魔王城への道のりは優人達も警戒していたが、拍子抜けするほど妨害は一切なく1時間程度で近くまでたどり着くことが出来た。
近くまで来ると魔王城の周囲の岩陰に隠れて様子を伺っている。
「魔王城ってか、まんまズムシティの公王庁じゃんアレ」
ソラは思わず呟いた。
魔王城はどう見てもジオン公国の首都であるズムシティにある公王庁そのものであった。
「そんなことよりもどうするの?」
「まずは敵の戦力を引き付ける為に陽動だな」
「心得た。私の隊で引き受けた」
アルマの隊が陽動の為に岩陰から出ようとすると、ダガーLの1機の上半身が吹き飛ぶ。
「何だ!」
「狙撃? まさか……」
攻撃を受けてすぐさまメテオイージスがロングビームライフルを魔王城に向けて構えてビームを撃つ。
「こっちがすぐに仕掛ける事が読まれていたのか?」
そして、地面から獅電が現れて包囲されていた。
「囲まれている! 突破するぞ」
ターンエーアーマーを装備しているビルドナラティブは岩陰から飛び出すと魔王城へと向かう。
「こいつ等は我々で抑える。勇者殿達は魔王城へ! 姫を頼む!」
「分かった!」
アルマ達が獅電の相手に残り優人達は魔王城を目指す。
「団長! あれは一体!」
魔王城の魔王の座にて大我は魔王からの通信を受けていた。
魔王は泣きそうな声をしている。
「向こうの方が腕の良いスナイパーはいるんだ。それで済んだだけマシだ」
「しかしですね! 家宝を持ち出したというのに……」
「うるさいな。訪問1つ潰されただけだろ」
待ち伏せの狙撃は大我の指示で魔王によって行われた。
魔王城には代々受け継がれてきたとされる家宝であるガンダムフラウロスがあり、今まで大事に保管されていたが、今回はそれを使わせた。
だが、最初の一撃から千鶴が即座にこちらの狙撃位置を特定し狙撃してきた。
それによりナノラミネート装甲で覆っていないレールガンの銃口を狙撃されてレールガンを1つ破壊されている。
「もう狙撃は出来ないから後は俺がぶっ潰すから、お前は城の中で待機してろ」
大我はそういうと通信を切る。
「さて……行くか」
大我は魔王の座から立ち上がると魔王城の1室に向かった。
「あら? 団長様」
ピンク色の髪を腰まで伸ばし純白のドレスを身に纏う姫がいた。
姫は攫われた後もこの部屋に幽閉されている。
部屋自体には特に鍵や見張りを立ててはいなかったが、姫は騒ぐこともなく大人しく幽閉されていた。
「状況は動いた。アンタには俺を来てもらう」
大我はそういうと姫の腕を掴む。
姫は抵抗をすることなく大我に腕を引かれて立ち上がる。
「分かりましたわ」
大我は姫を連れて地下の格納庫に向かう。
地下にはオメガバルバトス・アステールが置かれている。
連れられて姫は大人しくオメガバルバトス・アステールに乗り込む。
「これがMSなのですね?」
姫はガンプラに乗せられて怯えるどころか興味深そうにコックピットを見渡す。
「邪魔だから後ろにどいてろ。後、ここにいる限りは絶対に死ぬこともないから騒ぐなよ」
「私、MSに乗るのは初めてですので楽しみですわ」
まるで緊張感はないが、下手に騒がれても邪魔で黙らせるのも面倒であるため、大我は気にしない。
「そんじゃ行くぞ。バルバトス」
大我はオメガバルバトス・アステールを起動して出撃する。
伏兵をアルマ達に任せると優人達は魔王城へと向かう。
狙撃を警戒していたが、最初の一撃以降は狙撃が行われることもなかった。
「何だ……何か来る!」
地鳴りと共に地面から何かが飛び出してくる。
すぐにメテオイージスがロングビームライフルを撃つ。
しかし、ビームは弾かれてしまう。
「来た!」
相手が大我のオメガバルバトス・アステールだと知ると全員が警戒し戦闘体勢を取る。
「よう。ずいぶんと早いな」
今後は大我の方から通信が繋がれた。
「アンタ達のお探しの姫様とやらは、俺のガンプラに乗ってる。助けたければ俺を倒すんだな」
「何!」
大我が姫を自身のガンプラに乗せた理由はそこにあった。
向こうの目的が姫の奪還であれば自分と戦わずに済ませようとするかも知れない。
それを防ぐために姫をガンプラに乗せたのだ。
