Infinite Breakers   作:吉良/飛鳥

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無限迷路は思った以上にキツイ……体力を回復したいなBy夏姫      はい、ドロップアイテムのリポビタンD♪By刀奈    此れ、どんな世界観?By一夏


Break117『最終決戦Ⅰ~要塞を攻略せよ~』

Side:夏姫

 

 

態々招待状を用意してくれたので、アーク・ジェネシスに突入したのだが、入った瞬間に機体が解除されたか……まぁ、此れ位の事は有っても当然と言えるかも知れないな。

機体を維持出来たら内部から破壊される可能性が非常に高いからね。

 

 

 

「機体が解除されるって、教授ってのは俺達のISに外部から干渉出来るってのか?」

 

「いや、その可能性は低いと思うぞ一夏。

 教授とやらは、可成り高い頭脳の持ち主なのは間違いないだろうが、だからと言って束さんを超えるレベルかと言ったら其れは絶対に否だ――織斑計画 が破棄される程の天然チートバグの束さん以上の存在が居る筈が無いだろう。

 そんな束さんが開発したISに、外部からの干渉を出来る奴など存在しない……アタシ達の機体が解除されたのは、多分アーク・ジェネシス内部には、ISの展開を阻害するジャミング電波みたいなモノが流れてるんだろう。

 と言うか、それ以外には考えられないからね。」

 

「姉さんが作ったモノに外部からのアクセスは不可能か……確かに。

 だが、ISの展開を阻害するジャミングが張られて居ると言うのならば、少なくともこの中で敵機に襲われる事はないと言う事になる訳だが……其れは逆に内部に侵入した者達は、容易に教授とやらの居る場所まで辿り着けると言う事になるのではないだろうか?」

 

「ん~~~、箒ちゃんの言う事は尤もだけれど、ISを使用しない攻撃ならば可能なのだろうから、通常兵器で武装した兵士は居るかもね?

 或いは、内部には色んなトラップやら仕掛けやらが有る事も可能性の一つとして考えていた方がいいし、そもそも教授とやらの方から私達を招き入れたと言う事は、私達が入った場所からゴールまでが超高難易度の迷路になってるなんて事もあるかも知れないしねぇ?」

 

 

 

そう言う事だ。

だから、スイッチのようなモノが有ったからと言って安易に手を触れたりしないようにな?何が起きるか分かったモノではないのだからね。

 

 

 

「そうね、注意しながら進みましょ!それじゃあ、いっくわよー!!」

 

 

 

――カチッ

 

 

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

 

 

いざ進もうと、鈴が一歩踏み出した途端にスイッチを押したような音が……若しかして、床の一部にスイッチが隠されていたと言うのか?

其れは、流石に気付けと言うのが無理ではないだろうか?床のタイルは全部同じ色と形なのだから、スイッチを見極めろと言う方が無理だと思う。……サイコ・ショッカーでも居るなら話は別かも知れないけれどね。

流石に今のは不可抗力だから鈴を責める事は出来ないが、一体今のは何のスイッチだったのか……イキナリ面倒なモノではない事を祈るだけだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Infinite Breakers Break117

『最終決戦Ⅰ~要塞を攻略せよ~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ヴィン……

 

 

何が起きるのか警戒していると、アタシ達の前に光学モニターが現れた――此れが鈴が踏んでしまったスイッチで作動する仕掛けなのだろうか?一見、何の変哲もない光学モニターの様だが?

一体何が始まるのか……何やらモニターに何か浮かび上がって来たが……此れは、人影か?逆光になっていて顔は全く見えないが、男性の様だな。

 

 

 

『ふむふむ、此れが再生されていると言う事は、SEEDの覚醒を果たした者は、無事にアーク・ジェネシス内部に侵入し、最初の一歩を踏み出してくれた事になる訳だね。

 今君達が居る場所の床のタイルは全てがこの映像を再生させる為の一度きりのスイッチになっていてね、誰かが最初の一歩を踏み出せば作動するようになっていたのだよ。だから驚かないでくれたまえ。』

 

「無駄な機能じゃないか其れ?つーか此れ録画映像だよな?

 この声と喋り方からして、さっき俺達を中に招き入れた教授とか言う奴だよな……何だろう、映像の演出から拭い切れない中二感が溢れ出してるねぇ?」

 

「教授とやらの年齢が何歳かは分からないが、大の大人が中二病とか救いようがない……って、此れは私が言うと盛大なブーメランになってしまうのか?

