決勝トーナメントの組み合わせの抽選から一晩が明けた翌日。
今日はトーナメント一回戦第一試合のアメリカVSロシア、第二試合の日本VSドイツが行われる。
まずは第一試合のアメリカとロシアのバトルだ。
決勝トーナメントは全て最大10機のフラッグ戦で行われる。
どちらも全総力を投入することとなる。
「皆、準備は良いな?」
ロシア代表のリーダーであるオルゲルトがチームに最後の確認を行う。
ロシアは第六試合でスポンサーから勝手にガンプラに手を加えられていることが明らかとなり、各々でガンプラを徹底的に確認して自分で最後の調整を行った。
対戦相手のアメリカは開会当初は大我の宣戦布告もあり、批判的な意見が多かったが、これまでのバトルで力を見せつけたことで、今年の世界大会においてギリシャのアルゴスの対抗馬として最も注目を集めている。
以前の勝敗予想では多くがアメリカの勝利を予測している。
だからこそ、ロシア代表としては確実に勝ちたいところだ。
「行くぞ。我らの実力をアメリカ代表に見せつけ勝利し、そして目指すは優勝だ」
チームに喝を入れてロシア代表はGBNにログインする。
第一試合のバトルフィールドは雪原地帯。
ロシアにとっては馴染み深い自然が広がっている。
ロシア代表チームのガンプラはリーダーのオルゲルトのガンダムマークⅡチシート、カティアのガンダムマークⅡメェーチの他に、メガバズーカランチャーを装備したデルタプラス、バックパックにドッペルホルン連装無反動砲を装備し、ジェガン用のシールドとマシンガンを装備したグスタフカール。
シールドを2枚装備し、メガビームランチャーを装備したジェスタ、左肩と左腕にソードストライカーを装備し、手持ちの武器に対艦刀「シュベルトゲベール」を装備したジムⅡセミストライカー、ジムⅢディフェンサー、Z系のビームライフルを装備したスタークジェガン、バズーカを2つ装備したパワードジム、サイズを一回り大きくしたロトの10機で構成されている。
「相手はすぐに攻めて来る。散開して敵を迎え撃つ」
オルゲルトの指示でロシア代表チームはすぐにアメリカ代表を迎え撃つために動き始める。
バトルフィールドは全体が雪に覆われており、ランダムに吹雪などが発生する。
現在も若干吹雪気味で視界が悪く、散開して待ち伏せるには丁度いい。
「動きが静か過ぎる」
バトルが開始して数分が経過してもアメリカ代表に動きは見られない。
アメリカ代表は超攻撃的なチームで開始早々にも仕掛けてきてもおかしくはなかった。
「オルゲルト。見つけたぞ。バルバトスだ」
パワードジムのダイバーから大我のオメガバルバトスを発見したとの連絡が入り、オルゲルトは気を引き締める。
「だが……妙だ。動きは雪に足を取られて遅いのは分かるが、バルバトス以外にアメリカのガンプラの気配がまるでない」
「どういうことだ?」
オメガバルバトスの装輪ユニットは雪上では機動力を大きく制限されているらしく、動きは早くはない。
それ自体は問題ではない。
問題なのは敵の気配がオメガバルバトスのみだということだ。
「なぁ、オルゲルト。まさか奴ら……」
「そうだとしても油断するな。相手はあの藤代大我だ」
オルゲルトもその可能性を考えた。
アメリカ代表チームは初戦を予選第一試合と同様に大我のみで出てきたという可能性だ。
そう思わせておいて伏兵による奇襲も考えられるが、アメリカのバトルスタイルを考えるとその可能性は低く、大我のみで来た可能性の方が高い。
「兄さん。仕掛ける?」
「そうだな。仕掛けてみればわかることか」
相手の意図は分からないが、敵のフラッグ機はオメガバルバトスであることは確実だ。
オルゲルトはカティアに攻撃の指示を出す。
マークⅡメェーチはオメガバルバトスに向かっていき、ジムⅡセミストライカーもそれに続く。
「来たか」
大我の方でもそれを補足していた。
オメガバルバトスは向かってくる2機に向けて左腕のチェーンソーブレードをガンモードにしてレールガンで迎撃する。
