Infinite Breakers   作:吉良/飛鳥

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今回は一夏がメインかBy夏姫      箒ちゃんとのデート……一夏君、ちゃんとエスコートしてあげるのよ?By刀奈     ウッス、頑張ります!!By一夏


Break105『ちょっとした日常の風景だぜ』

Side:イルジオン

 

 

ふぅ……模擬戦終了だ。あの馬鹿共との模擬戦と比べれば幾らか楽しめたか。

回収したゴーストの隊員は教授によって強化改造が施されて、今はもう自我なんてものは欠片も存在してない、文字通りの殺戮マシーンだな。

人を殺す事に一切躊躇のない攻撃と死を恐れずに向かって来ると言うのは凄まじいモノだ。

並のIS乗りならば何も出来ずに瞬殺されるだろうさ……だが、私に言わせれば生温いとしか言いようがないぞ?

確かに、戦闘能力は高いが、だが其れだけだ。――この程度ではISRI製の量産機を倒すのが精一杯だろう――ハッキリ言わせて貰うが、この程度ではオリジナルや更識楯無達には触れる事すら出来ないぞ教授。

オリジナルは勿論、更識楯無の能力もずば抜けて高いし、それ以外の連中の能力だって各国の代表レベルを超えているからな。

 

 

 

「だろうねぇ?……だが、彼等の強化は未だ一段階目に過ぎない。君が圧勝するのは当然なのだよイルジオン

 最終段階まで強化すれば、一対一の戦闘で、君に勝つ事は出来ずともそれなりの勝負が出来るようになる筈だ。」

 

「今日の模擬戦で私が勝つ事は決まっていた訳か……出来レースでの勝利と言うのはつまらんモノだな。」

 

そう言えば一秋と散は何処に行ったんだ?今日は起きてからこのかた姿を見てないが?……何だかとても嫌な予感がするのは私だけなのか?

 

 

 

「あぁ、一秋君と散君はお出掛けだよ。

 自我を奪ってない以上は、娯楽のないこの環境にストレスを抱えているだろうから、其れを少しでも解消した方が良いと持ってね。少しお節介かも知れないが、幼馴染み同士のデートを設定させて貰ったと言う訳だ。」

 

「そうだったのか?教授、お前も良い所があるじゃないか……と言えば、良い話で終わるんだろうが、お前は何を考えているんだ教授!!」

 

 

 

――バッキィ!!

 

 

 

「い、いきなり殴るとは何をするのかねイルジオン!!眼鏡が割れてしまったではないか!」

 

「煩い黙れマッドサイエンティスト!一秋と散を街に出したらどんな面倒事が起きるか分からないだろうが!!

 アイツ等は蓮杖一夏と篠ノ之箒に異常な執念を抱いているから、IS学園に襲撃をしかねない――其れだけなら未だしも、捕らえられてアイツ等の機体に搭載した『アレ』を篠ノ之束に解析されたらどうする!」

 

「あぁ、その心配はないよイルジオン。

 彼等からISは『調整』の名目で預かっている。散君のISの待機状態である彼女の義手もだ。代わりの義手も一切の武装を搭載していない普通の機械義手にしておいたから問題はない。

 如何に彼等であっても、丸腰でIS学園に戦いを挑みはしないだろう。」

 

 

 

だと良いんだが、アイツ等は『歩く生ゴミ』と言っても良い位に性根が腐り切ってるから、丸腰であっても街中で何か問題を起こす可能性が否定出来ない部分があるのもまた事実だ。

……教授、私も出掛ける。アイツ等が問題を起こしそうになったら、強制的に連れ帰る――アイツ等が問題起こして捕まって、其処から情報が漏洩してしまうのは避けたいからな。

 

 

 

「ふふふ、好きにしたまえ。

 だがイルジオン、街に行くのならばワインとチーズを買って来てくれるかな?ワインの銘柄やチーズの種類は君のセンスに任せるとしよう。代金は後払いでも良いかな?」

 

「だから、なんで変な所で俗っぽいんだお前は……まぁ、一応了解しておく。」

 

さて、其れじゃあ行くとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Infinite Breakers Break105

『ちょっとした日常の風景だぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:夏姫

 

 

今日は日曜日で学園は休みなんだが、部活に精を出している生徒は多いな。

まぁ、アタシと刀奈は暇な連中を誘って、生徒会室でお茶会だ……参加メンバーは生徒会役員、マリアと鈴とメアリー、乱と静寐と簪、グリフィンとヴィシュヌとロラン、そしてマドカ。

