ガンダムビルドダイバーズ~最上の星~   作:ケンヤ

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エルの民

 

「……っここは?」

 

 ダイバー連合とBD同盟とのバトルの最中に謎の穴に吸い込まれた優人だったがいつの間にか意識を失っていたのか荒野で目を覚ます。

 

「ヤガミ! クレイン! みんな!」

 

 周りには優人と同じように意識を失い倒れていたソラや千鶴たちや自分たちのガンプラも倒れている。

 優人はすぐにソラ達を起こす。

 

「一体何があったんだ?」

「それにここはどこでしょう?」

 

 ソラ達も意識を取り戻し周囲の状況を把握する。

 周囲は荒野が広がり近くには自分たち以外の存在は確認できない。

 

「……駄目ね。運営への連絡も出来ないわ」

 

 千鶴がコンソールから運営にメッセージを送ろうと試みるがエラーによりメッセージを送ることもできない。

 

「フレンドへのメッセージも駄目ね。でも……これって」

 

 運営への連絡が出来ないのであればフレンド登録しているダイバーに状況を知らせようとするも、やはりエラーによりメッセージを送ることが出来ない。

 だが、優人と始めとしたこの場にいるダイバーに対しては送ることが出来そうではあったが、優人達にメッセージが遅れたところで意味はない。

 そして、トライダイバーズのメンバー以外に唯一メッセージが送れたのがリトルタイガーこと、大我くらいだ。

 千鶴は念のためにこっちの情報を大我に送ってみるが、メッセージに既読が付いたものの返信はこない。

 

「マジかよ。現在位置も出ないぞ」

「……ログアウトも出来ませんよ」

 

 ソラが現在の自分たちの位置を表示させるもエラーと表示されて自分たちがGBNのどのエリアにいるかすらも分からない。

 ライトもログアウトを試すも同じようにエラーになりログアウトすることもできない。

 

「嘘だろ……ネトゲでログアウト不可は定番ネタだが、あり得ないだろ」

 

 現在の状況をまとめると自分たちの現在地位は不明、運営や他のダイバーに助けを求める事も出来ない、ログアウトして現実世界に戻ることも出来ない。

 状況は分からないことだらけだ。

 

「……ここって」

 

 そんな中、ファントムレディは自身のガンプラで周囲の状況を確認している。

 

「まさか……戻ってきたの?」

 

 ファントムレディは現在の場所に心当たりがあるようだが、仮面の下の素顔は驚きを隠せない。

 その心当たりが正しければ面倒な事になり、そのことをどうやって伝えるべきなのかを考えているとアラートがなる。

 

「考えている余裕はないか……みんな! 何か来るからガンプラに乗って!」

 

 すぐに外にいる優人達に伝え、優人達は自分のガンプラに乗り込んだ。

 幸いにも全機支障なく動かせるようだ。

 

「ファントムレディ? 何が来るんだ?」

「さてね。鬼が出るか魔王が出るか……」

 

 ガンプラに乗り込み少しすると周囲に近づいてくる物を補足した。

 

「あれは……獅電だけど……敵か? 味方か?」

 

 モニターには獅電が数機映されている。

 状況が分からない以上は敵なのか味方なのか判断がつかず迂闊には動けない。

 

「俺が出て様子を見るからもしも敵なら援護は任せる」

 

 優人がそう言い獅電の方に向かっていく。

 

「すみません! 俺たち……」

 

 ビルドナラティブは持っていたシールドバスターライフルをシールドにして腕に着けると敵意がない事を示すために両手を挙げて通信を試みる。

 しかし、向こうからの返答もなく、獅電はアサルトライフルをビルドナラティブに向けて一斉に撃ち始めた。

 

「撃ってきた!」

「……やっぱりか」

 

 ファントムレディは小さくそういうと飛び出していく。

 すぐにメテオイージスがロングビームライフルで先頭の獅電を狙撃するが、ビームは獅電の装甲に弾かれる。

 

「ビームが弾かれた」

「ナノラミネート装甲か! ユート! そいつにビームは駄目だ! ビーム以外の……出来れば物理攻撃が良い!」

 

 ビームが弾かれたという事は獅電にはナノラミネート装甲の機能がある可能性が高い。

 そうなればビーム兵器の効果は薄く実弾系の装備でも射撃武器では有効打にはなりえない。

 

「物理攻撃? ならこれだ!」

 

 ビルドナラティブはGXアーマーをパージするとタイタスアーマーに換装する。

 タイタスアーマーは四肢や肩からビームを出せるが、装甲とパワーを活かした物理攻撃を得意とする。

 ビルドナラティブは獅電に突撃して殴り掛かる。

 獅電はライオットシールドを掲げるが、ビルドナラティブの拳はライオットシールドごと獅電を殴り飛ばす。

 

