Infinite Breakers   作:吉良/飛鳥

52 / 123
同性でのデートと言うのも悪くないなBy夏姫      ふふ、楽しみましょうね夏姫By刀奈


Break51『夏休み~デートをしましょうN&K~』

Side:???

 

 

織斑一秋と篠ノ之散……出来損ないのクズかと思っていたが、教授の強化改造があったとは言え中々やるじゃないか?戦闘エミュレーターを使った訓練では私に次ぐスコアを叩き出したのだからな。

だが、其れであっても蓮杖一夏と篠ノ之箒に勝てるかと言われたら疑問が残るけれどね……まぁ、取り敢えず最低限使える奴等だと言う事が分かっただけでも良しとしておくべきだろう。

 

能力そのものは、此れからの訓練次第で如何にでもなるからね。

だが教授、貴方の思惑は其れだけはない筈だ――一体、何を考えているんだ?

 

 

 

「ククク……彼に、織斑一秋君に彼等を会わせたらどんな反応をするか楽しみだとは思わないかね?

 更に、彼に己が出生の秘密を伝えたその時に、どんな反応をするのか、とても楽しみなのだよ――残酷な事実を背負う覚悟をするのか、それとも心が完全に壊れてしまうのか。

 まぁ、結果が如何であるにせよ、私にとっては都合が良いだけの事。――今は、その時を待つだけだ。」

 

「そうか。」

 

矢張りお前の其れは、悪趣味を通り越して完全に病気だ――一度精神内科を受療する事をお勧めするぞ?

 

 

 

「其れは御忠告痛み入る――だが、此処で止まるなどと言う事は出来ないから、少しくらい狂っていた方が私にとっては丁度良いのだよ……君にだって覚えがある事ではないかと思うのだが?

 自分が何者であるかを知った時、彼女を殺したくなったのではないのかね?それも、狂ってしまうのではないかと言うレベルで。」

 

「さぁな。」

 

其れに答える義務はないから黙秘させて貰う――尤も、お前は既に分かっているのかもしれないがな……一体何処まで見通しているのか知らんが、まったく薄気味悪い奴だ。

マッタク底の見えない濁った瞳……教授が真面な思考を持った人間でないのは間違いないだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Infinite Breakers Break51

『夏休み~デートをしましょうN&K~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:夏姫

 

 

夏休みも残り僅かという事で、今日は刀奈とデートだ。――女同士で出掛けるのをデートと称して良いのかは甚だ疑問ではあるが、アタシと刀奈は恋人同士だから間違ってもいないか。

待ち合わせは駅前何だが、もう少し遅く家を出ても良かったかもしれないわね?――9時の待ち合わせだったのに8時半には駅前に到着していたからな。

 

なんだかんだ言いつつ、アタシも刀奈とのデートは楽しみにしていたんだな。――自分で言うのもなんだが、今日の服装は結構気合入ってるし。

ボトムズがデニムのホットパンツと膝下のロングブーツなのはお約束だけれど、今日はトップも黒のタンクトップと赤いジージャンの取り合わせ。

タンクトップだから胸元も大きく開いて、セクシーさが増しているコーディネートだ。

勿論、へそピが見えるようにタンクトップは6分丈でな。

 

 

 

「ゴメンね夏姫、待ったかしら。」

 

「いや、アタシも今来た所だよ刀奈。」

 

此処で刀奈が到着――まだ待ち合わせ時間の前だから、お約束なやり取りをした訳だが、刀奈のファッションコーディネートは中々センスがあるな?……正直な事を言うと、プロがやったんじゃないかって思う位だ。

七分丈のジーパンに、和の意匠を取り入れた六分丈の上着(要するにへそ出し)に、標準装備の扇子と来たからな。

 

 

 

「あらそう?実は結構前から待ってたんじゃない?」

 

「だとしても、待つのもまたデートの内だろう?」

 

「~~~!!ゴメン、其れちょっと反則だわ夏姫。なんだってそんな事がサラッと言えるのよ貴女は!

