タイガ団からの依頼で採掘エリアでの戦闘から一夜明けた。
紅蓮の牙のリーダーであるダイバーのゴッグは複数のブレイクデカールを使用する強敵だった。
だが、タイガ団のリーダーであるリトルタイガーはそんなゴッグをいとも簡単に一撃で粉砕して見せた。
GBNを初めてからいろんなダイバーと出会ってきたが、その実力は次元が違いGBNにおける最強のダイバーの一人として名が出るのも納得させられた。
そのあまりの衝撃から優人は珍しく興奮して昨日は中々寝付けなかったほどだ。
「にしても凄かったよな」
「ああ」
授業がひと段落して次の授業までの空き時間にソラと合流して昨日の話をしていた。
「それに報酬も桁違いだったしな。あれだけの報酬をポンと出せる辺り、トップクラスのフォースは凄いよな」
「ああ」
優人は心ここに在らずと言った様子だ。
昨日のバトルの後、優人とソラはタイガ団から成功報酬を受け取った。
始めは優人も敵の大将を討ち取ったのは自分ではない事から断ろうとしたが、諒真が半ば強引に受け取らせた。
その額は高難度ミッションを高ランクでクリアしなければ早々手に入る額のダイバーポイントではなく、余程のことがなければ当面はダイバーポイントには困らないほどだ。
「けど、さっき掲示板に速報が出たたけど、そのことでレギオンとタイガ団がなんか揉めたらしいぞ」
「揉めた? なんで?」
「さぁな。どうも採掘エリアの所有権でらしいけど、まだ詳しい情報は出てないようだ」
ソラも掲示板で書かれている以上のことは知らないが、優人達が成功報酬を受け取ってログアウトした後にタイガ団とレギオンの間で何かもめごとがあったらしい。
その発端となったのはタイガ団が手に入れた採掘エリアの所有権でのことだ。
元々、採掘エリアの奪取戦はタイガ団がレギオンから依頼されて行ったものだ。
その成功の報告を行いその後にそれは起きた。
過去にもレギオンは厄介な敵フォースの拠点の奪取の依頼をタイガ団にしている。
その時は成功報酬とは別にタイガ団が奪取した拠点をレギオンかレギオン傘下のフォースが相応の額にて買い取っている。
レギオンは今回もそのつもりでそれ成功報酬を支払った後に採掘エリアの所有権の譲渡について持ち出した。
レギオンとしてはこれまで通りにタイガ団が採掘エリアの所有権を譲渡してくるものだと思っていたが、今回はタイガ団が譲渡を拒否してきたのだ。
タイガ団がこれまでの拠点を譲渡したのはタイガ団にとっては必要ない拠点でそんなところに人員を割きと防衛用の装備を用意することを嫌ったためで、今回の採掘エリアはタイガ団の本拠地からもそこまでの距離はなく、防衛用の装備も充実しており最低限の人員でも使えることや、採掘エリアを所有することで得られる利益も多い事もあってタイガ団は奪取した採掘エリアを自分たちで運用することにした。
採掘エリアから得られる利益は多大でだからこそ、レギオンもタイガ団に奪取の依頼をして、その後の譲渡のことも考えて成功報酬は従来の倍近く支払い、それに加えてレギオンの所有する宇宙要塞ダウネスも譲渡している。
それを理由にレギオンは採掘エリアの譲渡を要求するもタイガ団の参謀である諒真は依頼の内容には採掘エリアの譲渡までは含まれていないよこれを拒否した。
タイガ団からは譲渡はしないと交渉する意思はないと断言されている。
レギオンは傘下のフォースであるタイガ団にここまで勝手をされては黙っていられないと武力をチラつかせたもののタイガ団は屈することはないどころか欲しかったら力づくで来いと強気な姿勢は崩さなかった。
そのせいで火星圏全体に緊張が高まるも最終的にはレギオンが折れる形で問題は終結した。
一時はレギオンとタイガ団の間で全面戦争が起こるのではないかとも言われたが、レギオンは矛を収めるしかなかった。
