世界大会も第三試合が終わり、決勝トーナメント進出を賭けたバトルも折り返し地点に来ている。
すでにここまでのバトルでポイントを稼いで来たチームとそうでないチームとの差が明確に出始めて来ている。
日本代表はここまでポイントを逃すことなく取り、上位チームに入ってはいないが、十分に決勝トーナメントを狙える位置を維持している。
そして、第四戦目の試合形式と組み合わせが発表された。
第四試合は全36チームを6つのグループに分けて一つのバトルフィールド内で制限時間1時間以内に指定されたNPDのガンプラを撃破したチームに50ポイントが与えれる。
各チームは最大5機までのガンプラが使用可能で、指定さえれたNPDを撃墜する手段は指定されていない。
制限時間内であれば指定されたガンプラを最優先に撃破するも良し、邪魔な敵チームのガンプラを殲滅してから指定されたガンプラを撃破しても良い。
今までのバトルと違う点は今までは上位数チームにポイントが与えられていたが、今回は指定されたガンプラを撃破したチームにのみポイントが与えられる。
つまり、36チーム中、6チームにしかポイントが与えられず、今回のバトルでのポイントは決勝トーナメントに進めるかどうかの重要な1戦と言える。
「これが今回のバトルのルールよ。強豪チーム同士が潰し合って貰えるのであればベストだったけど、強豪チームは上手い具合にばらけているわ」
日本代表のブリーフィングルームで麗子はメンバーたちに今回のバトルのルールを説明する。
すでにグループ分けも決まっている。
上位のギリシャ、ドイツ、アメリカ、ロシア、イギリスが一つのグループに纏まっていれば強豪チーム同士で潰し合って日本にとっては好都合だったが、そこまで上手くは行かず、強豪チームはそれぞれ別のグループとなっている。
「そして、私達日本代表と同じグループにはアメリカ代表もいるわ」
日本としては同じグループに強豪チームがいない方が確実にポイントを狙えたが、日本代表と同じグループには大我のいるアメリカ代表チームがいる。
これまでの3試合全てに大我は出ている。
確実に次のバトルにも大我は出て来る。
日本代表の大半が大我とは少なからず因縁があり、その実力を知っている。
その上、毎回大我のガンプラは武装が強化されている。
次のバトルで大我の使用するガンプラが分からないと言うのは不安要素が強い。
「幸いな事に今回は他のチームを必ずしも倒す必要はないわ。出場するのは珠樹、如月さん、如月君、大門君、湖侍路君の5人よ」
今までチームのエースであるダイモンこと光一郎や接近戦においては光一郎以上のコジロウこと右京は温存して来た。
だが、麗子はここで温存して来た二人と諒真を投入して勝負に出る事にした。
今回のバトルで大我を倒す必要はない。
大我より先に指定されたガンプラを倒せば勝利になる。
「ようやく俺の出番か」
光一郎はここまで一度も出番はなく、遂に来た出番でいきなり大我と戦えるかも知れないと気合は十分だ。
麗子は出場する5人に今回のバトルでの策を伝える。
作戦を伝え、ガンプラの準備を終えると5人はGBNにログインする。
各チームの準備が終えたところで第三回戦のバトルが開始された。
日本代表のガンプラがバトルフィールドに射出される。
日本代表を初めとした6チームのガンプラはバトルフィールドのどこかから出撃しているだろう。
「いきなりリトルタイガーと遭遇はないか」
「出会い頭にそれはアバターでも心臓が止まるって。で……ここはヤキンか?」
大我と戦いたがっている光一郎を宥めながら諒真が周囲を確認すると、近くにはヤキン・ドゥーエを思われる宇宙要塞にザフトと連合の戦艦やMSが交戦している様子が見える。
今回のバトルは各国の代表チームとターゲット以外にも多数のNPDが配置され、どのグループもガンダム作品の中での大規模戦闘の中でバトルが行われている。
「各機は手筈通りに」