「何なんだこいつ等は!」

「考えるよりも撃退することが先!」

 

 ザクファントムソードはバスターソードで獅電を叩き切る。

 ビルドナラティブの後ろに回り込んだ獅電がパルチザンで殴り掛かるが、腕で受け止めると膝蹴りを獅電の胴体に入れる。

 撃破とはいかなかったが、獅電の胴体の装甲はへこみ体勢を崩しているところにメテオイージスのビームが獅電の膝の関節を撃ちぬく。

 

「ナノラミネート装甲は関節にまではないようね。関節を狙えば火器も通用するわ」

「いや……無茶だって!」

 

 エアマスターは両手のビームライフルを連射する。

 ビームは効かなくても相手の注意を引き付けるくらいにはなる。

 グレイズアステルもアサルトライフルを連射する。

 

「数が増えてます!」

 

 最初は数機だった獅電の数もいつの間にか増えており、すでに10機を超えている。

 

「そうすればいいんだ!」

 

 ビルドナラティブは獅電のパルチザンを持つ手を握ると握力で手を握り潰し、左腕で獅電の頭部を殴り飛ばす。

 そして、パルチザンを手にするとパルチザンで殴り掛かる獅電に力の限りパルチザンで殴りつける。

 その一撃で獅電を仕留めるが、同時に持っていたパルチザンも曲がってしまい投げ捨てながら頭部のバルカンでけん制する。

 獅電のアサルトライフルを両腕で身を守るが、囲まれないようにするとジリジリと後ろに下がるしかない。

 

「流石にまずいっしょ」

 

 ザクファントムソードがビーム突撃銃を連射してけん制する。

 

「また増援?」

 

 メテオイージスがロングビームライフルで獅電の頭部を撃ちぬく。

 レーダーには複数の接近する機影が表示されている。

 新たな敵かと思われたが、ミサイルが紫電に直撃する。

 

「何だ?」

「そこのモビルスーツ。援護する」

 

 優人の元に女の声で通信が入るとソードストライカーを装備した赤いウィンダムがビームライフルを撃ちながら降りて来る。

 ビルドナラティブの近くに着地すると腰のスティレット投擲噴進対装甲貫入弾を抜くと近くの獅電に投擲する。

 スティレットは獅電の肩に突き刺さると爆発し、赤いウィンダムはビームライフルを投げ捨てると対艦刀で獅電を仕留める。

 赤いウィンダムに続き、ダガーLが獅電にビームを撃ちながら到着する。

 ビームは獅電のナノラミネート装甲を貫くことはないが、獅電たちは戦闘を中止すると後退を始める。

 

「隊長。アイツら逃げていきます」

「目的が分からん以上は深追いは無用だ」

 

 完全に獅電が撤退してようやく一息つけるが、状況が好転したかは分からない。

 

「奴らの不明瞭な行動の様子見に来てみたのだが、よもやガンダムに選ばれた勇者と遭遇するとはな。それも2人もだ」

「なぁ優人。なんかやばくないか?」

「取り合えず助けては貰えたんだし……」

 

 優人達には相手の言っている事がいまいちわからないが、少なくとも先ほどの獅電のように問答無用で仕掛けて来るような相手ではないと思いたい。

 

「失礼した。私は王国軍、第3MS隊隊長のアルマだ」

「ユートです。助かりました」

「何気にするな。ガンダムに選ばれた勇者であるのなら助けるのは当然のことだ」

 

 赤いウィンダムのパイロットは名乗り、優人も感謝の言葉と共に名乗り返す。

 

「こんなところで立ち話も何だから我らの王国に来てもらいたい」

「……分かりました。みんなも構わないな?」

「それしかないな」

 

 現状では何の情報も無いため、アルマの誘いに乗るしかできない。

 優人達はアルマの先導の元、移動を始めた。

 移動を始めて少しすると装甲版で作られたバリケートのような場所を通り、壁が見えて来る。

 

「ここが我らの王国だ」

 

 ガンプラが通れるほどの門が開くと中には中世のヨーロッパを思わせる街並みが広がっていた。

 

「モビルスーツで街中を歩くのは不味いからな格納庫で降りて貰う」

 

 ガンプラから降りてしまえばもしもアルマ達が敵だった時に対応ができないが、今は従うしかない。

 格納庫にはダガーL以外にも3機のウィンダムが置かれ、それぞれ黒く塗装されノワールストライカーを装備した物、緑でランチャーストライカーを装備した物、白でエールストライカーを装備した物だ。

