どうするべきなのかを考える間もなく爆音が轟く。
それは敵の襲撃だという事は間違いない。
「……やるしかないのか?」
前回の遭遇戦とは違い、今回は突破されれば町にも被害が出るだろう。
それが分かっていて、止める力を持っていて何もしないことは優人にはできなかった。
「だな」
「ですね」
ソラもライトも同意見のようだ。
部屋から出ると女子部屋の千鶴たちも出て来る。
優人達は顔を合わせると無言で頷く。
そして、すぐさま自分たちのガンプラが収納されている格納庫へと走る。
「装備が完了し次第出撃させろ!」
格納庫ではアルマが指示を出してダガーLの出撃が始まっていた。
「アルマさん! 相手は獅電なんですよね? ならビームライフルよりもバズーカとかマシンガンとかの実弾系の装備の方がマシです! 後、ウィンダムに装備してるストライカーが余ってるなら装備させた方が良いです! ダガーLなら肩とかにもつけられますから!」
ダガーLがビームカービンとシールドを装備して出撃する様子を見てソラが指摘する。
相手が獅電であるならビーム兵器はナノラミネート装甲で効果は薄い。
それならば実弾系の装備の方がまだマシだ。
そして、ダガーLもウィンダム同様にストライカーが装備可能でウィンダムとは違い肩などにもストライカーが付けられる。
「成程……了解だ」
アルマは出撃していないダガーLに余っているストライカーの装備の指示を出す。
都市の外ではすでに戦闘が始まっていた。
ダガーLがバリケートに身を潜ませながらビームカービンを連射する。
敵は獅電だけでなくランドマン・ロディが数機混じっている。
ランドマン・ロディは手榴弾をバリケートに投げ込む。
「何だ? うあぁ!」
手榴弾が爆発し、バリケートは後ろから破壊されるとダガーLは隠れる物がなくなり、ランドマン・ロディはすれ違いざまにハンマーチョッパーで胴体に一撃入れる。
ランドマン・ロディが機動力で翻弄したところに獅電が突撃しダガーLを蹂躙する。
しかし、エルの民も完全に翻弄はされてはいない。
ランチャーストライカーを装備した大男、ゴートの緑のウインダムがランドマン・ロディにアグニを撃つ。
高出力のビームはランドマン・ロディに直撃するもナノラミネート装甲に弾かれる。
だが、弾かれたビームの余波で持っていたサブマシンガンは破壊された。
火器を失ったランドマン・ロディは手榴弾を投げながら後退する。
「逃がさない」
エールストライカーを装備した小柄な少女、ベルの白いウィンダムがビームサーベルでランドマン・ロディに切りかかる。
ランドマン・ロディはハンマーチョッパーで応戦するが、シールドで受けられるとビームサーベルを装甲の隙間から突き刺す。
ランドマン・ロディの動きが止まるとビームサーベルを抜き、近くの獅電に切りかかる。
獅電はライオットシールドを掲げるが、ベルのウィンダムはスラスターを最大出力で使って獅電を飛び越えると後ろを取りビームサーベルで獅電のスタスターのノズル部分にビームサーベルを突き刺す。
「数が多い上に見慣れぬ機体もいる。時期に増援が到着する。それまでなんとしても持ち堪えるぞ」
「了解」
ゴートのウィンダムがアグニで獅電のライオットシールドを吹き飛ばす。
2機のウインダムの奮戦で壊滅的な打撃を受ける事はなかったが、それでも獅電やランドマン・ロディの攻撃を抑えきれずに徐々に都市まで追い込まれている。
だが、ビームが獅電の膝の関節を売りぬき、バルバトスアーマーのビルドナラティブがメイスで膝を損傷した獅電を叩き潰す。
「あれは……」
「ガンダム」
「もう……やるしかないのか」
ビルドナラティブはメイスを手放すと太刀を構える。
「獅電だけじゃなくてランドマン・ロディもいるのか」
「ちょこまかと……」
メテオイージスがロングビームライフルでランドマン・ロディの肩を撃ちぬく。
都市からは優人意外も出撃して防衛に入る。
増援で出てきたダガーLばバズーカを撃って獅電の足を止めるとアルマの赤いウインダムが対艦刀で仕留める。
「各機は火力を集中させて足を止めさせろ!」