 もう、本当に夏姫ってばその辺の男よりもずっとイケメンなんだから!!軽薄なナンパ男子に、貴女の爪の垢を煎じて飲ませてあげたいわ。」

 

 

 

そう言われても、此れが素だから如何しようも無いんだが……まぁ、其れは良い。

其れよりも、先ずは何処に行く?特に何処に行くかは決めてないから、映画でも水族館でもどこでも良い――いっその事、ウィンドウショッピングを楽しむと言うのも悪くないしね。

 

 

 

「其れなんだけど、ちょっとこれ一緒に行ってみない?」

 

「……『大ウルトラマン展』?」

 

「あぁ!違う違う、そっちは簪ちゃんと行こうと思ってた奴だわ。本命はこっち。」

 

 

 

あぁ、間違いだったか……正直ちょっと驚いた。まぁ、簪はアニメとか特撮が好きらしいから、確かに特撮物の展覧会というのは喜ぶかもな。

で、新たに刀奈が出したチラシは、『エッシャー~トリックアートの世界へようこそ』――ふむ、此れは面白そうだな?

エッシャーと言うとアレだろ?美術の教科書に出てくる『無限にループする、現実にはあり得ない滝』の絵を描いた人だよね?

 

 

 

「そう、そのエッシャー。

 視覚の錯覚を利用して、『この世に存在しえない空間』を幾多も生み出したマジシャンとも言うべき芸術家――否、彼は芸術家と言うよりも一種の奇術師と言った方がしっくり来るかも知れないわね。」

 

「芸術家ではなく奇術師か……視覚の錯覚を巧みに利用して、見る者を不思議な世界へと誘う資格の奇術師か、確かにそう言えるかもな。」

 

流石は刀奈、良いセンスだな?

デートの定番である遊園地、水族館、プラネタリウムなんかを除外して、美術館での企画展を持って来るとはね――中々に気合を入れたと言う所かな此れは?

 

 

 

「そう取って貰って構わないわ。

 好きな子との初デートなんだから、気合を入れるって言うのは、逆に当然の事じゃないかしら?」

 

「ふふ、違いない。」

 

「そう言えば一夏君やラウラちゃん達は如何してるのかしら?」

 

「一夏は鈴と箒と一緒に両手に花のデート。マリアとラウラと乱とメアリーはISRIの本社に行ってる。

 マリアは、プロヴィデンスのドラグーンのインターフェースの調整。

 ラウラ達は、機体が二次移行した事でフルスキンになった訳だが、フルスキンになっただけでPS装甲は搭載されてないから、束さんが直々に調整を施してPS装甲を機体に搭載するらしい。」

 

「……ヤタノカガミじゃない辺りにまだ常識を感じるわね。

 尤も、束博士の頭脳レベルを考えると、その内PS装甲とヤタノカガミの複合装甲を開発しそうな気がするのだけれど……」

 

 

 

空恐ろしい事を言わないでくれ刀奈。

物理攻撃もビームも効かない装甲って、そんなのを相手にしたら如何やって勝てと言うのか――少なくともモンドグロッソをはじめとした国際大会では間違いなく禁止になる代物だ。

そもそもにして、束さんが考えた零落白夜は本気で禁止レベルだからね……その禁止兵器を搭載している一夏のカリバーンストライクこそが、現行ISでは最強なのかも知れないな。

 

……これ以上は怖い事になるから考えるのは止めておくべきだな。――今はデートに集中だ。

刀奈が誘ってくれたエッシャーの企画展、楽しみだな。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 

そしてそのエッシャー展は、予想以上に楽しめたな?美術の教科書にも載ってないような様々なトリックアートが展示されていただけでなく、自分で簡単にトリックアートを作れるブースも設けられていたからね。

アタシも刀奈もついつい夢中になってトリックアートの作成に熱中してしまったよ。

 

「大人だけでなく子供でも楽しめる企画展だったな此れは。最後のブースも大人気だったし、美術館側からしたら大成功と言う所じゃないか?」

 