皆も夫々予定があるから、このお茶会に何時ものメンバーが全員集合する事の方が珍しい……と言うかコメット姉妹に至っては一度も参加してないんだよなぁ?まぁ、彼女達の場合はアイドル業があるから仕方ないのかもしれないが。

一見華やかに見えるが、アイドルと言うのも人気を維持する為には大変なんだろう――特に、IS学園に来てからはライブの回数なんかは今までよりも確実に減っただろうから、ファンとの交流イベントやネット配信用の動画を撮ったりと忙しそうだからね。

 

 

 

「そう言えば、鈴ちゃんが一人でお茶会に参加するのって珍しいわよね?何時もだったら一夏君と箒ちゃんが一緒なのに……今日は如何したの?」

 

「確かに一夏と箒の姿が見えないな?何だ、別行動か?」

 

一夏と鈴と箒は授業中以外は一緒に居るのがデフォルトになってるイメージがあるし、土日祝日は確定で一緒に居る上に外出する時だって三人でだから、鈴が一人でお茶会に参加と言うのは珍しい感じだな。

 

 

 

「あ~~、一夏と箒なら今日は二人でデートしてるわよ。ってか、アタシがさせた。」

 

「あらあら、一夏君ったら箒ちゃんとデートなの?良いわねぇ、青春真っ盛りって感じで~~♪」

 

「ヤッパリ付き合ってるならデート位ちゃんと出来ないとダメだね。だけど、鈴がさせたって如何言う事?」

 

「其れはねグリ姐さん、アタシと一夏は三年前から付き合ってて、アタシも一夏も三年前にISRIの所属になって、其れからはずっと本社の方で暮らしてた訳で、つまりアタシは三年間も一夏を独占してた事になるのよ。

 だけど、箒は六年間も一夏に会えなかった上に、再会したら一夏には既にアタシが居た……まぁ、最終的にはアタシの提案と夏姫のナイスアシストもあって、箒も一夏の嫁だけど、アタシは三年間も独占してたのに、箒は独占した事がないとか不公平でしょ?

 だから、今日は箒に一夏を独占させる事にしたの。やっぱりね、平等って大事だと思うのようん。」

 

「鈴お姉ちゃん器がおっきいね!?」

 

「身長は小さいがな。」

 

「うっさいわよマドカ!ってか、アタシより小さいアンタに身長が小さいとか言われたくないわよ!!」

 

「ふ、女子の身長の伸びは大体十六~十八までで止まると言われている……鈴姉さんは現在十六だから、其処から劇的な伸びは期待出来ない。

 だが私は十三!止まるまでに最短で三年、最長で五年もある!鈴姉さんを超える可能性は充分にある!」

 

 

 

本当に人としての器が大きいな鈴は。まぁ、そうでなかったら一夏に箒も嫁にしろとか言わないし言えないか……其れからマドカ、女子の身長が最も良く伸びるのは小学校中学年から中学生までだからお前もとっくに身長の伸びのピークは終わってるからな?其れ以上は劇的には伸びないと思うぞ。

幾ら千冬さんと全く同じ遺伝子だと言っても、同じように育つとは限らないんだ――一卵性の双子が、生活環境によって全くの別人になってしまう様に。

まぁ、これ以上は織斑計画云々の話になるし、言ったら言ったで面倒な事になりそうだから言わないが。

 

「まぁ、余り気にするな鈴……努力次第では身長だって伸びるかも知れないからな。

 実際に、乳ヒエラルキーの最下層に居たお前の胸が、今ではヒエラルキーの中程度までになったんだ、身長だって気合と根性と一夏への愛で何とか伸ばす事が出来る筈だ。」

 

「そうよね、頑張ればきっと!アタシ頑張るわ夏姫義姉さん!!」

 

 

 

待て、何でそうなる?

いや、まぁアタシは一夏の姉だから、将来的にそうなるのは間違いないんだけども、何時もは普通に『夏姫』と呼んでいただろう?それが如何して行き成り『夏姫義姉さん』になるのか、分かるように説明しろ。

 

 

 

「いや、アタシはアタシで考えたのよ?

