ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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王武攻防戦Ⅲ

 

 

 

 ガンダムオメガバルバトス・アステールが振り下ろしたバーストメイスカスタムはジードのギリギリのところで止められる。

 ジードは微動だにしない。

 

「ちっ……早くガンプラに乗れよ。ガンプラに乗ってないお前じゃぶっ潰す意味はない」

 

 大我も本気でジードを潰そうとしていた訳ではない。

 ガンプラに乗っていない状態のダイバーを倒したところで何の意味もないからだ。

 少しでもビビッて動揺してくれれば儲けもの程度でダイバーを直接攻撃してみたものの、ジードも本気ではないと分かっていたため、一切動じる事も無かった。

 オメガバルバトス・アステールがバーストメイスカスタムを引くと指令室の壁をぶち破り深紅のガンプラがオメガバルバトス・アステールに殴り掛かる。

 

「……んな小細工してないでさっさと乗れ」

 

 深紅のガンプラの拳をオメガバルバトス・アステールは避ける事も防ぐ事もしなかった。

 拳はオメガバルバトス・アステールの胸部装甲に当たるがダメージはない。

 この深紅のガンプラが、ジードの愛機であるハオウガンダム。

 アカツキをベースに近接戦闘に重きを置いたカスタムがされている。

 バックパックはオオワシをベースにビーム砲がソードインパルスのエクスカリバーを改造したエクスカリバー弐に変更され、腰には刀とビームサーベルの柄が1本づつ左右に装備されている。

 両腕部はストライクの物に変更され、ソードストライクのビームブーメランと小型シールドが付けられている。

 全身を赤く塗装され、肩の装甲にはそれぞれ「覇」と「王」の文字が入れられいる。

 脚部の装甲には増加装甲が取り付けられており、増加装甲にはスラスターとインフィニットジャスティスと同じようにビームブレイドが付いている。

 ジードは大我の侵攻を食い止める事が出来ないと判断し、指令室の隣の部屋にハオウガンダムを待機させ遠隔操作で不意を突いて攻撃できるように準備していた。

 だが、ダイバー不在のハオウガンダムは単純な動きしかできず、攻撃もオメガバルバトス・アステールの装甲にダメージを与える事も出来ない。

 この攻撃事態、不意打ちで仕留めるためではなく、相手の反応を伺う物で大我は自分の意図を分かった上で微動だにしなかったジードへの意趣返しも込めて攻撃に対して何もしなかった。

 

「成程、ずいぶんと肝が据わっている」

 

 ハオウガンダムのコックピットが開くとジードは乗り込む。

 ジードが乗り込みハッチが閉じた瞬間にオメガバルバトス・アステールはハオウガンダムに蹴りを入れようとするが、ハオウガンダムも脚部のビームブレイドで蹴り返す。

 オメガバルバトス・アステールの脚部ブレードとハオウガンダムのビームブレイドがぶつかり合い、タイガ団と王武のリーダー同士の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーダー同士の戦闘が始まり、要塞各部では双方のエース同士の戦闘も繰り広げられている。

 通路でカティアのヨーシエピオンとショウゲンの村雨が切り合っている。

 

「ちょこまかと!」

 

 ヨーシエピオンのビームソードを村雨はビームサーベルでいなす。

 真向からではビーム刃の出力の差でヨーシエピオンに分があるが、村雨は確実に攻撃を防いでいる。

 

「いくらサーベルの出力が高くても見切れぬ事はない」

「邪魔なのよ!」

 

 ヨーシエピオンはビームソードを振るう。

 村雨はシールドを掲げる。

 ビームソードでシールドは両断されるも、すでにそこには村雨の姿はない。

 

「シールドは囮!」

 

 そして、シールドで姿を隠し、両断されるまでの短い時間に村雨はヨーシエピオンの背後に回り込んでいた。

 

「取った!」

 

 背後に回り込み村雨はビームサーベルを振り下ろす動作に入り、ヨーシエピオンはまだ振り向かない。

 ショウゲンは2本のビームソードの動きには細心の注意を払っている。

 背後を取ったとは言え、反撃の可能性は捨てきれない。

 一切の油断も慢心もなく、反撃に備えていたが、ヨーシエピオンのバックパックの一部が稼働している事までは気づかなかった。

 それに気づいたときには村雨の右腕がビーム刃によって切り裂かれて宙を舞ってからだ。

 

「なっ!」

 