「心得た」
「了解」
珠樹の指示で日本代表のガンプラは千鶴のグシオンシューティングスターは狙撃ポイントの確保に向かい、珠樹のウイングガンダムゼロエトワールと諒真のガンダムデュナメスXペストの2機と光一郎のガンダムAGE-2 マッハと右京のガンダムX斬月の2機に分かれる。
珠樹たちと別れた光一郎と右京は戦闘をしている宙域の中でも一際激しい戦闘の方に向かう。
「流石母親ってところか」
光一郎はモニターを見てにやりと笑う。
バトル開始前に麗子からバトル開始と同時に右京と共に激しい戦闘を見つけるように言われていた。
そこには高い確率で大我がいるからとも。
麗子の言う通り激しい戦闘宙域には大我のオメガバルバトスが暴れていた。
今回も改修された第四形態となっている。
第四形態では頭部と胴体に改修が加えられていた。
頭部には額の部分に通信機能を高めると同時に武器としても使えるブレードアンテナであるヒートホーンが追加され、顔を覆うようにセンサーマスクが追加され、センサーマスクにはガンダムタイプ特有のツインアイではなくザクを初めとしたMSと同じモノアイになっている。
胸部には4門の大口径バルカンが内蔵した増加装甲と背部のテイルブレイドや刃をガンダムバルバトスのメイスの先端部に変更されたテイルメイスとなっている。
これまでの改修で増加した重量を補うようにスラスターも更に高出力化されている。
第四形態となったオメガバルバトスの傍らにはジョーの雷邪の姿も確認できる。
「タイガーさんには指一本触れさねぇよ!」
雷邪がヘビークラブでゲイツの頭部を潰し、至近距離で胴体にバヨネットライフルをブチ込んで破壊する。
「ちっ……バランスが滅茶苦茶だな」
オメガバルバトスはチェーンソーブレードでストライクダガーを両断すると、テイルメイスを射出する。
テイルメイスには加速用と姿勢制御用のスラスターが付けられており、並のガンプラなら一撃で仕留められるだけの勢いを付けられる。
加速したテイルメイスがナスカ級のブリッジを潰す。
第四形態ではテイルメイス等で重量が増しており、今までの改修された腕部や肩で重心が上半身に偏り過ぎて全体的にバランスが悪い。
「タイガーさん! 他のチームの奴が来ましたよ!」
モニターの端にストライダー形態のAGE-2 マッハとその後方にはガンダムX斬月が映されている。
雷邪がバヨネットライフルを撃ちながらAGE-2 マッハを迎撃する。
AGE-2 マッハはかわして加速すると雷蛇との距離を詰めてMS形態に変形するとランスモードのハイパードッズランサーを突き出す。
それを雷邪はナックルシールドで受け流してバヨネットライフルを振り下すも、AGE-2 マッハは距離を取ってギリギリのところで回避すると雷邪を蹴り飛ばす。
「なんだコイツ!」
「そう言えばお前にはウチの一年が世話になったよな」
AGE-2 マッハはハイパードッズランサーをライフルモードにすると体勢を崩している雷邪に照準を合わせる。
だが、引き金を引く前にオメガバルバトスがチェーンソーブレードのガンモードでAGE-2 マッハを撃つ。
AGE-2 マッハは攻撃を中止して攻撃を回避する。
「タイガーさん!」
「ジョー。お前じゃそいつ等の相手をするのは無理だ。お前は先にターゲットの足を止めて来い」
「……分かりました」
ジョーは明確に自分よりも相手の方が上だと大我に断言されて不服そうだったが、大我からの指示である以上は素直に聞くしかない。
体勢を整えた雷邪は離脱する。
「ずいぶんと様変わりしたが、こうして戦えて嬉しいぜ。リトルタイガー」
「お前は前にぶっ潰しているから興味は無かったんだがな……まぁ3人がかりなら暇つぶしくらいにはなるか」
オメガバルバトスは両腕のチェーンソーブレードをブレードモードに切り替える。
先行して来たAGE-2 マッハにガンダムX斬月が追いつくとバックパックの大太刀を抜いて構える。