 否でも姉さんのアレは既に中二病すら超越してる気がするからなぁ……」

 

「箒、タバ姐さんのアレは中二病なんて安っぽいモノじゃないっしょ?

 タバ姐さんのアレは、中二病なんてモノを宇宙の彼方のブラックホールすら突き抜けたその先まで蹴り飛ばした超純粋な好奇心と遊び心よ!」

 

 

 

鈴が踏んでしまったスイッチは罠の類ではなくて、アーク・ジェネシス内部に入った者達へのメッセージを再生する為のモノだったのか……一夏の言う様にホントに無駄な機能だな。入った瞬間に自動再生するようにしておけばいいだろうに。

 

 

 

「プロフェッサーは確かに鈴の言う通りだけど、画面の中の彼は本当に中二病と言う奴だったのかもしれないわ……多分、中学時代には右手に何かを宿していたかも知れないわね。」

 

「右目を眼帯で隠していたかもしれないわよ?右目にだけカラコン入れてね。

 『俺の魔眼が疼く……!』とか『俺の右目に封印されし魔を解放させるな……!』とか、後に黒歴史になる事をバンバンやってたんじゃないのかしら?」

 

「右目に眼帯、右腕の肘から下に包帯、左手には指まで覆う黒い革製の手袋……魔眼、炎殺黒龍波を封印した右腕と鬼を封印した左手、そして背中や胸にはタトゥーシールを色々と使って描いた謎の魔法陣もあったんじゃないかな?

 其れから絶対自分に謎設定作ってたと思うよ?『自分は世界の重要機密を知ってしまい謎の組織に狙われてる』とか『人外の力を手に入れて、其の力で世界征服を目論む組織と戦ってる』とか言ってたんじゃないかと思う。ハッキリ言って痛い。最早激痛。そして大人になっても完治してないとか致命傷。」

 

 

 

そして突っ込みが大分厳しいな?アタシも大体同じ事を思ったけどね。

と言うか、静寐が思った以上に辛辣ね?そして妙に具体的だし……若しかして、中学時代のクラスメイトに拗らせに拗らせまくった精神科医も匙を投げる重度の中二病患者が居たのかと思ってしまうわね。

 

 

 

『さて、こうしてアーク・ジェネシス内部に入って来た訳だが、君達は自分のISが解除されて困惑しているのではないかな?

 其れは故障では無いから安心したまえ。アーク・ジェネシス内部は、私が用意した場所以外にはISの展開を阻害するジャミングが施されているだけだ。

 だが、ISが展開出来なくては君達は丸腰だろう?それでは、私の元に辿り着く事は不可能だ――だから、此方で武器を用意させて貰ったよ。

 様々なモノを用意したから遠慮なく使ってくれたまえ。』

 

 

 

映像はまだ続いていたみたいだが、アタシ達に武器を提供するだと?

確かにISを強制解除されたアタシ達は丸腰とは言わないが、普段から携帯してるアーマーシュナイダーとサムライエッジだけでは武装としては少しばかり心許ないのは否めないから武器を提供してくれると言うのは有り難いが……此れは罠の可能性もあるよな?

 

 

 

『無論君達は罠と疑うだろうが、私はゲームでのイカサマは好きではなくてね。

 ゲームマスターとしては、先ずは君達が最終ステージにまで到達して貰わねば面白くも何ともないのだよ――だから、最低限の初期装備を用意するのは当然の事だ。さぁ、好きなのを選びたまえ。』

 

 

罠と疑われるのも織り込み済みか……しかしゲームでのイカサマは好きではないと来たか。

そして自らゲームマスターを自称するとは大した自信家みたいだな教授とやらは……良いだろう、ならばまずは貴様の道楽に付き合ってやる。だが、ラストステージでは必ず貴様を黄泉に送ってやる。

地獄の最下層の最下層の煉獄すら突き抜けた冥獄界にな。

 

 

 

「夏姫姉、其れってどんな地獄だっけ?」

 

「確か、一万年続く苦しみを一万回繰り返す地獄だった筈だ……尤も、教授とやらには其の地獄すら生温いだろうけどな。」

 

教授とやらはイルジオンの、姉さんの記憶を改竄してアタシへの憎悪を植え付けた上で、アタシ達に姉妹での殺し合いをさせて『姉殺し』か『妹殺し』の最悪の業を背負わせようとした……絶対に許さん。

肉体を滅ぼすだけでなく、魂までも滅殺しなくては気が済まん。奴がやった事は其れだけの事なのだからな。

 

 

 

「イルジオンの記憶が改竄されてたってマジでか?