レギオンは火星圏では最大規模のフォースだが、傘下のフォースは一枚岩ではない。
タイガ団は傘下に入っているもののレギオンやリーダーのリュウオウに忠誠を誓っている訳でもない。
傘下のフォースの大半は忠誠ではなく利害で入っているからだ。
多くのフォースはタイガ団ろはじめとしたレギオン傘下の武闘派フォースに狙われる危険がないという理由から入ることが多い。
数の上ではレギオンが圧倒だが、個々の能力ではタイガ団に分がある。
レギオン傘下のフォースではタイガ団とまともにやり合えるのはフォース「宇宙海賊クロスボーン・ハウンド」を率いるキャプテン・ネロかフォース「エルダイバーズ」のリーダーであるウィルくらいな物だ。
レギオンだけで大我団とやり合った場合、レギオンも負ける気はないが勝ったとしても被害も大きく、立て直す前に傘下のフォースの反乱や敵対フォースの侵攻の危険がありそうなった時に防ぎきれない可能性が高い。
そんな事情もありレギオンはタイガ団の強気な姿勢に対して折れるしかなかったのだ。
「まぁ……上位フォース同士のイザコザには俺たちは関係ないし、そろそろ次のステップに進もうぜ?」
「次?」
ソラの言うように上位フォースの争いに優人は直接関係はない。
それよりもソラの言う次のステップの方が気になった。
「今までは俺と2人でやってきたけど、そろそろ本格的に他のダイバーとも絡んでフォースでも組んで見るのも良い時期だと思うんだ」
「フォースか……」
優人もフォースに関してはGBNをプレイしている間に聞いている。
これまでのミッションですでに優人もフォースを組むことが可能なランクには到達している。
今はソラと2人でプレイし多少なりとも他のダイバーと接することはあったが、一時的なもので本格的に関わっている訳ではない。
フォースを組むとなれば、今まで以上に深く他のダイバーと関わることになる。
「それは良いとして具体的にはどうするんだ?」
「まぁいろいろとあるけど、追加メンバーを探しているフォースに入れてくれるように頼むか、自分たちで作るかだけど、入れて貰うにしても俺たち2人が同時に入れるフォースを探すのも大変だから自分たちで作った方が良いだろうな」
ソラの案としてはすでに作られているフォースに入れてもらうか、自分たちで作るかの2択だったが、前者はメンバーを募集しているフォースも誰も良いという事はほとんどない。
新しく入れるメンバーが自分たちが必要としている能力を持っているかや、入れたとしてフォース内でもめ事を起こさないかなど、いろいろと条件があるからだ。
場合によってはどちらか片方だけは入れても良いが、もう片方は駄目だという事もあり優人としてもソラと別のフォースに所属することは避けたい。
そうなればソラと2人で新しいフォースを作って自分たちでメンバーを集めた方が良い。
フォース自体、ダイバーの個人ランクがD以上ならば作ることが可能で最低人数も1人からでもフォースを作ることは出来る。
「成程。そうなるとメンバー集めか……」
「GBNにはメンバー募集の専用の掲示板とかもあるけど、優人はGBN初心者だし、募集してきたダイバーの見極めも難しいからリアルでGBNをやってる人を誘った方が良いかもな」
GBN内でもメンバーを集めることはできるが、相手のダイバーを見極める術を優人は持っていない。
リアルでなら多少なりとも相手の人となりを見極めることは優人でもできる。
「だな。初めてのソラ以外の仲間だからリアルを知っておいた方が俺も安心できる。だけど、早々GBNをやっている人を見つけることが出来るのか?」
GBNがネットゲームとしては世界規模で流行っていると言っても現実でGBNをやっているかの見極めはできない。