2機は左右に分かれると後方のグスタフカールのドッペルホルンによる砲撃が始まる。
砲撃をかわしたオメガバルバトスにマークⅡメェーチがビームソードで切りかかる。
それをGNフィールドで防ぐと、カティアの攻撃に合わせてジムⅡセミストライカーも対艦刀を振るう。
「一人で来るとはずいぶんと舐められてるわね」
「一人で十分だからな」
オメガバルバトスはバーストメイスカスタムを振るい、2機は後方に大きく飛び退いて回避する。
着地を狙わせないために合流したパワードジムがバズーカで援護する。
GNフィールドで防いだところにジムⅢディフェンサーのミサイルが大量に降り注ぐ。
更にはグスタフカールとロトの砲撃が続く。
「ちっ……面倒だ」
オメガバルバトスはジムⅡセミストライカーの方に突っ込んでいく。
長距離からの砲撃も近くに味方がいればやり辛い。
だが、スタークジェガンがビームライフルを連射して足止めをすると、回り込んできたマークⅡメェーチがビームソードを振るう。
ビームソードを空中に回避したオメガバルバトスにデルタプラスのメガバズーカランチャーのビームが直撃して撃ち落とす。
「ビームの直撃を確認」
「奴の装甲には強力な対ビームコーティングがされている。一撃では仕留められないだろう」
戦闘宙域から少し離れた高台でデルタプラスがメガバズーカランチャーをセットして狙撃体制を取り、ジェスタが護衛についている。
オルゲルトは逐一情報を把握しながら指揮を執っている。
これまでの情報からアメリカは本当に単騎で挑んできていると見て間違いはない。
その理由までは分からないが、少なくとも自分たちを舐めて手を抜いてきているとは思えない。
少なくともアメリカには大我一人で勝つだけの勝算を見込んでいるのだろう。
「プランに変更はない。各機は予定通りに事を運べ」
不確定要素はあるものの単騎で来るのであれば全戦力を大我一人に当てることができる。
「こいつらの動き……誘ってるのか?」
パワードジムがバズーカを撃ち、ジムⅡセミストライカーがビームブーメランを投げて来る。
大我はそれらを全て対処しながら敵の動きは明らかに自分をどこかに誘導するかのような動きだと感じていた。
「気に入らないな。そんな見え見えな誘導に乗ると思われてるのは」
オメガバルバトスは高く飛び上がるとバーストメイスカスタムを逆手に持ち帰ると空中で投擲する。
その先にはメガバズーカランチャーで狙いをつけていたデルタプラスがいる。
「お前を先に仕留める」
空中でスラスターを最大出力で使ってデルタプラスの方に突撃する。
デルタプラスはメガバズーカランチャーを捨てるとビームライフルに持ち替えて飛び上がる。
バーストメイスカスタムがメガバズーカランチャーを粉砕すると、デルタプラスはビームライフルでオメガバルバトスを迎え撃つ。
デルタプラスのビームを対ビームコーティングの防御力で防ぎ、チェーンソーブレードをブレードモードにして切りかかる。
オメガバルバトスの攻撃をかわしたデルタプラスはグレネードランチャーをオメガバルバトスに撃ちこむが、オメガバルバトスの装甲にはダメージはない。
再度、チェーンソーブレードで切りかかろうとしたところを、地上からジェスタがメガビームランチャーで妨害する。
「ちっ」
攻撃を邪魔されたオメガバルバトスの高度が次第に落ちていく。
第一試合で使った第一形態の時は装備が最低限で空中に長時間飛んでいることができたが、ここまでの装備の増強で重量も増しているオメガバルバトスは長時間の飛行ができなくなっている。
「コイツも食らっとけ!」
デルタプラスはシールドでオメガバルバトスに体当たりを食らわせる。
空中で体当たりを受けて若干態勢を崩すが、オメガバルバトスは雪上に着地する。
しかし、オメガバルバトスが着地した瞬間に足元の雪が崩れ、オメガバルバトスは穴の中に落ちた。
「何だ?」