 優人達はおとなしくガンプラから降りると赤いウィンダムのハッチが開きアルマも降りて来る。

 通信越しで話した限りでは自分たちと同じくらいの歳だという事は察しは付いていたが、その通りで機体と同じ真っ赤な髪の女だった。

 

「城に案内する。ついて来てくれ」

 

 アルマに付いていくと馬車が用意されていて、優人達はMSのようなSFチックな人型兵器を使いながらも街並みをはじめとした中世を思わせる生活様式とのアンバランスさに違和感を覚えながらも大人しく従う。

 城に到着し、案内された場所は城の会議室のようなところで、そこには一目で王様だという事が分かるような風体の人物にアルマと同じ軍服を身に着けた人物が何人も並んでいる。

 優人は周囲を観察する。

 王様だと思われる人物の他はどことなく似たような顔が並んでいるが、その先頭には黒髪で精悍な顔つきの青年、緑髪の大男、白髪の小柄な少女が並んでいる。

 

「ご苦労だったな。アルマ隊長」

「はっ! 彼らが奴らと戦闘を行っていた者たちです。内、2名はガンダムに乗っていました」

 

 アルマの報告に兵士たちがざわつき始める。

 

「つまり今代の勇者は2人という事か? しかし、我らエルの民以外にガンダムに選ばれる者がいるとは……」

 

 王様は顎髭を弄りながら優人達を見る。

 

「すみません。俺たちはこの辺りに来たばかりで事情が良く分かりません。貴方方は一体? それにあの獅電は?」

「ふむ……奴らは魔王の手先だ」

 

 優人達は想定外の答えに一瞬だけ理解できなかったが、とりあえず話を聞くことにする。

 

「魔王はエルの民の姫にして我が娘を連れ去っていき、その時ガンダムに選ばれた勇者が魔王を討ち、姫を助け出しそして、ガンダムと共に外の世界へと旅立っていくというのが長きに渡るエルの民のしきたりなのだ」

「……なんかどっかで聞いたような話だな」

 

 ソラが思わずこぼす。

 王様の話はまるでゲームなどでよく使われるような設定のように思える。

 優人が軽くソラを肘で小突くが、王様は気にも留めずに話しを続ける。

 

「今回もガンダムに選ばれた勇者が魔王を討ちに出立したのだが、たった1機のモビルスーツの前に敗れ、同行したモビルスーツ隊もほぼ全滅したのだ。辛うじて生き残った兵の話ではそのモビルスーツは並のモビルスーツよりも大きく一つ目で巨大な翼と槌を持ち悪魔のような強さで勇者を一撃で葬ったらしい」

「……まさか」

 

 王様の伝える特徴を聞くと千鶴が考え込む。

 

「ガンダムに選ばれた勇者と見込んで頼みたい。我が娘である姫を助けて欲しい」

 

 王様はそう言い頭を下げる。

 

「……少し考える時間を下さい」

 

 事情が事情であるため、優人としては協力したいという思いはある。

 だが、そう簡単に決めれる話しでもない。

 

「そうだな。アルマ隊長。彼らに部屋を用意してくれ」

「承知しました」

 

 向こうもこの場で決めさせるつもりも、協力を強要するつもりもないようだ。

 取り合えず考える時間を貰う事は出来た。

 

「アルマさん。あの獅電にはパイロットは……それに貴女たちの機体はどこで?」

 

 アルマに先導され城をあとにし、来た道を戻る最中優人は気になったことを尋ねる。

 攻撃されたとは言え考える間もなく獅電を撃破した。

 ここの事はまだ分からないことが多いが、場合によっては命を奪ったかも知れない。

 いくらGBNでバトルをしているとは言え、優人をはじめとして本当に命の奪い合いをしてきた者はいない。

 そして、アルマ達のウィンダムやダガーL、魔王軍の獅電の出どころも気になる事だ。

 

「魔王軍のモビルスーツは全て機械により制御されている」

 

 その言葉に優人は自分が命を奪った訳ではないと一息つく。

 

「我らのモビルスーツは城の地下にあるマウンテンサイクルから定期的に発掘されている物を使っている」

「今度はマウンテンサイクルかよ」

 

 ソラがぽつりと零す。

 ただでさえ、よくわからない世界で鉄血のオルフェンズの獅電にガンダムSEED DESTINYのウィンダムやダガーLと世界観の異なる作品のMSが出て来るだけでなく、今度は∀ガンダムのマウンテンサイクルと来た。

 

