ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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武力衝突

 

 

 

 王武での鍛錬を初めて1週間。

 それぞれが都合のいい時間帯に訪れては他のダイバーと戦いその実力を磨く。

 その間に何か面白そうという理由で付いてきたファントムレディが正式のトライダイバーズのメンバーとなった。

 その日は珍しくトライダイバーズ全員が揃った。

 

「この1週間でお前らのバトルを見せて貰った」

 

 要塞内のブリーフィングルームの一つでレンジがそういう。

 レンジは優人の事を気に入って何かと世話を焼いている。

 

「まずヤガミだが、まぁ全体的なレベルアップが必要だな」

 

 1週間で集めたデータを元にレンジはそれぞれの戦闘スタイルの傾向や今後の課題をまとめているようだ。

 ソラは目立って高い能力はないものの、これと言って欠点も無いため、単純に操縦技術の向上が課題だ。

 

「次にライトだが、無駄に前に出過ぎで攻撃を装甲で受けようとし過ぎ、テイルブレイドで死角を突くのは良いが、それに意識を持ってき過ぎだ」

 

 ライトは戦闘時に必要のないところで前に出がちで、それにより返り討ちに合う傾向が強い。

 またその際に攻撃を装甲で受けようとして体勢を崩す事も多々ある。

 そして、テイルブレイドを使い相手の死角から攻撃を狙うも、それに意識を持っていき過ぎて、本体の操作が雑になり、意識しすぎるが故に相手にも死角から狙っていると悟られて死角なら狙う意味もなくなっている。

 

「ユートは、換装アーマーの特性をしっかりと把握して相手に合わせて的確に使い分けろ。当然、各アーマーを完全に使いこなせるようにすること」

 

 ビルドナラティブの最大の武器はアーマーを戦闘時に換装することで機体特性を大きく変える事だ。

 そのアーマーの特性を完全に把握し、相手に合わせて的確に使い分ける事が重要だ。

 

「ファントムレディは実力があるんだが、思いきりが良すぎる。悪い意味でな」

 

 新しくフォースに入ったファントムレディは接近戦を得意として、実力も十分にある。

 だが、王武で何度かあった事だが、劣勢となった時の思いきりが悪い意味で良すぎた。

 バトルにおいて劣勢になり勝ち目が薄いと判断するとファントムレディは迷わず降参した。

 明らかに勝機がないときならともかく、まだ諦めずに足掻けば活路が見えるかも知れない状況ですらファントムレディは早々に降参することは一度や二度ではない。

 

「クレインは……俺らとしてもGBNトップクラスと言われる射撃の腕を見せて欲しいんだが」

 

 千鶴は王武に来てから一度もバトルをしていない。

 王武でのバトルはバトルフィールドがかなり制限されているため、千鶴のような長距離射撃を得意とするダイバーにとっては非常に戦い辛い。

 それを差し引いても千鶴の射撃能力は高く、レンジをはじめとした王武のダイバー達もGBNトップクラスの射撃能力を実際に見れると期待したが、千鶴はここで自分の手の内を見せるつもりはない。

 

「俺からはこんくらいだな。悪いけど今日も相手をしてやれそうにない」

 

 レンジは申し訳なさそうにそういう。

 ここ数日は王武の主要ダイバー達は慌ただしくしている。

 噂だがレギオンが王武に本格的に武力を行使するのではないかと言われている。

 それでもレンジは何かと優人達を気にかけている。

 

「王武もだけどこっちもヤバイ感じになってんな」

 

 レンジが離れるとソラがそう切り出す。

 コンソールにはGBNの公式掲示板が表示されている。

 そこにはダイバー連合への参加要請が表示されている。

 

「ダイバー連合……ここ数日の間に結成された奴ね」

「BD同盟に対抗するためでしたよね」

 

 アナザーワールドで王武とレギオンが衝突する日が近い事の他に大きく話題になっている。

 BD同盟とはブレイクデカールを使うフォースの集まりで、ブレイクデカールを否定し使うダイバーをマスダイバーとしてバトルで排除しようとするダイバー達に対抗しようと結成された。