 ヨーシエピオンのバックパックから出たビームサーベルが村雨の右腕を切り裂いたのだった。

 カティアの戦闘スタイルは高出力のビームソードによる二刀流だが、ヨーシエピオンはそれだけに留まらない。

 機体の全身のいたるところに外見からは分からないようにビームサーベルが仕込まれている。

 ショウゲンは2本のビームソードにのみ注意を払い他に武器はないと思っていたが故にバックパックのビームサーベルへの反応が出来なかった。

 村雨の腕を切り落としたヨーシエピオンはそのまま回し蹴りを繰り出す。

 右腕を失いながらも回避しようとする。

 かかと部分からも短いビームサーベルが展開され、村雨は何とかかわす事が出来たが、つま先部分からは長いビームサーベルが展開されていた。

 全身に隠しているビームサーベルの刃の長さは部分によって変わり、定期的に長さを変えているため、その時点でどこのビームサーベルの刃の長さはカティアしか知らない。

 かかとのビームサーベルは避けられたが、つま先のビームサーベルはよけ切れず、両断されて村雨は爆散する。

 

「まったく……背後を取ったからと私の死角はないのよ」

 

 村雨を仕留めてヨーシエピオンは先に進む。

 

 

「コイツ!」

「勢いだけじゃ俺には届かねぇんだよ!」

 

 ブレイジングデスティニーのブレイジングナックルを武錬は腕と全身を使って衝撃を背後に逃がして後方に飛び退く。

 闘技場で交戦しているブレイジングデスティニーと武錬の戦いはブレイジングデスティニーの方が押している。

 しかし、攻撃のほとんどは上手く防がれている。

 

「気合の入ったいい攻撃だけどな!」

「コイツ……言動とは裏腹に守りが主体のスタイルか」

 

 龍牙とレンジのガンプラはどちらも接近での肉弾戦を得意とするが、戦闘スタイルは大きく違う。

 龍牙の場合はブレイジングナックルやビームナックルで相手を一撃で仕留めるのに対して、レンジは相手の攻撃を防ぎながら僅かな隙に小さい一撃を入れていくスタイルだ。

 そのため、戦闘自体は龍牙が押しているが、レンジにとっては劣勢という訳ではない。

 

「そうやって無駄に大振りしてっと脇ががら空きだぜ! オラ!」

 

 ブレイジングデスティニーの一撃をかわして、脇からスタンナックルの一撃を入れる。

 

「一撃一撃は大した事はないけど、このまま入れられ続けると不味いな」

 

 ブレイジングデスティニーは一度距離を取って仕切り直ししようとするが、今度は武錬が前に出て連続攻撃を繰り出す。

 一撃の威力はないが、確実にブレイジングデスティニーの装甲を削っていく。

 ある程度攻撃すると武錬も下がり間合いを取り合う。

 

「深追いはしてこないか……」

「まぁな。アンタ程の実力者相手に深追いは自殺行為だからな」

 

 レンジは普段の言動からおおざっぱに見えるが、バトルでは堅実にダメージを積み重ねて戦う。

 フォースのナンバー2として、負ける事は許されないため、不用意に攻めて反撃されることを危惧してのことだ。

 

「成程な……」

 

 ブレイジングデスティニーは背後から炎の翼を展開してブレイジングナックルを構える。

 

「けど、悪いな。生憎と俺の目指す先はそんなお利巧さんな戦い方をしていたら到底たどり付けないんだわ」

 

 更に強まる炎を見てレンジも龍牙の必殺の一撃が来ると確信して警戒を強める。

 どんなに強力な一撃だろうとも来ると分かっていれば最小限のダメージで抑えられる自信はある。

 それさえ凌いでしまえば、相手の精神的なダメージも大きく、勝負をつけにも行ける。

 

「リスクとか負ける事とか恐れていたらアイツには届かないし勝てない。アイツはどんなに無謀な事でもリスクとか考えないで常に勝つ気でいやがる」

 

 大我はどんな時でも負ける事を全く考えてはいない。

 どんなに状況が最悪だろうと自分が戦えば確実に勝利すると豪語し、実際に大我がバトルで負けた事は一度もない。

 そんな大我に追いつき勝つには、リスクを恐れて尻込みしていては一生追いつく事は出来ないだろう。

 だからこそ、龍牙も前に進み続けるしかない。

 

「だから俺はアンタをぶっ飛ばす!」

「来るか! 来やがれ!」

 

 レンジは龍牙の気迫に押される事も無く構えを取る。

 ブレイジングデスティニーは一気に加速して突撃するとブレイジングナックルで殴り掛かる。

 武錬は腕でガードしながら直前で勢いを殺すために後ろに飛ぶ。

 必殺の一撃が来る事を覚悟し、受ける事でダメージを負っても撃墜されることはない。

 

