラはクロノスの改造機であるガンダムクロノスXだ。
その名の通りクロノスをガンダムタイプへと改造したガンプラで頭部はヴェイガン機特有のライン状のセンサーの下にツインアイが隠されているガンダムレギルスと同様の仕様となっている。
武装は手持ちの武器として先端からビームライフルとビームサーベルの機能を持ったビームアックス「クロノスアックス」を持ち、腰にはギラーガの多関節機構の尾をベースにクロノスガンの銃身を合わせたクロノステイル。
肘と脚部、バックパックにはビームを胞子状にして操るクロノスビットの発生装置が増設されている。
他にもベース機と同様の掌にはビームサーベル兼ビームバルカン、胸部にビームバスター、バックパックのクロノスキャノンとベース機の火力はそのままにビット兵器とクロノスアックスによる格闘戦が強化されている。
「相手は1機……神君。様子を見ながら仕掛けるわよ」
「了解!」
龍牙のバーニングデスティニーは一気に加速し、光の翼を展開しながらガンダムクロノスXに突撃する。
「コイツで!」
バーニングデスティニーはガンダムクロノスXに殴りかかり、それをクロノスアックスの柄で受け止める。
「おっ。生きの一年だが、悪いがおたくらはお呼びじゃないんだよな」
ガンダムクロノスXはバーニングデスティニーを蹴り飛ばすとクロノスキャノンを撃ち込む。
バーニングデスティニーは蹴り飛ばされながらもビームシールドを展開してビームを防ぐ。
その間に静流のアリオスガンダム・レイヴンは回り込みGNスナイパーライフルⅡを撃つ。
「やるね。流石はランキング7位ってところか」
ガンダムクロノスXはビームを回避するとクロノスビットを展開する。
「けど……すっこんで貰えるか!」
展開されたクロノスビットは一斉にバーニングデスティニーとアリオスガンダム・レイヴンに襲い掛かる。
「数が多い!」
バーニングデステニーは頭部のバルカンでビットを迎撃しながら逃げる。
アリオスガンダム・レイヴンもGNスナイパーライフルⅡで迎撃するが、迎撃しきれずにGNスナイパーライフルⅡは破壊され、すぐに腕部に内蔵されているGNサブマシンガンで迎撃する。
その間にガンダムクロノスXは回り込んでクロノスアックスを振るう。
「っ!」
「先輩!」
アリオスガンダム・レイヴンは肩のビームシールドで受け止めるが、そのまま弾き飛ばされる。
「こんのぉぉぉ!」
体勢を整えたバーニングデスティニーが突っ込んで来る。
バーニングデスティニーの拳をガンダムクロノスXが受け止める。
その状態から掌のビームサーベルを出してバーニングデスティーの拳を破壊する。
「しまっ!」
「まずは一人目だ」
拳を破壊されたバーニングデステニーにガンダムクロノスXはクロノスアックスを振るう。
その一撃をバーニングデスティニーはかわす事も防御する事も出来ずに胴体部を切り裂かれた。
バーニングデスティニーは爆発し、残るは静流のアリオスガンダム・レイヴンだけとなる。
「生徒会長の実力がこれ程までとはね……」
「俺も全国とかランキングとかには興味はないが、アイツの兄貴分としてはこのくらいは強くないと立つ瀬がないんでね」
ガンダムクロノスXは飛行形態となったアリオスガンダム・レイヴンにクロノスキャノンとビームバスターを放つ。
アリオスガンダム・レイヴンが回避している間にクロノスビットを大量に展開して差し向ける。
「これ程の数のビットを!」
アリオスガンダム・レイヴンは飛行形態でクロノスビットを振り切ろうとするが、数個に先回りされてMS形態に変形すると腕部のGNサブマシンガンでクロノスビットを撃ち落す。
「一気に薙ぎ払う!」
バックパックのGNキャノンを前方に向けてビームを掃射しながら機体を動かしてクロノスビットを薙ぎ払って行くが、背後に回ったクロノスビットがアリオスガンダム・レイヴンに直撃する。
「くっ!」