「2対1で少しセコイが今日は勝たせて貰うぞ! リトルタイガー!」
「来いよ。全員まとめてぶっ潰してやるからさ」
AGE-2 マッハはストライダー形態に変形するとオメガバルバトス目掛けて突っ込む。
大我が光一郎たちと交戦を始めたころ、別の宙域ではディランのZガンダム・シュテルンとジェイクのスターユニコーンガンダムはヤキン・ドゥーエに接近していた。
Zガンダム・シュテルンはバックパックのプロトフィンファンネルを射出する。
「あれも他のチームの奴か……紛らわしいんだよ!」
「ですね」
プトロフィンファンネルはNPDのザフト軍のガンプラに紛れ込んでいたドムトルーパーの足を撃ち抜きバランスを崩したところをZガンダム・シュテルンがロングメガライフルで撃ち抜く。
ドムトルーパーが撃破されるとローラシア級の残骸の影からドライセンがバズーカを構えて出て来るが、スターユニコーンガンダムがメガビームライフルで撃ち抜く。
「流石と言うしかありませんね。リヴィエールの新型機は」
「だな……丸見えだからな」
スターユニコーンガンダムはメガビームライフルだけを後ろに向けて撃つとその射線にはステルスシステムで姿を隠していたガンダムデスサイズヘルが胴体を撃ち抜かれて爆発する。
アメリカ代表は大我とジョー、ディラン、ジェイクの他にリヴィエールが今回の大会用に制作した新型のガンプラのテストも兼ねて出ている。
そのリヴィエールの新型のガンプラから送られて来る情報はバトルフィールドのガンプラの位置を正確に表示している。
それを使えば物陰に隠れての不意打ちやステルスシステムを使っての奇襲にも対応が容易だ。
「ジェイク。次が来ましたよ」
「デカいな……MAか」
2機が散開すると高出力のビームが横切りヤキン・ドゥーエに直撃する。
「アメリカさんは口がでかいだけでガンプラは小さいようだな!」
ビームを撃って来たのはガデラーザのようだ。
「ガデラーザか……カモじゃねぇか」
「そのようで……」
「ファング!」
ガデラーサから大型ファングが射出されるとそこから更に小型ファングが射出される。
100を超えるファングを出してガデラーザのダイバーは勝利を確信しているが、ジェイクもディランも焦る様子を見せない。
「馬鹿か。ユニコーン相手にんなもんを使うとか!」
ジェイクがコンソールを操作すると、スターユニコーンガンダムの装甲が変形してデストロイモードとなる。
モニターにNT-Dが表示されると、100基を超えるGNファングの制御がスターユニコーンガンダムにジャックされる。
ユニコーンガンダムのサイコミュジャックはGBNでは必ず使える物ではない。
ある程度の完成度でデストロイモードになって一定時間性能が底上げされ、そこから更に完成度を高める事でファンネルやビットと言った遠隔操作の武器の制御をジャックする事が出来る。
また、その数もガンプラの完成度に比例し、100基以上を同時にジャック出来るガンプラはGBNにもほとんどいない。
「くたばれよ」
ジャックしたファングが一斉にガデラーザに襲い掛かる。
GNミサイルで迎撃しようとするが、GNミサイルは撃つ前にコンテナごとZガンダム・シュテルンの狙撃で撃ち抜かれて、成す術なくガデラーザは自らのファングの餌食となった。
「100を超えるファングを同時にジャック出来るとは……図体の割に器用なんですから。後、僕のファンネルまでジャックするのは止めて貰えないですか。今のでどこかに行ってしまったんですが」
「良いじゃねぇか。細かい事は気にすんなよ」
ディランはため息をつく。
ジェイクの制作技術はリヴィエールを除けばチームでも上位ではあるが、性格は適当でおおざっぱ過ぎる。
それだけの制作技術と的確な判断があれば強い武器になるのだが、ジェイクの性格では高い制作技術で制作されたガンプラをイマイチ活かし切れていない。
尤も、ディランは今更それを指摘したところで直すことは不可能だと諦めている。