「うふふ、実際大成功と言えるわよ夏姫。

 この企画展の来訪者数は、今日の時点で延べ10万人みたいだから♪」

 

「本当か?」

 

まさか、其れ程だったとは予想外だ。

まぁ、其れだけこの企画展が人の興味を誘ったと言う事なんだろうね――アタシも、ガラにもなく夢中になってしまったからね。美術鑑賞と言うのにはそれ程興味があった訳じゃないが、偶にはこんなのも悪くはないかもな。

最後に、記念撮影が出来るコーナーで1枚撮って行かないか?学芸員の人が写真を撮ってくれるみたいだし。

 

 

 

「良いわね。初デートの記念って事で♪

 どうせだから夫々のスマホで1枚ずつ撮って貰いましょう?勿論、ポーズは1枚ずつ変えてね♪」

 

「成程、そう来たか。まぁ、断る理由も無いがな。」

 

そんな訳で撮影担当の学芸員さんにスマホを渡して1枚ずつ。

因みにポーズは、

 

・1枚目 アタシ:左手を腰に当てて右手は人差し指を立てて顔の横、『燃えたろ』のポーズ。

      刀奈:右手の親指をズボンのポケットに引っ掛けて、左手は人差し指を立てて頭上を指さす、『月を見るたび思い出せ』のポーズ。

 

・2枚目 アタシ:左手をポケットに突っ込んで、右手で髪をかき上げるポーズ。

      刀奈:右手に持った扇子を顔の近くで広げ、左手を右の肘に添えたポーズ。因みに扇子の文字は『トリックアート最高♪』

 

 

ってな感じで撮った訳なんだが、後のパネルは一体何だったんだろうな?

企画展の題名が書かれてはいたが、後はよく分からないカラフルな点があっただけ……何だってあんなモノが記念撮影コーナーの背景として使われているんだ?

 

 

 

「うふふ、如何やら記念撮影に最後のトリックアートが仕込まれていたみたいよ夏姫?」

 

「何?……成程、こう来たか。」

 

スマホに記録された画像を見て納得だ。

アタシと刀奈がポーズを取ってる後ろには、名画『真珠の耳飾りの少女』が描かれていたからな――距離を離して見る事で、正体が明らかになるトリックアートだが、此れはただ距離を離すだけじゃなく、写真サイズに縮小して初めてその正体が分かると言った所だね。

 

美術館の売店で、企画展の図録を買って、今度は美術館のすぐそばにある湖を適当にぶらついている。

気が付けば自然に手を繋いでいて、其れが五指を絡めた、所謂『恋人繋ぎ』なんだからアタシも刀奈も、すっかり恋人同士という事か……『真実の愛に年齢性別は関係ない』とは誰の言葉だったか知らないが、確かにそうかも知れないな。

 

「刀奈、アタシ達の前に現れた此の黒鳥の態度を如何思う?」

 

 

『ぐわ~~~』

 

 

「翼と足を完全に畳んだ状態で、首だけ伸ばして威嚇してるとか、やる気があるのかないのか分からないわねぇ?」

 

「だよな。」

 

まぁ、此の暑さだから黒鳥もやる気が出ないんだって事にしておこう。

取り敢えず湖畔の公園で一休みするか――流石に暑いから、何か冷たい飲み物でも売店で買って来るよ。刀奈は何が良い?

 

 

 

「スッキリ爽やかなハチミツレモンのサイダーをお願い。えっと、お金……」

 

「あぁ、其れ位はアタシが出すよ。飲み物位なら大した額じゃないし、こう言う所でカッコつけるのは、アタシの役目だろ?」

 

「そう言われたら何も言えないわね――なら、有り難くゴチになるわ夏姫。」

 

 

 

そうしてくれ。

さてと、売店で刀奈のハチミツレモンサイダーとアタシのブラックレモン(レモン果汁入りコーラ)を買って公園に戻って来たんだが、何やら刀奈がロクでもなさそうな男共に絡まれてるな?