 夏姫とは確かに良い友人関係を築けてる……親友であり戦友であるって胸を張って言う事が出来るんだけど、将来的にはアタシの義姉になる訳だから、ヤッパリその辺はちゃんとした方が良いかなって思ったのよ。

 其れにほら、千冬さんの事も『千冬義姉さん』って呼んでるから、夏姫の事も夏姫義姉さんって呼んだ方が良いかなって。」

 

「言わんとしてる事は分かるが、お前に敬称付きで呼ばれるのは物凄く違和感がある。と言うか同い年で姉も妹もないだろうと思うんだが如何だ?」

 

「あ~~……そう言われたらそうかも知れないけど、アタシ的には結構気に入ってるのよね夏姫義姉さんって呼び方は。主に一夏の嫁として。」

 

 

 

鈴よ、お前は一体何の針が振り切れてしまったのか……此れは、束さんでも直すのは難しいかも知れないな。

まぁ、お前に敬称付きで呼ばれるのは違和感があるが、だからと言って嫌悪する程のモノでもないからお前の好きなように呼べばいいだろう?……まぁ一種の弊害として、箒がアタシの事を『義姉さん』と呼ぶ可能性があるが、そうなったらそうなっただ。

 

 

 

「夏姫……」

 

「ん?何だ簪?」

 

「お、お義姉ちゃんって呼んでも良い?」

 

「……スマン簪、良く聞こえなかったんだが?」

 

「だから、お義姉ちゃんて呼んでいい?」

 

「誰を?」

 

「夏姫を。」

 

「誰が?」

 

「私。」

 

「……楯無、お前の妹が壊れたぞ。」

 

「失礼ね夏姫。簪ちゃんは壊れてなんていないわ、極めて正常よ?そして、正常であるからこそ鈴ちゃんの言った事を聞いてそんな事を言ったのだからね?……そうでしょ簪ちゃん?」

 

「うん。

 夏姫はお姉ちゃんと付き合ってる……まだ日本では同性婚は認められてないけど、更識の力と束博士の力があれば、其れを日本政府に認めさせる事は簡単だと思うから、お姉ちゃんと付き合ってる夏姫は将来的に私の義姉になる。

 だから、ダメかな?」

 

「ぐ……」

 

下から上目遣いで頼まれると、何とも言えない破壊力がある……此れは、刀奈が妹バカになるのも頷けると言うモノだな?

確かに下からこんな顔で頼まれてしまっては『ダメ』とは言えない……と言うか『ダメ』と言ったら何だか物凄く悪い事をした気分になるだろうし、それが原因で泣かれてしまったら凄まじい罪悪感に苛まれそうだ。

 

「……アタシの負けだ簪、好きにしてくれ。」

 

「うん。ありがとうお義姉ちゃん♪」

 

 

 

嬉しそうな簪と、何故か満足そうな刀奈……流石は姉妹だけあって、どこか似ている部分があるモノなんだな。

 

少しばかり騒がしくなってしまったが、其れが逆にお茶会の話題に花を咲かせる結果になったのだから、結果オーライと言った所か?虚さんの紅茶は今日も絶品だったし、メアリーが持って来たチェルシーさんから送って貰ったお茶菓子も絶品で、お茶会も豪華だったしね。

時に、マリアと静寐がやたらとくっついていたが……若しかしてお前等……

 

 

 

「うん、付き合ってるわよ夏姫?」

 

「思い切って告白してみたらなんとOKだったから驚き。断られると思ってたから。」

 

「あら、自分に向けられる好意を無下に斬り捨てるだなんて無粋な真似はしないわよ?それに、貴女の事は実は結構気に入ってたもの……ISRIのトライアルに参加した三人の中でも実力は特出してるし、綺麗な黒目と黒髪も素敵。

 夏休み中につけたピアスも良く似合ってるしね。」

 

 

 

ヤッパリか。まぁ、お互いに好き合ってるなら問題は無い。其処に愛があるのならば、性別など些細なモノだからね……確りと愛を育んでくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:一夏

 

 

今日は生徒会室でのお茶会に鈴と箒と一緒に参加する心算だったんだけど、鈴から『今日は箒と一緒にデートしてあげて。つーか箒とデートして来い。』って言う命令(?)で箒とデート中。

そう言えば、箒と二人っきりで出掛けるのは初めてかもしれないな……出掛ける時は何時も鈴も加わった三人だったからな。

……鈴とは箒が俺の嫁になる前に何度かデートしてるけど、箒と二人っきりのデートって言うのは思い返してみると初めてかもな……鈴も其れを考えて箒とデートして来いって言ったのかも。

本来なら俺が気付かないといけない事なのに、其れに気付いてくれた鈴は凄いと同時に、本気で人としての器がデカいぜ……とは言え、行き成りデートしろと言われたもんだから、俺も箒も大慌てで服とか準備した訳だ。

まぁ、行き成りの事だったから凝ったお洒落は出来なかったけど、ダメージジーンズに黒のハイネックシャツ、ファーの付いた赤い革ジャンは悪くないと思う。

箒からも『ほう、カッコいいぞ一夏』って言って貰ったからな……だけど俺的には箒の服装の方がイケてると思う!