 でも、其れならアイツの謎の行動にも納得行くぜ。其れから夏姫姉への異常な執着もな……其れも全ては教授って奴が姉妹で殺し合いをさせる為だったって訳かよ――胸糞悪い事この上ねぇぜ。」

 

「姫義姉さんの心を壊す心算だった訳か……よし、絶対ぶっ殺す!」

 

「更識と言う家柄に生まれたから、幼い頃から色んな人を見て来たけど、教授とやらはその中でも最低にして最悪の人物だと言えるかもしれないわ……私でも、此処まで性根が腐ってる人間は見た事が無いわ。

 此れと比べたら、一秋と散は未だマシな方かも知れないわね。」

 

 

 

一秋と散以上とは、本気でどうしようもない外道だな教授は。

まぁ、貴様を断罪して滅殺する為にも、先ずはアーク・ジェネシス内を無事に進まねばだが、武器がある以上アタシ達が負ける事はないだろうさ――肉弾戦であっても負けないけれどな。

用意された武器の中から、アタシは44口径のコルトガバメントを二丁選び、一夏は日本刀、箒は大太刀……なんだけど身の丈の二倍くらい有るよな其れ。

討鬼伝の太刀か?いや、箒なら扱えると思うけどね。

でだ、刀奈は槍、鈴は身の丈程もあるバスターソード、マリアはアサルトライフル、静寐はバズーカ……って、随分と豪快なモノを選んだね静寐?

 

 

 

「ブラストカラミティのメイン武装がバスーカだから扱い慣れてるんだ……序に、バズーカをぶっ放した時のあの爽快感が大好きなんだよ私。最大級の火力は素晴らしいと思うんだ。」

 

「其れは何となく分かる気がする。」

 

アタシのフリーダムも何方か言えば射撃・砲撃型な上に、バラエーナとカリドゥスと言う最強のビーム兵器を搭載しているからな……確かに最大級の火力というのは素晴らしい。寧ろロマンだ。

まぁ、夫々が得意な武器を手にした以上、どんな敵が現れようとも負ける事だけは絶対に無いと断言してやる――待っていろ教授、アタシ達がお前と会ったその時がお前の終焉の時だ。

だがその前に……

 

「武器入手後のチュートリアルバトル、かな?」

 

「武器まで用意してくれた上にチュートリアルバトルまで用意してくれるだなんて、最近のラスボス的存在は何かと用意が良いのねぇ?……いえ、只のお馬鹿さんよね此れ。」

 

 

 

其れは言ってやるなよ。

武器を手に入れたアタシ達の前に現れたのは、何だか一昔前の特撮とかに出て来そうな四足歩行のロボットと空中を浮遊してる球体に砲身が二門装着されているロボット……ISじゃなくて只のロボットなら動けると言う訳か。

なら、早速スクラップに――

 

 

 

―ドッガァァァァァァァァァァン!!

 

 

 

しようと思ったら、静寐がバズーカぶっ放して一撃で全滅させてしまいましたとさ。

まぁ、チュートリアルバトルだと、火力高いキャラの一撃で全滅とか……ないな。チュートリアル用の負けないボス敵のお供は一網打尽にしても、一体も残らずに全滅とか、強くてニューゲームでチュートリアルバトルやらない限りないだろう。……あ、似たような状況か。

 

 

 

「ん~~~……快感♪」

 

「いや、お前そう言うキャラじゃないから。」

 

 

 

皆が思ったであろう事を代表して突っ込んでくれてありがとう一夏。

取り敢えず静寐の一発でチュートリアルは極めて楽勝で終わった訳だが、改めてバズーカの威力普通にヤバいわね?ノーマルのバズーカで此れだけの破壊力なんだから、其れがプラズマリニアキャノンになってるカラミティのトーデスブロックは改めて恐ろしい威力を持ってる事を実感した。

尚、蹴散らしたロボットの残骸からは何故か弾薬などを見つけたんだが、此れは何か?戦闘報酬的なアレか?ゲーム的な演出なのか此れ?……だとしたら若干頭痛くなって来たわ。

姉さんでも教授の事は良く分からないらしいが、此れは本気で良く分からない……だが、だからこそこの先に何が待ち受けてるか分からないか――気を引き絞めて行かないとな。

 

 

 

「気を引き締めるか……箒、頼む!」

 

「アントニオ猪木!!」

 

 

 

気を引き締めると聞いた一夏が、箒にビンタして貰っていたが、其れは気を引き締めるんじゃなくて気合の注入だから間違えるなよ?其れよりも、『頼む』だけで分かるとか、結構やってるのかこの遣り取りは?……だとしたら若干心配になって来たな、姉として。そして幼馴染みとしてな。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:イルジオン→???

