魔王の獅電改を戦闘不能に持ち込んだが、新たにガンダムオメガバルバトス・アステールが現れた。
ガンダムオメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムを構える。
「ちょっと待った!」
優人はすぐにオープンチャンネルで話しかける。
向こうの状況は分からないが、少なくともよくわからない場所に迷い込んだという事は同じであるため、少なくともここで戦う必要はない。
「あ?」
大我はあからさまに不機嫌そうな声を出す。
「そっちもここがどこなのか分からないんだろ? なら!」
「知るか」
優人の話を聞く耳も持たずにオメガバルバトス・アステールは飛び掛かりバーストメイスカスタムを振り落としてくる。
ビルドナラティブは飛び退く。
「そっちの事情もここがどこだか関係ないね。あの時のバトルはまだ終わってない」
「聞く耳はないってか!」
ビルドナラティブはビームライフルで応戦する。
ビームをオメガバルバトス・アステールは最低限の動きで回避しながら接近してバーストメイスカスタムを振るう。
いくら新しいアーマーであるターンエーアーマーであってもオメガバルバトス・アステールの一撃の前では耐え切れない。
攻撃を確実に回避しながら反撃の機会を伺う。
「このアーマーなら戦える!」
「少しは戦えるようになったところで」
オメガバルバトス・アステールは肩のブレードプルーマを射出する。
バーストメイスカスタムを避けたビルドナラティブに四方からブレードプルーマが襲い掛かる。
それを上手くシールドでいなしているとオメガバルバトス・アステールが蹴りかかる。
蹴りをシールドで防ぐも体勢を崩されたところにバーストメイスカスタムが振り降ろされた。
ビルドナラティブは月光蝶を展開して空中に逃れる。
「クレイン! 向こうの援護は?」
「無理ね。ユートを相手にしながらもこっちの狙撃も警戒しているわ」
千鶴が迫る敵部隊を対応しながらも優人の援護をしようにも大我は常にこちらの位置を把握したうえで立ち回っている。
いくら千鶴の狙撃でも大我相手に完全に警戒されたうえで位置がばれていては効果的には行えない。
「どうした? その程度か?」
「このままでは……」
ターンエーアーマーのお陰で何とか戦えてはいるが、優人は防戦一方で反撃の手立ては見つからない。
ビルドナラティブのビームライフルをオメガバルバトス・アステールは避けて接近するとバーストメイスカスタムを振るう。
「ちょこまかと……コイツはどうする?」
オメガバルバトス・アステールはバックパックを前方に展開してアステールキャノンの発射体勢を取る。
優人はすぐに射線上から退避しようとするがある事に気が付いた。
「まずい!」
オメガバルバトス・アステールの射線の先にはエルの民たちが暮らす街がある。
このまま撃たせてしまえば、その強力なビームで街は破壊されてしまう。
「止せ! あそこには!」
発射の阻止が難しいと判断した優人は大我を制止するも、呼びかけも空しくアステールキャノンは放たれた。
「やめろぉぉぉぉ!」
ビルドナラティブは最大出力で月光蝶を展開するとシールドを掲げてアステールキャノンを真向から受け止めた。
ビームは受け止められるも、拡散して地上に降り注ぐ。
やがてビームの掃射が終わるとビルドナラティブのシールドはビームで焼けてボロボロになり、全身のアーマーも損傷していた。
「街は!」
優人は背後の街の状況を確認すると、拡散して地上に降り注いだビームは幸いにも街に落ちる事はなかった。
街を守り切った事を喜ぶ間もなくオメガバルバトス・アステールは接近してビルドナラティブを蹴り飛ばす。
「うっ! あぁぁぁ!」
とっさにシールドで身を守るも、ビームでボロボロのシールドは砕け、ビルドナラティブは地上に叩きつけられた。
「くっ!」
何とか立ち上がろうとするが、モニターにはターンエーアーマーのダメージが限界まで来ていると表示される。
「こんなもんか」
オメガバルバトス・アステールもゆっくりと地上に降りて来る。
「団長……流石に最後のやり過ぎでは? いくら何でも街まで焼く必要は……」
「ちゃんと加減したさ。向こうが避けない限りはな」
機体が大破して動けない魔王が大我は気にした様子はない。
「さてと……あーあー。聞こえるか?」
大我は外部スピーカーをオンにする。
「今日のところは挨拶だったんだが、思った以上に手応えがないから気が変わった。こっちで預かっている姫とやらは1週間後に処刑することにした」
「何を!」
「それを阻止したければ1週間後死に物狂いで俺を止めて見ろ」
大我はそれだけ言うとスピーカーを切る。
「団長!」
「帰るぞ。魔王」
オメガバルバトス・アステールは獅電改を掴むと飛び去って行く。
オメガバルバトス・アステールが返っていくとランドマン・ロディも戦闘を中止して撤退を始める。
街を守りぬき防衛に出た機体が城に戻り緊急会議が行われるが空気は重い。
街に被害はなく魔王に勝つことが出来たが、それ以上の強敵と1週間後に攫われた姫が処刑されるという。
「一週間で何とかする策を……」
会議は王を中心に行われていたが、魔王以上の相手に1週間でどうにか出る策は早々でない。
「あの……いいですか?」
話を聞いていた優人が遠慮がちに手を挙げる。
「まずは魔王の拠点の位置は分かってるんですか? 場所が分かっていなければ策を立てられないですし、移動の時間もありますから、それによっては準備に使える時間も変わってきます」
会議の中で王たちは1週間で策を考えて対応することが前提となっているが、1週間後の処刑に対して対策を1週間でするには敵拠点までにかかる時間を考慮していない。