七分丈のストレッチタイプのジーンズに、ハイネックのインナー、そして上着は何処か『和』の意匠を感じさせるデザインで、履物も普通の靴じゃなくて、下駄の意匠を取り入れた少し底の厚いファッションサンダルだからな。

鈴はどっちかって言うと動きやすさ重視のスポーティーなファッションが多いんだけど、箒は所々に『和』を意識したファッションが多いんだよな……分かってた事だけど再確認。俺の嫁は世界で最高に可愛くて美人だぜ。

 

そんな箒とのデートだが、午前中は無難に喫茶店で一息入れてからプラネタリウムやゲーセンを満喫した。……プラネタリウムのナレーションがまさかの津田健次郎さんだった事には驚いたけどな。しかも口調が海馬だったし。

海馬が星座の解説とか、ぶっちゃけ吹いたわ。何だよ『見るが良い!此れが天空で最大の星座、乙女座だ!』って!普通にネタだろ!まぁ、箒も笑ってから良いけどな。

ゲーセンでは一緒にプリクラ撮ったり、俺の格ゲープレイを箒が応援してくれたり、ユーフォ―キャッチャーで『アルティメットDXヌイグルミ・カピバラさん(略原寸大)』をゲットして箒にプレゼントしたりだ。

そのゲーセンでは無謀にも剣道ゲームで箒に挑んで来たチャラ男が居たけど、中学全国制覇、高校では個人戦、団体戦、混合団体戦を総なめにした箒には勝てる筈もなく滅殺。

更に負けても往生際が悪く遊戯王での勝負を挑んで来たけど、其れは俺が代わりに受けてこれまた瞬殺……夏姫姉が青眼の白龍なら、俺は真紅眼の黒竜だ……悪夢の拷問部屋を発動してからの三連続『黒炎弾』でのワンターン焼き殺しコンボはやり過ぎたと思ってるけど反省も後悔もしない。

俺の箒に手を出した時点で、普通なら『龍虎乱舞』でタコ殴りにしてるのをこの程度で済ませてやったんだから逆に感謝して欲しい所だぜ……誰が如何言おうとも鈴と箒は俺の嫁だから、手を出す奴は誰であろうとぶっ倒す、其れだけだぜ。

 

んで、チャラ男を滅殺した後は昼飯だ……箒は『急な事でなければ弁当が作れたのに』と言ってたな――うん、箒の弁当は本当に美味いから俺としても残念だけど、無い物ねだりをしても仕方ないって事で、箒の食べたい物を聞いてその店でランチだ。

箒のリクエストは『お好み焼き』だったから、ネットで調べて評判の店に行った――なんか、お好み焼きを引っ繰り返す俺を箒が笑みを浮かべて見ていたけど、そんなに良いモノかね?

 

 

 

「何、お前が私の為にお好み焼きを焼いてくれてると思うと嬉しくてな。」

 

「そうかい……なら、俺の愛情をたっぷり入れないとだ――はいよ、この店名物の『アボカドトマトチーズ焼き』、一丁上がりだぜ!」

 

「此れは、美味しそうに焼けたな?」

 

「美味しそうじゃなくて実際に美味いんだよ。そもそもにしてアボカドとトマトとチーズの相性は最高だからな……個人的はアンチョビを加えても良いかなと思うけどさ。」

 

「アボカドとトマトとチーズとアンチョビ……その組み合わせは最早最強じゃないか一夏?」

 

「間違いなく最強だろうな。」

 

お好み焼き屋でのランチを堪能した俺達は、午後の部に……やってきた場所は水族館だ!

此処は日本でも有数の大きさを誇る水族館の一つなんだが、その最大の特徴は『国内では最大数にして最大種のサメを展示してる』って事だぜ。公式ホームページで見てみたら、国内で初のネコザメの人工孵化に成功したみたいだし、それ以外にも見どころは沢山あるみたいだから楽しめそうだ。

 

入り口でチケットを買って中に入ったんだが、日曜って事もあって人が多いな?……こりゃ、はぐれたら大変だな……箒、手を繋いでいこうぜ。此れだけの人が居る中で、はぐれたら大変だからな。

 

ってのは建前だ。俺と手を繋いでくれるか箒?