 

 

……う……ぐ……此処は一体?医務室の様だが、知らない天井だ――少なくともドミニオンやアーク・ジェネシスの内部ではないのだろうが、ならば此処は一体何処なんだ?

其れ以前に、なんで私はこんな所に居るのだろうか?……私は確かオリジナル……違う、夏姫と、妹と戦っていた――其れで、その最中にアイツに、教授にバーサーカーシステムを強制的に発動されて……其れで、如何なったんだ?

其処からの記憶が無い……確かバーサーカーシステムは、発動したらターゲットを殺すか、使用者が死ぬかしなければ解除される事はなかった筈だ。

私が生きていると言う事は、私は夏姫を、殺してしまったと言う事なのか?……私はこの手で妹を、自分で望んだ妹を……

 

 

 

「あり、もう目が覚めたんだ?

 半日は眠ったままなんじゃないかと思ってたんだけど、僅か三十分で目を覚ますとは驚きだね~~?此れもスーパーヒューマンだからなのかな?」

 

「お前は……篠ノ之束?」

 

「大正解!私こそが正義の極悪マッドサイエンティストの束さんだよ~~!

 そう言えば君とはこうして面と向かって会うのは初めてだねイルジオンだったっけか?ハロハロ、宜しくこんにちわ~~!気分は如何かな?身体にどっか違和感とか感じない?」

 

 

 

一度に色々聞かないでくれ、私も少し混乱してるんだ。

お前の質問に答える前に、私は一体どうなったんだ?何故此処に居る?其れ以前に此処は何処だ?……夏姫は、私の妹は如何なった?

 

 

 

「いやぁ、君も一度に色々聞いてると思うんだけどねぇ?……だけど確かに、今の自分の状況を知っておいた方が良いかも知れないね。

 君はなっちゃんと戦ってた。あ、なっちゃんってのは夏姫ちゃんの事だから。その最中に教授ってのがバーサーカーシステムとか言う欠陥機能を外部から強制発動させた、此処までは覚えてる?」

 

「あぁ、其処までは記憶がある。」

 

「うん、それでね其の後はなっちゃんと暴走状態になった君がバトったんだけど、なっちゃんはバーサーカーシステムの解除の条件の穴を突く形で君を助けたんだよ。」

 

「システムの、穴?」

 

「バーサーカーシステムの解除条件には君の『死』が設定されていた……それを逆手にとって、なっちゃんは一度君の心肺機能を停止させてバーサーカーシステムを強制解除した上で、電気ショックで蘇生させたんだよ。

 でもって生き返った君は、スーちゃん……スコールちゃんが此処まで連れて来た。此処は、アークエンジェルの医務室って訳さ。」

 

 

 

アークエンジェルの医務室だったのか……教授に暴走させられた私は、夏姫によって止められたと言う訳か――一度殺してから蘇生するとは、随分と思い切った事をしたものだ。

巧く行ったから良かったようなモノの、失敗していたらアイツは姉殺しの業を背負う事になったのにな……だが、そのお陰で私はバーサーカーシステムから解放されて、こうして生きていると言う訳か。

流石に無茶苦茶な強化をされたおかげで身体のあちこちに筋肉痛の様な痛みがあるが、動けないレベルではないか。

だが、その方法で私を倒して解放したのならば夏姫は今は如何してるんだ?

 

 

 

「なっちゃんは、いっ君達と一緒にアーク・ジェネシスの内部に突入した。

 だからぶっちゃけ、盤面は最終盤に突入したと言って良いと思うんだけど……イルジオンちゃん、アーク・ジェネシスってのは外部からのアクセスってのは可能なのかな?」

 

「……其れを聞いてどうする?」

 

「可能だったら、ちょいとハッキングかましてやろうかと思ってね……教授――ジョージ・ワイズマンは、束さんにとっても因縁の相手だから、色々とやってやりたい訳さ。」

 

 

 

ジョージ・ワイズマン、アイツそんな名前だったのか。

まぁ、其れは良いとして、私がそれを素直に言うと思っているのか篠ノ之束?私は京都で夏姫の誘いを断ってライブラリアンに残ったんだぞ?……そんな私が軽々しくアーク・ジェネシスの事をバラすと思うか?

