ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

44 / 66
女帝

 

 

 日本VSアメリカのバトルはアメリカが勝利した。

 龍牙は一人通路の備え付けのベンチに座るとぼんやりしていた。

 バトルに敗北したものの日本はベスト4まで勝ち進み去年の結果と比べても大健闘だったが、優勝が視野にないっていて悔しさは残るが誰も後悔はしていなかった。

 

「終わっちまったな」

「そうね」

 

 龍牙の一人ごとににいつの間にかそこにいたカティアがそう返す。

 カティアは龍牙の隣に座る。

 

「せっかく相手してくれたのに負けちまったよ」

「そうね。目の前に意識を向けすぎよ。あれじゃ横から攻撃してくださいって言っているような物よ」

 

 龍牙は返す言葉もない。

 大我とバトルで熱くなり過ぎて回りが見えなくなっていたのは明らかな敗因だ。

 

「手厳しい」

 

 カティアのはっきりとした物言いを嫌とは感じなかった。

 ここでよくやったなどの励ましの言葉よりもずっとマシだからだ。

 

「事実よ」

「まぁな。けど、5機がかりで仕留めきれないとか改めてとんでもない奴だったよ」

「そうね。実際に戦った私でも想定以上だったわ」

 

 カティアも日本の作戦は悪くないと思っている。

 大我を単機で孤立させたうえで数に物を言わせて攻め続ければいずれは限界が来る事を見越しての作戦は。

 実際、それで大我のオメガバルバトス・アステールはシド丸やバーストメイスカスタムなどの装備の多くを失っている。

 しかし、それでもなお、大我を止めることは出来なかった。

 

「決勝はどうなると思う?」

「イギリス代表には悪いけど、ギリシャになるでしょうね。でも……それ以上は……」

 

 明日には決勝戦でアメリカの対戦相手が決定する準決勝第二試合が行われる。

 対戦カードはギリシャとイギリスとなっている。

 神槍の異名を持つクリフォードも実力者だが、ギリシャの皇帝アルゴスと比べてしまえば勝つのは厳しいだろう。

 おおよその予測では決勝戦の組み合わせはアメリカとギリシャと考えられている。

 大会開幕前からの優勝候補の大本命であるギリシャと名を挙げて来たとは言え無名に等しいアメリカ代表の組み合わせは始めならギリシャの勝利を疑う者はいなかったが、今となっては結果はやってみなければならない。

 それだけの力を大我は見せつけてきた。

 懇親会でのアルゴスへの宣戦布告も今やだれも身の丈に合わない相手に無謀に喧嘩を売ったとは誰も笑うこともできない。

 

「ここまで来たんだ。大我には皇帝もぶっ倒して欲しいな。アイツは俺たちの想いなんて背負いたくはないだろうけどな」

「でしょうね」

 

 絶対的な王者として君臨していたアルゴスに届くかも知れない力を持った大我。

 少なからず大我がアルゴスを打ち破る瞬間を見たいと思っているダイバーはいるだろう。

 もっとも、大我はチームの仲間以外のダイバーがどう思おうが知ったことではなく、期待を背負うつもりが毛頭ないだろう。

 龍牙にはいつのも不機嫌で、全方位に喧嘩を売っていく、いつもの大我の姿が思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 アメリカ代表が決勝進出を決めた次の日、アメリカの対戦相手を決める第二試合が開幕した。

 大方の予想では順当にギリシャが勝利すると思われていたが、対戦相手のイギリスも諦めてはいない。

 クリフォードは予選の最後のバトルで大我と一騎打ちを行い敗北している。

 その時の雪辱を果たすには世界大会の決勝戦はそれに相応しい舞台と言えるだろう。

 

「今回の相手は今まで通りにはいかない。各機、油断するなよ」

 

 バトルフィールドの宇宙で4機のジャナハム・ロコスを率いるセルジオスのジャハナム・ロハゴスが先行する。

 

「隊長!」

「散開!」

 

 セルジオスの指示でジャハナム・ロコスは一斉に散開すると高出力のビームが横切る。

 

「この火力は……これまでのデータにないな」

 

 イギリス代表チームの特色は機動力と格闘能力だ。

 ある程度の火力は持っていても、これだけの火力はなく長距離からの高出力のビームはエース機のダブルオーランサーのライザーランスくらいだが、今のビームとは色が違う。

 そのビームを撃ったガンプラの正体はすぐに判明した。

 