 

 

 

「わ、私で良ければ喜んで。」

 

「其れじゃ、遠慮なく。」

 

そう言って俺は箒の左手に、自分の右手を五指が絡まるようにして繋げる……要するに一般的に『恋人繋ぎ』って呼ばれる手の繋ぎ方だ。

如何やら箒もこの手の繋ぎ方は知ってたらしく、瞬時に顔が真っ赤になってたけど、振り解こうとしない所を見ると、嫌じゃないんだろうな……俺だってこうして箒と手を繋ぐのは嫌じゃないからな。

何よりも重なった手の平から感じる箒の温もりはとても心が落ち着くってモンだぜ。

 

其れで、其のまま水族館巡りだ。

『世界の海の魚』コーナーから始まり、中型の水槽で浅瀬の海の生き物を展示……まだまだ子供のウミガメを『可愛いな』って言う箒が可愛かった。

其処を過ぎたら、此の水族館一番の大水槽――中には鰯をはじめとした回遊魚、小型のサメとエイが数種、岩場にはウツボ、のんびりと泳ぐウミガメとバラエティに富んでるな。

しかも運の良い事に、丁度餌やりの時間だったみたいで、飼育員さんが餌や魚について説明してくれるのを聞けたからな。

 

その先には中型の水槽に色んな海洋生物が展示されてるんだが……やっぱり売りだけあってサメの数がハンパないぜ――レモンザメやサカタザメなんてのは初めて見たからな。

 

 

 

「一夏、一夏、なんか面白い魚がいるぞ?見ろ、地面から生えているぞこの魚!」

 

「うん、確かに地面から生えてるように見えるな此れは。」

 

チンアナゴまで展示してるとは予想外だったが、箒の言う地面から生えていると言うのは微妙に否定出来ないぜ……実際に地面から魚が生えてる様にしか見えないからな。

 

 

 

「チンアナゴ……アナゴと付いているからには食べられるのだろうか?」

 

「いや、食べないんじゃないのか?知らんけど。」

 

「そうだな。寿司のネタの中にあったらおかしいからな。」

 

「箒さん、其れで納得するのか貴女は。」

 

時たま箒は天然で大真面目にボケ倒すんだよなぁ……其れも魅力だけど。

其のまま順路を進んで、地下にあるイルカの水槽前だ――如何やらこの上がイルカショーの会場になってるみたいだぜ。ショーまではまだ時間があるからショー中ではないイルカを見に来たんだが……

 

「箒、俺等イルカに見られてね?」

 

「気のせいだ……と言いたいが、私とお前が動くとイルカも其れに合わせて動くから否定は出来ないな……一体何があると言うのか――マッタク持って意味が分からん。」

 

「……分からなくてもいいのかもな。」

 

「え?」

 

 

 

謎な部分ってのは、謎だからロマンがあると思うんだ俺は――だから、分からない事を無理矢理分かるようにしなくてもいいんじゃないかってさ――イルカ達が何で俺達の動きに付いて来るのかは分からないけど、科学では解明できない何かをイルカが感じ取った可能性もあるだろ?

そう言ったモノは適当に謎の方が良いんだよ。

 

 

 

「ふむ、言わんとして居る事は何となく分かる……ネッシーの正体は謎だからこそ価値があると聞いた事があるからな。」

 

「そう言う事。

 さて、そろそろイルカショーが始まる時間だから客席の方に行こうぜ?夏休み程は混んでないとは言え、余裕持って入場しないと立ち見になっちまうかも知れないからな。」

 

「あぁ、そうしよう。」

 

 

 

おぉ、予想通りイルカショーの会場は既に人で一杯だな?何処か開いてる席は……お、右側の後の方が丁度二席開いてるな。

あそこにしようぜ箒。あそこなら水飛沫が被弾する事も無いだろうしな。……夏の暑い時期なら未だしも、今はもう冬だから全身ずぶ濡れってのはゴメン被るぜ。

 

さてと、五分ほど待った後にショーが始まったんだが、イルカの知能の高さには本気で驚かされるな?人語を話す事は出来なくても人の言ってる事は完全に理解してるし結構高度な命令も完璧に熟すからな。

其れから、トレーナーさんもトレーナーさんで凄いと思う。イルカの背に立った状態で乗ったり、イルカの鼻先で押し上げて貰って一緒にジャンプした後にプールに着水とか、相当に練習しないと無理だよなアレは。

 

 

 

「泳いでるイルカの背中に立って乗るだなんて、リアル『なみのり』だな!」

 

 

 

そして、そのスゴ技の数々に目を輝かせてる箒がめっちゃ可愛いんですけど。……こっそり動画撮って束さんに送っとくか。めっちゃ喜ぶと思うし。

っと、イルカが尻尾でキックした超巨大ビーチボールが俺達の方に飛んで来たな?――普通は手を前に出してガードする所なんだが、其れじゃあ面白くないよな?