「ぶち抜けぇぇぇ!」

 

 ブレイジングナックルに内臓されていたスラスターを使いブレイジングナックルが射出される。

 

「何!」

 

 武錬は勢いを殺すために後方に飛んでいたがゆえに踏ん張りが気かず、ブレイジングナックルを受けながら闘技場を横切り壁に叩きつけられる。

 

「まだだ! まだ終わんねぇよ! 俺は王武のナンバー2として負けらんねぇんだよ!」

 

 ブレイジングナックルの軌道を少しでも逸らせば、スラスターの勢いでブレイジングナックルはどこかに飛んでいき何とかできる。

 そうなれば想定以上のダメージを受けることになったが、メインウェポンを失ったブレイジングデスティニーとは五分だ。

 

 

「ああ! これで終わりじゃねぇ! 俺は勝つ! アンタにもアイツにも!」

 

 ブレイジングデスティニーは加速して突っ込んでくる。

 

「ブレイジング・ドラゴン・ファング!」

 

 龍の姿を模った炎を纏いブレイジングデスティニーはブレイジングナックルに拳を突っ込み振りぬいた。

 

「馬鹿な!」

 

 武錬はブレイジングナックルと共に要塞の壁をぶち抜いていきやがて城壁すらもぶち抜き飛んでいく。

 

「地球圏まで飛んできな」

 

 火星の彼方までぶっ飛んでいった武錬は無事では済まないだろう。

 レンジに勝利した龍牙はあることに気がづいた。

 

「……やっべ。勢いでブレイジングナックルを飛ばしちゃったけど……戻ってこないよな」

 

 ある程度なら内臓しているスラスターで自分のところまで戻っては来るが、その場の勢いで火星の彼方まで飛ばしてしまえば戻っては来ない。

 

「まぁやっちまったもんは仕方がないか。それだけの相手だったんだしな。うん」

 

 勢いでメインウェポンを失いながらも仕方がないと切り替えて龍牙は先に進む。

 

「ちょいさ!」

 

 ザクファントムソードはバスターソードを振り下ろす。

 ズゴックEXは後方に下がりながらビームガトリングを連射する。

 

「あの時は敵を通すなって言われてたから通さないようにしたけど、今日はそうはいなないかんね!」

 

 以前にファントムレディはフォース・紅蓮の牙に雇われていた。

 あの時は敵の拠点への侵入を阻止することだけに留めていたが、今日はそんな制約はない。

 

「厄介だけど、私が相手をしている間は足止めになる」

 

 ザクファントムソードは両肩のシールドで守り、攻撃が止むとブレイズウィザードのミサイルを一斉掃射する。

 ズゴックEXはシールドのメガ粒子砲でミサイルを迎撃するが、ザクファントムソードはバスターソードを投擲し、ズゴックEXのシールドを貫通して肩まで刃が到達する。

 

「このガンプラではこれ以上は難しいようね」

「君に恨みはないけど、私もまだ死にたくはないからさ!」

 

 ザクファントムソードはシールドに収納されているビームアックスを抜くと腕部のビーム突撃銃を撃ちながら接近する。

 ビームがズゴックEXの膝を掠めて、損傷して膝をつくとビームアックスが振り落とされる。

 ビームガトリングを向けるが、ビームアックスはズゴックEXの腕のビームガトリングに刺さる。

 

「しぶとい!」

 

 ザクファントムソードはビームアックスを引き抜こうとするが、引っかかっているのか中々抜けない。

 強引に引き抜くが、天井がぶち抜かれて何かが落ちて来る。

 

「何なのよ!」

 

 落ちてきたのは大我のオメガバルバトス・アステールとジードのハオウガンダムの2機だ。

 ハオウガンダムは両手にエクスカリバー弐を抜いている。

 

「団長」

「うげぇ!」

 

 2機はザクファントムソードとズゴックEXには目もくれずに距離を詰めて互いの持っている武器でぶつかり合う。

 

「成程、噂に違わぬパワーという訳か」

「アンタもな。俺のパルバトスのパワーに少しでも拮抗できる奴はそうはいない」

 

 オメガバルバトス・アステールはハオウガンダムを弾き飛ばすとシド丸のビームライフルを撃つ。

 それをハオウガンダムはエクスカリバー弐で弾く。

 

「ちょっ! 巻き沿いは勘弁してよね!」

「今のうちに」

 