致命傷にはならないが、背部のGNキャノンが損傷した為、パージする。
「さぁ……どうする!」
四方八方から攻めて来るクロノスビットに対してアリオスガンダム・レイヴンはGNサブマシンガンを撃ちながら、GNミサイルを全弾撃ち尽くしてミサイルコンテナをパージして身軽になる。
そして、ビームサーベルを抜いてガンダムクロノスXに向かって行く。
「そう来るか」
ガンダムクロノスXはクロノスキャノンで応戦する。
アリオスガンダム・レイヴンは瞬時に飛行形態に変形すると一気に加速してガンダムクロノスXの背後に回り込むとMS形態に変形してビームサーベルを振り下ろす。
「やるな……だが!」
アリオスガンダム・レイヴンのビームサーベルをガンダムクロノスXはクロノステイルの先端からビームサーベルを出して受け止めた。
「ビームサーベル!」
「残念」
攻撃を受け止めたガンダムクロノスXは周囲にクロノスビットを大量に展開する。
ガンダムクロノスXに近づき過ぎていた為、アリオスガンダム・レイヴンはクロノスビットを殆ど避けることが出来ずに直撃する。
「まだ……」
「案外としぶとい……けど、俺もあんまり時間を使う訳にもいかないんでね」
クロノスビットの直撃を受けながらもアリオスガンダム・レイヴンは肩からビームシールドを出しながら後退する。
しかし、被弾により機体の頭部、右腕、両足が吹き飛び、胴体も損傷しており、左腕もGNサブマシンガンは辛うじて使えるが、マニュピレーターが損傷して武器を持つ事は出来そうに無い。
静流は機体の状態を確認しながら次の手を考えるが、諒真はその時間すら与えてはくれない。
大量のクロノスビットがアリオスガンダム・レイヴンに襲い掛かる。
必死にGNサブマシンガンで応戦するが、被弾の影響か思うように機動力が出せない。
「やられる!」
左腕にクロノスビットが直撃し、肘から下が破壊され、静流もいよいよやられる事を覚悟したが、追撃が来る事は無かった。
「せっかちだな……」
モニターにはガンダムクロノスXはクロノスアックスを振るっている様子が映されいる。
どうやら、大我のガンダムバルバトス・アステールのテイルブレイドを弾いているようだった。
「やれると思ったんだけどな。流石は諒ちゃん」
大我は諒真が静流に止めを刺す瞬間を見計らい攻撃したが、諒真はそれに気がついて攻撃を防いだ。
「もう余計な邪魔者はいなくなった。これで思う存分やり合える」
「ああ……だが、そう簡単にやれると思わないで欲しいな。兄弟!」
バルバトス・アステールをガンダムクロノスXは互いの武器を構えて加速する。
2機はぶつかり合うが、すぐにガンダムクロノスXが弾き飛ばされる。
「なんの!」
ガンダムクロノスXは後ろに弾き飛ばされながらもビームバスターを撃つ。
バルバトス・アステールはシールドスラスターでビームを防ぎながら、突っ込みバーストメイスを振るう。
「その一撃は受けてやれないな」
その一撃をかわしながらガンダムクロノスXはクロノスビットを展開する。
「ちっ」
バルバトス・アステールはシールドスラスターの機関砲で前方のビットを迎撃し、背後に回り込んだビットをテイルブレイドで薙ぎ払う。
「これだけの数のビットを相手にするのは初めてだ。よくもまぁこれだけのビットを扱うようになってんだよ。諒ちゃん」
「お前が未だにあの時の意地を張っているように、俺にも意地があるんだよ。大我」
バルバトス・アステールは全方位から迫るクロノスビットを防いでいる。
「流石にこの数は面倒だな……ん? 成程……そう言う事か」
大我はある事に気が付いた。
腕部の200ミリ砲で正面のクロノスビットを迎撃すると一気にガンダムクロノスXの方に突撃する。
ガンダムクロノスXはバルバトス・アステールの正面にクロノスビットを集中させて行く手を遮る。
だが、大我は止まらない。
バルバトス・アステールはクロノスビットを完全に無視してビットの中に突っ込む。