 

 

 

「うん。」

 

「もう少し悩んでから返事して欲しかった。一秒も無かったよな今?」

 

「ハッハッハ!天然チートバグの束さんの反応速度は人間の反応速度の限界をマッハで超えてるのさ!束さんの100m走の最高記録は、七秒四三だよ!

 非公式だけど、世界記録間違いない!!」

 

 

 

十秒の壁をアッサリ突破するな。そして0.1秒を縮めるのに必死に努力してるアスリートに謝れ。ウサイン・ボルトに全力で土下座しろマジで――ってのは今は置いておいて、何故私が言うと思ったんだ?

 

 

 

「君はもうワイズマンとは切れてると思ったから。

 ワイズマンは君を駒として斬り捨てたし、君もワイズマンの奥底にあったモノを知ったでしょ?――何よりも、君はなっちゃんと戦ったことで何かに気付いたんでないかい?

 もっと言うなら、其れに気付いてしまったからワイズマンは君を暴走させざるを得なかったんじゃない?当たらずとも遠からずじゃないかな此れ?」

 

「……降参、私の負けだ篠ノ之束。

 確かに私は夏姫との戦いの最中に、彼女の言葉で色々な事を思い出していた……私が私を生み出した者達にねだったモノ、其れが妹だった事、その妹として作られたのが夏姫だった事――そして、私が夏姫に対して抱いてた憎悪の感情と、夏姫が生まれたから私は破棄されたと言う記憶が、実は後付けの偽の記憶だったと言う事にな。

 笑い話にもならないが、私はコールドスリープで眠っていた間に、アイツに偽の記憶を植え付けられていたらしい。……其れを思い出した今、もうアイツは私の敵だ。私に妹殺しをさせようとしたのだからな。」

 

「うわぉ、束さんもドン引きするレベルの外道だった此れ……私とちーちゃんに白騎士事件を起こさせた黒幕だからトンでもねぇ奴だとは思ってたけど、此処までの腐れ外道だったとはとはね。

 生きる生ゴミとはこの事か!」

 

 

 

的確だな。若干矛盾してる気がするけど……生きる生ゴミ=ゾンビか?

まぁ、其れは良い……お前の質問に答えるのならば、アーク・ジェネシスに外部からアクセスする事は不可能だ。アイツも、お前なら其れをやってくるであろう事を考慮して、外部からアクセスする為にはアルファベットと数字を組み合わせた十七桁のパスワードを入れないといけないようにしないとしてたからね。

 

 

 

「十七桁って事は京って事?マジかいオイ。

 京とか、其れは流石の束さんでも骨が折れるなぁ?めっちゃめんどくさいじゃん……数字だけでも九京九千九百九十九兆九千九百九十九億九千九百九十九万九千九百九十九パターンもあるのに、其処にアルファベットも加わったら、組み合わせが天文学的な数値になるからね。

 外部アクセスは無理か。」

 

「だが、手が無い訳じゃない……私のジェノサイドフリーダムはまだ健在だから、転移機能は生きている――此れを使えば、アーク・ジェネシスの内部に行く事は可能だと思う。

 アーク・ジェネシスの何処に出るかは分からないけれどな。」

 

「マジで!其れは最高だね?……頼んで良いかなイルジオン?」

 

 

 

勿論だ、あの外道は私を良いように使ってくれたのだからな――だが、その前に何か食べさせてくれないか?夏姫と派手にバトルしたのが原因で物凄く腹が減っているんでな。

序に、この全身筋肉痛を治すのには、食べるのが一番だからね。

 

 

 

「君はビスケット・オリバかな?食べて治すって、そんな漫画みたいな方法は聞いた事がないよ。」

 

「此れもスーパーヒューマンの特性なのかもな……其れから篠ノ之束、イルジオンと言うのは私の本当の名前ではない。其れはアイツが記憶を上書きされた私に付けた名前だ。

 私の本当の名前はヴェル……英語で『頂点』を意味するヴェルテックスから付けられた名前だ。」

 

「ヴェルちゃんか……イルジオンと比べると格段に良い名前だと思うけど、なっちゃんのお姉さんとしてはオカシイかなぁ?見た目もめっちゃ日本人だしね。

 ――だから、君の名前は『桜姫(おうき)』って言うのは如何かな?

