GBN主催のガンプラバトル選手権大会高校生の部はバトルそのものはGBNが用意した特別空間で行われるが、参加する高校生たちはそれぞれ運営が用意した会場まで行く必要がある。
GBNはダイバー個人にIDを振り分けているが、IDは発行したダイバー以外が使う事は推奨はされていないものの不可能ではない。
普段のプレイなら双方が納得の上での事ならさほど問題ではないが、大会においては本来は参加資格を持たないファイターが成りすましてダイブする不正を防ぐ為に、参加者は運営が用意した会場からGBNにダイブしなければならない。
地区予選の初日を迎え、大我たち星鳳高校ガンプラ部は指定された会場に到着した。
「凄い人だな。これ全部参加者なんですかね?」
「どうだろう。参加者以外にも応援の人とかもいそうだけど」
龍牙は地区予選でありながら会場の人の多さに圧倒されている。
この会場は今日だけでも10試合はバトルを行う為、人も多い。
「どうだって良いさ。どの道、こいつらは皆俺にぶっ潰されるだけだからな。いっそ、俺対こいつら全員でやった方が早いな」
大我は人の多さ等気にもしておらず、いつも通りだ。
高校初の公式戦で龍牙は少なからず緊張していたが、普段通りの大我を見ていると妙に頼もしさを感じる。
一方で史郎や静流は公の場で問題を起こさないかの方が心配だった。
「とにかく受付を済ませよう」
大我たちは受付を済ませるとバトルまでの間、観客席で待つ事になった。
「皇女子も今日はここでやるのか」
会場には6個で一セットの端末がいくつも設置されており、すでにバトルが始まっている。
中央のモニターにはバトルの様子が映されている。
会場の中を見渡すと、女子高生だけで30人近い一団が嫌でも目に入る。
東京地区で女子高であれほどの団体になるのは強豪校の皇女子くらいだ。
「まぁ姉ちゃんたちは一回戦は余裕だろ」
大我はそう言いながら皇女子のバトルが映されているモニターを見る。
皇女子高校は珠樹に貴音、千鶴の3人がバトルに出るようだ。
対する相手校のガンプラはガンダムヘビーアームズ、ガンダムレオパルド、ガンダムサバーニャの3機だ。
それも中遠距離からの手数の多いガンプラだ。
宇宙空間でバトルが開始される。
「貴音」
「まっかせなさい」
バトルが始まり、貴音のキマリス・ヴィダールは一気に加速する。
キマリス・ヴィダールから一番近かったヘビーアームズの方に突撃する。
ヘビーアームズは腕部のガトリング砲を向ける。
だが、ヘビーアームズが弾幕を張る前にキマリス・ヴィダールはドリルランスでヘビーアームズを貫く。
「速い!」
レオパルドがインナーアームガトリングで弾幕を張ろうとするがキマリス・ヴィダールの機動力に追いついてはいない。
キマリス・ヴィダールは反転すると、レオパルドの方に向かい一気に加速する。
レオパルドは接近戦に備えてビームナイフを抜こうとするが、その時間も与えずにドリルランスがレオパルドを貫く。
「くそ……トランザ」
最後のサバーニャが苦し紛れにトランザムを使おうとするが、それよりも先にキマリス・ヴィダールがドリルランスで突撃してサバーニャを仕留める。
サバーニャが撃墜された事で皇女子高校は1回戦を難なく突破した。
「やっぱ強いな。皇女子は」
「相手が弱すぎるんだよ。姉ちゃんは単純な突撃しかやってない」
改めて皇女子の実力を感じた龍牙だが、大我からすれば相手が弱すぎる。
バトルは貴音が一人で終わらせた。
その間、バエルとフルシティは全く動いていない事から、バトル自体は始めから貴音一人にやらせるつもりで、他の二人は不測の事態に備えての保険なのだろう。
更に貴音のキマリス・ヴィダールの動きは早いだけで動きは単調であれでは全国レベルのファイターなら簡単に対応できるレベルだ。
実際の貴音の実力からは考えられない為、自分達の情報を必要以上に他校に見せないように指示があった事は容易に想像がつく。
「前も言ったけど、余り皇女子の事ばかりじゃなくて目の前の一勝だよ」
「分かってます。部長」
「そうね。行って来るわ」
もう少しで星鳳高校のバトルの順番が来る為、バトルに出る3人は観客席から会場へと向かう。
その道中の通路でバトルを終えて来た皇女子の3人とすれ違う。
「この前の練習試合の借りは100万倍して返すから負けんなよ」
「別に返さなくても良いよ。そっちこそ完膚なきまでに叩き潰すから精々負けんなよ」
すれ違いざま、大我と貴音がそう言い合う。
二人は立ち止まってガンを飛ばし合う。
「貴音」
「藤城君」
珠樹と静流に呼ばれて、二人は渋々引き下がる。
「タ……藤城君。頑張って」
「ああ」
別れ際、千鶴がそう言い大我は振り向く事無く答える。
会場で指定されば場所の端末に向かい、そこで自分のガンプラをセットして3人はダイブして星鳳高校の地区予選第一試合が始まる。
バトルフィールドは宇宙で対戦相手の多田野高校のガンプラはダブルオークアンタ、ストライクフリーダム、νガンダムの3機だ。
それも上手く作れば非常に強力なガンプラだ。
「先陣は俺に任せろ!」
そう言って龍牙が先陣を切る。
対戦相手の実力が対した事がない事から、大我は余り積極的に戦う気は無いようでいつものように飛び出す事もない。
先陣を切るバーニングデスティニーの拳をストライクフリーダムがビームシールドで受け止める。
「相手がストフリとなれば負ける訳には行かないな!」