 弾かれたビームは周囲に着弾する。

 ザクファントムソードはビームに当たらないように退避する。

 その間にズゴックEXも損傷した右腕をパージすると後退し、潜水艦の残骸が漂う水の中に飛び込む。

 大我が周囲の友軍の安全を気にして戦う事も無く、仮に人質として盾に使われても何のためらいもないだろうが、それでもまともに戦えない自分がこの場に残っても何の意味も無いため、愛衣はこれ以上の要塞内での戦闘行為を断念して後退を始めた。

 

「あ! 私のバスターソード!」

 

 ズゴックEXはザクファントムソードのバスターソードが刺さったまま後退するが、ファントムレディは追撃はしない。

 相手は損傷しているとは言え、水中で戦えば勝ち目は薄い。

 そこまでしてメインウェポンを回収しなければいけない状況でもない。

 

「……まぁこれなら逃げても言い訳は出来るっしょ」

 

 元より撃墜されるまで戦うつもりはなかった。

 メインウェポンを失い、後は適当に機体を損傷させておけば先に撤退した理由として後で面倒な事にもなりにくい。

 ファントムレディは大我の視界に入らないようにコソコソと退避を始めた。

 

「真向からのパワー勝負では分が悪いか」

 

 ハオウガンダムはエクスカリバー弐をバックパックに戻すと腰の刀を抜く。

 

「最近は大した相手とも戦ってなくて鬱憤が溜まってんだ。その鬱憤をアンタをぶっ潰して晴らさせて貰う!」

 

 オメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムをハオウガンダムに向ける。

 そして、ダインスレイヴをハオウガンダムに撃ち込む。

 

「ハッ!」

 

 ハオウガンダムはジードの気合を込めた掛け声と共に刀が振り下ろされる。

 振り下ろされた刀はダインスレイヴを正面から真っ二つに切断し、切断されたダインスレイヴはハオウガンダムの後方に飛んでいく。

 

「そいつをそんな風に防いだのはアンタが初めてだよ」

「それは光栄だ」

 

 今までにもダインスレイヴを回避されたり、迎撃されたことは何度もある。

 しかし、真っ二つにされたのは初めてだった。

 少しでもズレるだけでも綺麗に中央から切る事は出来ない。

 それだけでもジードの操作技術の高さが伺え、大我もこの戦いに価値があると確信するには十分だ。

 

「まぁ俺にぶっ潰されるから関係ないけどさ」

 

 オメガバルバトス・アステールは加速して距離を詰める。

 バーストメイスカスタムの一撃をかわすとハオウガンダムは懐に飛び込み刀を振るう。

 それを左腕のチェーンソーブレードで弾くと、ハオウガンダムは一度距離を取り再び加速して接近すると刀を突き出す。

 ハオウガンダムの突きをオメガバルバトス・アステールは頭部のヒートホーンで受け止め、肩のブレードプルーマを射出する。

 

「むっ! まさに全身凶器か」

 

 ハオウガンダムはプレードプルーマを刀で弾きながら後退する。

 距離を取った事でオメガバルバトス・アステールはハオウガンダムの上を取りアステールキャノンの発射体勢を取る。

 

「コイツはどう防ぐ」

 

 エネルギーがチャージされ、アステールキャノンが発射された。

 

「避ければフォースネストが持たんか」

 

 高出力のビームであるアステールキャノンをハオウガンダムは刀で切り裂く。

 ここで避けてしまえば自身のフォースネストである要塞に大打撃を与えられて完全に破壊されてしまう可能性がある。

 だが、刀で受け止められたビームは拡散し、フォースネストの広範囲に着弾し、被害を更に増やしていく。

 

 

 

 

「第二ラウンドは超高速バトルだ。ついて来られるか?」

 

 外装をパージしたガンダムX91は加速する。

 ビルドナラティブはビームを撃つが掠りもしない。

 

「何だ? 今、一瞬照準がずれた」

 

 優人が攻撃する直前にビームライフルの照準が少しづれた。

 今までにも射撃が回避された事はあるが、直前に照準がずれた事は一度もない。

 戸惑う時間すらも与えずにガンダムX91はビームサーベルで切りかかってくる。

 何とかシールドで弾きビームを撃つもやはり照準は微妙にずれる。

 

「どうした! どうした!」

「くっ! 考えるのは後だ!」

 

 シールドでビームサーベルを防ぎながらバルカンで応戦する。

 しかし、バルカンの照準も少しずれて当たらない。

 

「バルカンも駄目か!」

「そんなもんか! あぁ?」

 

 ガンダムX91の猛攻を何とか防ぎながらも目が慣れてガンダムX91の動きを追えるようになってきた。

 

「あれは……残像? そうか! 照準の狂いは残像をロックしているからなのか」

 