 なっちゃんが夏の姫なら、君は春を代表する花である桜の姫だよ……なっちゃんのお姉さんである君には、夏の前の季節の春を感じさせる名前が良いと思ってね。」

 

 

 

桜姫……良い名だな。その名前、有り難く拝領させて貰うよ篠ノ之束。

其れじゃあ、新たな名前を貰った所で腹ごなしだ……ハラミステーキ丼を肉二倍で、其れが主食で、おかずは唐揚げとタルチキ南蛮とメンチカツと回鍋肉。

味噌汁の代わりに叉焼麺、牛乳はパックでよろしく。

 

 

 

「いっや~、清々しい程の満腹メニューだけど、見事なまでに肉肉しいね此れ?」

 

「筋肉の損傷を治すのには蛋白質が何よりも重要だからな……其れを考えて肉中心のメニューにしただけさ。――本音を言うのなら、原始肉が欲しかったけどね。」

 

「流石にそこまでは用意してないなぁ?原始肉はロマンだと思うけど。」

 

 

 

ふ、冗談だよ篠ノ之束――オーダーしたメニューは本気だけどね。

それにしても、まさかこうして生きながらえる事が出来るとは思ってなかったな……夏姫との戦いは何方かだけが生き残るものだと思っていたからね。

だが、結果として何方も生きている……此れは、アイツも予想していなかった事かもしれないな。

 

 

 

「さてと、オーダーしたメニューが来たら其れは心行くまで食べて貰うとして、アーク・ジェネシスに転移するのは桜姫ちゃんの身体検査が終わってからね?

 幾ら目を覚まして、栄養補給したとは言っても可也無茶な事をやった訳だから、直ぐに動いても大丈夫か検査してから。それから、結構派手に壊されたから完全修復は無理でも、ジェノサイドフリーダムもある程度直した方がいいし、バーサーカーシステムも除去しないとだから。」

 

「……分かった、貴女に従うよ。」

 

本当ならば直ぐに駆け付けたい所だが、問題なく動けると判断されても、今の私では戦闘では足手まといになるだけだろうからね……だから、私は私で篠ノ之束と共に、お前に因果を応報してやるよ教授。

尤も、私と篠ノ之束が手を下す前に、お前は夏姫達によって滅されてしまうかもしれないがな。

――教授、お前は夏姫達には絶対に勝つ事は出来ないよ。勝てない理由がある……それが何であるのか、其れは一生お前には分からないだろうがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:夏姫

 

 

アーク・ジェネシス内部を進みに進んで、もうドレだけ進んだのか分からないな?

入った場所から何度も階段を上って来たから、アーク・ジェネシスの上部まで来たと思うんだが……果てさて一体何時になったらゴールに付くのやらなんだけれど、何て言うか此れまでに倒した敵がもう突っ込み所しかなかったわね?

 

 

 

「だな。

 チュートリアルのロボットに始まり、なんか未来で人間と戦争してそうな骸骨型のアンドロイド、ドラゴン族を装備する事で飛躍的にパワーアップしそうな機械龍、『ルックス5%低下』とか見た目を気にしてそうな女性型アンドロイド、なんか偶に燃えてる奴がいる『盗む』一撃で倒せそうなロボット、そして最早ロボットですらない物凄く縮小した鎌田のアレにしか見えないヤバそうな爬虫類的な何か……教授ってのはヤバい生物実験とかしてんのかよ?」

 

「アレは普通に気持ち悪かったわねぇ……怪獣は映画の中だけで充分だって、改めて思ったわ。」

 

「マッタク持って同感だよ楯無。」

 

映画とは違って進化しなかったのが救いと言う所か……っと、階段を登り切ったら外に出てしまったな?此処は、アーク・ジェネシスの屋上(?)か?

此れ以上進む事が出来ないのだとしたら、此処がゴールと言う事になるのだが、だとしたら教授とやらは一体何処に居る?……見渡す限り、何処にも居ないみたいだが?

 

 

 

「夏姫、此処は未だゴールじゃないみたいよ?