表面に対ビームコーティングがされている為、ビームであれば多量被弾したところで損傷はない。
「全く……無茶をする!」
ガンダムクロノスXはバイザーが開きツインアイが露出するとクロノスアックスで迎え撃つ。
クロノスアックスをかわしたバルバトス・アステールはテイルブレイドを差し向けるが、ガンダムクロノスXはクロノステイルのビームサーベルで弾く。
「やはりそう言う事か」
大我はこのやり取りである事を確認したかった。
そして、確信した。
バルバトス・アステールは背部の滑空砲を前方に向けて放つ。
ガンダムクロノスXはクロノスビットを展開しながら攻撃をかわす。
「さぁて……どうする! 大我!」
クロノスビットが一斉にバルバトス・アステールに向かって行く。
あらゆる方向から来るクロノスビットを防いでいるが、バルバトス・アステールの火器の残弾数が次第に底を付いた。
「どうやら、弾切れのようだな。大我」
「諒ちゃん……右」
「おいおい。ずいぶんとセコイ真似をしてくんのな」
諒真はそう言いながらも、視線を右に向ける。
「なっ!」
モニターには大破したアリオスガンダム・レイヴンがこちらに突っ込んで来ている。
「マジか!」
その勢いは明らかにアリオスガンダム・レイヴンが自分で加速した物ではない。
「なんなの! あの子!」
バルバトス・アステールのテイルブレイドが弾かれた時、大我はテイルブレイドを戻さずにそのまま、2機に放置されて宇宙を漂うアリオスガンダム・レイヴンへと向けていた。
そして、アリオスガンダム・レイヴンの装甲にテイルブレイドを引っ掛けてそのまま質量弾として使った。
「諒ちゃんさ……大量のビットを使えるのは凄いけどさ……本体がガラ空きじゃん」
大我はクロノスビットで攻撃する際にガンダムクロノスXが棒立ちだった事に違和感を覚えた。
バトルは静流が戦えない状態である為、実質的には1対1だが、余りのも周囲に対して無警戒過ぎた。
そして、接近戦を行う時にはビットを使わず、出していたビットの動きも悪くなっていた。
そこで大我は確信した。
諒真は大量のビットを使いながら本体の操縦までは手が回っていないと言う事をだ。
ならば、あえて距離を取りながら諒真にビットを使わせれば本体は隙だらけで、諒真が戦えないと完全に注意から外している静流のアリオスガンダム・レイヴンで奇襲攻撃を行った。
「やってくれたな!」
諒真はとっさにクロノスアックスを振るいアリオスガンダム・レイヴンの胴体を真っ二つに切り裂く。
大我の奇襲攻撃を何とか防いだ、諒真は一瞬気が緩んだ。
諒真にとっては大量のビットを使えば本体の操縦が疎かになる欠点は自覚していた。
そこを大我に気づかれて付かれたが、何とか防いだ。
諒真は大我の逆転の一手を防いだと思っている。
だが、とっさの事で大我が事前に奇襲攻撃の方向を教えた理由までは気が回っていなかった。
「諒ちゃんなら防げると思ってたよ」
大我は始めから防がせるつもりで教えていた。
敵の逆転の一手を防いだ事で少なからず隙が生まれる事を見越していた。
バルバトス・アステールはバーストメイスを逆手に持ち替えてガンダムクロノスX目掛けて投擲する。
「終わりだね。諒ちゃん」
「そう簡単にやらせないってね!」
ガンダムクロノスXは最大出力でビームバスターを撃ってバーストメイスを迎撃する。
勢いよく投擲されたバーストメイスをビームバスターで止める事は出来なかったが、微妙に角度を変える事でバーストメイスはガンダムクロノスXに直撃する事無くどこかに飛んでいく。
「ああ……ごめん。さっきの嘘だから。こっちが本当の終わりだよ」
バーストメイスを投擲したバルバトス・アステールは滑空砲を放っていた。
ガンダムクロノスXのクロノスビットを迎撃する為に機関砲や200ミリ砲は全て撃ち尽くしたが、滑空砲だけは1発分だけ残弾を残していた。