 優人はバルカンやビームライフルの照準の狂いの原因にたどり着いた。

 ガンダムX91は移動時はガンダムF91の最大稼働状態と同じ状態になっている。

 それによって発生した質量を持った残像を自分のガンプラがロックすることで射撃武器の精度を著しく低下させる機能を持っている。

 

「なら射撃武器は駄目か……」

 

 何とか本体を狙おうとするが、照準は質量を持った残像の方を捉えてしまう。

 

「どういうこった! やっぱバトルは白兵でないとな!」

 

 ガンダムX91の攻撃をビルドナラティブはバックパックのブラストシルエットをパージしてガンダムX91の方にぶつける。

 射撃武器とは違い照準補正を使わずに向かわせているため、狙いがずれる事も無かった。

 

「はっ! その程度!」

 

 ガンダムX91はブラストシルエットをビームサーベルで切り裂こうとするが、その前にビルドナラティブはバルカンを撃ち込み、ブラストシルエットを爆散させる。

 

「ちっ! 小癪な事してくれるじゃねぇかよ! オイ!」

 

 ビームシールドで爆風から身を守っているとエクシアアーマーに換装したビルドナラティブがGNソードで切りかかる。

 

「今度はエクシアかぁ!」

 

 GNソードをビームサーベルで受け止める。

 

「なら当然持ってんだろ! 使って見せろよ!」

「この機動力に対抗するには……トランザム!」

 

 エクシアアーマーのビルドナラティブはトランザムを起動する。

 ガンダムX91を弾き飛ばすとGNソードをパージしてGNビームサーベルを抜く。

 ガンダムX91との高速戦闘においてはGNソードでは対応しきれない。

 

「来いよ!」

 

 トランザムを起動させたビルドナラティブと最大稼働状態のガンダムX91は高速で移動しながら何度もぶつかり合う。

 

「そうだ! もっとだ! もっと俺を楽しませて見せろよぉ!」

「っ! トランザムでも攻めきれない!」

 

 ビルドナラティブの攻撃は全てガンダムX91に防がれている。

 高い機動力で動き続ける2機だったが、次第にビルドナラティブの方が押され始めている。

 王武で経験を積んで実力をつけたからこそ、キャプテンネロを相手にここまで戦えるようになったが、それでもなおキャプテンネロとの実力差はあり、バトルが長引くとその差が表れて来た。

 

「それで終わりかぁ!」

 

 ビームサーベルがビルドナラティブの右腕を切り落とすと、ガンダムX91はビルドナラティブを蹴り飛ばし、地面に叩きつけられる。

 体勢を立て直そうとするが、トランザムの限界時間を迎えてトランザムが解除される。

 

「……終わりか」

「ここまでなのか……いや、まだ何か……何か手があるはずだ」

 

 キャプテンネロは不完全燃焼で目に見えて落胆した様子を見せる。

 トランザムを限界時間まで使った事でビルドナラティブの機体性能は一時的に低下している。

 それでも優人は諦めずに勝利への可能性を模索する。

 

「まぁ少しは楽しめたぜ」

 

 ガンダムX91はビルドナラティブに留めを刺すためにビームサーベルを構えて突っ込む。

 絶対絶命でもはや打つ手もなく、諦めかけていたその時、壁をぶち破り何かがガンダムX91の方に飛んできた。

 とっさにガンダムX91はビームシールドで身を守るが、ビームシールドごと腕が粉砕され地面に叩きつけられる。

 

「……一体何が?」

「くそったれがぁ! ウィルの次はお前が俺の邪魔をするのかぁ!」

 

 優人を救った物に見覚えがあった。

 それはオメガバルバトス・アステールのバーストメイスカスタムだった。

 どういう訳かバーストメイスカスタムが壁を突き破り飛んで来て優人を救ったようだ。

 優人も事態が飲み込めず、動けなくなったガンプラの中で大我への恨み言や文句を喚き散らずキャプテンネロの声も聞こえない。

 そして、バーストメイスカスタムが飛んできた壁をぶち破り、オメガバルバトス・アステールとはハオウガンダムが現れる。

 

「あのバルバトス……それにあのガンプラは確か……」

 

 優人もレンジから過去のバトルのログデータをいくつか見せられた事があった。

 その時に王武のリーダーであるジードのハオウガンダムを見ている。

 2機はビルドナラティブにもガンダムX91にも目もくれずに激しく切り合う。

 ハオウガンダムの一閃でオメガバルバトス・アステールの左腕のチェーンソーブレードが両断されるが、ワイヤーブレードを刀で受けたせいでハオウガンダムの刀が砕かれる。

 