移動時間によっては対策に使える時間も減ってくる。
「うむ……魔王の拠点である魔王城まではMSを使えば1時間というところだろう」
「……え?」
優人は思わず間の抜けた声を出してしまう。
声にこそ出さないが、会議に参加した千鶴たちも同様だろう。
MSに乗って1時間となれば人の足で向かうのならともかく、MSを使えばそこまで距離は離れていない。
その程度の距離であれば姫が攫われた時も勇者の登場を待たずとも、王国のMS隊を派遣させても十分に奪還することも魔王城を破壊し魔王を仕留める事も今までにできたようにも思える。
実際に魔王と戦ってみた感触として弱くはないが、数で攻めれば勝てない相手でもない。
尤も、魔王城に強力な兵器があり数で攻めたところでどうにもならない可能性もあるため、その辺りの情報も確認する必要がある。
「そうですか。それで魔王城の守りはどうなってるんですか?」
「うむ。勇者殿が倒したMSに護衛のMSが10機程度と言ったところですかな」
「では、何か強力な兵器……例えば大量のMSを一気に破壊できる物があるとか? それともそこまでの道中に何か狡猾なトラップでもあるんですか?」
優人の質問に王やアルマ達は首をかしげる。
まるでそんな兵器の事など想像すらも出来ないかのようだ。
魔王城に強力な兵器もなく、そこにたどり着く道中で何かあるわけでもなさそうだ。
そうなると強力な兵器もなくMSが10数機程度の戦力を前に勇者が現れるのを待っていたことになる。
「あの……思ったんですけど、皆さんは1週間かけて準備をするつもりですけど、わざわざ向こうの指定した日時を守る必要なんてないと思うんですよ」
会議は前提として1週間で何とかする方法を話し合っていたが、その1週間という期間も向こうが処刑するまでの日時として指定しているに過ぎない。
ならば、わざわざ向こうに合わせる必要もない。
「こっちの目的として姫の奪還であって、あのガンプラを倒す必要もないんです。なら、少数の部隊で襲撃して姫を奪還して逃げればこっちの勝ちなんです。今なら向こうだって迎撃の準備が出来て無いかも知れない」
王国が1週間で準備をするのであれば同様に向こうにも1週間の準備期間を与える事になる。
大我が1週間の猶予を与えたのは万全の準備をさせた上で戦うだけでなく、自分たちも万全の準備で迎え撃てるようにするためなのかも知れない。
「俺たちのガンプラならすぐに出せます。後は王国の方たちでもすぐに出れる部隊で奪還作戦に入るというのはどうでしょう?」
「うむ。素晴らしい。流石は勇者殿」
優人の出した案もまだいろいろと問題点はあるものの出した本人ですらも驚くほどあっさりと了承されてしまう。
「では、我が軍からはアルマ隊長の部隊が行ってくれ」
「承知しました」
先の防衛戦でもアルマの隊は損耗は少ない。
相手がビーム兵器の効果が薄いのであればソードストライカーを装備しているアルマのウインダムも戦力としては十分だ。
想像以上に話が早くまとまり、準備が出来次第出撃することになった。
「で……実際、どうなんだよ」
優人達は一足先にガンプラに乗り、出撃の準備を済ませていた。
後はアルマの隊が準備を済ませて魔王城に向かう手はずだ。
「どうって?」
「いや、この作戦……てか、この国の連中の事だよ。いくら何でもおかしいだろ。魔王城まで片道1時間とか最近のゲームはライトユーザー向けに簡単に攻略できるようになってるけど、ラスダンまで1時間とかないだろ」
「そうね。自分たちの常識だと思っている事は仮に部外者から見ておかしいと思う事でも本人たちは当たり前のように受け入れて疑問に思う事はないと聞くけど、それにしても何かおかしいわ」
ソラや千鶴もこの王国のおかしさには薄々感じていた。
地下からMSは発掘され、それを当たり前のように使い、姫が攫われても勇者が現れるまで助けにもいこうとは考えない。
それがエルの民にとっては当たり前のことだとしても、それだけ済ませられることではない。
「それよりもさ、あの化け物と本当にやり合うの? 勝つのは無理ゲーよ。いっそのこと白旗を上げて寝返るってのも手じゃない?」
王には大我とは戦う必要はないと言ったが、戦闘になれば戦う事になる。
大我相手に優人達とアルマの隊だけでは戦力不足は否めない。
戦って勝てないのであれば降伏することも一つの手だろう。
「無理だと思います。だってあの団長ですよ」
「そうね。もう彼は戦う気満々よ。ああなってはこっちの話は聞くつもりはないでしょうね」
大我の事をよく知る千鶴とライトの意見でファントムレディの降伏案は一刀両断される。
大我にとっては魔王やエルの民の事情などどうでもいい。
「それについてはさっきの戦いで俺に考えがある」
新しいアーマーでも優人は大我に負けたが、それでも戦いの中から勝ち筋を見出していた。
「姫を助けても、それで終わりじゃないんだ。リトルタイガーを止める必要もあるから」
大我に勝たずとも、姫さえ助け出せばいいのはエルの民の事情であり、優人達は元の世界に帰るために大我とも合流しておきたい。
そのためには大我に勝つとはいかなくても、話しができる状況にまでは持ち込まなければならない。
「済まない。待たせた」
話しているとアルマが部下を引き連れて現れる。
今回アルマ隊のダガーLにはソードストライカーとランチャーストライカーのコンボウェポンポッドを装備させ、アルマの赤いウインダムともども低反動砲を装備し、対ナノラミネート装甲対策をしている。
「では行こうか」
アルマ隊と合流し、優人達は姫を救出するために魔王城を目指す。