「全く……次が来ますよ」
「お? 何だよ。日本の奴らか」
「片方は大我の姉ですから、油断しないように」
「分かってるって」
スターユニコーンガンダムとZガンダム・シュテルンが接近するウイングガンダムゼロエトワールとガンダムデュナメスXペストにビームを撃つ。
「アイツ等は大我のところの奴か」
「ここで叩いておく」
「だな」
ガンダムデュナメスXペストはGNロングキャノンを撃って牽制する。
2機は散開し、そこをウイングガンダムゼロエトワールがツインバスターライフルを撃ち込む。
「デュナメスにゼロカスタムか……」
「どちらも長距離戦用のガンプラ。ならば接近戦で挑むのがセオリーでしょう」
Zガンダム・シュテルンはウェブライダー形態となり加速する。
同時にスターユニコーンガンダムもメガビームライフルを撃ちながら、ガンダムデュナメスXペストの方に向かって行く。
「ユニコーンは俺がやるから珠ちゃんはゼータの方をお願い」
「分かった」
ガンダムデュナメスXペストは向かって来るスターユニコーンに粒子ビームを撃ちながら迎え撃つ。
「デュナメスで接近戦かよ!」
「まぁね」
GNソードⅡをソードモードに切り替えて振り下し、それをビームトンファーで受け止める。
通常、ユニコーンガンダムはユニコーンモードでは腕部のビームサーベルはビームトンファーとして使えないが、スターユニコーンガンダムはユニコーンモードのままでもビームトンファーとして使えるように改造している。
「お兄さんらさ、大我より弱いんだろ?」
ガンダムデュナメスXペストはスターユニコーンガンダムを弾き飛ばす。
「一番厄介なのを妹たちに押し付けてるんだ。苦戦なんてしてたら、大我の兄貴分としては立つ瀬ないでしょ」
ガンダムデュナメスXペストはスターユニコーンガンダムに接近するとGNソードⅡを振るい、シールドを損傷させるともう片方のGNソードⅡをライフルモードに切り替えて至近距離から粒子ビームを撃ち込んでシールドを破壊する。
本来ならばスターユニコーンガンダムのシールドにはIフィールドの発生装置が組み込まれている為、ビームを防ぐことが出来るが一撃目の損傷で機能する事は無かった。
「なんだと!」
「んじゃさよなら」
ガンダムデュナメスXペストは至近距離からGNミサイルをスターユニコーンガンダムに撃ち込む。
「糞ったれ!」
GNミサイルの直撃を受けたスターユニコーンガンダムは内部から破壊されてボロボロだ。
「アレを耐えきるとかやるじゃん」
まだ完全に破壊されていないが、これ以上戦ったところで分が悪いと判断したジェイクは後退する。
諒真もスターユニコーンガンダムを仕留める事自体は目的ではない為、まともに戦闘能力が残されていないスターユニコーンガンダムを追撃する事はしない。
「ジェイクが撃退された! くっ!」
Zガンダム・シュテルンはウイングガンダムゼロエトワールのビームを回避する。
ウェブライダー形態で機動力を上げているが、珠樹の砲撃を前に中々距離を縮められずにいた。
「貴方の判断能力は高い。だから読みやすい」
ディランはジェイクとは正反対にバトルでは合理性を重視した戦闘スタイルだ。
常に様々な事態を想定し、最も合理的に相手を攻める。
その能力はチーム内でも随一だ。
しかし、それ故に自分と同じ戦闘スタイルで自分以上の能力を持つ珠樹からすれば次の動きが手に取るように見切る事が出来てやりやすい相手だ。
「これがあの皇麗子の子供の実力と言う訳だけですか……」
大我の実力を知っている以上、その姉である珠樹の実力を軽視していた訳ではないが、大我から聞いて想定していた以上の実力を珠樹は持っていた。
「ジェイクがやられた以上はこちらも危うい……」
時期にジェイクと戦っていた諒真もこちらに来るだろう。
ただでさえ、距離を詰め切れずにいるところにもう1機来られて勝てるとは思っていない。