ランチャーストライカーを装備したダガーLが対艦バルカン砲で獅電に集中砲火を浴びせ、ノワールストライカーを装備した黒いウィンダムがフラガラッハ3ビームブレイドを突き出す。
「まさか使い道のないと思われていた装備がこんな風に使えるとはな」
黒いウィンダムの中で第一MS隊隊長のジークは今まで思いつくこともなかったストライカーの運用方法に関心する。
ビームブレイドは獅電の肩の関節部に突き刺さると、肩の関節部を切り裂く。
ノワールストライカーのレールガンを撃つ。
「ビームが効かないってだけでここまでやり難いとはな!」
ソラのエアブラスターはビームサーベルを獅電のライオットシールドに突き刺す。
そのままビームサーベルを振るいライオットシールドを切り裂くと獅電の頭部にビームライフルを向ける。
「ここなら関係ないだろ!」
ビームライフルをメインカメラに撃ち込み獅電の頭部を吹き飛ばすと2機のソードストライカーを装備したダガーLが対艦刀を獅電に突き刺してしとめる。
「打撃武器ならこちらにも!」
グレイズアステルがレンチメイスを振るうが、獅電は後退してかわすとすぐに突っ込みパルチザンを振るう。
何とかレンチメイスで受け止めるが、獅電に蹴りを入れられてよろけたところをパルチザンでレンチメイスを弾き飛ばされる。
「しまった!」
体勢を崩されたところに獅電はパルチザンで追撃するが、間にザクファントムソードが入りバスターソードで受け止めた。
「ファントムレディさん!」
「ギリセーフ!」
獅電を押し戻すとザクファントムソードがバスターソードで獅電に一撃を入れるとグレイズアステルがアサルトライフルを撃ち込んで沈黙させる。
「このままじゃ押し切られますよ!」
「だよねぇ。向こうもマジで勝ちに来てんじゃん」
「増援が来るわ」
メテオイージスがロングビームライフルで獅電の膝を撃ちぬく。
「何だ……また見ない奴だ? うあぁ!」
ダガーLの部隊が銃弾の雨で殲滅されていく。
増援部隊の大半は獅電だが、先陣を切ってきたのはガンダムグシオンリベイク・フルシティだった。
フルシティは両手をサブアームに4つのロングライフルを持ちその火力を持ってダガーLを仕留めていく。
両手に持っていたロングライフルを手放すとハルバートでダガーLを一撃で葬り去る。
「何だアイツは……俺が押さえる」
ジークがフルシティの銃撃を避けながら向かっていく。
レールガンで足止めをしてビームブレイドで接近戦を仕掛ける。
ビームブレイドをハルバートで受け止めた。
そして、フルシティは頭部を照準モードから通常モードに切り替える。
「このモビルスーツは……ガンダムだとでもいうのか!」
頭部が通常モードになった事で相手もガンダムタイプだと気づいたことでジークは一瞬動揺し、それが隙となりフルシティはビームブレイドをハルバートごと弾き飛ばす。
「ぐっ!」
ウインダムの頭部を殴りつけたフルシティはリアアーマーを取り外し変形させる。
変形したリアアーマーでウィンダムを挟み込むとそのままバリケートに叩きつけられる。
「くそ!」
ジークも何とか逃れようとするが、両腕ごと挟み込まれて入るためまともに抵抗が出来ない。
フルシティはそのままウインダムの胴体を切断するために力を加える。
「やらせるか!」
「そうはさせないよ」
ウインダムの両腕が破壊され、胴体まで切断されそうになるが、アルマの赤いウインダムとファントムレディのザクファントムソードが対艦刀とバスターソードでフルシティの両サイドから肘の関節目掛けて振り下ろされる。
一撃では関節を完全に破壊は出来なかったが、動きと止めるには十分の損傷は与える事が出来た。
「せーの!」
ファントムレディの掛け声でウインダムとザクファントムソードはフルシティを蹴り飛ばして距離を取らせる。
フルシティはリアアーマーを手放しながら後ろに下がる。
「これはおまけだよ! もってけ!」
ザクファントムソードがバックパックのミサイルを一斉掃射する。
ミサイルはフルシティに降り注ぎダメージを与える。
「はぁぁ!」