バーニングデスティニーはストライクフリーダムを蹴り飛ばすとバルカンを撃ちながら突撃する。
ストライクフリーダムはビームシールドで身を守りながらビームライフルを捨てるとビームサーベルを抜いて迎え撃つ。
ストライクフリーダムはビームサーベルを振るうが、地区予選まで何ども千鶴を相手に特訓して来た龍牙には相手の動きが遅く感じた。
ビームサーベルをかわすとバーニングデスティニーがストライクフリーダムのボディブローを入れると成す術もなく体勢を崩す。
それを見たνガンダムのダイバーが援護にビームライフルを向けるが、その隙を静流は見逃さない。
「余所見しない」
アリオスガンダム・レイヴンはGNスナイパーライフルでνガンダムを撃ち抜く。
νガンダムの援護が得られなかったストライクフリーダムは光の翼を展開して加速するバーニングデスティニーの拳をまともに受けて撃墜される。
「ずいぶんと腕を上げたようね」
「これでも滅茶苦茶特訓しましたから。それで後一機は……」
ストライクフリーダムとνガンダムは撃墜した。
後はダブルオークアンタだけだ。
周囲を見渡すとダブルオークアンタは大我のバルバトス・アステールへと向かっていた。
「あ……」
「ご愁傷様ね」
龍牙も静流も無理に追い駆けようとはしなかった。
それどころかダブルオークアンタのダイバーに同情すらしている。
「せめてコイツだけでも!」
ダブルオークアンタはGNバスターソードを振り上げる。
「ちっ」
バルバドス・アステールは軽くバーストメイスを振るった。
それだけでダブルオークアンタは跡形もなく粉々に吹き飛んだ。
ダブルオークアンタがやられて星鳳高校は1回戦を突破した。
地区予選1回戦の翌週にはすぐに2回戦が行われる。
すでに皇女子高校は1回戦同様に貴音のキマリス・ヴィダールの単調な突撃だけで問題なく勝利を収めている。
星鳳高校の2回戦の相手は去年の地区予選ではベスト16にまで勝ち進んだ茂武工業高校だ。
バトルフィールドは市街地で相手のガンプラはジムⅡセミストライカー、ジムキャノンⅡ、ジムスナイパーⅡの3種のジムだ。
バトルが始まりすでに星鳳高校の優勢で進んでいる。
ジムⅡセミストライカーのツインビームスピアをかわしたバーニングデスティニーはジムⅡセミストライカーを蹴り上げるとそこをアリオスガンダム・レイヴンがGNスナイパーライフルⅡで撃ち抜く。
空中にいるアリオスガンダム・レイヴンをジムキャノンⅡがビームキャノンで狙うが、それをかわしてGNキャノンで逆にジムキャノンⅡを周囲のビルごと消し飛ばした。
「くそ……相手はレイヴン以外はたいした事は無かったんじゃなかったのか!」
マシンガンを装備したジムスナイパーⅡは市街地を移動している。
茂武工業は1回戦の星鳳高校のバトルを見ていない為、去年の静流以外は大して強くない弱小校と舐めてかかっていた。
だが、茂武工業のレベルでは大我や静流はおろか、龍牙の相手も厳しい実力しかない。
完全に舐めてかかり成す術もなく追い詰められている。
市街地を移動してたジムスナイパーⅡだが、十字路で出会いがしらにバルバトス・アステールのバーストメイスがビルの影から出て来て反応すら出来ずに上半身がバーストメイスによりビルで押しつぶされた。
星鳳高校は2回戦を突破し、3回戦も危なげなく突破した。
それにより星鳳高校は地区予選のベスト16にまで勝ち残り去年の成績を上回る事となった。
3回戦を突破した星鳳高校は地区予選の最初の壁に当たる事になる。
3回戦を終えた足で学校に戻るとそのまま次のバトルに備えてのミーティングを始めている。
日を改めると大我は部室に来ない為、確実に掴まるのはバトルが終えた後くらいしかない。
「次の相手は巨陣高校。去年の地区予選で準優勝して全国大会に出たチーム」
星鳳高校の次の対戦相手の巨陣高校は去年の全国大会に東京代表の一つとして出ている学校でAブロックでは今年も巨陣高校が準決勝まで行くのではないかと言われている。
「全国での成績は?」
「1回戦は勝ってるけど、2回戦で泉水と当たって負けてるね」
史郎は事前に明日香と共にまとめた資料を見て答える。
巨陣高校は1回戦は運が味方をして辛くも勝利したが、2回戦では優勝校の泉水高校と当たって惨敗している。
「なら大した事はないな」
「まぁ、地区予選の決勝でも皇女子に散々な負け方をしていたわよね」
大我はそう言い切る。
静流も去年の地区予選の決勝は見ていた。
皇女子と共に全国に出たと言えば聞こえが良いが、地区予選でも皇女子にボロ負けしている。
「だけど全国経験者には間違いはないよ。油断は出来ない相手である事は確実だと思っておいた方が良いよ」
全国大会で勝ち抜く力はないが、それでも地区予選を勝ち抜いて決勝まで行った実力はある事は確かだ。
星鳳高校も大我の加入や龍牙の特訓の成果もあり、ここまでは苦戦する事なく勝ち進んで来た。
ここから先の相手は自分達と同じように勝ち抜いて来た学校で油断していれば、今まで自分達が倒して来た学校のように相手は大したことはないと油断してやられる危険性も出て来る。
「まだバトルまでの猶予は十分にある。各自はしっかりと調子を整えてバトルに臨むように」
ミーティングを颯太が締める。
ここまで勝ち進んで来たが、ここから先は強豪校との戦いが待っている。
トーナメント方式である以上は一度の敗北で大会が終わる。
ぞれぞれが各々のやり方で次の巨陣高校戦へと準備を始める。