「……ネオジオングか」

 

 ギリシャ代表チームの使用するガンプラの1機であるシナンジュをハルユニットとドッキングさせてネオジオングとしてギリシャ代表は投入してきた。

 すぐさまジャハナム・ロコスはネオジオングに一斉に攻撃を始めるが、Iフィールドに阻まれてしまう。

 

「やはりビームは効かないか……」

 

 ジャハナム・ロコスには実弾系の装備はない。

 セルジオスのジャハナム・ロハゴスならばミサイルを持っているが、ネオジオングの火力ではミサイルは届かず、運よく届いたとしても決定打にはならないだろう。

 そうなれば接近戦を仕掛けるしかないが、それは向こうの思うつぼだろう。

 

「とは言えやるしかないか」

 

 どの道、距離を取っての打ち合いでは数で圧倒していても分が悪い。

 ギリシャとしては接近戦を仕掛けるしかない。

 そう考えている間にイギリスのガンプラは仕掛けて来る。

 ネオジオングのビームに当たらないようにギリシャのインフィニットジャスティスにトールギス、ハルバートと大型シールドを装備したグレイズリッターの3機が突撃してくる。

 

「敵との距離を保ちつつ迎撃せよ。ネオジオングのビームには当たるなよ」

 

 後方から砲撃で支援しているネオジオングは現時点ではどうにもできそうにない。

 まずは接近してくる敵ガンプラの対処の方が先決とセルジオスは判断した。

 ジャハナム・ロコスはインフィニットジャスティスにビームライフルを撃ち、インフィニットジャスティスはビームシールドで防ぎながらビームライフルで応戦する。

 イギリスとギリシャとの戦闘は膠着状態に入りつつあった。

 イギリスはネオジオングの砲撃支援で優位に立とうとするが、ギリシャの統率の取れた動きの前に攻めきれずにいる。

 

「流石にここまで残っただけのことはある。だが、それもここまでだ」

 

 戦闘開始から時間が経過し、ネオジオングに後方から高出力のビームが飛んでくる。

 ビームはIフィールドで防がれるが、同時に大量のミサイルが降り注ぐ。

 ネオジオングはビームで弾幕を張るが、完全に迎撃しきれずに被弾するが、ダメージはそこまで深刻ではないようだ。

 

「全く、私たちの手を煩わせないでもらえる?」

「すまん。思った以上に手ごわかった」

 

 後方からはギリシャの増援が到着した。

 増援の先着を切ったのはディーナのGカタストロフィー。

 カバカーリーをベースに高トルクパックを装備したパワーに特化したガンプラだ。

 バックパックの大型スラスターを4基に増設して、各部のスラスターを増やして機動力を高め、高トルクパックと膝のシールドで防御力も高められている。

 手持ちの武器はガンダムキマリスのグングニルと、腰にバルバトスルプスのツインメイスが装備され接近戦に特化している。

 グングニルは実弾ではなくビームが撃ちだせるようになっており、必要最低限の火力も備えている。

 到着したGカタストロフィーは更に加速してネオジオングの方に向かっていく。

 

「増援だと!」

「いつの間に! うぁあ!」

 

 イギリスのガンプラのレーダーには接近する機影は確認できなかった。

 突然の自体を把握する前に、別方向からのビームがグレイズリッターに頭部を吹き飛ばす。

 

「くそ!」

 

 体勢を整えるグレイズリッターを2機のジャハナム・ロコスがビームナギナタで切り裂いて破壊する。

 

「ちっ……俺の撃墜数を奪いやがって」

「不意を突いておいて外すからいけないんだよ。下手くそ」

 

 更に増援は続く。

 後方からビームとミサイルを撃ったのはボアのGケラノヴィス。

 Gルフィファーをベースに特徴的なスカートファンネルを全て外してアサルトパックを装備した火力特化型のガンプラだ。

 もう一機はニキアスのGファンタズマ。

 こっちはジャイオーンをベースにバックパックをトリッキーパックに変更し、両手にはビームライフルを持たせている。

 イギリス代表に増援を気取られなかったのはニキアスのGファンタズマによるジャミングによるものだった。

 

「ふん」

「さぁて……俺たちが出てきたんだ。お前ら全員ぶっ殺してやるよ!」

 

 Gケラノヴィスが全砲門からビームを放つ。

 前に出ていたインフィニットジャスティスとトールギスは何とかかわす。

 その間にGカタストロフィーはネオジオングに向かっていく。

 