ガンプラを扱っている模型店やGBNの筐体を置いている場所でなら確率は高いが、上手くやらなければ余計な揉め事になりかねない。
「俺に任せろってGBNのプレイ人数は数百万人なんだぜ。大学構内でも適当に声をかければ見つかるって」
「いや……それはどうなんだ?」
優人が呆れているとソラは臆することもなく、少し先を通りかかった女生徒に話しかけていく。
「そこの彼女! GBNやってる?」
「……そんなんで本当に集まるのか?」
優人は流石にその誘い文句はどうなんだろうと遠目で二人のやり取りを見ていた。
少し二人は話しているが優人はソラが話しかけた相手をどこかで見たような気がしていたが、思い出すよりも先にソラは相手を連れてこっちに戻ってきた。
「優人! やっぱ俺の勘はニュータイプ並に冴えてる! 彼女は如月千鶴ちゃん。GBNやってるってさ」
「……如月? だよな」
「……槙島、君?」
一発でGBNのダイバーを見つけたことで自慢げにしているソラを他所に優人は驚きを隠せない。
「あれ? 二人知り合い?」
「ええ、まぁ槙島君とは中学までは一緒だったから」
ソラが連れてきた相手、千鶴と優人は面識があった。
二人は小中学校と同じでクラスも同じで、クラスの中でも仲のいい方だった。
中学を卒業するときに千鶴は皇女子高校に、優人は秀麗高校に進学してからは連絡を取り合う事もなかったが、偶然にも同じ大学に進学していたようだ。
あれから3年が経つが、あの時の面影を残しながら大人びた千鶴に優人は動揺を何とか隠す。
「へぇ……だとしたらコイツは一緒にGBNをやる運命だったのかもな。如月ちゃんも今はフリーなんだよな」
「ええ。今までは高校の部活で作ったフォースに入っていたから」
今まではアリアンメイデンに籍を置いていた千鶴だったが、卒業した事で今はどこのフォースにも所属していない。
「ソラの言う運命かどうかはおいておいてせっかく再会したんだし、一緒にGBNをやらないか?」
「……そうね。新しいガンプラが完成したからどこかのフォースに入るつもりだったけど、これも何かの縁かもね」
意外な再会から話は纏まり、3人は近くのGBNの筐体の置いてある模型店に向かった。
その道中で優人は久しぶりに何を話せば良いのか分からなかったが、ソラがいろいろと質問攻めにしたたため、優人は相槌くらいで済んでこの時ばかりはソラの異性に対する馴れ馴れしさに感謝したほどだ。
目的の模型店に付くと3人はGBNにログインした。
「なぁ……ユート。俺の勘はとんでもない逸材を引き当ててしまったようだ」
エントランスで合流するなり、ソラは顔を青くしてそういう。
「どうかした?」
「いや、俺にもさっぱりだ」
「いや! だってあれだよ! クレインと言ったら射撃能力じゃGBNの中でも5本の指に入るほどだぞ!」
「私としては誰にも負けないつもりだけど」
道中でいろいろと聞いて千鶴が皇女子高校の出身だと知り実力は高いと思っていたが、エントランスで合流してそれぞれのダイバーネームを教え合いフレンド登録をした時に千鶴がアリアンメイデンの元エースのクレインだと知り場所をわきまえずに大声をあげている。
「へぇ……クレインは凄いんだな。だったらあのリトルタイガーとはどうなんだ?」
「彼とは精密射撃というよりも圧倒的な手数で回避させないか、かわされることを前提に距離を詰めたり必殺の一撃を入れるために射撃を使うから私とはタイプが違うわ」
「なあなんでそんなに落ち着いてんの……」
「いや、凄いと言ってもまだ実感ないし」
いくらソラが凄いと騒いだところで優人にはその実力を想像できない。
「ここでの自己紹介はこのくらいにして格納庫で自分たちの愛機の披露でもしましょう」
「だな。使うガンプラの紹介もしないとな」
「……俺の方が変なのか?」