 此処から今度は下に降りるんじゃないかしら?……奥にあるアレ、多分エレベーターだと思うわ。」

 

「マリア……言われてみれば、奥にあるアレは只の円形の模様には見えないな?手すりみたいなモノも見えるし……よし、乗ってみるか。」

 

マリアが見つけたエレベーターらしき物の上に乗ってみると、ビンゴだ。下に向かって動き出した。……随分と降りて行くが、一体何処まで下りて行くのだろうな?体感的に、アーク・ジェネシスの半分程まで降りて行った感じだが、未だ降りるみたいね。

 

 

 

――ズゥゥゥン……

 

 

 

其れから更に降りた所でエレベーターは停止……其処からは長い廊下が真っすぐ伸びていて、その先には大きな門が――あそこがゴールと言う訳か。

道中には特に敵も居なかったので、サクッと門の前まで辿り着いたので……静寐、門を吹き飛ばしてくれ。

 

 

 

「了解!」

 

 

 

―バガァァァァァァァァン!

 

 

 

静寐のバズーカで門を破壊だ。

仰々しい音を立てて門を開けて入るのが普通なのだろうが、生憎とアタシ達は普通ではないのでな?少しばかり特殊な方法で中に入らせて貰ったぞ。

 

 

 

「いやはや、まさか門を破壊して入ってくるとは……流石はSEEDに覚醒した者達だと言っておこうかな?――ようこそ、此処がゴールだ。」

 

「やっとかよ……マッタク、招待したならゴールまでのルートくらいはちゃんと示してくれよ?何時になったらゴールに着くか分かったモンじゃないってのは地味にきついモノが有るからな。

 まぁ、こうして辿り着けたから良いけどさ……んで、アンタが教授ってやつか?」

 

「フッフッフ、正解だよ織斑一夏君。否、今は蓮杖一夏君だったか。

 私ことが教授こと、ジョージ・ワイズマン。ライブラリアンの総帥にして、君達が倒すべき敵の親玉と言った所だよ……それにしても七人も居るとは、私が思った以上にSEEDの覚醒を果たした者は多かったようだね。」

 

 

 

で、オーバーアクションでアタシ達を迎えたのが教授か。

この上ない悪人面に、髪をオールバックにして眼鏡をかけ、白を基調としたローブの様な服を纏っていると来たか……うん、紛れもなく教授だな。空の軌跡のラスボス其の物だ。……つまり外道だな。

アタシと姉さんに殺し合いをさせようとした奴が外道でない筈がないからね。

……時にSEEDに覚醒した者が予想よりも多かっただと?

 

 

 

「うむ、その通りだ蓮杖夏姫君。

 君と更識楯無君、蓮杖一夏君以外では篠ノ之箒君と凰鈴音君位だと思っていたのだが、鷹月静寐君とマリア・C・レイン君……いや、セシリア・オルコット君も覚醒するとは思っていなかったよ。

 織斑マドカ君が覚醒しなかったのも予想外だ。」

 

「予想と言うのはあくまで予想であって確定した事ではないと言う事だな……其れに、何もかもがお前の予想通りに行って堪るか。

 予想通りに事が進むのは快感だが、予想通り過ぎると面白みに欠ける。人生と言うモノは、予想外の何かが起きるから楽しいモノだ――刺激のない人生なんて、退屈で死んでしまうよ。」

 

「ククク……最高の人間である君が言うと説得力があるねぇ蓮杖夏姫君?いやはや、最高の人間である君だからこそ言えた事なのかも知れないな?」

 

「そうねぇ、夏姫は確かに最高の人間であると言えるわ……容姿端麗で頭脳明晰、戦闘では誰よりも頼りになるからね――でも、だからこそちょっと聞きたいのだけれど、その夏姫とタメ張れる私は本当に普通の人間なのかしら?

 その辺は如何思うのか貴方の意見を聞きたいわ教授。」

 

 

 

楯無、若干ずれてる。聞きたい事ずれてるから。

確かにスーパーヒューマンであるアタシと互角に遣り合う事が出来て、織斑計画の量産型唯一の成功例である一夏に勝てて、挙げ句の果てには各国の代表候補生と一対多数で模擬戦やって勝つお前は一体何なのかと思わなくもないけれど、お前は誰でもない更識楯無であり、アタシの彼女だ。その答えじゃ不満か?

と言うか、外道に聞くまでも無いだろう。

 

 

 

「そうだったわね……そしてその答えに満足よ夏姫。」

 

「満足して頂けて恐悦至極だ。」

 

「この局面でもぶれないか……時に蓮杖夏姫君、イルジオンとの姉妹決戦は楽しんでくれたかな?」

 

「楽しめる訳が無いだろう……マッタク持って、無理矢理どぶ川を見せられた気分だね――姉さんがアタシに抱いていた憎悪や嫉妬の感情は、貴様が植えつけたモノだったのだろう?