その最後の一発をバーストメイス投擲後に攻撃を防がれてすぐに放った。
「はは……流石は俺の弟だ。さぁ……兄の屍を超えて行け!」
諒真はすでに敗北を確信していた。
自身の戦い方の欠点に気が付いた所からの一連の流れは大我の計算通りだったのだろう。
欠点を付いてに奇襲を防がせて気が緩んだところにバーストメイスを投擲を辛うじて防いだ事で諒真はすでに火器の残弾が尽きて遠距離攻撃ではどうにもならないと言う油断を誘った。
もはや諒真には正真正銘最後の一撃をかわす事は出来なかった。
その最後の一撃は正確にガンダムクロノスXのコックピットのある頭部に直撃する。
「諒ちゃん……いつから俺の兄になったんだよ。流石に嫌過ぎる」
コックピットのある頭部が破壊された事でガンダムクロノスXは爆発を起こしてバトルは終了する。
バトルが終了し、バトルに参加していた6人とバトルを観戦していた史郎たちとロビーで合流する。
バトルはガンプラ部が勝利した物の、結局大我が一人で勝利したような物で龍牙は面白くはなさそうにしており、静流も一度は助けられたもののバトル中に大破した自分のガンプラを武器のように使われている為、顔を顰めている。
「相変わらず強いな。大我は」
「諒ちゃんも昔よりかは強くなってたよ」
「会長と藤城君は知り合いなの?」
二人の言動から単純に学校の先輩と後輩と言う訳ではない事は分かる。
その点に関しては生徒会側も同様のようで代表して史郎が切りだす。
「まぁな。大我の両親と俺の父親が昔からの友人でな。その関係もあってガキの頃から何度も遊んだ事があるんだよ。まぁ、俺の弟分みたいな物だな」
「それは諒ちゃんが勝手に言っている事だけどな」
「成程」
その説明で大我と諒真の関係は分かった。
「それで勝負は僕達の勝ちで良いんだよね」
「ん……ああ、そう言う話しだったな。良いよ。良いよ。うん」
このバトルはガンプラ部が大会に優先的に出して貰える権利を賭けての物だったが、始めから学校側は関知していない。
諒真もその事は今まで忘れていた。
「良かった。それと藤城君。これからよろしく」
史郎はそう言い新しく入部した大我に右手を出して握手を求める。
だが、大我はそれに応じる事は無く、自分の手を差し出すと画像データを表示する。
それはバトル開始時に見せた入部届ではなく、退部届が映されている。
「……退部届?」
「ああ。諒ちゃんとのバトルも終わったからな。これ以上、俺がガンプラ部にいる理由はない。だから、今日限りで退部させて貰う」
その言葉にガンプラ部の面々は唖然として言葉が出ない。
大我にとっては諒真とバトルする為だけにガンプラ部に入部した。
だから、バトルが終われば始めから部を止める気だったのだろう。
「まぁ……そう来るよな」
そんな中諒真だけは特に驚いた様子はない。
大我の性格を良くしる諒真にとってはこれは想定の範囲内の事だからだ。
「あのな。大我。部活を退部すると言っても正当な理由は無ければそう簡単に退部は出来ないんだよ」
「……話しが違うぞ。諒ちゃんはガンプラ部に興味が無くてもバトルが終われば退部すれば良いって言っていただろ」
「言ったな。けど、退部すれば良いとは言ったけど、退部が受理されるとは一言も言ってないんだよな。これが」
大我はそう言われてこれまでの事を思い出す。
入学してから諒真にバトルを挑むが、諒真は自分と戦うに値する実力がある事を証明しろと言い、学内にGBNで中高生部門の国内ランキングで7位であるレイヴンこと静流に勝って来るように言った。
静流に勝利した後はガンプラ部とバトルする予定があるから自分とバトルをしたければガンプラ部に入れば良いと言った。
その際にガンプラ部に入る事を渋った大我に諒真はこう言った「バトルが終われば退部すれば良い」と。
その言葉を鵜呑みにした大我はバトル後に退部出来ると思っていた。
「……まさか諒ちゃん。俺を嵌めたな」