ソラは釈然としないが、3人はエントランスから格納庫に移動する。
格納庫には3人のガンプラがハンガーに収納されており、優人とソラが自分のガンプラを千鶴に紹介する。
「いろんなガンダムを模した外装を作って交換するガンプラ……装備を換装するタイプのガンプラの中には他のMSをモチーフにした装備に換装するガンプラは多々あるけど、戦闘中に自動的に作って換装するというのは初耳ね」
「作ったのは俺じゃないから、まだ分からないことも多いんだけどな」
「それでクレインはイージスベースか。前に使っていたのはフルシティだったからずいぶんと路線変更したんだな」
「まぁね。でも射撃特化なのは変わらないわ」
千鶴の新たなガンプラはイージスガンダムをベースにしたメテオイージスガンダムだ。
イージスの特徴でもある可変機構をそのまま使うために本体には大きく手は入れてはいないが、バックパックのは以前にも使っていたガンダムグシオンリベイクフルシティのバックパックを移植している。
また頭部のツインアイには射撃性能を高めるためのセンサーゴーグルが追加されている。
装備はビームマシンガンに追加のロングバレルを装備したロングビームライフルが装備され、バックパックのサブアームにもロングバレルを外したビームマシンガンを装備されサブアームを収納した状態でもビームマシンガンの銃口が前方を向くようになっており、サブアームを収納状態でもビームマシンガンが使えるようになっている。
サイドスラスターの裏側には予備のロングバレルが1本づつ取り付けられている。
肩の装甲にはバスターのミサイルポッドが埋め込まれている。
そして、両腕と脚部のビームサーベルと左腕のシールド、全身をガンダムフラウロスと同じピンク色で塗装され以前のガンダムグシオンリベイクフルティシューティングスターと比べると装備が必要最低限でシンプルなガンプラになっている。
「さてガンプラの紹介も終わったことだし、一度バトルしてみようぜ」
「だな。取り合えずはすぐにでもバトルできそうな相手でも探すか」
優人達はエントランスでバトルの相手を探す。
3体3でのフリーバトルの相手はすぐに見つかったことでバトルが開始される。
「相手は……クシャトリヤにヤクト・ドーガ、キュベレイ……全機がファンネル持ちか」
「俺が前に出る」
「後方支援は任せて」
千鶴のメテオイージスが狙撃のために方向を転換するとバルバトスアーマーのビルドナラティブが前に出る。
それに合わせてクシャトリヤがビルドナラティブの方に向かう。
「的は大きい。これなら!」
ビルドナラティブは滑空砲を撃つが、クシャトリヤは回避するとファンネルを射出する。
「何だ? 全方位から来るのか!」
ファンネルによる全方位攻撃をかわしながらファンネルに滑空砲を撃つが、ファンネルには当たらず、逆にファンネルの攻撃で滑空砲が破壊される。
「バルバトスじゃ隙が多すぎる。なら、ストライク!」
ビルドナラティブはすぐに宇宙での行動力に長けるストライクアーマーに換装する。
ビームライフルでファンネルに対応しながら左手でビームサーベルを抜いてクシャトリヤに接近する。
クシャトリヤもビームサーベルで応戦してくる。
2機のビームサーベルがぶつかり合うがパワーではクシャトリヤの方がやや優勢のようだ。
「くっ! パワー負けしている!」
ビルドナラティブの背後に回り込んだファンネルがエールストライカーにビームを撃ち込む。
エールストライカーの爆発で体勢を崩したところに至近距離から拡散ビーム砲を撃ち込まれ、とっさにシールドで防ぐがシールドは耐え切れずに破壊されてしまう。
そこにすかさずファンネルで集中砲火を浴びせる。
「タイタス!」
すぐにタイタスアーマーに換装して身を守る。
タイタスアーマーの装甲ならばそう簡単には突破されない。