「遅い! 遅い!」

 

 ビームをかわしながらGカタストロフィーはグングニルをシナンジュに向けて突き出しながら突っ込む。

 ここまで接近されてしまうとどうしようもないと判断し、シナンジュはビームライフルとシールドを持ってハルユニットから離脱した。

 グングニルはハルユニットを貫き、ハルユニットは爆発を起こして沈黙する。

 

「逃がす訳ないでしょ!」

 

 離脱したシナンジュを追撃してグングニルを突き出すが、その間にダブルオーランサーが割込みGNブラスターランスでGカタストロフィーを弾き飛ばす。

 

「クリフォード!」

「済まない。遅れた」

 

 弾き飛ばされたGカタストロフィーをヘルムヴィーケ・リンカーがヴァルキリアツインソードで追撃する。

 

「出てきたわね! 神槍!」

「引き釣り出したのは三銃士か……できれば皇帝陛下と手を交えたかったんだけどね。それとも君たちをしとめれば出て来るのかな?」

「舐めんな!」

 

 クリフォードの挑発的な態度にGカタストロフィーは加速して突撃する。

 だが、グングニルの一撃を軽くかわすとダブルオーランサーはGカタストロフィーの背後を取る。

 

「悪いが、槍の扱いでは誰にも負けるつもりはない」

 

 GNブラスターランスでGカタストロフィーのスタスターを1つ破壊する。

 

「さて……我々にとって厄介なのは大火力を持つ君だ」

 

 Gカタストロフィーを蹴り飛ばすとダブルオーランサーはGケラヴィノスの方に向かっていく。

 Gケラヴィノスは迎撃するが、ダブルオーランサーには当たらない。

 

「ちょこまかと!」

「下がれ! お前たちは姿を見せたままでは戦えんだろう!」

 

 迫るダブルオーランサーにジャハナム・ロハゴスはビームライフルでけん制しながら間に入る。

 Gケラノヴィスは火力は高いが接近戦には向いていない。

 Gファンタズマもジャミングによる支援がメインで戦闘能力自体はお世辞にも高いとは言えずわざわざ前線まで出て来る必要はない。

 それでも前に出てきたのは王者所以の慢心なのかも知れない。

 

「こちらを見下し支援型で前線まで来た仲間のお守りとは君も苦労させられているようで」

 

 ダブルオーランサーはGNブラスターランスの粒子ビームを撃つ。

 ダブルオーランサーが合流し、他にもイギリスのゼイドラ、ガンダムローズ、シグー、ジンクスⅢ、ガンダムAGE-1 スパローも合流しイギリスのガンプラが全機そろうこととなる。

 

「すでにギリシャのガンプラは8機……ここを突破すれば皇帝までたどりつくことが出来る」

 

 ジャハナム・ロハゴスのビームジャベリンをGNブラスターランスで受け止めて弾き、GNサブマシンガンで追撃する。

 ジャハナム・ロハゴスはビームジャベリンを投擲してビームライフルを連射する。

 ビームジャベリンを弾き、ビームをGNフィールドで防ぐ。

 イギリスの総力戦に対して、ディーナのGカタストロフィーは4基の大型スラスターの内、1基を破壊されたことで上手く加速時のバランスが取れずにシナンジュとヘルムヴィーケ・リンカーに苦戦し、4機のジャハナム・ロコスも連携を取って持ちこたえているものの、ジリジリと押されている。

 火力の高いGケラノヴィスはスパローとゼイドラが機動力を駆使して翻弄している。

 バトルの流れはギャラリーの予想を裏切りイギリス優勢で進んでいる。

 このままこの戦場で勝利してフラッグ機と思われるアルゴスを討ち取りに行こうと思った次の瞬間、ガンダムローズがビームで撃ちぬかれ、続けてスパローも撃ちぬかれる。

 

「新手か? 今のビームは皇帝のGセルフの物ではない……となると」

 

 ギリシャのガンプラの大半は交戦中で、アルゴスのGバジレウスの物ではないとすれば、ギリシャのガンプラは残り1機しかいない。

 

「無様だな。相手を格下と侮ったか」

 