そう考えているとビームがZガンダム・シュテルンを掠める。
ウイングガンダムゼロエトワールの攻撃を完全にかわし切れなくなってきている。
「止む負えませんね」
Zガンダム・シュテルンは反転すると退避し始める。
「良い判断。ここから先は追い詰められるだけ」
「取りあえず何とかなったな。珠ちゃん」
珠樹もディランを追撃する気はない。
諒真と合流し、2人はターゲットの捜索に入る。
アメリカの2機が日本の2機とのバトルに決着はついたが、大我と光一郎と右京とのバトルはまだ続いていた。
オメガバルバトスのブレードプルーマをかわしてAGE-2 マッハは接近するとハイパードッズランサーをランスモードにして突き出す。
それに合わせて背後から回り込んだガンダムX斬月が大太刀を振るう。
2機の同時攻撃をGNフィールドで受け止める。
「そう簡単にはやらせては貰えないか! そうでないとな!」
「うるさいんだよ」
オメガバルバトスはチェーンソーブレードをガンモードにして2機を同時に狙う。
2機はすぐに距離を取るとナスカ級の装甲をぶち抜いた弾丸がオメガバルバトスを襲う。
オメガバルバトスはギリギリのところで回避する。
「レーダーの有効範囲外からの狙撃でこの威力でこの正確さ、アイツか……」
3機の交戦する遥か後方から千鶴のグシオンシューティングスターがオメガバルバトスを狙っていた。
今回のバトルで日本は大我を止める為に国内ランキング上位3人を使い、足止めをしている間に珠樹と諒真でターゲットを仕留めると言う算段だ。
「面倒だな。リヴィエール、やっぱり後方にいる奴はスナイパーだ。それでもとびっきりの腕利きのな。そっちで何とかしろ」
「は? 無茶言わないでよ。私はアンタ達脳筋連中と違うのよ」
「良いからやれ。面倒でやり辛い」
「……分かったわよ。その代わり少しの間戦況は送れないから」
リヴィエールはそう言うと通信を一方的に切る。
リヴィエールは戦場から少し離れた場所にいた。
この大会用に新しく制作した新型のガンプラ、ガンダムスローネジーニアス。
ガンダムスローネドライをベースに制作されたガンプラで、ベース機のスローネドライと同じく支援能力に特化している。
スローネドライのGNステルスフィールドを応用したGNサーチフィールドを展開することが可能となっている。
これは無色透明のGN粒子を戦闘エリア内に散布することで散布領域内を索敵することが可能でこれにより一般的なガンプラのレーダーの有効範囲をはるかに超える範囲を索敵することができる。
GN粒子を散布して索敵しているため、いかなるステルスシステムを使って隠れていても存在そのものまで隠すことができず、スローネジーニアスの前には意味をなさない。
この粒子は他のガンプラに一切の影響が出ないため、散布エリア内のガンプラはGN粒子が散布されていることにも気づかなくことはない。
索敵の段階で圧倒的なアドバンテージを得ることでチームビッグスターの攻撃力を更に向上させることになる。
装備とては腕部のGNハンドガンにかぶせる形でGNランチャーがつけられていること以外はベース機と変わらないが、頭部のアンテナやバックパックが大型化されており、より通信機能の強化や広範囲にGN粒子を散布できるようにカスタムされている。
また、コックピット内のレイアウトも大きく弄っており、パイロットの座るシートをなくし、リヴィエールは自身のアバターをHAROに設定しているため、ベース機のコックピットにあるHAROをセットする台座にアバターをセットしている。
それにより空いたスペースにはモニターが設置され戦場のあらゆるデータが表示されている。
「さて……行くとしましょうか」
リヴィエールはGN粒子の散布を中断するとガンプラをグシオンシューティングスターのほうに向ける。
「ようやく直接狙える場所に出るようになったけど……」
千鶴はオメガバルバトスに照準を合わせて引き金を引く。