そこで大我は諒真の意図を察した。
始めから諒真は大我をガンプラ部に入部させる事が目的だったのだと。
「人聞きの悪い。大我は勝手に勘違いしただけの事だろ?」
大我は返す言葉がない。
確かに諒真は退部すれば良いとは言ったが、退部出来るとは言っていない。
諒真が意図的にしろ紛らわしい言い方としたとしても、大我が勝手に退部出来ると思っていたに過ぎない。
諒真に嵌められた事に気が付いた大我に諒真から個別チャットの申し込みがあった。
個別チャットとはアバター同士が現実世界のように会話するのではなく、当人同士がチャットで会話する機能で、これを使えば周囲の人間に話しを聞かれる事もない。
「騙すような形になったのは悪かったと思ってる。けど、俺が在学中にこの平凡な高校ででっかい事をやって見たかったんだよ。そんな時にお前がウチの高校に入って来るって知ってさ。これはお前にガンプラバトルで全国制覇して貰うしかないって思った訳だよ」
星鳳高校は進学校と言う訳でも特別部活に力を入れている高校でもない。
諒真は少なからず母校に愛着があり、自分が生徒会長として高校にいる間に何か大きな事を成し遂げたいと思っていた。
とは言っても、星鳳高校に入学する生徒に飛び抜けた能力を持つ生徒はほとんどいない。
そんな中、ガンプラバトルで高い能力を持つ大我が偶然にも星鳳高校に入学する事を諒真は知った。
大我の実力を持ってすれば全国大会を制覇する事も難しくはないだろう。
ただ、問題があるとすれば大我は全国制覇に何の興味もない事だ。
大我の性格を知る諒真は大我がガンプラ部に入らない事も全国制覇を目標とする事もないと分かっていた。
だからこそ、自分と戦いたがっている大我をガンプラ部に入部させる今回の事を思いついた。
「だが、お前にだってメリットはある」
「……どんな?」
「お前は全国制覇に興味はないが、全国制覇をするまでの過程において、同年代の実力者とバトルする事が出来る。普通にバトルしようとしてもそう簡単にはバトル出来ないが、大会で勝ち進めば強い相手と戦える。どうだ? 少しは興味が出て来ただろう」
大我の性格上、ガンプラ部に入部させてもバトル自体に出ない可能性は十分にある。
だから諒真は大我にバトルで勝ち進むメリットを提示する。
大我は全国制覇に興味はないが、ガンプラバトルで強い相手とバトルする事には興味はある。
普通に戦おうとしても、向こうも見ず知らずの挑戦者等相手にはしてもらえるかは怪しい。
フリーバトルでもランダムで当たる可能性は限りなくゼロに等しい。
そんな中で確実にバトル出来る機会は大会に参加し勝ち続ける事だ。
勝ち続けた結果に興味は無くても、その過程に大我の興味を引くエサを諒真は用意した。
「……分かった」
大我はそう言い個別チャットを閉じる。
「今の話しは無しだ」
大我と諒真が何か二人で話していた事は分かっていたが、個別チャットが終わるや否や大我が退部を撤回した事に驚きを隠せない。
「だが、始めに言っておく。俺はお前らと仲間になった訳でも馴れ合う気もない。俺は強い奴と戦いたい。アンタ達は俺と言う戦力を得て全国大会を制覇させて貰う。互いに利害が一致したに過ぎない。だからアンタ達の指図は受けない。俺は俺のやり方で好きにやらせて貰う」
「そう言う事だ。大我は口も態度も滅茶苦茶悪いが、実力は俺が保証する。まぁ……扱い辛いが使ってやってくれ」
始めから仲良くする気の全くない大我を諒真はフォローするが、すでに龍牙や静流の印象は最悪だ。
「分かった。改めてよろしく。藤城君」
史郎はそう言って握手を求めるが、大我はそれを一瞥しただけでログアウトしていなくなる。
ガンプラ部は藤城大我と言う圧倒的な実力を持つ新入部員を獲得したが、同時にとんでもなく危険な爆弾を抱えた。
それでも部員が5人そろった事で廃部の危機も回避され、ようやく部活として始動し始める事が出来たのだった。