日本VSロシアのバトルは開始前はロシアの方が優勢に思われたが蓋を開けて見れば日本の圧勝に終わった。
それにより準決勝第一試合はアメリカVS日本となる。
「まさかロシアがこうもあっさりと負けるとはね」
「日本の策がうまくハマったからな。初手の狙撃で数を減らし、長距離砲撃で散らして各個撃破。ロシアの連中も多数との戦いには長けているから乗ってくると読んだうえで立ててんだろ」
大我はこのバトルをそう分析する。
日本は最初に千鶴の狙撃と珠樹の砲撃で固まっていては狙撃と砲撃で一網打尽にされると警戒させた。
散開すると各個撃破の危険性もあるが、ロシアのガンプラは火力と機動力が高いため、そうなっても切り抜けられる自信があることも想定に入れても策だ。
「初手の狙撃の精度があってこそだな」
ただ遠距離から撃つだけでは脅威として印象付けることはできない。
千鶴の正確な狙撃能力があってこそだろう。
「まぁどんなに正確な狙撃でも完全に見切って避けてしまえば関係ないけどな」
「いや無理でしょ」
「俺はできた」
クロエの突っ込みに大我は当たり前のように返すが、バトル開始早々に相手の位置も分からない状態からの正確な狙撃に対処できるファイターはGBNにもそうはいない。
「他の代表メンバーの情報もある程度は集めたけど、大我。君の意見も聞きたい」
すでにルークはドイツが敗れることも想定して日本代表チームの個々のバトルデータをある程度集めている。
その情報の他にも日本代表チームの多くは大我との関わりもあるため、実際に関わりのある大我の意見は重要な情報だった。
レオの関してはかつては同じチームにいたため、ある程度は手の内は分かっている。
「まずチームリーダーの珠ちゃんは見た目は愛くるしいけど、鬼畜の血が流れているだけあって面倒だ」
大我の実の姉であるということは同じ血が流れているということは誰も突っ込むことはない。
大我の言う面倒というところを具体的にして欲しいが、過去の戦闘データでは相手の行動を読んで先手を打つことを得意としているというのは分かる。
「姉ちゃんはウザい」
あまりに端的だが、バトル中には口数は多く過去の戦闘ログでも大我とのバトルでは口論に近いやり取りも多い。
その時に会話からも勢いに乗せては危険な相手だ。
「如月は射撃一辺倒だ」
千鶴は前に出ることはほとんどなく射撃能力に特化している。
近接戦闘においては世界大会出場レベルで考えれば脅威とは言えないが、それを差し引いても射撃能力は今大会ではトップレベルだ。
「ダイモンは日本で戦った時は中々楽しめた」
ダイモンこと光一郎は日本のランキングトップでキングの名に相応しい実力もあり、アメリカ代表でも大我以外では苦戦するとルークは見ている。
「ゴウキは直接戦うことはなかったが、ダイモンの金魚の糞みたいなもんだろ」
光一郎のようなエースの影に隠れて目立たないが、光一郎に合わせるだけの実力は持っているのだろう。
「コジロウともまともに戦った事はないが、接近戦ならダイモン以上らしい」
右京とは全国大会では直接戦わず、予選で軽く戦っただけだが、大太刀による接近戦は厄介だ。
「諒ちゃんはいつも涼しい顔して本気を出さない自分がかっこいいと思ってる節がある」
諒真は常に余裕を持ち、冷静に戦える分熱くなって思わぬミスはしないが、ここぞというときに実力以上を発揮することもないのだろう。
「沖田は自己主張はしないくせにいいところにいる」
全国大会では目立たなかったが、バトル中の位置取りは上手く、余り主張しなかったが、ある程度の数がそろったバトルでは高い実力のエースだけでではなく、史郎のようなサポートに長けた相手がいると厄介で監督の麗子もそんな史郎の特徴を見逃さずに伸ばしてきているだろう。
「デスティニーの奴は知らん」
相手チームの中で大我が唯一よく知らない相手が龍牙だが、ルークの手元にある資料では龍牙は大我と同じチームで全国大会に出ている。
それでも大我が知らないというのであれば、その時点では大我が一々覚えるほどの相手ではなかったということだ。
それがここまでの実力にまで成長したということは相手チームの中で成長性が飛びぬけているということだ。
「まぁ俺が知るのはこんなものだ」
「分かった。参考になったよ」
大我の主観が入りすぎて参考になるかは定かではないが、大我との付き合いの長いルークにはそれで十分のようだった。
「明後日のバトルまでに作戦は考えておく。リヴィエール、大我のバルバトスの改修作業は間に合うか?」
「よゆーよゆー。明日一日あれば十分間に合うわ」
リヴィエールはルークの方を見向きもせずに返す。