なので、水族館のパンフレットを丸めて……中村剛也ぁ!!

 

 

 

――パコーン!

 

 

 

思い切り打ち返してやったんだが、ボールを飛ばしたイルカは器用にも其れを鼻先でキャッチしただけでなく、ボールを鼻先に乗せた状態で高速スピン。

何とも芸達者なモンだぜ。まぁ、盛り上がったから良いけどな。

 

イルカショーが終わった後は売店を物色中。

取り敢えず箒が『何だか可愛いな此れ』と言ったメンダコのヌイグルミの一番大きなのを買って、ISRIの方には九種のエビせんべいの詰め合わせと、アクアクッキーの詰め合わせ、其れから秋姉用に酒で良いか。

夏姫姉達の方には、アクアクッキーの詰め合わせと一口マリンチーズケーキの詰め合わせだな。

 

 

 

「なぁ、一夏。レトルトのフカヒレスープは分かるんだが、このシャークカレーと言うのは美味しいのだろうか?」

 

「如何だろうな?……試しに買ってみるか。」

 

こうして堂々と売ってるって事は、ちゃんと商品開発したって事だろうからトンデモナイキワモノの可能性は多分ないと思うからな。

でだ、流石に荷物が多くなっちゃったんだが……

 

 

 

「よう、奇遇だな一夏、箒!」

 

「秋姉?」

 

「オータムさん?」

 

 

 

何と此処で秋姉と遭遇。何でも非番だから遊びに来てたんだとか。

そんでもって、俺達がデートをしてるって事を話したら、『そんなに荷物が多いと大変だろ?オレが学園と本社まで持ってってやるよ。』って言ってゲーセンの戦利品やら土産物を持って行ってくれた。

予想外の事ではあったけど、身軽になれたから其れは感謝だな。

 

さてと、水族館の後は近くのマリンタワーから夕景を楽しむとしようぜ?ネットで調べたら展望台にはカフェもあるみたいだから、其処で――

 

 

 

――キュピィィィィィン!

 

 

 

「「!!」」

 

 

此れは、今の感覚は……箒、お前も感じたよな?

 

 

 

「あぁ、今の感覚は……散が近くにいる。」

 

「やっぱりお前も感じたか……一秋の野郎が近くにいるな確実に。」

 

なんだってアイツ等が街中に居やがるんだ?……其れだけなら未だしも、俺と箒が気付いたって事は、一秋達も俺達の事に気付いた可能性がある訳だから、ちょっと拙いよな?

アイツ等は心の底から俺達を殺したいと思ってる部分がある……京都で箒に腕を切り落とされた散はその気持ちがより強くなってるかもしれない――俺と箒だけを狙って来るなら未だしも、アイツ等の性格を考えると周りがどうなろうと関係ないだろうから、無関係な人を巻き込みかねないぜ。

 

「箒、人気のない所に移動するぞ……其処でアイツ等を迎え撃つ。」

 

「分かった……!」

 

 

 

其処からは不自然にならないように街中を移動して一秋と散を人気のない場所に誘導してく……行き成り襲い掛かって来るんじゃないかと思ってたんだが、大人しく付いてくる辺り、少しは我慢ってモノを覚えたのかもな。

そんで、到着したのは郊外の廃工場跡……此処なら誰にも迷惑は掛からない――だから、出て来いよやられ専門のクソ雑魚が。

 

 

 

「一夏……テメェ誰が雑魚だと?」

 

「お前だお前。

 ガキの頃は散々俺の事を馬鹿にしてたくせに、その馬鹿にしてた相手に何も出来ずに連敗してるお前なんぞ雑魚で充分。寧ろ雑魚でも過大評価レベルだっての。」

 

「その意見には賛成だ一夏……実力差を理解せずに、無謀に挑んでくるのは蛮勇とすら呼べぬ。……知能は獣以下だったか散。」

 

「貴様……この右腕の恨み、晴らさせて貰うぞ!!」

 

 

 

セリフが三下の悪役だな……まぁ良い、来るなら来いよ。相手になってやるからよ。

だが、やるってんなら覚悟しろよ?お前等のせいで折角のデートが最後の最後で台無しになっちまったんだからな……其れの八つ当たりをさせて貰う!