「安心しろ。人質に使うなんてセコイまではしねぇから。もっとも……」
地中から飛び出てきたオメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムを振り下ろす。
その一撃は地面に大きなクレーターを作り出す。
「お前らにそんな真似をさせるようなことはないけどな」
「くっ!」
メテオイージスがロングビームライフルを撃つも、オメガバルバトス・アステールは装甲で受ける。
ビルドナラティブもビームライフルを撃つが、オメガバルバトス・アステールは最低限の動きでかわす。
「……やっぱりそうだ」
優人はBD同盟との戦いや先の防衛戦である推測を立てていたが、ここである程度の確信を持つことが出来た。
ビルドナラティブとメテオイージスの攻撃に始まりトライダイバーズ全機の集中砲火が始まるが、オメガバルバトス・アステールはGNフィールドを張って防ぐ。
「雑魚の相手までするのは面倒だな。おい、魔王。お前もこっちに来て雑魚の相手をしてろ」
「了解です! せんせ……団長」
魔王城で待機していた魔王も出て来て残っているレールガンを撃ってくる。
「もう1機! 俺がリトルタイガーの相手をする!」
「私も援護するわ」
ビルドナラティブはビームサーベルを抜くと月光蝶を展開して突撃する。
それをメテオイージスが援護する。
「分かった!」
「あのフラウロスは僕たちで何とか抑えます!」
「まぁアレとやり合うよりかはマシよね」
残る3機でフラウロスを迎え撃つ。
「そのガンプラの性能は確かに高い!」
ビルドナラティブはビームサーベルを振るい、オメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムで受け止める。
「パワーなら勝ち目はない! だけど!」
ビルドナラティブは弾き飛ばされるが、すぐに体勢を整えて加速する。
「大型化したガンプラを高い推力で強引に動かしているが、機動性能はこちらが上だ!」
正面からの激突を避けてビルドナラティブは回り込む。
その動きをメテオイージスが援護する。
「そして!」
上手くオメガバルバトス・アステールに接近したビルドナラティブはビームライフルを構えた。
「この装備ならばその装甲を貫くこともできる!」
大我の戦闘スタイルは被弾率はかなり高い。
それは突撃時に被弾を無視して突撃するからだ。
しかし、大我もガンプラに大打撃を与えるような攻撃にまで被弾を無視するわけではない。
先の戦闘でも大我はターンエーアーマーの攻撃を装甲で受けずに全て回避していた。
そこから優人はターンエーアーマーの装備であればオメガバルバトス・アステールの装甲にも有効的な打撃を与えれるのではないかと考えた。
オメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムを振るうが、ビルドナラティブは間合いの外に後退してビームを撃つ。
ビームはオメガバルバトス・アステールの右腕に直撃する。
直撃したビームは右腕のチェーンソーブレードの外装を焼くだけでダメージを与える事は出来なかった。
「そんな!」
「残念だな。その程度の火力じゃ効かねぇんだわ」
優人の予測自体は大きく外れていた訳ではない。
ターンエーアーマーの装備であればオメガバルバトス・アステールの装甲に施されている対ビームコーティングでも完全には防ぎきれない。
だが、防ぎきれないだけで大打撃を受けるほどでもない。
それでも大我が回避したのは攻撃が有効であると思わせるためのフェイクであった。
「それとそこは俺の間合いだ」
振るわれているバーストメイスカスタムの先端部が射出され、ビルドナラティブを襲う。
先端部はメテオイージスの狙撃で狙いがずらされて空振りし、戻っていく。
「大丈夫?」
「ああ……この装備でもダメなのか……いや、ダメージ自体はあるんだ」
攻撃が通用するというのは大我に思い込まされていたフェイクだったが、直撃したビームで全くダメージがなかった訳ではない。
攻撃を当てるための機動力を使うというのも間違いではない。