オメガバルバトスが穴の中から抜けだろうとするが、穴の中にはフィールドの雪だけでなく、雪に混ざって大量のトリモチが入っていた。
そのトリモチがオメガバルバトスの動きを封じた。
「ちっ……」
何とかトリモチから脱出しようとするも、そう簡単には脱出はできそうになかった。
このトリモチは元々フィールド内に用意されたトラップではない。
ロシア代表は大我を暴れさせると手が付けられないと考えて、事前にトリモチを各ガンプラに装備させてフィールドに持ち込んできた。
それを序盤にカティア達が交戦する間にオメガバルバトスを落とせるだけの穴をオルゲルトが掘ってトリモチを入れて穴を塞ぎ雪で穴を隠した。
後は大我をここまでおびき寄せるだけだが、普通に誘いだしても大我が乗ってくるとも思えないため、あえてカティア達は別方向に誘いだし、誘いに気づいた大我が誘いに乗らず、先に後方から狙撃支援をしているデルタプラスを狙わせて、誘導した。
「作戦通りね。兄さん」
「ああ。だが油断はするなよ。ここで一気に決める」
上手く大我を罠にはめたところにロシアのガンプラたちが集まり、穴に落ちたオメガバルバトスにそれぞれの火器を向けて集中砲火を浴びせる。
トリモチで動きを制限されているオメガバルバトスはGNフィールドを展開して身を守るしかない。
GNフィールドで集中砲火を防いでいるものの、GN粒子の残量はドンドン減っていき、このままではGN粒子の残量が尽きて一時的にGN粒子の展開が出来なくなる。
「まぁ……こんなところか。来い! シド丸!」
大我もこれ以上、膠着状態を維持する気はなかった。
大我の掛け声とともにオメガバルバトスの落とされた穴の頭上に影ができる。
「兄さん! 何か来た!」
「やはり伏兵がいたのか?」
「何だよ? アイツは」
「モビルアーマーなのか?」
ロシア代表も突如現れたガンプラに驚く。
空中に現れたのはリヴィエールが第六試合の後から一日で新たに作った隠し玉であるオメガバルバトスの支援機であるアステールブースターだった。
アステールブースターはハシュマルをモデルにサイズをオメガバルバトスに合わせて作られており、翼はガンダムAGEのシドのものをモデルとしたものとなっており、左右に4門つづのビーム砲に光波推進システムが搭載されている。
腕部はガンダムフラウロスのロングバレルのレールガンに変更されて、ハシュマルの超硬ワイヤーブレードは5基に増やされている。
ハシュマルとシドを掛け合わせた機体であることから大我はシド丸と呼んでいる。
空中に現れたシド丸は8門のビーム砲を地上に打ち込む。
ロシア代表のガンプラはすぐに散開する。
「くっ! あんなものまで用意していたのか!」
オルゲルト自身は決して大我が一人で来たことに油断はしていなかった。
常に大我以外の敵の存在を注意していたが、どこにもアメリカ代表のガンプラは存在しなかった。
だが、アメリカ代表の切り札はその予測の先を行っていた。
シド丸はミラージュコロイドを展開することで今の今まで敵に発見されることはなかった。
ロシア代表を散らしたシド丸は穴の中にもビーム砲を撃ち込む。
穴の中のオメガバルバトスはGNフィールドと装甲の対ビームコーティングでダメージを受けないが、GNフィールドの外のトリモチはビームに焼かれていく。
ある程度、自由になったところでオメガバルバトスはワイヤーフィストを射出してシド丸を掴むとワイヤーを回収して自身をシド丸の方に引き寄せて穴から脱出した。
「うまく俺を嵌めたがその程度でやられるようなら俺も一人ではやらないんだよ」
穴から脱出したオメガバルバトスは地上に降りる。
大我の動きを封じる策は破られたが、ロシア代表の損失は誘導するために囮として使ったメガバズーカランチャーのみで実質的な損失はない。
「ここからは俺が蹂躙する番だ。シド丸!」
オメガバルバトスは高く飛び上がる。
空中でシド丸はオメガバルバトスの方に向かい、近くまで来ると機体をくの字に折り曲げるとオメガバルバトスの背中にドッキングする。