「ああ。マウンテンサイクルは髭のご神体に守られている神聖な場所で、そこで毎回異なるガンダムも発掘され起動させられた者が新たな勇者となる」

「定期的に発掘ということはすでに埋まっている物を使うという訳ではないんですか?」

「そうだが?」

 

 アルマの言い方ではマウンテンサイクルの中に埋まっているMSを発掘するわけではなく、ある日突然、マウンテンサイクル内に出現したMSを使っている事になる。

 いくら何でも都合の良すぎる事だが、アルマをはじめとしてそのことをおかしいとは誰も思っていないようにも見える。

 

「君たちは我が軍の使っている宿舎を使ってもらう。その方がいざという時にモビルスーツを使えて便利だろう」

「ありがとうございます」

「礼には及ばんよ。後で食事も届けさせる。今日のところはゆっくりと休んでくれ」

 

 優人達は用意された部屋に案内される。

 部屋は4人部屋で男女用に2部屋用意されていた。

 中は最低限の生活ができる程度だが、流石に見ず知らずの自分たちに用意された部屋としては文句はない。

 少しして食事が届けられた。

 その食事も不思議な事に優人達が知る物で、味も優人達の世界の物と変わらなかった。

 いろいろあったが、日は落ちて優人達は普段の習慣でベットに横になるが一向に睡魔はこない。

 

「そういや、俺たちってアバターのままだよな」

「ですよね。普通に食事とかもしてましたけど」

 

 ソラやライトも何の疑問も持たなかったが、今の自分たちはGBNで使っているアバターのままであるため、食事も睡眠も必要なかった。

 それでも普段からの習慣で食事と取り日が落ちると寝ようとしていた。

 

「やっほー! 夜這いに来たよー!」

 

 部屋のドアが勢いよく開けられ千鶴を連れたファントムレディが入ってくる。

 

「夜這いって修学旅行じゃないんだぜ」

「変に暗くなるよりはマシだと思ってね」

「何かあったのか?」

「何かあったんじゃなくて、何があったのかを話しにね」

 

 ファントムレディが珍しく真剣な表情をする。

 無意識のうちに考えないようにしていたことだが、情報が集まったことで今何が起きているのかを考える必要はある。

 

「分かっている事は今どきラノベとかじゃ逆張りで使われるような設定の世界に迷い込んだって事しかないぜ」

「まぁね。この世界について考えられることは大きく分けて2つ。1つ目はこの世界は異世界、もしくは別の惑星で私たちはそこに飛ばされたという可能性」

「ラノベじゃ昔から流行っている展開だな」

「けど、この可能性は低い」

 

 ファントムレディは自分で上げた一つ目の可能性である異世界や他所の星である可能性を否定した。

 

「根拠は?」

「まず、私たちは現実の肉体ごと飛ばされた訳じゃなくてGBN上のアバターの状態で飛ばされている。その場合、異世界であっても別の星であってもこの世界での受け皿となる物が必要になるけど、私たちはバトル中に起きた穴に飲み込まれて荒野に放り出されている。こっちの世界から何らかの形で召喚されたというのであればそれは考えにくい」

 

 優人達は生身の肉体ではなくアバターの状態を維持している。

 異世界や別の星であるのであれば、アバターのままであるならその状態を維持する何かがなければならない。

 目を覚ました時の状況からそれは考えにくい事だ。

 

「もう一つの理由として、この世界にモビルスーツやガンダム、マウンテンサイクルといったガンダム用語や獅電やウィンダムとかのMSが普通に存在している事。仮に異世界や他の星に人型機動兵器が存在したとして、それが私たちの世界のアニメに出て来るメカと全く同じデザインと名称を持っている偶然はあり得ない」

 

 ファントムレディが異世界や他の星の可能性を否定するもう一つの理由がそれだ。

 人型機動兵器が存在したとしてもそれがガンダムに出て来るMSと名称や見た目が偶然同じになったとは考えられない。

 

「成程。それでもう一つの可能性は?」

「ここがネットワーク上のどこかという可能性」

「デジタルな世界的な奴か」

「そう。ネットワーク上であるのなら私たちがアバターのままであってもおかしくはないし、この世界が何らかの形で私たちの世界からの影響を受けたのであればガンダム関連の用語やMSが存在していても不思議ではないわ」

 

 異世界や他の星の可能性よりかはその可能性の方が高いように思えた。

 GBNの運営でも把握していないネットワーク上にある世界にGBNで発生した穴が繋がり自分たちはそこに迷い込んだという可能性だ。

 

「けど問題はそこからどう脱出するかだな」

「それよねー。あのダナジンの使ったブレイクデカールのせいっぽいけど、同じことをするにもできないし、運営がこの事態に気が付いて強制ログアウトでもしてくれれば戻れるかも知れないけど、最悪この世界に取り残される可能性もあるから、どーにもできないのよね」