想定外の事態はあったが、戦い方自体の方向性までは間違っていた訳じゃない。
優人は頭を切り替えて次の手を打とうとする。
「次は俺から……」
オメガバルバトス・アステールがバーストメイスカスタムを構えると上空から何かが降ってきた。
「今度は何なんだ?」
「あれは……あん時の奴か」
空中から降ってきたのはこの世界に来るきっかけとなったかも知れないガンプラであるダナジンブレイカーだった。
「大きいですわね?」
「団長! あれも団長が?」
「違う。アイツも来てたのか」
地上に着地したダナジンブレイカーは頭部のフォトンブラスターキャノンをチャージすると発射する。
強力なビームが戦場を横切る。
「あぁあぁぁ! 我が魔王城が!」
ダナジンブレイカーのビームが魔王城を飲み込み跡形もなく消滅させた。
魔王城を消滅させたダナジンブレイカーは次の獲物を見つけ、両腕のビームガトリングを乱射する。
空中にいたオメガバルバトス・アステールとビルドナラティブはすぐに回避する。
「見境なしか!」
「まぁ良い。アイツから先にぶっ潰す」
オメガバルバトス・アステールはダナジンブレイカーに向かっていく。
ダナジンブレイカーは全身からミサイルを撃って迎撃する。
ミサイルはオメガバルバトス・アステールだけでなく、ビルドナラティブや地上のガンプラにも降り注ぐ。
「不味いわね」
メテオイージスは火器を総動員してミサイルを迎撃する。
フラウロスと交戦していた3機もミサイルの迎撃を始める。
「クレイン! 大丈夫か?」
「ええ。そっちも無事のようね」
「まぁね」
地上から迎撃している間に優人もダナジンブレイカーに向かっていく。
頭部のバルカンでミサイルを迎撃し、迎撃しきれなかった物をシールドで受けながらビームライフルを撃つ。
ビームはダナジンブレイカーに直撃するも、装甲に阻まれる。
「この距離じゃ威力が足りないのか……」
接近しようにもミサイルの弾幕により前には進めない。
「近づこうにも……」
ビルドナラティブはビームライフルでミサイルを撃ち落とす。
優人がミサイルで足止めを受けている間に大我はミサイルをもろともせずに接近しバーストメイスカスタムでダナジンブレイカーの頭部を殴りつける。
「ちっ……でかいだけあって一撃で沈めれないか」
オメガバルバトス・アステールの一撃で頭部のフォトンブラスターキャノンは潰せたが、本体の稼働には問題はないようだ。
頭部を潰されたダナジンキャノンは両腕のビームガトリングでオメガバルバトス・アステールを狙う。
オメガバルバトス・アステールはGNフィールドで身を守る。
「どうすんだよ! あんな奴まで出て来て!」
「とにかく今はアイツを倒すことが優先だ」
トライダイバーズのガンプラは一斉にダナジンブレイカーに向かって火力を集中させる。
ダナジンブレイカーはギガンテスの盾を展開して防ぐ。
その間にオメガバルバトス・アステールが背後に回り込む。
「こっちからならどうだ?」
背後に回り込み接近するが、ダナジンブレイカーの尾の先端が開くとビームが放たれた。
ビームはオメガバルバトス・アステールを飲み込むが直撃する直前にGNフィールドを展開して身を守っていた。
「どーすんの? あれじゃ接近は無理でしょ?」
「団長ですら無理だなんて」
大我ですら易々とは接近できない状況に戦場の空気は重い。
「勇者殿! あれは一体?」
伏兵を抑えていたアルマも優人達に合流した。
「アルマさん! 他の人たちは?」
「先ほどの攻撃で私以外はやられた」
ダナジンブレイカーのミサイルと尾のビーム砲の余波で獅電を含めアルマ以外は全滅していたようだ。
アルマのウィンダムもシールドと低反動砲を失っている。
「姫様は無事なのか?」
「はい。姫はあのガンプラの中にいますから安全です」
魔王城にいればダナジンブレイカーの攻撃で城ごと吹き飛んでいたが、大我が自身のガンプラに連れ込んでいたため無事だ。
そして、この戦場においては大我のオメガバルバトス・アステールの中が最も安全な場所とも言える。
「とにかくアレを何とかしないと……」
今は無差別に破壊を繰り返すダナジンブレイカーをどうにかしなければならない。
