ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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ブレイクデカール編
ビルドナラティブ


 世界大会で絶対王者として君臨していた皇帝アルゴス・アレキサンダーがアメリカ代表チームのエース、藤代大我に敗れて新たな伝説が生まれてから3年の月日が流れた。

 その間にもGBNは様々なアップデートを繰り返し進化を続けてきた。

 そして、今一人の若者がGBNへと足を踏み入れようとしていた。

 

「優人様。旦那様よりお荷物が届いています」

 

 その日、槙島優人はいつも通りの時間に起きて朝食を済ませたころに使用人がそう切り出した。

 優人の父親、槙島優次郎は槙島グループの社長で仕事が忙しいのか普段はほとんど家に帰らない。

 一般的な家庭の一軒家と比べると大きな家に優人は使用人を除けば一人で住んでいる。

 母親は中学に上がる前に妹を連れて出て行った。

 今年から高校を卒業して大学に進学する頃にもなれば慣れもする。

 標準よりも整った顔立ちに穏やかだが意思の強い目に動作の一つ一つに幼少期からの生活の賜物なのかどことなく洗練されている。

 

「ありがとう」

 

 優人は一言礼を言って使用人から父から届いだ荷物を受け取る。

 

「何だろう。大学の入学祝いってこともないだろうし」

 

 父親の性格的に大学への入学祝いだとは到底思えない。

 

「これって……ガンプラ?」

 

 荷物の中には一体のガンプラとダイバーギアが入っていた。

 優人自身、ガンダムもガンプラも詳しくはないが、高校からの友人である八戸神ソラは詳しく良く話を聞かされていた。

 ソラ曰く、角が2本あって目が二つあれば大体はガンダムらしい。

 

「でもなんか骨ばかりでやせっぽっちだな」

 

 優人は以前にソラから見せてもらったガンプラのことを思い出すが、その時のガンプラと比べると送られてきたガンプラは内部フレームに必要最低限の装甲のみと非常に痩せて見える。

 

「取り合えず大学でソラに見せて見るか」

 

 ガンプラに詳しくない優人ではこれが何なのかは判断ができない。

 ここで考えたところで答えは出ないと判断した優人は届けられたガンプラを持って大学へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優人の通う大学は都内でも大きく様々な学部が存在する。

 大学に到着すると事前に連絡して待ち合わせていたソラと合流する。

 

「珍しいじゃん。優人が俺に相談なんて」

 

 優人もソラも通っていた秀麗高校は進学校で、ソラはその中でもチャラチャラして浮いていた。

 だが、1年の時に同じクラスになり席替えで近くの席になって話すようになってからは何となく気があい気づけば3年間同じクラスで示し合わせた訳ではないが、進学する大学まで同じだった。

 ソラは日頃からガンプラの制作やGBNをプレイしていたが、優人自身が興味がなかったため、たまにしか話題に出すことはなかった。

 

「父さんからこれが届いたんだ。ガンプラみたい何だけど何なのかわかるか? ソラ」

「どれどれ……」

 

 ソラは優人からガンプラを受け取る。

 

「コイツはたぶん、ナラティブだな。まぁベース機よりも装甲を減らしてフレームにもだいぶ手が加えられてちょっと見ただけでも相当な完成度ってのは分かるな。けど、これだけの完成度のガンプラで装備はおろか外装すら碌にないのはなんでだ……」

 

 ソラは次第にブツブツを考察を始めた。

 ガンプラを見ただけでは全ては分からないが、ソラはこのガンプラがナラティブガンダムをベースにされていると予想した。

 ナラティブをベースに元々の装甲を大半外してほとんどフレームだけになっているが、そのフレームにもいろいろと手が加えられているようだ。

 

「……良く分からんが、ダイバーギアもあるんだろ? ならGBNにログインしてみれば何かわかるかも知れないな」

「確かに……」

「善は急げだ! 優人のGBNデビューに俺も付き合うぜ!」

「これから? 授業は?」

「今日の講義は出なくても大丈夫だ。それよりもGBNの方が優先だ」

 

 ソラは完全に今日はサボってGBNをプレイする気満々だ。

 優人も授業をサボることには後ろめたさはあったが、送られてきたガンプラが気になり、ソラと共に大学を後にする。

 