鼻ピンの金髪ボブカット、グラサンの赤毛箒頭、両腕にタトゥーを彫り込んだドレッドヘアー、7色の坊主頭のガングロ……超弩阿呆の集団が身の程を知らずに刀奈をナンパして来たって言う所だろうな此れは。

って言うか、ナンパしてるだけじゃなくて何を気軽に触ってるんだ?……何だか、物凄く腹が立って来たな。

 

 

 

「ねぇ彼女、俺達と遊ばない?退屈させないよ絶対。」

 

「あら、魅力的なお誘いだけど、丁重に断らせて貰うわ。

 其れに生憎と私は1人じゃなくて連れが居るの。残念だけど、貴方達の誘いに応える事は出来ないのよ――其れに、面白いお馬鹿な子は嫌いじゃないけど、面白くないお馬鹿さんの相手をするのはとっても疲れるのよ。

 だから、さっさと立ち去りなさいな♪」

 

 

――【ナンパお断り♪】

 

 

 

「なぁ、若しかして俺達……」

 

「馬鹿にされた?」

 

「あら、そう聞こえなかった?言葉の選択と扇子の文字を間違えたかしら?

 私に声を掛けるのなら、もう少し脳味噌の皺を増やしてからにしてほしいわね。こう言えば分かるかしら、茹で卵の脳味噌君達?」

 

「テンメェ!女のクセに意気がんじゃねぇ!!」

 

 

 

ナンパ野郎な上に大馬鹿野郎だったか。まぁ、あんな格好をしている奴が真面な人間だとは思わないけれどね。

刀奈の挑発的な態度にブチ切れて、刀奈に殴りかかったが……そんな狼藉をアタシが許すと思っているのか?――と言うか、三下にもならないクズが刀奈に触れようなどと言う事が烏滸がましいと知れ。

 

 

 

――バッキィィィ!!!

 

 

 

なので、ダッシュからのジャンピング踵落としで撃滅!!……アタシが撃滅しなくても、刀奈なら大丈夫だったろうが、割って入らない理由はなかったから手加減なしだ。

お前等、刀奈に何か用か?――コイツはアタシの女なんだけどな?

 

 

 

「て、テメェ!行き成り何しやがる!!」

 

「何しやがるはこっちのセリフだ。お前等こそ、アタシの彼女に何をしてるんだ?――百歩譲ってナンパとボディタッチは良いとして、殴りかかるとか、男としてどうかと思うぞ。」

 

「だからって、普通踵落としかますか!?

 って言うか彼女って、其れだと百合だぜお嬢ちゃん?」

 

「だから何だ?

 アタシも刀奈も女同士だが、そんな物は関係ない――否、コイツは女であるアタシが惚れる程に魅力的な奴だったと言う事だ……貴様等の様な下衆が触れて良い物ではない。

 何よりもコイツは、IS学園の生徒で屈指の実力者。

 更にISRIの企業代表兼ロシアの国家代表だ……此処まで言えば、お前等みたいな1bitの脳味噌でも理解出来るだろう?」

 

「「「「企業代表でロシア代表!?」」」」

 

「序に、IS学園の生徒会長だったりするのよね此れが♪

 学園の内外問わずに結構な権力も持ってるし、私がその気になれば貴方達を文字通り『なかった事』にする位は訳ないわよ?」

 

「「「「マジ、すいませんでした!!」」」」

 

 

 

刀奈の素性を明かしてやったらアッサリと逃げやがった……所詮はヘタレだな。

まぁ、アイツ等の音声は全て記録してるから、アイツ等がまたフザケタ事をしたその時は、此の音声データを公開して、社会的にアイツ等を抹殺するだけだわ。

時に、怪我はないか刀奈?

 

 

 

「怪我は無いけどアイツ等に結構触られたわ。」

 

「如何やらその様だな?にしては余裕があったみたいだけど。」

 

「その程度で慌てたら相手の思う壺だから我慢してただけよ。実を言うと、ちょっとだけおっぱいも触られた。」

 

「普通に猥褻罪じゃないのか其れは?」

 

「指先がちょっと触れただけだから、気にもしないけど、私の唇もおっぱいも夏姫の物なのだけれどねぇ……」

 

 

 

そう言う問題じゃないと思うんだが……なら、取り敢えずハグだな。――そして、キスだ。……自分で言うのも如何かと思うが、今のでリセットだ。

悪くないだろ?