 

 

 

「生意気な事言ってんじゃねぇぞこの出来損ないが!俺は教授の手でパワーアップしたんだ!もうお前には負けねぇ!!」

 

「そう思ってるなら、何ともおめでたい脳ミソしてるぜお前!!」

 

突っ込んで来た一秋の拳を避けると同時に、カウンターでボディアッパーを叩き込んでやると同時に、アッパーカチ上げ、更に回し蹴りで思いっ切り蹴り飛ばしてやった――人が蹴りで吹っ飛ぶのってジャッキー・チェンの映画だけじゃなかったんだな。

 

箒の方は、散が切り落とされた右腕の代わりに搭載された金属製の義手で殴りかかって来たんだが、箒は其れを馬鹿正直にガードする事はせず、古武術の円運動で其れをいなした上で、散の勢いを利用してぶん投げて廃工場の壁に激突させたみたいだな。

普通なら此れで戦闘不能なんだが……

 

 

 

「一夏……良くもやってくれやがったな?倍返しにしてやるぜクソがぁ!!」

 

「倍返しでは足りん……四倍返し――その腕を切り落としてやるぞ箒ぃぃぃ!!」

 

 

 

教授とやらの強化で、身体の耐久力が可也上がってるみたいだな?……だからどうしたって話なんだが、頑丈だとKOするのに苦労するから地味に面倒くさい。

出来れば戦闘を行わずに『サンダーボルト』でぶっ殺したい気分だぜ。

 

 

 

 

 

「Frieze!Sleep!!」

 

 

 

 

そう思った矢先、そんな声が聞こえた瞬間に、一秋と散は糸が切れた操り人形みたいにその場にへたり込んで……寝てるな此れ。何が起きたんだ?

 

 

 

「やれやれ、マッタク持っていやな予感と言うのは当たってしまうモノだな……自分と相手との実力差をまだ理解出来ないのかコイツ等は。」

 

「夏姫姉?……いや、イルジオンかお前は。……お前まで此処に居るだなんて、ライブラリアンは何をしようとしてるんだ?」

 

「いや、今は何もしない。

 この馬鹿共が此処に居るのも教授が『ストレス解消の為に外出させた』からで、お前達に何か用があった訳じゃなく、出会ってしまったのは本当に偶然なんだ。

 私はこの馬鹿共が何かやらかした時の為に出掛けてただけさ……教授からはワインとチーズを買ってくるように言われてしまったけどな。」

 

「其れを信じろと?」

 

「信じるかどうかはお前達次第だが、少なくとも私は今この場でお前達と敵対する意思はない――だからこそ、この馬鹿共を強制停止コードを使って黙らせたのだからな。」

 

 

 

強制停止コード……さっきの『Frieze』と『Sleep』ってやつか。

文字通り強制的に動きを止めるモノなんだろうが、俺達の前でそんなモノの存在を明らかにしていいのか?言葉による入力だったら、俺達にでも出来ると思うんだけどな?

 

 

 

「無論、その対策はしてある。強制停止コードは私か教授でなければ使った所で何の意味もない只の単語だ……お前達が使っても何の効果もない。」

 

「だから、私達の前で簡単に使う事が出来たと言う訳か……」

 

「アンタと教授とやらだけが使える、コイツ等用の首輪ってやつだな」

 

ったく同情するね。そんなものがある以上、一秋と散は如何足掻いても此れから先はライブラリアンの奴隷になる以外の道はない――反旗を翻そうにも強制停止コードとやらがある以上は、其れも無理だしな。

 

 

 

「まぁそう言う事だ。取り敢えず、このバカ二匹は持ち帰って、デートの邪魔をした事についてみっちりと説教をしておくから其れで納得してくれ。

 其れと、デートの邪魔をした侘びとして此れを持って行け……教授から頼まれた買い物をした際に引いたクジで当てたモノだが、コーヒーのセットなんて私は要らないから。」

 

「アンタ、意外と律儀なんだな?」

 

「少しばかり意外だ……てっきり散達に加勢するかと思ったのだが、そうしないとはな。」

 

「コイツ等が如何なろうと知った事ではないが、貴重な戦力である事に変わりはないからおいそれと消費する事も出来ん。

 其れに、私の狙いはオリジナルだけだ……それ以外には興味はない――オリジナルと全力で戦い、勝利した方が本物となれる……オリジナル以外の事は如何でも良いんだよ。」

 

 

 

コイツ、ドンだけ夏姫姉に執着してんだよ……その執着振りには恐怖を覚えるぜ。

つっても、夏姫姉が負けるとか想像すら出来ねぇんだけどな……んでもって、狂気の笑みとも言える表情をしたイルジオンは『Return』と言うとその場から居なくなっちまった――転移ってやつか。

 

 

 

「一夏……」

 

「そんな顔するなよ箒……一秋と散はパワーアップしてたが、俺達の敵じゃないし、イルジオンの目的はあくまでも夏姫姉なんだから、無用な殺しなんかはしない筈さ。」

 

夏姫姉と同じ遺伝子を持ってるなら、そう言った事は大嫌いな筈だからな――絶対とは言えないけどさ。

兎に角、面倒事は何とかなったから、デートの続きと行こうぜ箒――マリンタワーからの夕景、見たかったんだろ?