そして、レールガンがオメガバルバトスの肩から前方に向くように移動する。
「これが俺の最強のガンプラ。ガンダムオメガバルバトス・アステールだ」
シド丸とドッキングすることでオメガバルバトスはオメガバルバトス・アステールとなる。
これまでの武装強化により失われた空戦能力と機動力をシド丸の光波推進システムで補うだけでなく、多数のビーム兵器により更なる攻撃力の強化にも繋がっている。
「お前ら全員まとめてぶっ潰す」
シド丸の翼の上部装甲がスライドすると、そこから大量の胞子ビットが展開される。
同時にコックピット内のモニターにロシア代表のガンプラ10機が同時にロックオンされる。
シド丸とドッキングした事で強化されたのは能力面だけではなく、多数のビーム兵器の搭載に伴い、フリーダム等に搭載されているマルチロックオンも使用可能となった。
それによりロシア代表のガンプラを全て同時に狙える。
「あれはヴェイガンの胞子ビットか! 各機は散開して何としてでも生き延びろ!」
オメガバルバトス・アステールの胞子ビットと8門のビーム砲が一斉にロシア代表のガンプラに襲い掛かる。
ビーム砲のビームはシドと同様にロックされたガンプラを自動追尾する機能を持っている。
ロシア代表のダイバーたちはこの攻撃を死に物狂いで凌ぐ。
「やはりビームが追ってきやがる!」
「どこに逃げるってんだよ!」
「よけきれるわけが!」
「ちくしょうぉぉぉ!」
ロシア代表のガンプラは次々と被弾していく。
それでも世界大会に出るだけの実力はあり、致命傷は何とか避けている。
カティアのマークⅡメェーチはビームソードで切り払い、オルゲルトのマークⅡチシートはバルカンと腕部のビームガンで弾幕を張りながらメガビームライフルで胞子ビットを薙ぐ払う。
攻撃が止み雪原は焼け野原に変えられた。
「この砲撃で撃墜数がゼロだというのは流石だな。まぁ戦えそうな奴はアンタ達兄妹くらいみたいだけどな」
砲撃を終えたオメガバルバトス・アステールは地上に降りる。
オメガバルバトス・アステールの砲撃によりロシア代表のガンプラのほとんどは大破し、撃墜こそされていないがまともに戦える機体は無傷のオルゲルトとカティアの2機だけだ。
「もっともこの程度でやられる奴とは戦ってみ意味はなさそうだけどな」
シド丸の翼の前部装甲が開閉する。
そこには収束モードと拡散モードの切り替え可能なビーム砲が1門づつ内臓されている。
拡散モードでオメガバルバトス・アステールはビームを撃つ。
「あんなものまで仕込んで……」
2機は素早く分かれると攻撃を回避しながらマークⅡメェーチはオメガバルバトス・アステールの後ろに回り込む。
後ろに回り込み接近戦を仕掛けようとするが、今度は翼の後部装甲が開くとそこにはミサイルが多数内臓されていた。
後方に向けてオメガバルバトス・アステールはミサイルを放ち、マークⅡメェーチはミサイルの対処をしている間にオメガバルバトス・アステールは装輪ユニットを展開してマークⅡチシートを追撃する。
マークⅡチシートは後退しながらメガビームライフルでオメガバルバトス・アステールを迎え撃つ。
「あの図体であそこまでの機動力を確保しているというのか」
「リヴィエールが最強のガンプラというだけのことはあるな。じゃじゃ馬だがコイツがあれば誰にも負けはしない!」
マークⅡチシートに追いついたオメガバルバトス・アステールはチェーンソーブレードをブレードモードにして切りかかる。
その攻撃を肩のシールドで受け流すと、至近距離から腕部のビームガンを撃ち込む。
「効かないな!」
オメガバルバトス・アステールは腰のワイヤーブレードを射出して、マークⅡチシートはとっさにメガビームライフルを縦に使って防ぐが、ワイヤーブレードはメガビームライフルに突き刺さり手放すとワイヤーを回収したオメガバルバトス・アステールのチェーンソーブレードで真っ二つにされる。