 

 

 

「うん、浄化~~♪……好きよ夏姫。」

 

「知ってる。アタシもだよ刀奈。」

 

本気でお前がパートナーで良かったと思っているからな。――だが、其れなら刀奈をあそこに連れて行く必要があるかもだ。……アタシの大事な人が刀奈であると言う事を、あの人達に伝えておくべきだろうからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:刀奈

 

 

夏姫との初デートは色々と波乱に満ちてたわね?

美術館は何も問題なく終わったけれど、湖畔の公園では私がナンパされて、昼食で入った店は、強盗に襲われたしね――まぁ、強盗如きは私と夏姫で制圧したけれどね。

って言うか、ライフルの弾を事もなく素手で掴み取った夏姫は本気でハンパないわ!……まぁ、ビームを斬る事が出来る夏姫にとってライフルの弾を掴むなんてのは雑作もない事かもしれないけれどね。

 

そして今は、湖畔の公園でクレープを満喫中。

話題のミックスベリーを食べたかったのだけど、売り切れじゃ仕方ないわね――なので、夏姫がストロベリー、私はブルーベリーね。

言っても仕方ない事かもしれないけど、ミックスベリーは食べたかったわね。

 

 

 

「その気持ちは分からなくもないが、そもそもあの店にミックスベリーのクレープは存在してない。」

 

「へ、そうなの?」

 

「メニューになかったからな。

 だけど、ミックスベリーは食べられただろ?アタシとお前のクレープを交換する事でな。」

 

「!!」

 

そ、其れは確かにそうかも知れないわね。

互いに一口ずつとは言え、私は夏姫の、夏姫は私のクレープを夫々一口ずつ貰った訳で、其れが混ざってミックスベリーか――ふふ、中々洒落たネーミングね♪

 

 

 

「『ミックスベリーのクレープを食べれば』恋愛が成就するって。」

 

「ストロベリーとブルーベリーのクレープを食べさせ合う事が出来るようになれば、より深い仲になったと言う事も出来るからだろうな。」

 

 

 

夏姫とより深い仲……うん、最高ね!!これでもう私達はラブラブカップルね♪

 

 

 

「ラブラブカップルって……一夏達に比べればまだまだじゃないか?だけどまぁ、今日はとっても楽しめたよ刀奈。

 そろそろデートも終わりなんだが、最後に行きたい場所があるんだけど、付き合ってくれるか?」

 

「あら、其れ位は大丈夫よ。」

 

「そうか、助かるよ。」

 

 

 

そう言って、夏姫は花屋で花束を買い、駅の売店でイカの塩辛と卵焼きと唐揚げを買っていたけど、其れは一体何なのかしら?……明らかに色々とマッチしてないんだけれど?

 

 

 

「此れから行く場所で、人に会う事にしてるんだよ。」

 

「あら?じゃあその人への御土産って事かしら?」

 

「うん、まぁそんな感じだ。」

 

 

 

夏姫にしては歯切れの悪い答えだけれど……電車を乗り継いで辿り着いた先で、その正体が分かったわ――私達が到着したのは、『墓地』だっのだから。

って言う事は、夏姫の目的は……お墓参り?

 

 

 

「正解だ刀奈。

 マッタク、流石に6年も放置してると、随分と汚れてしまったな――此処が、アタシの父さん達の墓だ。……漸く、墓参りする事が出来たよ。

 父さん、母さん、そしてミツル……ずっと来れなくてゴメンな。アタシだけ生き残ってしまった事は、少しスマナイと思うけど元気でやっているよ。

 ……こんな言い方をしたら怒られるかもしれないが、白騎士事件があったから今のアタシが居るって言えるかもだ……アレが無かったら、今の仲間達と出会う事も無かっただろうしね。兎に角、アタシは元気でやってるから安心してくれ。

 そして、今日は紹介したい奴が居るんだ……更識刀奈――またの名を更識楯無。IS学園の生徒会長であり、アタシの一番大切な人だ。

 女同士ってのには驚いたかもしれないけど、刀奈がアタシの選んだ人なんだ……アタシは、誰よりも更識刀奈を愛しているからな。」

 

 

 

おぉっと、ぶっこむわね夏姫?