「凄い。あのリトルタイガーを相手に一歩も引いていない」

 

 優人にとってGBNで出会ったダイバーの中で大我はぶっちぎりで最強のダイバーだろう。

 だが、そんな大我を相手にジードは互角の戦いを繰り広げている。

 刀を砕かれたハオウガンダムは両手にビームサーベルを持ち切りかかる。

 オメガバルバトス・アステールは胸部の大口径バルカンで迎撃する。

 

「ぶっ潰し甲斐がある」

「少しの気の緩みも命とりか」

 

 攻撃をかわしながらハオウガンダムは間合いを詰めようとする。

 オメガバルバトス・アステールのビームをハオウガンダムはビームサーベルで切り裂く。

 互いのリーダー機同士の戦いの余波による被害は周囲をも巻き込んでいく。

 元々、タイガ団の攻撃を受け続けていた要塞は耐え切れずについには至る所で崩壊していく。

 

「まずい!」

 

 天井が崩壊し、瓦礫の雨がビルドナラティブを襲う。

 

「これがトップクラスのダイバー同士の戦いなのか」

 

 ビルドナラティブは装甲の厚いタイタスアーマーに換装して瓦礫から身を守る。

 すでに大我たちは戦闘しながらどこかに行ったのか、戦闘音が遠くから聞こえる。

 

「ユート。無事だったのね」

「クレイン? 何とかな」

 

 要塞の崩壊で防衛線を放棄した千鶴のメテオイージスが優人と合流する。

 

「それにしても滅茶苦茶ね」

「だな。ヤガミ達は?」

「分からないわ」

 

 これだけ要塞が滅茶苦茶に破壊されてしまえば分散している仲間の安否を確かめるのも難しい。

 仲間の安否を考える間もなく警告のアラートがなり2人は身構える。

 

「敵!」

 

 カティアのヨーシエピオンがメテオイージスの懐に入り込みビームソードでロングビームライフルを破壊する。

 

「懐に入られた!」

「いくら射撃能力が高くてもここは私の間合い! アンタの男と兄にはいつも面倒をかけられているの。その鬱憤を払ってもらうわ」

 

 メテオイージスは腕部のビームサーベルを展開して振るうが、ヨーシエピオンのビームソードで右腕を切られる。

 

「クレイン!」

 

 ビルドナラティブが肩からビームを出してタックルするが、ヨーシエピオンはビームソードで受け止める。

 

「邪魔を!」

 

 ヨーシエピオンは膝からビームサーベルを出して膝蹴りでビルドナラティブの頭部を狙うが、ギリギリのところで避けられる。

 メテオイージスはその間に距離を取ると2機にミサイルが降り注ぐ。

 

「さっさと逃げるのよ!」

 

 ファントムレディのザクファントムソードがビーム突撃銃でヨーシエピオンをけん制する。

 撤退をしようとするも、要塞の崩落で中々逃げる事も出来ずにうろうろとしていたが、優人達を見つけて一人で逃げるよりかは生存率が上がると助けに入った。

 

「カティアさん! これ以上は!」

「ええ……そうね」

 

 近くで戦闘していたグレイズの何機かが集まってくる。

 すでに大我が相手の大将であるジードと交戦が開始されたという情報はタイガ団やグレイズアーミィにも届いている。

 後は大我がジードを討ち取るだけだ。

 

「命拾いしたわね」

 

 カティアもこれ以上の深追いをする気はなく、合流したグレイズと共に後退を始める。

 

「リョーマさん!」

「ジンか。無事だったか」

 

 レンジを倒した龍牙がビームナックルでNPDアストレイを殴り飛ばす。

 

「ええ。まぁ……それよりどうなってるんですか? この状況」

「ずいぶんと派手に暴れるんだよ。ウチの団長がな」

「……なるほど」

 

 龍牙もここまで要塞が破壊される理由に納得する。

 

「けど、あのガンプラってクロスボーンハウンドのですよね」

 

 諒真の近くにはガンダムX91を回収したローグ・ユーゴーや生き残ったローグ・ロディがいる。

 龍牙もクロスボーンハウンドがバトルに飛び入りで参加している事は知っていたが、キャプテンネロがあそこまで機体を損傷させたのは意外ではあった。

 

「ああ……大我の流れ弾に当たったらしい」

「……なるほど」

 

 諒真もノワールたちと共にキャプテンネロを回収した時に散々罵倒された。

 龍牙も大我がバトルの時に友軍機への流れ弾による被害を一切気にしない事は知っている。

 大我にとっては自分の攻撃の流れ弾が当たるところにいる方が悪い。

 