改修作業の方はリヴィエールに任せておけばバトルまでには間に合わせて来るだろう。
「大我は明日一日は出歩かないように」
大我が無意味に出歩けば余計なトラブルを起こしかねない。
明後日の日本戦は気を抜けない以上は大我には出歩かずに大人しくしていてもらった方が良い。
「分かってる。明日はギリシャがバトルするからな」
大我も決勝で当たる可能性の高いギリシャのバトルを見たいため、出歩く気はないようだ。
理由はどうであれ無用なトラブルさえ起こさなければ構わない。
「他も日本はもはや弱小チームじゃない。決勝戦を前に油断はできないよ」
アメリカ代表メンバーはそれぞれ頷く。
今更、日本を弱小国として見下す者はいない。
それぞれがバトルのない明日一日に何をして過ごすかを考えながらその日は解散となった。
アメリカと日本が準決勝進出を決めた次の日はベスト4の残りの2枠をかけてのバトルが行われる。
午前中にはイギリスとインドのバトルは順当にイギリスが圧勝した。
午後からは優勝候補の本命ギリシャとフィンランドのバトルが行われる予定だ。
「ふぅ……」
龍牙は空いている筐体でGBNにログインして明日のアメリカ戦に向けて練習を行っている。
強敵であるドイツに圧勝して勢いはあるが、一息つく龍牙の表情は険しい。
「明日の準決勝を前にずいぶんと調子が良さそうね」
「……カティア。良いのか? こんなところにいて」
一息ついたタイミングでカティアが声をかけて来る。
決勝トーナメントで戦うという約束はロシアがアメリカに敗退した事で果たされることなくなり、龍牙も少しバツを悪そうにしているが、カティアは気にした様子はない。
「良いのよ。ウチのスポンサーも私たちが負けると早々に帰っていったしね」
「……そっか」
龍牙はどう反応すべきか分からない。
ロシア代表チームのスポンサーをしていた槙島グループはロシアの敗退と同時に引き上げて行っている。
恐らくはロシア代表との契約も打ち切られているのだろう。
「だから、私がどこで何をしようと誰も文句は言われないわ。例え貴方とバトルをしたとしてもね」
「え?」
以外な言葉に龍牙は驚き、カティアは少し照れているのか視線をそらしていたが、すぐにいつも通りに戻る。
「今大会においてギリシャのGセルフとアメリカのバルバトス。その2機の性能は大会参加者のガンプラの中では段違いよ」
大我のガンダムオメガバルバトス・アステールとアルゴスのGバジレウス。
この2機は誰の目から見ても圧倒的な性能を持っている事は改めて言われるまでもない。
「今のままでは日本が明日のアメリカ戦に勝つことは不可能よ」
カティアはそう言い切る。
今も麗子や珠樹たちは明日のアメリカ戦で大我を攻略するための作戦を考えている。
それでも早々に名案は出ることもなく、作戦会議に参加していない代表メンバーはそれぞれで最後まで練習を続けて少しでも勝算を高めようとしている。
龍牙の表情が険しかったのもいくら練習を重ねたところで大我を相手にまともに戦える様子を想像できなかったからだ。
世界大会に参加した事で龍牙は以前と比べてとんでもない速度で成長を続けてきた。
始めはこのままいけばいずれは大我を相手に真向から戦えると思っていたが、強くなればなるほど、大我の強さをより感じ取れるようになった。
「私たちも内部でゴタゴタがあったけど、チームの全てを出して戦った。それでも届かなかった」
ロシアも全力を出して大我と戦ったが、大我のオメガバルバトス・アステールの性能の前に敗れ去った。
実際に戦ったからこそ、カティアは今の日本ではアメリカに勝つことは不可能だと。
現時点で大我と戦えるのはギリシャのアルゴスくらいで、優勝の大本命であるギリシャを相手に勝機があるのはアメリカだけだというのが大会を見ている一般ダイバーの意見だ。
そのため、決勝までの残りのバトルはアメリカとギリシャが勝ち進むだけの消化試合だと思われている。
「だからと言って諦めるようなら世界大会には出てこないわよね」
カティアの言葉に龍牙は黙って頷く。
どんなに相手が強大だろうとそれを受け入れ勝てないと認めてしまうのであれば世界大会には出るわけもない。
龍牙も大我と戦い勝つだけでなく、優勝する気でここまで来た。
それは日本代表の誰もが同じ思いだ。
だからこそ今日一日で少しでも強くなろうとしている。
「けど良いのか? 敵に塩を送るような真似をして?」
「問題はないわ。だって私たちの世界大会はもう終わっているもの。それにアメリカには私たちに勝ったんだから優勝しなさいなんていうつもりもないわ」