 

 

 

 

 

 大学を出て電車を乗り継ぎ、ソラの行き付けのガンプラショップに来ると優人はソラと共にGBNにログインする。

 ガンプラと共に送られてきたダイバーギアにはダイバーの登録はされていなかったようで、軽いチュートリアル画面になり、一通り見るとアバターの作成画面に移行する。

 

「ダイバーネーム? ハンドルネームみたいなもんか……まぁユートでいいか」

 

 ダイバーネームを決めると自身のアバターの外見の設定に入る。

 初期に設定できるのはオーソドックスなヒューマンタイプか獣の姿、その中間の獣人タイプの3つに分けられる。

 

「普通でいいか」

 

 優人はヒューマンタイプを選択し、顔のパーツもリアルとほぼ同じに設定する。

 

「衣装もいろいろあるんだな」

 

 アバターの初期衣装もいろいろとあり、説明も書かれていたが、ガンダムに詳しくないため意味は良く分からない。

 

「あんまり悩んでソラを待たせる訳にもいかないからこれで良いか」

 

 優人は一覧から適当に衣装を選ぶ。

 選んだのは連邦軍(宇宙世紀)の軍服だ。

 一通りの設定を選ぶと視界が光に包まれるとGBNのロビーに出る。

 

「これが仮想現実なのか……体験するのは初めてだが現実の世界とそんなに変わらないんだな」

 

 ログインした優人は周囲を見渡す。

 周囲にはさまざまなダイバーが行き来している。

 

「優人か?」

「……ソラか?」

 

 声をかけられて優人は振り向く。

 そこには革製のフライトジャケットを着たダイバーがいた。

 どことなくソラに見ている。

 

「おうよ。ちなみにダイバーネームはヤガミだからここではそう呼んでくれ。ユート」

 

 ソラのGBNでのダイバーネームは苗字から取ってヤガミらしい。

 

「ああ。それでどうするんだ?」

「格納庫に移動しようぜ」

 

 ソラがコンソール画面を開くと優人に操作を教える。

 二人は格納庫に移動する。

 そこには優人のナラティブとソラのガンプラが格納庫に並んでいる。

 

「おお」

「初めてここに来るとやっぱそうなるよな」

 

 ログインする前は小さかったガンプラもGBN内では巨大になり始めて自分のガンプラを見たダイバーは大抵その様子に感動する。

 

「そっちがソ……ヤガミのガンプラか?」

「ああ。俺の相棒、ガンダムエアブラスターだ!」

 

 ソラのガンプラはガンダムエアマスターをベースに手持ちのバスターライフルをストライクフリーダムのビームライフルをベースにしたものに変更し、肩にはミサイルの代わりにビームガン兼ビームサーベルが装備されている。

 脚部にはミサイルポッドを増設し火力と格闘戦能力を強化している。

 

「で、ナラティブのスペックはどうなってる?」

 

 優人はコンソールに自分のガンプラのデータを出す。

 機体名の欄にはガンダムビルドナラティブと書かれている。

 

「ガンダムビルドナラティブ。それがコイツの名前か」

「へぇやっぱステータスは高いが武器が頭部バルカンだけか」

「ABシステムとACシステムってのがあるけど?」

 

 ビルドナラティブの装備はバルカンのみで他には一切登録されていなかった。

 特殊機能の欄にはABシステムとACシステムと書かれているがソラもそれだけでは検討もつかない。

 

「取り替えず初心者用のミッションを受けてバトルしてみるか。バトルすれば少しは分かることもあるかも知れないしな」

「分かった。その辺はヤガミに任せる」

 

 ソラは初心者用のミッションを受託する。

 ミッションは3機のリーオーNPDと交戦するという物で、GBNを始めてプレイするダイバーが操縦に慣れたり、新しいガンプラの運用テストでも使われるミッションだ。

 ミッションを受領して二人は自分のガンプラに乗り込む。

 

「ヤガミ、ガンダムエアブラスター! 行くぜ!」

「それ俺も言うのか……ユート。ガンダムビルドナラティブ。行きます!」

 

 優人は少し照れながらも初めての出撃をする。

 

「凄いな。本当にコックピットみたいだ」

 