その間にもアルマのウインダムが距離を詰めて対艦刀を胴体に突き刺す。
対艦刀を抜くとフルシティは機能を停止して倒れた。
「まさか……魔王がガンダムタイプのモビルスーツを所有していたとは……」
「ああ。済まないが俺がこれ以上は戦えそうにない」
「了解です。だが……いつまで続くというのだ」
過去の襲撃のタイミングからは外れているだけでなく敵の規模が違い過ぎる。
理由は分からないが、魔王軍にも何か変化があったのかも知れない。
だが、今はそれを考えている余裕はない。
「せいや!」
ビルドナラティブは太刀で獅電を腰を切断する。
「前に出過ぎたか? 一度下がって……」
少しでも都市への被害を減らすために前に出ていたが、いつの間にか都市からかなり離れてしまっていた。
獅電の攻撃をかわして太刀の一閃で仕留める。
「ほう……よもや新たな勇者が誕生しているとはな」
「通信? どこから」
優人が一度後退しようと思っていると、どこからともなく通信が入り警戒する。
すると数機の獅電を引き連れた獅電改を補足する。
獅電改はパルチザンでビルドナラティブに切りかかる。
それを太刀で受け止めた。
「……コイツ、有人機なのか?」
獅電改の動きは他の敵とはまるで違った。
優人の予測通り、獅電改にはパイロットが乗っていた。
コックピット内にも関わらず黒いマントを付け頭には2本の角を生やし、肌も少し青い、エルの民たちのいう魔王がそこにいた。
「見せて貰おうか。新たな勇者の力とやらを!」
獅電改は左腕のガントレットで殴るが、ビルドナラティブは腕でガードして大きく飛び退く。
空中で滑空砲で応戦するが、獅電改には当たらない。
「早い! それにあの機体には人が乗って……」
着地したビルドナラティブを獅電はアサルトライフルで集中砲火を浴びせる。
頭部のバルカンで獅電改をけん制しながら先に獅電の数を減らそうとするが、獅電はすぐに距離を取る。
追撃しようとするが、間に獅電改が割込みパルチザンを振るう。
獅電改の連続攻撃を太刀を使って受け流すが、やがて太刀が弾き飛ばされてガントレットで殴り飛ばされた。
「うっ……」
ダメージ自体は装甲のみにとどまっていたが、それ以上に相手が無人機ではない事が優人の動きを鈍らせていた。
「どうした勇者よ? 今代の勇者の実力はこの程度なのか? ならばここで引導を付けさせてもらおう!」
獅電改はビルドナラティブに接近するとパルチザンを振り下ろす。
それをとっさに腕で受け止める。
パルチザンは装甲で内部フレームまでは届いてはいない。
「往生際が悪い!」
「ちくしょう! 何だって! こんなことに!」
ビルドナラティブはスラスターを最大出力で使い獅電改に体当たりを食らわせる。
「俺たちはただ……GBNをやっていただけなのに! 訳の分からない戦いに巻き込まれて!」
優人は感情を爆発させるかのように獅電改に殴り掛かる。
今まではフォースのリーダーとして感情的にならずに状況を把握して何とかしようとしていたが、優人も限界のようだ。
「ふん! そんな勢い任せの攻撃など!」
獅電改は軽くいなすとパルチザンの一撃を入れる。
ビルドナラティブは胸部の装甲が破壊されながら吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。
「こんなところで俺は……やられて溜まるか!」
倒れながらもバルカンで獅電改の動きをけん制する。
魔王も満身創痍のビルドナラティブを相手に無理に攻めずに周囲の獅電の集中砲火で確実に仕留めるように攻める。
装甲にダメージを受けながらも優人は頭をフルに回転させて状況を打開する方法を考えるが、考えれば考えるほど打開策は浮かんではこない。
前に出過ぎたため、仲間の援護も期待できなければ手持ちのアーマーを使って反撃を試みても何とかなる可能性は低い。
それでもこのままではバルバトスアーマーが破壊されビルドナラティブ本体へのダメージもいずれは限界となるだろう。
その先に待っているのはGBNでの撃墜判定ではないかも知れない。