「くっ!」
マークⅡチシートは腕部からビームサーベルを出して応戦する。
オメガバルバトス・アステールのチェーンソーブレードとマークⅡチシートのビームサーベルがぶつかり合う。
「なんてパワーだ。チシートがパワーで押されている!」
「流石は鉄人といったところか。そう簡単には押し切らせてはもらえないか……だが!」
パワーでは若干オメガバルバトス・アステールの方が優勢だったが、オメガバルバトス・アステールの翼が大きく開くと下部装甲の光波推進システムの光が大きくなり、光の翼となる。
「何!」
光の翼を展開したオメガバルバトス・アステールはマークⅡチシートを弾き飛ばす。
弾き飛ばされたマークⅡチシートは体制を立て直し、オメガバルバトス・アステールは空中に飛び上がると加速する。
「あの翼はデスティニーと同じか!」
加速したオメガバルバトス・アステールは残像を残しながらオルゲルトを翻弄する。
姿を隠すときに使っていたミラージュコロイドをデスティニーと同じように残像を作り出すことが可能となっている。
マークⅡチシートはビームガンを連射するも、オメガバルバトス・アステールには当たらず、空中から腰のワイヤーブレードを射出し、マークⅡチシートはシールドでワイヤーブレードが刺さらないように弾く。
その間にオメガバルバトス・アステールは急降下し、チェーンソーブレードで襲い掛かる。
「大した性能だが……」
オメガバルバトス・アステールの攻撃を回避しながら、マークⅡチシートは懐に入り込みビームサーベルを振るうが、オメガバルバトス・アステールの対ビームコーティングの前には有効打にはならない。
「兄さん!」
2機に追いついてきたマークⅡメェーチがビームソードでオメガバルバトス・アステールに切りかかる。
それをチェーンソーブレードで受け止めると、膝のドリルニーを突き出す。
マークⅡメェーチはもう片方のビームソードでドリルニーを弾く。
胸部の大口径バルカンでマークⅡメェーチを狙うが、撃つ前にマークⅡチシートがシールドで体当たりをして体勢を崩させて大口径バルカンはマークⅡメェーチには当たることはなかった。
「大丈夫か? カティア」
「ええ。兄さんもまだやれるわね?」
「当然だ」
3機は一度体勢を立て直して仕切りなおす。
3機の間に緊張が走るがオメガバルバトス・アステールにミサイルが降り注ぐ。
「ミサイルだと? どこから」
突然のミサイルにオルゲルトは周囲を確認する。
オメガバルバトス・アステールに攻撃したということはロシア代表の攻撃だが、すでに他のガンプラには戦うだけの余裕は残されていない。
「……兄さん。どういうこと?」
「分からん」
「まだ動けたんだ」
オメガバルバトス・アステールの周囲を大破したはずのロシア代表チームのガンプラが取り囲んでいた。
それもオメガバルバトス・アステールの攻撃で損傷した部分は始めから損傷していなかったの如く直っている。
バトル中に破壊されたガンプラを自力で修理したり自動修復機能を持ったガンプラやルールによっては撃破されても復帰できることがあるが、どれもロシア代表には当てはまらない。
「どういうことだ。お前たち?」
「それが俺たちにも分からないんだ」
「突然、ガンプラが勝手に直ったと思ったら俺たちの操縦を受け付けなくなったんだよ」
オメガバルバトス・アステールの攻撃で戦闘不能になったロシア代表メンバーは後をオルゲルトとカティアに任せていると突然、ガンプラが自動的に修理されると制御不能となり動き始めた。
「お前たちから先に始末するか」
オメガバルバトス・アステールは近くのジムⅢディフェンサーの飛び掛かると、チェーンソーブレードで切りかかる。
ジムⅢディフェンダーを両断すると、翼のビーム砲を収束モードで撃ってグスタフカールとスタークジェガンの上半身を吹き飛ばす。