 そして、それに対抗するためにダイバー連合としてブレイクデカールに対抗しようと動き始めている。

 

「最近じゃブレイクデカールを使う悪質なダイバーが増えて来てるって話だ。噂じゃRってダイバーがブレイクデカールを大々的に売ってるって話だ。ダイバー連合の主張も分からなくはないよ。実際のところ」

 

 最近はアナザーワールドで活動しているため、余りブレイクデカールを使うダイバーと対峙する機会は減っていたが、GBN全体では使用するダイバーが急激に増えている。

 

「ダイバー連合としてはその辺を理由にブレイクデカールの排斥を考えているみたいだけどねぇ」

「ブレイクデカールを使うダイバーが悪質なプレイを行うという事例は多数あるけど、ブレイクデカールを使うダイバーが悪質なプレイをしている訳じゃなくて、悪質なプレイを行うダイバーがブレイクデカールを好むってだけよ」

「だよねぇ。まぁ否定派も肯定派も自分の都合のいい部分を強く主張してるだけだからねぇ。人間は自分が正しいと思い込んでいる内は自分の考えは絶対的に正しくてあらゆる事はそれを証明するように持っていくからね」

 

 ダイバー連合の主張はブレイクデカールを使用するダイバーが悪質なプレイを行うため、それに対抗するためとしている。

 実際、ブレイクデカールを使うダイバーのほとんどは運営がアカウントの停止や注意を行うギリギリのラインでの悪質プレイを行っている。

 だが、悪質なプレイをするダイバーは基本的に地道の活動する事をめんどくさがって楽にポイントや力を得ようと考えている場合が多い。

 だからこそ簡単に力を得られるブレイクデカールを好んで使う。

 

「確かにブレイクデカールを完全に否定は出来ないけど、ブレイクデカールを使って悪質なプレイしているダイバーがいる以上は見過ごせないよな」

 

 ブレイクデカールの是非はともかくとして、ブレイクデカールを使用する悪質なダイバーがいることは事実だ。

 それはGBNをプレイするダイバーの一人としては見逃せない事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 王武のフォースネストある湖から少し離れた岩陰にティターンズカラーのガンダムエピオンの改造機が降り立つ。

 ガンダムヨーシエピオン、元ロシア代表のカティアの新たなガンプラだ。

 カティアの得意とするビームソードの二刀流に特化し、変形機構を廃止し、MS形態による機動力と運動性能を強化している。

 シールドを装備せず、頭部にバルカンの追加とビームソードを2本装備している。

 ヨーシエピオンの降りた場所の近くには龍牙のブレイジングデスティニーや諒真のガンダムクロノスXX、芽衣のズゴックEXがシートに覆われている。

 3年前の世界大会の後、ルークにスカウトされてカティアはタイガ団の切り込み隊長となり、大我の特攻団長と龍牙の殴りこみ隊長ともども名を馳せている。

 

「少し遅れたわ」

 

 カティアはガンプラから降りると簡易的な指令室として使われている指揮車にいた諒真たちと合流する。

 カティアに諒真、龍牙、芽衣にここにはいない大我が現在の大我団のフルメンバーだ。

 

「けどいくら相手があのジードとはいえ、私や龍牙まで投入する必要があるの?」

 

 合流したカティアは今回の事で始めに抱いた疑問を口にする。

 タイガ団は基本的に個人で活動することが多い。

 全体の司令塔である諒真から必要があれば龍牙やカティアに指示が行くが、それ以外は好きに行動している。

 レギオン絡みでの作戦行動の大半は大我を一人突っ込ませるか、グレイズアーミィを使う事が多く、今回のように大我以外に龍牙とカティアの3人を同時に投入することは初めてだ。

 相手が個人ランキング5位であるジードと戦う事を想定しても龍牙とカティアを投入してグレイズアーミィにも可能な限り招集を出しているのは異例の事態だと言える。

 

「まぁな。いつも通り団長一人で勝てる相手だけど、いろいろと立て込んでるから速攻で蹴りをつけたかったんだよ」

「例のダイバー連合とDB同盟の件? リヴィエール達が何か動いているみたいだったけど、それ絡み?」

「そんなとこ」

 