 

 ある程度はこの世界の情報を集め、推測することは出来るが、どうすれば帰る事が出来るかという最大の問題に関しては何も前進していない。

 

「なら、アルマさんたちに協力しながら方法を探すというのは?」

「まぁそれしかないかもしれないな。事情を知った以上は放っておく訳にもいかないし」

「それはそれで構わないけど、それがどういう意味か分かってる?」

 

 ライトの意見に優人は賛成するが、ファントムレディが口をはさむ。

 

「この国に協力するって事は人助けにもなる事だけど、それはつまり、この国と魔王との戦争に参加するという事よ」

 

 『戦争』という言葉が優人達に重く圧し掛かる。

 GBNのアナザーワールドでも似たようなことをしてきたが、あれは仮想現実世界における戦争ゴッコに過ぎない。

 優人達にとっては戦争は学校の授業で習った過去の話で、実際に参加した訳ではない。

 エルの民たちと共に魔王と戦うという事はガンプラは兵器となり、ゲームではなく命のやり取りをするという事だ。

 

「エルの民を助けるかは保留にして一つ気になる事があるわ」

 

 話し合いを一歩引いたところから聞いていた千鶴が口を出す。

 

「あの王様の言っていた悪魔だけどたぶん……リトルタイガーのバルバトスだと思う」

 

 王様の話の中で出てきた勇者を一撃で葬った悪魔。

 その特徴を聞いた時から千鶴は1つの可能性を考えていた。

 それは大我のオメガバルバトス・アステールではないかという事だ。

 オメガバルバトスは全身に強化ユニットが取り付けられて、並のガンプラよりも一回り大きく、頭部にはモノアイ状追加センサーが付いた一つ目で、巨大な翼と槌はシド丸とバーストメイスカスタム。

 そして、勇者を一撃で葬った事、どれも大我のオメガバルバトス・アステールに当てはまる。

 

「彼もたぶん、こっちに飛ばされてきてると思うわ」

 

 千鶴はコンソール画面を開いて見せる。

 ここにいるメンバー以外で大我だけはメッセージが送れることから大我もこっちの世界に来ている可能性はあるという事も合わせて説明する。

 千鶴が大我とフレンド登録をしている事に今は誰も触れない。

 

「となるとリトルタイガーは魔王に唆されたって事か」

 

 姫を救出に向かった勇者たちを葬ったという事は魔王側についているという事だ。

 大我にエルの民と敵対する理由はないため、大我がこの世界に来て魔王と出会い魔王に騙されてエルの民と戦ってしまったと考えられる。

 

「それはどうかしら? そもそも彼は基本的に話し合いという事をしないから魔王と遭遇した場合、とりあえず叩き潰すわ」

「……その光景が簡単に思い浮かびます」

 

 大我と面識のある千鶴とライトは仮に大我が魔王と遭遇したとして魔王に言い包められてエルの民を戦ったとは思えない。

 もしもそうならば出会った時に問答無用で叩きのめすだろう。

 

「けど実際にエルの民と戦ってるからな」

「彼の場合。味方でなければ全て敵だから、魔王もエルの民も関係なく等しく敵として叩き潰すわ」

 

 大我にとってはこの世界の事情は一切関係なく、自分の味方でなければ敵として叩き潰すだろう。

 それがたまたまエルの民が遭遇してしまったのは不運としか言いようがない。

 

「クレインはリトルタイガーとフレンド登録してるって事は少なくとも敵とは見なされてないのよね? 彼の力を味方に付ければこの世界じゃ一国の戦力すらかわいく見えるからぜひとも味方に引き入れたいわ」

「どうかしら?」

 

 大我が千鶴を敵として見ていないのであれば話しあいの場を作り、今の自分たちの状況を伝える事も出来る。

 大我も元の世界に帰りたいという目的では協力体勢を取ることも、場合によっては大我の下に入る事で自分たちの安全を確保することも可能だろう。

 それだけの力を大我は持っている。

 

「結局、現状じゃどうすることもできないって事か」

 

 状況を整理したところで出た結論としてはどうすることもできないという事だけだ。

 エルの民に協力することはどのみち、何の協力もなくこの国においてもらえるとも限らず覚悟を決めるしかない。

 しかし、その覚悟を決める前に爆音が鳴り響く。

 

「何だ?」

「爆発!」

「考えている時間はないようね」

 

 爆発が何らかの事故でない限りはそれが意味するのは敵の襲撃だ。

 決断の時は唐突に訪れた。

 

 

 

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