次の獲物に狙いをつけようとしていると両断したジムⅢディフェンダーが修復されており、ロングライフルを背後から向けるが、撃つ前に背部のレールガンを後ろに向けて撃つ。
「どうなってる? 何故……」
「兄さん。もしかして私にメェーチにされたように」
オメガバルバトス・アステールは一方的にロシア代表チームのガンプラを蹂躙するが、破壊されても破壊されてもガンプラは修復されオメガバルバトス・アステールに挑んでいく。
通信からは自分では操縦できず、ただオメガバルバトス・アステールに破壊されるだけの仲間の悲痛な叫びが聞こえる。
何が起きているのか分からない中でカティアはあることに気が付く。
「だが……チェックはしたはずだ」
以前の第六試合の時にもカティアのガンプラに勝手に仕込まれていたブレイクシステム。
それがほかのガンプラにも仕込まれていると考えたが、バトルの前には自分たちでおかしなところはないかチェックしている。
だが、それでは気づかないレベルで仕組まれているのかも知れない。
オルゲルトとカティアのガンプラに異常がないのはオルゲルトは大会中に一度としてガンプラの調整や整備をスポンサーのワークスチームには触らせずに自分で行っていたから仕込む隙が無かった。
カティアの場合はすでに取り外されたのか、バトルで負けた時の衝撃で壊れたかのどちらかだろう。
「……ふざけるな」
この事態を自分たちのスポンサーとは言え、はじめから自分たちが戦わなくても戦えるように仕組んでいたとするのであれば、それはファイターとしての矜持の侮辱に他ならない。
オルゲルトはスポンサーに対して怒りを覚えずにはいられない。
同時に単騎で挑むという一見、相手を舐めているとしか思えない行為の中にも自分の力に絶対的な自信を持ち自分たちのやり方を貫こうとしていた大我に対しても申し訳ない気持ちを持った。
「こんなバトルなど俺は認めない。こんなバトルを続けるくらいならば……」
もはやこのバトルはオルゲルト達、ロシア代表のバトルではない。
そう考えたオルゲルトはバトルを降参しようとするが、オメガバルバトス・アステールはロトを掴んでマークⅡチシートに投げつけた。
「……おい。つまんねぇ真似しようとしてんなよ」
オメガバルバトス・アステールはジムⅡセミストライカーの胴体にドリルニーをぶち込む。
「まだバトルは終わってない。なのに負け逃げしようとしてんじゃねぇよ」
「……だが、このバトルは俺たちの本意では……」
「知るか。そんなこと」
オルゲルトの言葉を大我はバッサリと切り捨てる。
「ようやくコイツの扱いにも慣れてきたんだ。お前をぶっ潰すまでバトルは終わりじゃないんだよ」
大我にとってはロシア代表の事情などどうでもいいことだ。
仮にオルゲルトが降参してアメリカがバトルに勝利したところで大我にとっては意味はない。
大我にとってこのバトルは勝利することは当たり前で、勝利という結果よりもその過程でオルゲルトを倒すことに意味がある。
「だが……」
「そいつの言う通りだ! オルゲルト!」
「ああ! お前達だけでも真っ当に戦ってくれ!」
「そうだ! ここで棄権なんてしたらバトルに負けただけじゃない! スポンサーの連中にも負けたことになる!」
「オルゲルト!」
ロシア代表メンバーが次々と声を上げる。
皆は自分たちのガンプラは制御不能で、運営が止めないが明らかに何らかの不正行為を行っているように見える。
このバトルは全世界に中継されているため、ロシア代表のバトルは今後のGBNの中で汚点ともなりかねない。
だからこそ、自分たちの戦いを守るためにもオルゲルトとカティアには正々堂々と戦って欲しいというのがチームの想いだった。
「だ、そうだ」
オメガバルバトス・アステールはデルタプラスの胴体を踏みつぶして、頭部を掴んでいたパワードジムを地面に叩きつけて、背中にガンモードのチェーンソーブレードを何発は打ち込む。
「……済まない。お前たち」
マークⅡチシートは両肩のシールドを腕に取り付ける。