放たれた弾丸はオメガバルバトスに向かうが、ギリギリのところで回避される。
先ほどまでは戦艦などでオメガバルバトスを直接狙えず、戦艦を撃ちぬいて狙撃していた。
千鶴は気づいてはいなかったが、リヴィエールのスローネジーニアスのGNサーチフィールドで千鶴の位置は大我には筒抜けで、狙撃ポイントを変えても大我がそれに合わせて狙撃し辛いように位置取りをしていたせいだ。
だが、今はGNサーチフィールドによる索敵がされていないため、大我も千鶴の位置を完全には把握できていない。
「接近する機影……気づかれたの?」
モニターを切り替えるとそこにはこちらに一直線に向かってくるスローネジーニアスの姿が映されている。
グシオンシューティングスターは残骸を利用して姿を隠しているため、偶然近くを通っただけだとは考えにくい。
千鶴はすぐさま狙いをスローネジーニアスに切り替える。
「先手は打たせてもらう」
千鶴はトリガーを引くと放たれた弾丸は正確にスローネジーニアスを撃ちぬいた。
それで勝負は決まるはずだった。
「どういうこと? 弾丸は正確に当たったはず!」
狙撃したスローネジーニアスには確実に弾丸が当たっている。
にも関わらず弾丸はスローネジーニアスを通り抜けて無傷だ。
レーダーを確認しても確かにスローネジーニアスはそこにいる。
もう一度狙撃したが、結果は変わらない。
「残念でした。当たんないんだよね」
なぜ、攻撃が当たらないかを考える間もなく、スローネジーニアスは腕部のGNランチャーをグシオンシューティングスターに向ける。
グシオンシューティングスターは戦艦の残骸から飛び出してレールライフルを撃つが、スローネジーニアスをすり抜けて当たらない。
スローネジーニアスはGNランチャーを撃つが、グシオンシューティングスターは軽々と回避する。
攻撃は完全に回避したが、次の瞬間、持っていたレールライフルの銃身が内部から爆発した。
「何? どこから!」
スローネジーニアスはGNランチャーを撃ったこと以外攻撃らしい動作はしていない。
周囲には他のチームのガンプラはおろかNPDすらいない。
何が起きたかわからないが、何らかの攻撃を受けていることは確かではあるが、その攻撃の正体がつかめずにいると今度は背部レールガンの砲身が内部から爆発して砲身が吹き飛ぶ。
「一体何が……」
グシオンシューティングスターは膝とバックパックの武装コンテナからマシンガンを取り出すと周囲に弾幕を張る。
攻撃の謎はわからないが、弾幕を張ることで少しでもヒントを得ようとしている。
「とりあえずノルマは果たしたし、これ以上は必要ないわね」
グシオンシューティングスターの狙撃能力を削いだ時点でリヴィエールの目的は果たしている。
これ以上戦闘を続ければ、場合によってはスローネジーニアスの秘密が露見する危険性もある。
「そんじゃ、さよなら」
スローネジーニアスはトランザムを起動させると赤く発光する。
それを見た千鶴は警戒を強めるが、トランザムを起動したスローネジーニアスは量子跳躍を行い姿を消した。
どこから来るのか周囲を警戒していたが、攻撃は一向に行われることはなかった。
この量子跳躍は相手の死角に回り込むものではなく、単純に逃亡用として使われるもので、すでにスローネジーニアスは遥か彼方に逃げていた。
「量子跳躍を使ったから粒子量は心元ないけど……まぁ大丈夫か」
粒子残量を確認するが、まだある程度の時間GNサーチフィールドを維持するだけの粒子は残されている。
もともと、量子跳躍用の粒子とGNサーチフィールド用の粒子は完全に分けているため、敵に見つかって量子跳躍で逃亡してもすぐにGNサーチフィールドで索敵を再開できるように考えている。
「大我、こっちはスナイパーを無力化したから適当に遊んどいて。私はターゲットを探すから」
「わかった。任せる」
オメガバルバトスはチェーンソーブレードのブレードモードをガンダムX斬月に突き出す。