 ギリシャの最後の1機はアルゴスの姉であるアルドラのガンプラ、Gバジレイアだ。

 GバジレイアはGアルケインの改造機だ。

 Gアルケインの可変機構を廃止し、バックパックにはリフレクターパックが装備されている。

 腰にはGルシファーの物を小型化したスカートファンネルがフロントアーマーとリアアーマーに2基つづ、サイドアーマーに1基つづの計6基が装備され、両手には対艦ビームライフルとシールドが装備されている。

 

「姫様……」

「奴の相手は私がしよう。セルジオスはジャハナム隊の指揮を取れ」

「了解しました」

 

 ジャハナム・ロハゴスはジャハナム・ロコスの援護に向かう。

 それをクリフォードは手を出さずに見送った。

 アルゴスにたどりつくための最後の障害となるのがアルドラだろう。

 その実力は弟のアルゴスには及ばないものの同年代では最強格の一人とされている。

 

「女帝自らお出ましとは光栄だな」

「来い」

 

 Gバジレイアは対艦ビームライフルを撃つ。

 ビームを回避してダブルオーランサーはGNブラスターランスの粒子ビームで応戦する。

 だが、Gバジレイアのリフレクターパックが展開してビームを吸収する。

 

「リフレクターか……やはりビームは効かないか、となれば!」

 

 ダブルオーランサーは一気に加速する。

 Gバジレイアも対艦ビームライフルを対艦ソードに切り替えるとダブルオーランサーを迎え撃つ。

 2機は真向からぶつかり合う。

 2機のパワーはほぼ互角で一度距離を取り、Gバジレイアはバルカンを撃ちながらスカートファンネルを展開する。

 

「流石にファンネルにはビームは効くだろう!」

 

 スカートファンネルに粒子ビームを撃つが、スカートファンネルは軽々とビームをかわす。

 その間に他のスカートファンネルがダブルオーランサーを囲み全方位からビームを撃つ。

 GNフィールドで身を守るが、接近してきたGバジレイアが対艦ソードを振るい、GNフィールドを切り裂きオーライザーの翼を切り裂いた。

 

「良い腕だが……アルゴスに挑む程ではない」

「……これが女帝の実力……皇帝に挑む前に使いたくはなかったが! トランザム!」

 

 ダブルオーランサーはトランザムを起動する。

 

「いくらビームを吸収出来ようとも!」

 

 GNブラスターランスを高らかに突き上げる。

 そして、高出力のビームの刃が形成される。

 

「これならば!」

 

 ダブルオーランサーはライザーランスを振り落とす。

 いくらビームを吸収できたとしても、これだけの威力であれば完全に吸収することは出来ないだろうとクリフォードは考えていた。

 Gバジレイアはリフレクターパックを展開してライザーランスを受け止めた。

 

「最大出力でなら!」

 

 この後にアルゴスとの戦いを控えているが、今は余力を残してはいてはアルドラには勝てない。

 クリフォードはライザーランスを最大出力にまで引き上げる。

 その負担からGNブラスターランスは悲鳴を上げているが、構ってはいられない。

 やがて、トランザムの限界時間とともにビームの刃は消え去る。

 

「見事だ」

「……これほどとは」

 

 ビームの刃が消えたそこには無傷のGバジレイアがそこにいた。

 リフレクターパックは全て失われているが、本体にまではダメージはいっていない。

 Gバジレイアは対艦ビームライフルをダブルオーランサーに向けて構えていた。

 

「全力を持って挑んできたことに敬意を表してこの一撃で仕留めさせて貰おう」

 

 ライザーランスを防いだ時に吸収したビームをそのままGバジレイアは使うことが出来る。

 十分に蓄積されたエネルギーを使い、対艦ライフルは最大出力で放たれた。

 

「クリフォード!」

「やらせるか!」

 

 トランザムを限界まで使ったことでダブルオーランサーの性能は大きく低下している。

 この攻撃を防ぐ術は残されていない。

 だが、それでもエースを守ろうと、シナンジュがシールドを構えて間に割り込むがビームに飲み込まれて消滅する。

 すぐにヘルムヴィーケ・リンカーも割込みヴァルキリアツインソードで受け止めるが、防ぎきれなかった。

 ビームはダブルオーランサーに迫り、無慈悲にダブルオーランサーを飲み込み跡形もなく消滅させた。

 イギリス代表のフラッグ機はエースでるクリフォードのダブルオーランサーであり、ダブルオーランサーが撃墜されたことでギリシャ代表は決勝進出を決めた。

 ギリシャが勝利し決勝戦の組み合わせはアメリカ代表チームとギリシャ代表チームで確定した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。