「ユート!」
苦戦する優人の援護にソラが向かおうとするが、ヤクト・ドーガのファンネルがエアブラスターの行く手を遮る。
「こいつ等……強い! なんでこんな相手とマッチングすんだよ!」
ソラはビームライフルでファンネルに対応しながら叫ぶ。
今回のバトルは3対3の対人戦でマッチングはランダムにしている。
それにより実力差が大きくならないようになっている筈が、相手のダイバーの実力は自分たちよりもかなり上だ。
ソラはその理由にまで気が回らないが、その理由は千鶴にあった。
3人の個人ランクの平均で対戦相手をマッチングしたため、3人の中で千鶴だけ飛びぬけて個人ランクが高いが故に優人やソラが相手にするには厳しい相手との対戦となってしまったのだ。
「っても泣き言なんて言ってられないか!」
ヤクト・ドーガにビームライフルを向けるがビームライフルはファンネルのビームで破壊される。
「ちくしょう!」
エアブラスターはビームサーベルを抜きヤクト・ドーガに突っ込んでいく。
どのみち、実力差は大きいため、普通に戦ったところで勝ち目は薄い。
ならば特攻でもして多少なりとも相手にダメージを与えておこうとした。
「駄目で元々なんだよ!」
ヤクト・ドーガはファンネルでエアブラスターを撃ちぬこうとする。
だが、ファンネルがビームを撃つ前に別方向からのビームでファンネルが撃ちぬかれる。
ソラはそんなことをお構いなしに突っ込んでいく。
ヤクト・ドーガのダイバーも動揺することなくビームサーベルを抜くとエアブラスターにカウンターで反撃しようとする。
「くらいやがれ!」
ソラの相打ち覚悟の一撃だったが、それよりも早くヤクト・ドーガのビームサーベルの方がエアブラスターを切り裂こうとしていた。
しかし、ヤクト・ドーガのビームサーベルがエアブラスターを切り裂くことはなかった。
ヤクト・ドーガの右腕が宙を舞い、エアブラスターのビームサーベルがヤクト・ドーガに突き刺さりヤクト・ドーガは機能停止していた。
「……ウソだろ」
ソラは相打ちどころか実力差のある相手に勝利した事で茫然となっていた。
同時に何が起きたのかも理解した。
後方に控えていた千鶴がファンネルを狙撃し、ヤクト・ドーガの腕も狙撃してソラの進路を確保してのだ。
メテオイージスの遥か前方には頭部と胴体を撃ちぬかれて漂うキュベレイがいる。
恐らくは千鶴を抑えに行ったキュベレイはあっさりと千鶴に狙撃されてやられたのだろう。
「あの距離から撃ったのかよ」
ファンネルを撃ち落とすこと自体、通常の戦闘距離ですらある程度の実力が必要だ。
千鶴のいる距離からではファンネルは豆粒以下の大きさでしか見えない。
それを千鶴は難なく狙撃して見せた。
「やっぱ俺の勘は冴えすぎだろ」
たまたま声をかけた相手がここまでの実力者だったことをソラはただ驚くしかなかった。
「……このままじゃやられる」
タイタスアーマーの装甲のお陰で何とか凌いでいたが、いつまでも持たない。
強固な装甲で強引にファンネルの集中砲火を突破したとしても、タイタスアーマーでは近接戦闘での殴り合いしかできない。
向こうもそれが分かっているのか、ファンネル共々常に一定の距離を保って攻撃してきている。
「何か打開策は……エクシアアーマーのトランザムで……駄目だ。全方位からの攻撃で止められる。あの子機を何とかしないと勝ち目は……」
手持ちのアーマーでは状況を打開することは出来そうにない。
それでも諦めずに打開策を模索していると新しいアーマーが解放されていることに気づく。
「ユニコーン? 一角獣か。なんだか分からないがコイツに賭けるしかない!」
優人は躊躇う事もなく新たなアーマーを選択する。
タイタスアーマーがパージされてビルドナラティブの前後にランナーが形成された。