このまま街まで向かうようなことにでもなれば甚大な被害が出るかも知れない。
それだけは阻止しなくてはならない。
「現状であのダナジンを仕留める事が出来るのか彼だけよ」
「確かにねぇ。敵に回すとおっそろしいけど、今だけは心強いわよね。今だけは」
幸いにも大我の戦意は自分たちよりもダナジンブレイカーに向けられている。
この状況では大我がダナジンブレイカーを倒してくれることを願うしかない。
「それしか方法はないのか……」
自分たちの無力感に優人は操縦桿を握る手に力が入る。
「凄いですわ。団長様」
「この程度で俺を落とせると思うなよ」
ダナジンブレイカーのミサイルをかわすオメガバルバトス・アステールの中で姫は緊張感もなくただ大我の操縦技術を楽しんでいる。
「とは言え、単純な弾幕だけじゃ飽きてきたな。そろそろぶっ潰すか」
オメガバルバトス・アステールはダナジンブレイカーの正面から突撃する。
ダナジンブレイカーはギガンテスの盾を展開する。
「そんな紙シールドで俺を止められると思うなよ」
オメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムでギガンテスの盾をぶん殴る。
その一撃でギガンテスの盾を粉砕すると、オメガバルバトス・アステールはダナジンブレイカーに左腕のチェーンソーブレードを突き刺す。
そのままダナジンブレイカーを上空まで持ち上げると地面に向けて叩きつける。
ダナジンブレイカーを叩きつける際に左腕が負荷でもげるが、大我は気にしない。
「終わりだ」
オメガバルバトス・アステールは急降下する。
ダナジンブレイカーはミサイルで迎え撃つが、ミサイルによる被弾を無視して突っ込んでくる。
そして、バーストメイスカスタムの一撃を左腕を突き刺した部分に目掛けて振り下ろす。
「やっぱ片腕だと威力も落ちるか」
片腕で振るわれた一撃ではダナジンブレイカーに致命傷は与える事は出来なかったが、オメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムをダナジンブレイカーに向ける。
先端から杭が射出されるとダナジンブレイカーに突き刺さる。
杭を全弾撃ち尽くすまで攻撃が続いた。
「今度こそ終わりだ」
ダナジンブレイカーに撃ち込まれた杭が同時に爆発を始める。
爆発がダナジンブレイカーをオメガバルバトス・アステールごと包み込む。
爆風からオメガバルバトス・アステールが飛び出してくる。
爆風を至近距離から受けてオメガバルバトス・アステールはダメージを受けていたが、まだ動けるようだ。
「やったのか?」
「そのようね」
「流石は団長だ! 我が魔王城の仇を!」
ダナジンブレイカーは完全に機能を停止していた。
「さてと……邪魔もんはいなくなったんだ。続きをしよう」
オメガバルバトス・アステールはバーストメイスカスタムを構える。
ダナジンブレイカーを倒したが、まだ大我は戦闘を続けるようだ。
「こうなるのか……」
優人達も応戦する構えを取る。
だが、破壊されたはずのダナジンブレイカーから高エネルギーが発せられると、上空に皹が入る。
「あ? またなんかあるのか?」
「あれは……あの時と同じ!」
その現象はこの世界に来る前にも起きていた。
皹が広がるとやがて空が割れる。
「だだだだ団長!」
「知るか」
空が割れた空間に周囲の物が吸い込まれ始める。
「吸い込まれる! アレに吸い込まれれば元の世界に帰れるのか?」
「わっかんないけど、逃げれそうにないじゃん!」
割れた空に優人達のガンプラが吸い込まれていく。
優人達だけではなくアルマのウィンダムも踏ん張り切れずに飛ばされる。
「ちっ……」
「団長!」
オメガバルバトス・アステールは地面にバーストメイスカスタムを突き刺して耐えていたが、魔王のフラウロスが助けを求めて抱き着いてきた。
その衝撃でバーストメイスカスタムが地面から抜けてオメガバルバトス・アステールとフラウロスも割れた空に吸い込まれていく。
割れた空は次第に閉じていきやがて完全になくなった。
空が修復された後には周囲には何も残されてはいなかった。