「とにかく、後は俺らの団長が勝つのを待つだけだな」

「ですね」

 

 フォースの絶対的エースである大我が負ける事は龍牙や諒真にとってはあり得ない事で、後はただ自分がやられないようにしながらエースの勝利を待つだけだ。

 

「どうした? そんなもんか覇王の力は」

 

 オメガバルバトス・アステールは右腕のチェーンソーブレードをガンモードにして撃つ。

 ハオウガンダムはビームサーベルで弾丸をはじく。

 

「これほどまでとはな……いや、覇王だ何だと言われ、大きくなったフォースの運営に明け暮れ、いつの間にか爪も牙もさび付いていたようだ」

 

 ジードも始めたはただひたすら己の強さを求めづ付けてきた。

 そして、そんなジードを多くのダイバーが慕い王武が生まれた。

 自分を慕うダイバー達を無碍にも出来ず、皆が実力を磨くためのフォースとして王武を維持している間にジード自身は自らの鍛錬に使う時間が少なくなってきた。

 

「礼を言おう。リトルタイガー。君のお陰で俺はまだ強くなれそうだ」

 

 ハオウガンダムはビームサーベルを腰に戻すとエクスカリバー弐を取る。

 

「今日だけは王武のリーダーとしてではなく、一人の獣に帰り、ただひたすら貪欲に勝利を求めよう!」

 

 エクスカリバー弐の峰を合わせる事で柄同士を連結させたアンビデクストラスフォームとは違う形態である覇王剣になることが出来るようになっている。

 

「あっそ」

 

 オメガバルバトス・アステールはチェーンソーブレードをソードモードにして切りかかる。

 その一撃をハオウガンダムは覇王剣で受け止める。

 

「そっちの事情なんて知るかよ。俺はアンタをぶっ潰すだけだ」

「確かにな」

 

 オメガバルバトス・アステールはドリルニーを繰り出すが、ハオウガンダムは後ろに引いてかわすと引いた勢いで機体を一回転させて勢いをつけて覇王剣を振るう。

 チェーンソーブレードを振るうが、勢いをつけた覇王剣を受け止めきれずに付け根の部分からもげてしまう。

 

「ちっ」

 

 チェーンソーブレードを失いながらも左足を蹴り上げるが、ハオウガンダムは覇王剣を振るった勢いを利用して回避する。

 一度距離を取られるが、すぐさまシド丸のビームライフルで追撃する。

 

「はっ!」

 

 距離の間状態から覇王剣を振るうと覇王剣から巨大なビーム刃が形成され、オメガバルバトス・アステールを襲う。

 ビーム刃は要塞への損傷を無視しながらオメガバルバトス・アステールを飲み込むが、オメガバルバトス・アステールはトランザムGNフィールドを使い攻撃を防ぐ。

 

「ほう、この一撃を防ぐか。大した防御能力だな」

「次は攻撃能力を味わってみるか?」

 

 オメガバルバトス・アステールは距離を詰めると、ハオウガンダムに爪を突き立てる。

 それを腕の小型シールドで防ぎ、覇王剣で突き返す。

 ギリギリのところでかわすが、覇王剣はバックパックのシド丸の翼に突き刺さる。

 

「これならまともに振れないだろ?」

 

 覇王剣の間合いよりも近くに入り込んだ上で、シド丸を使って大我は覇王剣を封じ込めた。

 距離を詰めてハオウガンダムにドリルニーを突き出すが、ハオウガンダムは覇王剣を手放して避ける。

 

「覇王剣だけが俺のハオウガンダムの武器ではない!」

 

 ハオウガンダムは両腕の小型シールドの先端部のビームクローを展開する。

 オメガバルバトス・アステールもシド丸をパージしてテイルメイスから柄を伸ばして通常のメイスとする。

 ハオウガンダムのビームクローとオメガバルバトスのメイスがぶつかり合う。

 

「まったく……大したものだ。だが、それだけの実力を持ちながらリュウオウにレギオンに降る?」

「は? 俺は別に降ってねーし」

 

 オメガバルバトスはハオウガンダムを弾き飛ばす。

 

「ただ、ウチの参謀が今はそうしとけっていうから仕方がなくそうしてるだけだ」

 

 オメガバルバトスは腰のワイヤーブレードを射出し、ハオウガンダムは1つはシールドで弾き、もう1つは蹴り飛ばす。

 その間にオメガバルバトスは距離を詰めてメイスを振り下ろす。

 

「来るべき時の為に今は耐える時だってさ」

「来るべき時だと?」

 