 カティアはリアルでは大我や諒真、芽衣と同じアーウィントイカンパニーに雇われている。

 同僚であるリヴィエールがブレイクデカールの調査で何か動いている事は知っていた。

 カティア自身はブレイクデカールを使ったガンプラとの戦闘データを集めるくらいしか関わってはいないが、それ関連で速いところ蹴りをつけたかったからタイガ団総出で王武と戦うという事だ。

 

「主任。全員揃ったのであれば作戦会議を始めましょう。余り時間の猶予はないですよ」

「全員? まさか団長はもう突っ込ませてるの?」

 

 周囲には大我のガンプラは見当たらない。

 流石にないとは思いつつも大我はすでに王武に攻め込んでいるのかと口にする。

 

「まさか。アイツの役目は好きに突っ込んで敵を倒す事で、どうせこっちの思惑通りには動かないんだし、王武を見張らせてる。向こうから攻撃がない限りはこっちの最後通告の返答時間までは絶対に手を出さないようには何度も言ってるから流石に待ちくたびれて一人で攻め込むって事はないよ」

 

 大我は基本的に好きに戦わせている。

 その方が大我の戦闘能力を最大限に発揮できると諒真が判断したからだ。

 だから今は王武に動きがないか見張らせている。

 大我がこの場にいない理由に納得し、カティアも指揮車の中に入る。

 

「そんじゃ今回の作戦について説明する」

 

 諒真がそういうと指揮車ないのモニターに芽衣がバトルフィールドの情報を表示する。

 そこにグレイズアーミィをはじめとした友軍の配置や大まかな作戦を説明していく。

 

「まぁ大体こんな感じなんだが質問は?」

 

 諒真があらかた説明を終える。

 諒真の問いに対して芽衣が手を挙げる。

 

「王武はその行動理念から現在もフォースネストないには大勢の王武以外のダイバーがいることは予測できます。今回の作戦においてそれらの第3者の扱いはどうします?」

 

 王武には多くのダイバーが実力を磨くために出入りしている。

 攻撃時に抵抗してくるならともかく、全てのダイバーを敵として見るのかでは否かでは手間が変わってくる。

 

「アイちゃん。君は王武のダイバーかそうでないかを見分けが付くのかな?」

 

 諒真は芝居がかった物言いで質問に質問で返す。

 ジードやレンジ、ショウゲンと言った王武でも有名なダイバーはともかく、王武のダイバーの全てを把握することは難しい。

 ならば確実に自分の味方だと分かっているガンプラ以外は全て敵として対応させるという事を遠回しに言っているのだろう。

 

「はい。事前に王武に入っているダイバーのリストは用意してあります。情報自体は数日前の物ですから完璧とはいえませんが9割程度はカバーできるはずです」

 

 そんな諒真の思惑を他所に芽衣は諒真に王武のダイバーのリストを表示させる。

 そのリストがあれば王武以外のダイバーを無駄に攻撃することもない。

 諒真は無言でリストを眺める。

 するとリストを削除すると何事もなかったかのようにする。

 

「アイちゃん。君は王武のダイバーかそうでないかを見分けが付くのかな?」

(なかった事にしたよ)

(なかった事にしたわね)

 

 そのやり取りとみていた龍牙とカティアは同時に同じ事を思う。

 そして、芽衣は軽くため息をつく。

 

「……いえ」

「ならばそういう事だ」

 

 芽衣が空気を読み、諒真はどこか満足そうに答える。

 諒真は始めからあそこにいるダイバー全てを敵とした殲滅戦をするつもりだったのだ。

 

「けど良いんすか? 団長のせいでタイガ団の悪名がまた広がりますよ」

 

 王武以外にも無関係のダイバーまで巻き込んでの殲滅戦を行えば巻き込まれたダイバーからタイガ団の悪評が広まり兼ねない。

 

「今回の戦闘はレギオン参加のフォースとしての作戦行動だから悪評は上がかぶってくれるだろうし、あえて言おう。今更であると!」

 