今までの生活の中で優人は一度も自らの死を感じた事はない。
いずれは自分も死ぬという事は分かっているが、それは何十年も先の事だと漠然を考え実感することはない。
それが今目の前まで迫っている。
必死に考えるが、自身の死が脳裏かは離れない。
「どうすりゃいいんだ……」
思いつく方法は可能性が低く、それしかないと分かっていても実行に移す決断ができない。
それでもなお、必死に考えていると優人に新たな選択肢を与えるかのようにそれは起きた。
遥か後方の城から何本かの光が飛んでくると優人の前に形を変える。
「これは……」
それは小さなパーツがビルドナラティブの前後に集まり人の形を模しているが肝心の骨に当たる部分がない。
優人の頭の中に一つの可能性がよぎる。
これは今までバトルの中で起きたようにビルドナラティブの新しいアーマーなのではないかと。
それを示すようにモニターには「∀」を表示されている。
今までのようにランナーが形成される訳ではなく城の方からアーマーだけが飛んできたのかは分からない。
しかし、この状況ではこのアーマーを使う事が最も勝算のある選択のようにも感じた。
優人は余計な事を考える間もなく「∀」と表示されているアーマーを選択した。
ビルドナラティブのバルバトスアーマーがパージされ当たらなアーマーが装着されていく。
楕円系のシールドとライフルが装備され、最後に頭部に髭のようなパーツが付いたことでビルドナラティブの新たな姿であるターンエーアーマーとなった。
「馬鹿な! あの姿はまるでご神体のようではないか!」
その姿を見て魔王は驚きを隠せない。
ターンエーアーマーを纏うビルドナラティブの姿はエルの民たちの城の地下にあるマウンテンサイクルにあるご神体に似ているからだ。
「はったりだ! その様な姿であっても! やれ!」
獅電は一斉にビルドナラティブに銃撃を始める。
ビルドナラティブはシールドで身を守りながらビームライフルで反撃する。
ビームは獅電のナノラミネート装甲では拡散しきれずに貫いた。
「凄い威力だ。コイツなら」
「あり得ない! ビームが通用するなど!」
ビルドナラティブは背中から月光蝶を展開しながら飛び上がるとビームライフルで獅電を攻撃する。
獅電はライオットシールドを掲げるが、ビームはライオットシールドを貫通して獅電を撃ちぬいた。
「……これなら行ける!」
空中で銃撃をかわしながらビームライフルで獅電を撃墜していき瞬く間に魔王の周囲の獅電は全滅した。
「後はアンタだけだ!」
「調子に乗るなよ!」
獅電改はアサルトライフルを連射する。
それをかわしながらビームライフルで応戦するが、獅電改はビームをかわす。
「なら!」
ビルドナラティブは加速し、ビームライフルからビームサーベルに持ち替えて接近戦を仕掛けた。
射撃をかわしながら懐に飛び込みビームサーベルで獅電改の右腕を切り落とした。
「勇者風情が!」
ガントレットで殴り掛かるも、ビームサーベルで左腕も切られた獅電改は更に両足も切られて倒れる。
「俺の勝ちだ! 降伏すれば命までは取らない!」
ビルドナラティブはビームサーベルを獅電改の胴体に向けて警告する。
無我夢中で戦ったが、まだ相手の命を取ることには抵抗があり、相手が降伏するのであればそれが一番だ。
完全に勝敗は決したが、魔王は落ち着きを取り戻していた。
「……甘いな。この魔王たる私を倒した程度で良い気なるなよ」
「……何を言って」
負け惜しみにしか聞こえない魔王の言葉だが、優人には妙に魔王からは自身を感じられた。
「センセイ! お願いします!」
魔王の言葉に優人はとっさにビルドナラティブを大きく下がらせた。
すると上空から何かが落ちてきた。
「今度は……」
落ちてきた衝撃で土煙が上がり、シルエットが浮かび上がる。
巨大な翼に禍々しく光る一つ目。
優人は魔王と対峙した以上の圧を感じ取るが、それを優人も知っていた。
「センセイじゃねぇーよ。団長と呼べって言ってんだろ」
土煙が晴れるとそこにはガンダムオメガバルバトス・アステール。
魔王以上の厄災が優人の前に立ちはだかるのだった。