 

 

 

「あぁ、楽しみにしてたんだ。」

 

「其れじゃあ行こうぜ?今ならまだギリギリ日没前に間に合いそうだからな。」

 

で、全速力でマリンタワーまで戻って、展望台に上がって……丁度いい具合に水平線の彼方に沈む夕陽を拝む事が出来た――夕陽に照らされて、茜色に染まった街もまた幻想的で綺麗だったからな。

 

「箒……」

 

「一夏?……ん……」

 

 

 

そんでもって、夕景に見惚れる箒があまりに可愛かったから思わずキスした俺は絶対に悪くない。――行き成りキスされて箒も驚いてたけど、驚いた後は力を抜いて受け入れてくれたしな。

まぁ、ちょっとしたトラブルはあったけど、本日のデートは大成功だったって言えるぜ。――まさか、俺と箒がキスしてるのを新聞社のカメラマンが偶然撮って、その写真が新聞の地方欄にデカデカと載るとは思わなかったけどな。

 

だが其れとは別に、ライブラリアンの動向には注意してた方が良いかも知れないぜ……イルジオンは夏姫姉以外に興味はないみたいだからアレだけど、教授ってのが何を考えてるのかは分からないからな。

まぁ、何を考えてた所で、何かして来たらぶった斬るだけだぜ……俺達は、世界の歪みを破壊する執行者だからな――最大の歪みであるお前達は、何れ叩きのめしてやるから、精々覚悟しとけよ。

 

 

 

「凛々しい一夏の表情にハートブレイク!」

 

「OK、ちょっと落ち着こうか箒?」

 

……この後、若干暴走した箒を鎮めるのに苦労した。本当にめっちゃ苦労した。そして学園に戻ったら、束さんから動画のお礼メールが来てた。

動画のお礼に『熱海温泉旅行チケット』とか豪華すぎるだろって思ったけど、此れなら鈴も一緒に行けるからって思った俺も大概だな……ま、今日はとっても濃い一日だった事だけは間違いないぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:イルジオン

 

 

戻ったぞ教授……取り敢えず、このバカ二匹は如何する?

 

 

 

「ベッドに放り込んでおきたまえ。強制停止コードを使った以上は暫く目を覚まさないだろうから、その間に更なる強化改造を施すとしよう――強化した彼等の機体の性能を十全に引き出すには、マダマダレベルが足りないからね。」

 

「コイツ等の機体にドレだけの改造を施したんだ教授?」

 

「普通の人間では大凡扱う事の出来ないレベルでの機体性能を向上させた――だが、此れも彼等が望んだ事だからね、私は其れに応えるだけだよ。

 まぁ、そのお陰で良いデータが採れるじゃないかと期待しているのは否定しないがね。」

 

 

 

はぁ、本当に病気レベルで外道だなお前は。

取り敢えず頼まれていたモノを渡しておく。ワインとチーズだったよな?

 

 

 

「うむ……此れはまた良いワインを選んでくれたねイルジオン?ブルゴーニュの白などさぞかし高かったろうに……此れだけの貴重品を買って来てくれた事に感謝して、代金は二十%上乗せして払わせて貰うよ。」

 

「太っ腹だな教授。」

 

だが、チーズを食べる時には注意しろよ?私に任せるとの事だったので、とても個性的な『スーパーレッドチーズ』を買って来たからね――で、その夜はライブラリアンの施設内に教授の悲鳴が響き渡る事になった。

 

ハバネロと朝天唐辛子のパウダーをこれでもかと言うレベルで混ぜ込んだ赤いチーズの破壊力は相当だからね……面倒事を引き起こした事に対しての罰だと思え教授。

 

 

 

「あsdfghjklくぇrちゅいおzxcvbんm~~!!」

 

「うん、何を言ってるのか全く分からない。」

 

取り敢えず牛乳飲むかバターを一欠け齧ってこい教授。そうすれば口の中に残った辛さが緩和されるからな。――まぁ、頑張れよ教授?……オリジナル達との決戦の時は、そう遠くなく来るだろうから、その時までに戦力を整える必要があるからな。

 

待っていろオリジナル……そう遠くない未来に、お前に会いに行くからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 

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