 諒真の言葉に龍牙は思わず納得してしまう。

 どの道、大我のGBNでの評価はその圧倒的な戦闘能力を評価されるか、運営が動かないレベルでの好き勝手動き喧嘩を売りまくった結果の悪評のどちらかだ。

 ならば今更、無差別に殲滅戦を行ったところで大我の武勇伝に悪評が一つ追加されるだけだ。

 

「元々今回の戦いが上が処理しきれない事態を押し付けられたようなものだし、泥くらいかぶって貰わないとな」

 

 今回の王武との一件はレギオンが王武を戦力として取り込みたいという思惑から始まったものだ。

 始めはいろいろと好条件を提示して勧誘したが、ジードはレギオンの傘下に入る気はなく、やがてレギオンとしては引くに引けなくなった。

 そこから小競り合いが始まり、本格的に武力衝突にまで発展した。

 レギオンの戦力と王武の戦力がぶつかった場合、総合力ではレギオンに分があるが、王武のジードを討ち取るにはレギオンもそれなりの被害を覚悟しなければならない。

 そこでレギオンはタイガ団を先鋒として送り込む事にした。

 以前の採掘エリアの一件での制裁を含んでいる事は諒真も気づいている。

 レギオンの思惑としてはタイガ団に先鋒として挑ませて、王武の戦力に大打撃を与えて、その後に自分たちが攻めて王武を攻め落とし参加に入れる算段なのだろう。

 仮にタイガ団が勝ったとしてもレギオンは無傷で王武を傘下に入れる事が出来て、タイガ団は無傷では済まず、レギオンが支援して借りを作らせる事も出来ると考えている。

 

「こんな事を押し付けられるほど厄介がられている訳ね。主に大我やリトルタイガーとか団長のせいで」

「主任。そろそろ最後通告の回答時間になります」

「さて……どう出るか」

 

 王武にレギオンからの最後通告は数日前に出している。

 今日がその回答日だ。

 王武の回答次第では戦闘になる。

 

「まぁここまで来て怖気付くって事もないでしょ」

「まぁな。あんな最後通告で白旗を上げるような連中じゃないだろうな」

 

 レギオンからの最後通告は諒真が作って送っている。

 その最後通告は無条件での全面降伏を命令し、それを受け入れない場合は武力をもって殲滅すると書かれている。

 ここまで頑なに傘下に入る事を拒否してきた王武がそんな内容の最後通告を受けて素直に降伏することなどありえない。

 刻一刻と時間が迫り、やがて最後通告の回答が来る時間となった。

 その瞬間、遠くから衝突音が轟く。

 

「何?」

「向こうから攻めて来たのか?」

「……いえ。違うようです」

 

 突然の事態にも動揺することなく芽衣が情報を集めてモニターに出す。

 王武のフォースネストである要塞の外壁から煙が上がっている。

 

「何があった?」

「諒ちゃん。時間になったから出るよ」

 

 監視していた大我からの通信が入り、諒真も何が起きたか理解した。

 回答の時間が来た瞬間に大我はバーストメイスカスタムを要塞目掛けて投擲したのだ。

 要塞の外壁の煙が落ち着くとそこにはバーストメイスカスタムが貫通した穴が出来ていた。

 始めから降伏することはないとは諒真も思っていたが、大我も同意見だったようで、諒真の言いつけ通り回答時間までは手を出さなかったが、回答時間になった瞬間に手を出した。

 

「ああもう! いきなり台無しだよ! 俺にもたまには黒幕ちっくな事をさせろよな! ネコを撫でて無かったのか悪かったのか!」

 

 諒真は文句を言いながらもすぐに落ち着く。

 

「……こうなった以上はこっちも動く、龍牙とカティアはすぐに出撃、アイちゃんはザジたちに連絡を入れてくれ」

「了解っす」

「分かったわ」

 

 龍牙とカティアは指揮車を出ると自分のガンプラに乗り込む。

 芽衣も待機させていたグレイズアーミィに出撃の指示を出す。

 そうして王武とタイガ団の間での武力衝突が始まったのだった。

 

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