そして、シールドの裏側に内臓されていた3枚のブレードが展開されるとシールドクローとなる。
「来い。大我。ロシアの戦いというものをお前に見せてやる」
「上等だ。こいつらの相手は飽きた。黙らせるか」
大我がそういうとオメガバルバトス・アステールのフレームが赤く発光する。
するとロシア代表のガンプラたちの動きが止まると力なく倒れていく。
「これは……」
「コイツのNT-Dはファンネルだけじゃなくて自動操作にも有効だ」
オメガバルバトスのFPガンダムフレームのFPとはフルサイコの略称だ。
NT-Dのファンネルジャックは本来はファンネルやビットといった遠隔操作の武器を対象にしているが、オメガバルバトスはそれだけに留まらず、モビルドールやビットMS、NPDなどの無人機等にも有効で、ブレイクシステムによる自動操作にもコントロールを強制的に奪うことが出来る。
このNT-D自体は第一形態の時から搭載されていたもので第一試合でアルゴスと対峙したときに大我は使ってトラックビットの制御を奪おうとしたが、あの時はリヴィエールの細工により使えなかったが、今は解禁されている。
「これで邪魔者はいなくなった。ここからはサシでやりあおうぜ」
「望むところだ」
オメガバルバトス・アステールとマークⅡチシートは真っ向からぶつかり合う。
単純な力ではオメガバルバトス・アステールに分がある物の、オルゲルトはうまく位置取りをして自身の力を逃がさないようにして何とかパワー負けをしないように持ち込んでいる。
「そう簡単には引かん!」
「ああそう」
オメガバルバトス・アステールはドリルニーを突き出して、マークⅡチシートの体勢を崩すと弾き飛ばす。
だが、すぐに踏ん張ってマークⅡチシートはシールドクローを振るう。
その一撃をチェーンソーブレードで受け止めると、至近距離から胸部の大口径バルカンをマークⅡチシートに向けて打ち込む。
マークⅡチシートも負けじと頭部のバルカンを撃ち至近距離でのバルカンの打ち合いとなるが、オメガバルバトス・アステールの方がバルカンの威力は上であるため、長期戦では勝ち目はない。
マークⅡチシートはチェーンソーブレードを受け流すとオメガバルバトス・アステールの胴体に蹴りを入れる。
すぐにマークⅡチシートはオメガバルバトス・アステールの背後に回り込むが、大我は振り向いていてはマークⅡチシートの攻撃には対応できないと判断して装輪ユニットでバックしてマークⅡチシートに背中で体当たりをする。
「いい判断だ。流石だな」
「アンタもな」
マークⅡチシートはシールドクローで身を守り、勢いには逆らわずに後方に飛び退いた。
「持ち上がっているところ悪いけど、私のことも忘れないでよね」
オメガバルバトス・アステールの背後にマークⅡメェーチが接近していた。
「忘れてないさ。眼中にないだけでな」
オメガバルバトス・アステールは振り向くことなく、シド丸の超硬ワイヤーブレードを全て射出する。
マークⅡメェーチはビームソードで弾いていたが、ワイヤーで動きを封じられたところを超硬ワイヤーブレードに混じっていたブレードプルーマの直撃を受けて、ブレードプルーマが頭部や、右腕、左肘、腹部、バックパックに突き刺さって倒れる。
「……そんな」
「これでアンタ一人だ。アンタがフラッグ機ってことでいいんだよな」
すでにロシア代表はオルゲルト以外は全滅している。
それでもバトルが終わらないということは残っているマークⅡチシートがフラッグ機であるということだ。
「だったら?」
「別に。どのみち、お前はここでぶっ潰すからな!」
オメガバルバトス・アステールは装輪ユニットで加速してマークⅡチシートに突撃する。
マークⅡチシートもホバー走行で上手く、オメガバルバトス・アステールの攻撃を凌いではシールドクローの一撃を入れる。
シールドクローの攻撃そのものは目に見えてダメージを当ててはいないが、ダメージは確実に蓄積している。