今までは龍牙のことも敵視していたが、カティア達の世界大会はアメリカに負けた時点で終わっている。
龍牙の練習相手になったところで誰に咎められる理由もない。
「私の仇を取ってよね。龍牙」
「……ああ!」
カティアの世界大会は終わった。
だが、まだ龍牙の世界大会は終わってはいない。
明日のアメリカ戦で終わらせないためにも龍牙はカティアの話を受けることにした。
その日は夜遅くまで龍牙はカティアとの練習を続けた。
午後のギリシャVSフィンランドのバトルは大半が想像していた通りの流れとなった。
「いくら優勝候補とはいえ……1機くらいは!」
フィンランド代表チームのジ・Oがビームライフルを撃つ。
だがビームが当たることはなかった。
ギリシャのガンプラは宇宙用ジャハナムをベースに改造されたジャハナム・ロコス。
ベース機から大幅な改造はされていないが、装備がビームライフルから銃身の下部にビームワイヤーの射出口のついたビームマシンガンを持ち、シールドの裏にはビームナギナタを装備し、バックパックにはGセルフの宇宙用バックパックが装備されている。
ギリシャはジャハナム・ロコスの同型機を4機使い、それぞれにシールドには02から05と書かれている。
そのジャハナム隊を指揮しているのがセルジオスのジャハナム・ロハゴスだ。
ジャハナム・ロハゴスはジャハナム・ロコスとは違い宇宙用ジャハナム(クリム・ニック機)がベースになっている。
本体にはスラスターが頭部にはバルカンが増設され、左腕には01を書かれたジャハナム・ロコスと同じビームナギナタが裏に装備されているシールド。
手持ちの火器のビームライフルにはグレネードランチャーが増設されている。
バックパックはGセルフの大気圏内用バックパックをベースにビームジャベリンとミサイルポッドを追加した物が装備されている。
ビームを回避したジャハナム・ロコスの1機がビームマシンガンを連射してけん制すると、別の1機がビームワイヤーでジ・Oのビームライフルを破壊すると、残る2機がビームナギナタでジ・Oを切り裂き破壊する。
「コイツならどうだ!」
∀ガンダムが月光蝶を展開する。
「各機、退避しろ」
セルジオスはすぐに指示を出して、ビームジャベリンを投擲する。
ビームジャベリンは∀ガンダムの胴体に突き刺さり致命傷にはならなかったが、月光蝶を止めることはできた。
4機のジャハナム・ロコスがビームマシンガンを向けるが、フィンランドのエルフ・ブルとギャプランがビームを撃ちながら突撃してくる。
ビームをかわしながらジャハナム・ロコスは散開し、その隙に∀ガンダムは退避する。
「逃がさん。2番機と3番機はエルフ・ブルと4番、5番機はギャプランの足を止めろ。俺が∀を叩く」
指示が出るとシールドに02と03と書かれたジャハナム・ロコスはエルフ・ブルにビームマシンガンを連射し、04と05と書かれたジャハナム・ロコスはギャプランを挟み込むように回り込む。
その間にジャハナム・ロハゴスは加速して∀ガンダムの退路に回り込むとビームライフルを撃つ。
∀ガンダムは何とかシールドで防ぐが、シールドにグレネードランチャーを撃ち込み破壊される。
「我々は手負いだろうと逃がしはしない。それが我らが陛下の戦いだ」
ジャハナム・ロハゴスは∀ガンダムに接近する。
∀ガンダムはビームサーベルを振るい、ジャハナム・ロハゴスはシールドで受け止めると、∀ガンダムに突き刺さっているビームジャベリンを引き抜き、ビームサーベルを持っている右腕を蹴り飛ばして再びビームジャベリンを深々と∀ガンダムに突き刺す。
交代しながらジャハナム・ロハゴスはバルカンを∀ガンダムに撃ち込みながらバックパックのミサイルも打ち込んで∀ガンダムを撃墜する。
∀ガンダムがフラッグ機だったようで∀ガンダムが撃墜されたことでバトルはギリシャ代表チームの勝利となる。
「何だよ。結局主力は戦わないのか」
ギリシャとフィンランドのバトルを見ていた大我は内容に不満そうだった。
バトルの結果は想像通りの結果だが、ギリシャ代表チームのエースであるアルゴスやその姉であるアルドラといったギリシャの主力は後方に控えているだけで戦闘には参加していない。
フィンランド代表チームは主力のところまではたどり付けなかったのだ。
「まぁいい。流石に次はそうもいかないだろうからな」
初戦に勝利したギリシャの次の相手は神槍の異名を持つクリフォードが率いるイギリス代表だ。
流石のギリシャも主力が戦わずして勝つことはできないだろう。
ギリシャが勝利した事で準決勝は日本VSアメリカ、イギリスVSギリシャとなりベスト4が出そろった。