ビルドナラティブに次々と白いアーマーが装着されていきライフルとシールドが装備されると関節部が赤く発光する。
その姿を見た相手のダイバーはすぐにファンネルを戻そうとするがすでに遅かった。
ファンネルは動きを止めるとビルドナラティブの周囲に集まる。
「子機が俺の周りに?」
それがユニコーンアーマーの能力だ。
ユニコーンガンダムのデストロイモードの力を持ったユニコーンアーマーは周囲のファンネルや遠隔操作の武器の制御を奪う事が出来る。
「これなら行ける!」
ビルドナラティブはビームマグナムを連射する。
クシャトリヤは十分に余裕をもって回避する。
5発撃ったところでビームマグナムの残弾が尽きる。
「このライフル。威力は凄そうなのに5発しか撃てないのか! なら!」
リアアーマーに呼びのエネルギーパックがあるが、ビルドナラティブはビームマグナムを捨てると背中のビームサーベルを抜いて加速する。
ファンネルを使いクシャトリヤの動きを封じながら接近してビームサーベルを振るう。
クシャトリヤのバインダーをビームサーベルで切り裂くとファンネルで攻撃しながら猛攻を加える。
「一気に仕留める!」
左腕のシールドをパージして残るビームサーベルを抜くとクシャトリヤのバインダーに突き刺し、右手に持っていたビームサーベルを頭部に突き刺す。
それでもなお、クシャトリヤは抵抗と続ける。
胸部の拡散ビーム砲を撃とうとしていたため、両腕からビームトンファーを展開するとクシャトリヤの胴体に突き刺す。
それによりクシャトリヤは完全に停止した。
「はぁはぁ……勝ったのか」
最後の1機を撃墜したところで優人達の勝利のアナウンスが入った。
「いやぁ何とかなるもんだな」
「ああ。一時はどうなるかと思ったけど、ヤガミの方もクレインがいてくれたからみたいだけどな」
「ほんとだよ。クレイン様様だ」
「大したことはしてないわよ」
バトルに勝利して各々は勝利の余韻に浸る。
「なぁクレイン。正式に俺たちとフォースを組まないか? 俺とヤガミではいろいろと足りないことが多いと思うが、クレインのような実力者が付いていると心強い」
「俺からも頼む」
そう言って二人は千鶴に頭を下げる。
このバトルだけ見ても千鶴の実力は2人よりも遥かに高い。
それだけの実力があれば千鶴を欲しがるフォースはいくつもあるだろう。
千鶴からしてみても2人の実力は物足りなく感じることだろう。
それでも千鶴と共に戦えば優人もソラも得るものは多い。
「構わないわ。せっかくの縁だしね」
千鶴は意外と悩む様子もなく了承した。
それからすぐにフォースの設立申請を行う事となった。
「なぁ……本当に俺がフォースリーダーで良いのか? 実力で言えばクレインがリーダーの方が……」
「私は後方から狙撃する方が好きだからあまり前に出たくはないもの」
「クレインもそう言っているし、まぁいいんじゃないか? ついでにフォース名もつけちゃってくれよ」
申請時にはリーダーを決めなければならなかったが、千鶴とソラは優人をリーダーに推した。
実力は千鶴の方がはるか上だが、千鶴はリーダーになる気はないらしい。
「……分かったよ」
優人も渋々だがリーダーになることを承諾した。
そして、少し考えるとフォース名を記入して提出した。
「トライダイバーズか」
「ああ。俺たちにはいろいろと足りない物が多いけど、それでも臆することなくいろんなことに挑戦するダイバー達って意味を込めてみた」
「良い名前じゃない」
優人が考えたフォース名は『トライダイバーズ』。
挑戦するダイバー達という意味を込めて命名した。
「……トライダイバーズ。これが俺たちのフォースだ」
トライダイバーズ……まだ未熟なダイバー達ではあるが、この日新たなフォースが誕生した瞬間だった。