ガンダムX斬月は回避し、チェーンソーブレードはそのままアガメムノン級に突き刺さり、そのままチェーンソーブレードを振るいアガメムノン級を轟沈させる。
「あの武器は凶悪過ぎるだろ」
「まともに受ければこちらの武器が破壊されるか」
オメガバルバトスはAGE-2 マッハに胸部の大口径バルカンを撃つが、AGE-2 マッハはストライダー形態に変形してかわす。
そこにすかさずガンダムX斬月が腕部のビームガンを打ち込みGNフィールドを展開して防ぐ。
「アイツの狙撃がなくても面倒だな。ダイモンも前に戦った時よりも強くなってるな。まぁあの鬼婆が監督をしてるんだ、そうもなるか」
オメガバルバトスのテイルメイスをMS形態に変形してかわしてライフルモードのハイパードッズランサーをオメガバルバトスに撃つ。
「ターゲットをしとめるだけのつまらんバトルかと思ったが、少しは楽しめそうだ」
「お楽しみのところ悪いけど、ターゲットが出たわ。位置情報をそっちに送る」
リヴィエールのほうで今回のバトルの勝敗を決めるターゲットが出たとの通信が入る。
大我は交戦しながらも位置を確かめる。
「この位置じゃすぐに向かうのは無理だ。ジョーのやつに足止めをさせとけ」
「分かってる。もうジョーには死んでも足止めをするように指示を出してるわよ」
ターゲットはヤキン・ドゥーエから出てきた。
大我の交戦している宙域からは少し距離がある。
そのため、比較的近くにいるジョーに足止めをさせるようにすでにリヴィエールから指示を出している。
「それりもそっちはどうなの?」
「これからだったんだがな。まぁここは確実に勝ちを拾っておく」
思った以上に光一郎と右京とのバトルは楽しめそうだが、ターゲットをしとめることのほうが優先でそれを後回しにするほどの相手ではない。
もっとも向こうも大我を自由にする気はなく、交戦は続くのだった。
第四試合の勝敗を決めるターゲットが出現して最も近くにいたのは日本の珠樹と涼真の二人だった。
ヤキン・ドゥーエから出てきたターゲットはプロヴィデンスガンダム。
二人はターゲットを補足するとすぐにGNロングキャノンとツインバスターライフルを放つ。
プロヴィデンスガンダムは素早く回避するとドラグーンを展開する。
「このドラグーンの動き!」
「速い」
プロヴィデンスガンダムのドラグーンの動きは一般的なドラグーンの起動性能をはるかに上回っている。
2機は全方位からの攻撃をかわすが、ウイングガンダムゼロエトワールのツインバスターライフルに被弾して手放す。
同時にもう片方のツインバスターライフルも珠樹は手放した。
ツインバスターライフルはライフルとしては大型で取り回しも悪いため、プロヴィデンスガンダムのドラグーンを相手には分が悪いと判断した。
ウイングガンダムゼロエトワールは2本のゼロソードを抜くと接近戦を仕掛ける。
「援護は任せろ!」
かわし切れないドラグーンをウイングバインダーで身を守り、涼真のガンダムデュナメスXペストがライフルモードのGNソードⅡで援護射撃を入れながら、ウイングガンダムゼロエトワールはプロビデンスガンダムに接近していく。
プロヴィデンスガンダムは左腕のシールドからビームサーベルを出して迎えうつが、ウイングガンダムゼロエトワールはかわして下に潜り込む。
「取った」
下からゼロソードを胴体めがけて突き出し、珠樹も攻撃が当たることを確信した。
珠樹の確信通り、ゼロソードはプロヴィデンスガンダムの胴体に命中するが、ゼロソードは胴体を貫くことはなかった。
「フェイズシフト」
プロヴィデンスガンダムはウイングガンダムゼロエトワールにビームライフルを撃ち、距離を取らせるとドラグーンで全方位からビームを浴びせる。
「珠ちゃん!」
涼真が援護射撃を入れようとしたが、自分の近くにまで気が回らず、ドラグーンの攻撃でGNロングキャノンと左腕を失う。
「やべ!」