 メイスを回避したハオウガンダムはロケットアンカーを射出する。

 

「ああ。俺がこのGBNで頂点を取る時だってさ」

 

 オメガバルバトスはメイスでロケットアンカーを弾き、ハオウガンダムは両肩のビームブーメランを投げる。

 

「頂点だと? 本気で……」

 

 オメガバルバトスはGNフィールドでビームブーメランを弾くとメイスを投擲する。

 メイスをシールドで防ぐが、体勢を崩す。

 

「まぁ俺は最強だし、リュウオウの奴が火星圏を掌握した時にでもぶっ潰せば一々雑魚を相手にコツコツと勢力を広げる手間もなく一度で火星圏は俺たちのもんだ」

 

 大我の話は実現性に乏しいないようだった。

 仮にリュウオウ率いるレギオンが火星圏全域を勢力下においたとして、そこまで勢力を広げたレギオンの戦力はどんでもない物となり、いくらタイガ団の精鋭を持ってしても勝ち目はないように思える。

 だが、大我の言葉からは自分が負けるはずがないという絶対的な自信があり力強い。

 それこそ、本当にそれが可能なのかと思ってしまうほどにだ。

 

「馬鹿げている」

「俺は最強だ。だから神だろうと皇帝だろうとぶっ潰す。覇王だってな」

 

 オメガバルバトスはパージしたシド丸から覇王剣を強引に抜き取って突っ込む。

 

「馬鹿げている……そのはずなのに」

 

 覇王剣をシールドで反らそうとするもシールドは破壊され、ビームサーベルを突き出す。

 ビームサーベルをギリギリのところまで引き付けてかわすと、ハオウガンダムを殴りつける。

 

「何故だ……何故、それを俺に話す?」

 

 ハオウガンダムは殴り飛ばされながらも踏みとどまる。

 そして、ジードは大我に問う。

 大我の話している事はいずれはレギオンを裏切るという事だ。

 いくら王武とレギオンの仲がこうしてバトルになるような仲とは言え部外者に話せばどこで情報が洩れるか分からない。

 

「諒ちゃんからこのバトルで一つだけ頼まれている事があってさ」

 

 オメガバルバトスは覇王剣を突き出す。

 

「ジード。アンタを俺たちタイガ団の下につくように勧誘して来いって」

 

 覇王剣はハオウガンダムの胸部に突き刺ささり倒れる。

 

「何……だと」

「アンタは俺ほどじゃないけど結構強かったよ。だから、俺の下に入れてやるよ」

「……お前の下に付くメリットはないな」

 

 ジードにとってはアナザーワールドでの勢力争いに興味はない。

 

「知るか」

 

 大我の一蹴にジードはただ唖然とする。

 

「俺ほどではないにしてもそれだけの実力をお前は何のために使う? どうせ鍛えるだけなら俺の為に使え」

 

 どこまでも自分本位な理屈だが、不思議とジードは不快にはならなかった。

 ジード自身、ただバトルの実力を磨いてきたが、その先に関しては明確な目的はない。

 個人ランキング5位という順位もただ高難度のミッションや実力者を相手に戦い続けてきた結果に過ぎず、順位を上げる事には興味はなかった。

 ただ自分がどこまで強くなれるのかをひたすら鍛錬を続けてきた。

 そこに大我の自分本位な理屈がピタリとはまったような気がした。

 

「くっ……はっははは!」

 

 ジードは思わず声を上げて笑う。

 

「面白い。良いだろう。お前がどこまでやれるか見届けよう」

「決まりだな」

 

 大我とジードの戦いに決着がつき、要塞内では小競り合いの音しか聞こえてはこない。

 

「戦場の全機に告げる。現時点を持って俺たち王武はタイガ団の傘下に入る事が決まった」

 

 要塞内にジードからの通信が入る。

 通信が入り少しすると戦闘の音が聞こえなくなる。

 

「文句のあるやつはかかって来い。全部、俺がぶっ潰す」

 

 大我がジードに続きそう告げる。

 ジードの敗北と判断に納得がいかないのであれば大我は実力行使で認めさせるつもりだ。

 バトルを生き延びた王武のダイバー達は自分たちのリーダーが敗北した事実に驚き呆然とするダイバーも多い。

 だが、誰も大我に挑もうとするダイバーはいなかった。

 ジードですら勝てなかった大我に挑むだけの気概のあるダイバーはもう残ってはいない。

 誰一人として大我に挑むダイバーはおらず、こうしてタイガ団と王武とのバトルはタイガ団の勝利となり、この結果はGBN中に広まる事となる。

 

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