 ビルドナラティブのコックピットの設定はユニコーンと同タイプに設定されているようだ。

 宇宙に出て少しするとリーオーNPDの接近を警告するアラートがなる。

 

「あれを倒せばいいのか。武器は……これしかないよな」

 

 ビルドナラティブは頭部のバルカンを撃ち、リーオーNPDは散開してビームライフルを撃ってくる。

 

「まぁ武器は誰だけだもんな。けど、見せて貰おうか。そのガンプラの性能とやらをってな」

 

 ソラは少し離れたところに陣取る。

 ある程度の経験のあるソラなら初心者用のミッションをクリアするのは容易だが、それでは意味はない。

 

「武器はこれだけだが……どうする?」

 

 ビルドナラティブはリーオーNPDのビームをかわす。

 

「へぇ。ユートの奴、初心者にしてはやるな。まぁアイツは大抵のことは卒なくこなすから今更驚かないけど」

 

 ソラも高校三年間の付き合いで優人が多才だということは知っている。

 初めてのGBNでここまで動けるのも驚くほどではない。

 

「ユート。ABシステムかACシステムが使えないかやってみてくれ」

「やるってたってな」

 

 優人はいろいろとコックピット内のボタンを押してみる。

 

「何だ……ストライク? 何か攻撃するのか? なんだか知らないけどやってみるか!」

 

 コンソールには一覧のような物が表示されその大半が???となっていたが、一つだけ「ストライク」と表示されている。

 その表記からして何かしらの攻撃と考えた優人はとりあえず、それを押してみた。

 

「何だ? アレ」

 

 ビルドナラティブの前後にプラモデルのランナーのような物が形成されて遠くから見ていたソラも驚く。

 形成されたランナーからビルドナラティブに何やらパーツが飛んで来て全身に装着されていく。

 トリコロールカラーの装甲に最後は右手にライフル、左手にシールドが装着され背中には大型ブースターのついたバックパックが装着された。

 

「……ストライク」

 

 その姿をソラは知っていた。

 装甲や武器が付いたビルドナラティブはエールストライクに酷似していたのだ。

 ABシステムとはアーマービルドシステムのことで戦闘時にビルドナラティブの外装や武器を作り出すシステムだ。

 もう一つのACシステムはアーマーチェンジシステム。

 ABシステムで形成されたアーマーを戦闘時に換装するシステムだ。

 優人が押したストライクとは攻撃を意味するものではなくエールストライクを模したストライクアーマーに換装するということだったようだ。

 

「ユート! それならまともに戦える! 思いっきりやれ!」

「ああ!」

 

 優人がペダルを踏み込むとストライクアーマーを装備したビルドナラティブは一気に加速する。

 

「ライフルなら!」

 

 ビルドナラティブはビームライフルを構えて引き金を引く。

 ビームは正確にリーオーNPDを貫いた。

 

「次!」

 

 1機を撃墜してすぐにもう1機のリーオーNPDの方に向かう。

 ビームをシールドで防ぐとビームライフルでリーオーNPDを撃墜する。

 

「ユート! 今度はビームサーベルを使え!」

「ビームサーベル? これか!」

 

 ビルドナラティブはビームライフルからビームサーベルに持ち帰る。

 残るリーオーNPDのビームを掻い潜り、ビルドナラティブはビームサーベルを振り下ろしリーオーNPDを真っ二つに両断した。

 3機を撃墜した事でミッションはクリアとなる。

 

「初めてのバトルはどうだった?」

「言葉にできないほど凄かったよ。ヤガミがハマるのも分かるよ」

 

 格納庫に戻ると優人は先ほどまでのバトルの興奮を隠さないでそういう。

 ソラも3年間の付き合いでここまで優人が感情を露わにするのを初めて見た。

 それほど、GBNでの初めてのバトルは興奮したのだろう。

 

「なら続けるか?」

「ああ。父さんがビルドナラティブを俺に送ってきた理由は分からないが、それを抜きにしても滅茶苦茶楽しかったからやめる理由はないさ」

 

 優人も父親がビルドナラティブを送ってきた理由はどうでもよくなっていた。

 今はただGBNを楽しむことだけしか考えられない。

 だが、この時の優人は知らなかった。

 これがGBNでの楽しい一時の始まりと同時に世界を変えかねない大事件の始まりとなることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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