同じパワーを活かした戦い方をする大我とオルゲルトだが、圧倒的なパワーで相手を叩き潰す大我と自身のパワーをうまく使って相手をねじ伏せるオルゲルトと対照的な力の使い方をしている。
「どうした? そんなもんか?」
「まさか、ここからだ」
マークⅡチシートがシールドクローを振り上げ、刃がオメガバルバトス・アステールの胸部の増加装甲を抉り、しりもちをついて倒れそうになるが、シド丸の光波推進システムで持ちこたえるが、マークⅡチシートが懐に飛び込もうとする。
それを阻止するために、腰のワイヤーブレードを射出するが、マークⅡチシートはシールドクローでワイヤーブレードを弾き飛ばして、馬乗りになろうとするが、光の翼を展開したオメガバルバトス・アステールが逆に前に出てマークⅡチシートのシールドクローにつかみかかり、2機はもみ合いになる。
「往生際が悪い。いい加減にぶっ潰されろよ」
「断る」
オメガバルバトス・アステールはシールドクローを振るえないように抑え込むが、上手くパワーを流されて抑え込めずにいる。
一方のマークⅡチシートも抑え込まれないようにするだけで精一杯となっている。
「なら!」
上空から一筋の光がシド丸の頭部に落ちた。
オメガバルバトス・アステールのコックピットのモニターにはエネルギーが充電されたとの表示が映される。
「GXのサテライトシステムだと!」
ガンダムXのサテライトシステムはサテライトキャノンを撃つために必要なエネルギーを外部から補充することが出来る。
それを同じシステムがオメガバルバトス・アステールにも搭載されている。
今まではビーム兵器を搭載していなかったため、そこまでエネルギーを気にすることも少なかったが、シド丸の頭部のアステールキャノンは最大出力ではサテライトキャノンにも匹敵する威力を誇るオメガバルバトス・アステールの最強火力だ。
シド丸の頭部はオメガバルバトス・アステールの頭部を覆い隠すように前方に向けられる。
「やらせるか!」
マークⅡチシートは何とかアステールキャノンの射角をずらそうと両腕で抑えて方向を変えようとする。
「吹き飛べ!」
大我がトリガーを引くとアステールキャノンは上空に向けて発射される。
ギリギリのところで、マークⅡチシートはアステールキャノンの方向を上に向けることに成功した。
しかし、その余波でマークⅡチシートのシールドクローとオメガバルバトス・アステールの両腕のパワーユニットが吹き飛び、シド丸の頭部も強引に閉じられようとされていたこともあり不具合を起こしている。
「ちっ!」
「なんてものを作り出したんだ。アメリカ代表は……」
マークⅡチシートは距離を取るも両腕のシールドクローを失い余波で全身にダメージを受けて、ホバー装甲も出来なくなっていた。
一方のオメガバルバトス・アステールも両腕のパワーユニットをパージする。
「逃がすかよ!」
オメガバルバトス・アステールはシド丸もパージすると装輪ユニットを使い距離を詰めて来る。
マークⅡチシートも両腕からビームサーベルを出して応戦する。
ビームサーベルの出力リミッターを解除することで短時間だが、マークⅡメェーチのビームソードと同出力まで上げることが出来る。
「うぉぉぉ!」
マークⅡチシートはこれ以上下がることなく前に出る。
オメガバルバトスは胸部の増加装甲を直前でパージし、マークⅡチシートはビームサーベルで増加装甲を振り払うが、オメガバルバトスはシド丸とのドッキング時には使えないテイルメイスを手持ちのメイスとして持ち突き出していた。
ギリギリのところでマークⅡチシートはメイスを受け止めた。
「ぐっ!」
「コイツで終わりだ」
メイスの先端の杭が射出されてマークⅡチシートの胴体を貫く。
「ふっ……見事だ」
それが致命傷となり、マークⅡチシートの機能は完全に停止する。
マークⅡチシートがやられたことでロシアのフラッグ機がやられ、アメリカとロシアの対戦はアメリカ代表チーム「ビッグスター」の勝利で決着がついた。