「大丈夫」
ウイングガンダムゼロエトワールはウイングバインダーで全身を覆うようにして攻撃から致命傷を防いでいた。
「こっちはちと厳しいな。それにしてもフェイズシフト持ちかよ」
プロヴィデンスガンダムは作中と同じくフェイズシフト装甲となっており、実弾や実体剣に対して圧倒的な防御力を持っているようだ。
ウイングバインダーで身を守るウイングガンダムゼロエトワールにプロヴィデンスガンダムはビームライフルとシールドのビーム砲で集中砲火を浴びせる。
すると、戦闘宙域にリヴィエールから位置情報を貰ったジョーの雷邪が到着する。
「あれがターゲットか」
雷邪はバヨネットライフルをプロヴィデンスガンダムに連射する。
撃った弾丸のうち数発がプロヴィデンスガンダムに当たるもフェイズシフト装甲のプロヴィデンスガンダムには効果がない。
「ライフルじゃ駄目か!」
新たな敵にプロヴィデンスガンダムはドラグーンを差し向ける。
雷邪はスラスターを全開で使ってドラグーンから逃れる。
「振り切れない!」
ドラグーンのビームが雷邪をかすめる。
そのうちの一発がバヨネットライフルに直撃する。
バヨネットライフルを手放すとヘビークラブを持ち、プロヴィデンスガンダムに向かっていく。
「フェイズシフトだろと足止めさえすればタイガーさんが!」
ナックルシールドで身を守りながら接近してヘビークラブを振るうが、プロヴィデンスガンダムはシールドで受け止めて弾くとビームライフルを撃つ。
ビームは雷邪の頭部を撃ちぬくが、雷邪もヘビークラブを投擲する。
それをシールドで弾くとナックルシールドを構えて再度突撃する。
プロヴィデンスガンダムのビームライフルでナックルシールドの片方が耐え切れずに破壊されるも雷邪は止まらない。
プロヴィデンスガンダムはビームサーベルを振るうが、雷邪はプロヴィデンスガンダムの左腕にしがみつくと後ろに回りみ後ろから羽交い絞めにしようとする。
「捕まえた」
何とか雷邪はプロヴィデンスガンダムの背中に食らいつくが、背後に回り込んだドラグーンの攻撃を受ける。
「アイツやるな」
「タイガーさんの命令なんだ! 死んでも離すかよ!」
雷邪はドラグーンの攻撃を受けて損傷するも、離れることはない。
プロヴィデンスガンダムもさすがに背中にへばりついては邪魔なのか何とか雷邪を振り払おうとする。
「終わり」
雷邪がプロヴィデンスガンダムと交戦している間に珠樹は邪魔になると手放したツインバスターライフルを回収していた。
ツインバスターライフルならフェイズシフト装甲であっても一撃で雷邪ごとしとめることができる。
「容赦ないな……だけど、悪く思うなよ。これでもバトルなんだからな」
ウイングガンダムゼロエトワールがツインバスターライフルを撃とうとした瞬間、何か黒い塊がウイングガンダムゼロエトワールの横を通過する。
珠樹も涼真もレーダーの反応は常に把握していた。
周囲には自分たち以外のガンプラはNPDくらいだ。
「……やられた」
「おいおい。あの距離からか」
珠樹はツインバスターライフルを下す。
涼真ももはや笑うしかない。
黒い塊、メイスの先端部分が後ろの雷邪ごとプロヴィデンスガンダムの上半身を押し潰していた。
遥か遠くから大我のオメガバルバトスがテイルメイスの先端部分をワイヤーから外して投擲したのだ。
距離を光一郎と右京の二人を巻いてそこまで行くまでの時間を惜しんだ大我がその場からテイルメイスを投擲した。
腕部のパワーユニットで強化されたパワーを最大出力で投擲し、ジョーが必死にプロヴィデンスガンダムを足止めしたことで直撃させた。
その威力はフェイズシフト装甲の耐久力ですら耐え切れずに破壊されている。
大我の足止めは完璧でその場からの投擲がこれほどの威力で正確にやれるのは麗子や珠樹も想定してはいなかった。
プロヴィデンスガンダムを大我がしとめたことで、このグループの勝者はアメリカ代表となった。