 其れだけでも業腹物だったと言うのに、貴様は更に姉さんを無理矢理狂わせた……絶対に許さん。」

 

「其れは残念だが……君が此処に居ると言う事は、イルジオンは負けたと言う事になるが、そうなると君はイルジオンを殺した訳だね?

 姉を殺した気分は如何かな?」

 

「最高にハイってやつだ。」

 

「……何だと?」

 

 

 

この答えは予想外だったみたいだな……まぁ、アタシは確かに一度姉さんを殺した訳だが、その後で蘇生しているから、姉さんをバーサーカーシステムから解放したと言う意味では、最高にハイな気分と言うのも間違いではない気がする。

だが、この反応が予想外っぽいと言う事は、教授はイルジオンが蘇生した事は知らないみたいだな?……バーサーカーシステムの強制終了でイルジオンの死を知ったのならば、蘇生してるとは思わないか。

其れは逆に好都合だな?姉さんが生きている事を知ったら、コイツが何をしでかすか分かったモノではないからね。

 

「そんな事よりも、アタシはお前に聞きたい事があるんだよ教授……六年前に、束さんと千冬さんに白騎士事件を起こさせたのは、お前だな?」

 

「……其処に気付いたか……その通りだよ蓮杖夏姫君!

 私はスーパーヒューマン計画の成功例であるイルジオンを手に入れたが、彼女の力になる物がなかったのでね……篠ノ之束君が作ったISを兵器として認識させるべく彼女と織斑千冬君に白騎士事件を起こさせたのだよ。

 アレだけの性能のあるISを兵器として使わない手はなかったからね。」

 

 

 

成程な……だ、そうだぞ箒?

 

 

 

「そうか……貴様が姉さんの夢を歪めた張本人だったと言う訳か……下衆が、そっ首叩き切るだけでは済まさん。五体を十七分割にして亜空間に葬り去ってやるから覚悟しろ。」

 

 

 

――轟!!

 

 

「「箒!?」」

 

 

 

……白騎士事件の真相を知った箒の怒りが限界突破したみたいだな?溢れ出した闘気でリボンが弾け飛んで、長い黒髪が解き放たれ、更に闘気で銀色に染まっているからね。

腰までの銀髪に身の丈以上の長刀……セフィロスだな此れは。

 

だが、其れ以上に貴様が白騎士事件の黒幕だと言う事が分かって嬉しかったのはアタシもだ……漸く父さんと母さん、そしてミツルの仇を討つ事が出来るのだからな。

 

「アタシの家族の命を奪った代償、払って貰うぞ教授。」

 

「家族か……血は繋がっていないのに、其れでも君は亡くなった彼等を家族と呼ぶのか?」

 

 

 

黙れ。確かにアタシと父さん達は血は繋がって無かったが、それでもアタシ達が家族であった事は誰にも否定させん――其れに、家族と言うのは血の繋がり以上に魂の繋がりが重要だ。

アタシと一夏だって血は繋がってないがもうすっかり姉弟になっているからな……尤も、其れをいくら言った所で貴様には理解出来ないだろうと思うわ。

でも、其れは其れとして、白騎士事件の黒幕と会う事が出来たのは最高にハッピーだったとしか言えないわね?……アタシにとっての真の仇と出会えた訳なのだから。

束さんの夢を穢し、アタシから家族を奪ったその報いを、今此処で受けて貰うわ教授――否、ジョージ・ワイズマン。貴様には地獄すら生温い……此処ではISを展開する事は出来ないみたいだが、ならば貴様が提供してくれた武器で滅するだけだ。

 

 

 

「教授、ハイクを読む準備は出来たか?」

 

「姉さんの夢を穢した相手……滅殺だ。」

 

「取り敢えずアンタは死刑。其れはもう決定だから。上告しても無駄だからね!」

 

「最高裁に上告しても棄却されるだけだからね……大人しく、死刑を受け入れるべきだと思う。って言うか受け入れろこの腐れ外道。」

 

「静寐!またキャラが崩れてるわ!!」

 

「あらあらまぁまぁ……でも、皆の意見にはお姉さん全面的に賛成かな?……これ程の外道を生かしておく意味は何処にも無いからね――学園の生徒会長として、更識の長として、貴方を狩るわ教授。」

 

 

 

此れだけの戦力を前に、最早貴様に打つ手はあるまい――貴様の野望、今此処で潰える時だ……覚悟するんだな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 


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