でも、夏姫が此処まで言ってくれたんだから、其れに応えないのは有り得ないわ。――初めまして、夏姫のご両親と弟君。

今し方夏姫から紹介された更識刀奈です――この様な若輩者の小娘が、生き残った1人娘と結ばれると言うのは危惧される事でしょうが、其処は安心して下さい。

私は、必ず夏姫を護ります。夏姫の為なら、更識の部隊を運用しても良いと思ってますから。

 

 

 

「ふ、頼もしいな。

 父さん、母さん、孫の顔を見せてやる事は出来ないが、アタシはアタシの一番大切な人を見つけた、其れで納得してくれないか?――アタシの名に懸けて、刀奈を不幸にするような事はしないって誓うよ。

 改めて父さん、母さん、ミツル――彼女が、更識刀奈がアタシの一番大事な人だ。

 だから天国で見守っていてくれ、アタシと刀奈の行く末をな。」

 

「不束者ですが、宜しくお願いします。」

 

私がそう言った瞬間、お墓が輝いた気がしたけれど、アレは私へのメッセージだったのかもしれないわね――まぁ、解読する事が出来る代物じゃないでしょうけれど。

でも、貴方の家族に認められたと言うのは嬉しいわ夏姫。

 

 

 

「あぁ、アタシも嬉しいよ。」

 

「同じ想いなら最高よね♪」

 

そしてそのまま、夕陽をバックにキス……ふふ、最高のシチュエーションね此れは。

人生初のデートは最高だったわ――夏姫の家族にも会う事が出来たしね。

ふふ、今度は夏姫に、簪ちゃん以外の私の家族を紹介しないといけないかも知れないわ――私が女の子と付き合ってると言う事を知ったら、どんな反応をするのか。

ちょっぴりたのしみね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:???

 

 

ふん、姉の七光りと侮っていたが、如何やらコイツ等は素の能力は高いようだな、織斑一秋と篠ノ之散……直ぐに根を上げるんじゃないかと思っていたが、あのハードな訓練に耐えきったからね。

まぁ、アレに耐えられるように教授が調整したと言うのもあるのだろうけれど。

取り敢えず、今のコイツ等なら並の代表候補生には勝つ事は出来るだろう……尤も、蓮杖夏姫達にはまだまだ遠く及ばないだろうがな。

 

で、今はコイツ等をアタシと教授以外のメンバーが居る場所まで案内している。同じ組織に属している『仲間』の顔と名前は知っておくべきだし、アイツ達もそろそろ待ちきれなくなっている頃だろうしな。

 

 

 

「お前と教授以外のメンバーって一体どんな奴なんだ?まさかと思うが、お前と同じ顔の奴がもっさり居る訳じゃないよな?」

 

「其れはない。まぁ、あながち全くの間違いとも言い切れないが、少なくとも私が沢山居る訳じゃないよ。」

 

「どういう事だ?」

 

「着けば分かるさ。」

 

さてと此処だ。

 

 

 

――ガウゥゥン……

 

 

 

「漸く連れて来てくれたのか姉貴?待ちくたびれちまったぜ。」

 

「そう言うな。

 殆ど壊れかけていた身体を治し、更に強化までしていたんだ。此れでも寧ろ予想よりも早かった位だ。」

 

其れだけ、教授が力を入れたと言う事でもあるけれどな。

さて、目的地に着いて『仲間』とご対面した訳だが、どんな気分だ織斑一秋?篠ノ之散?

 

 

 

「此れは……!?」

 

「一体何の冗談だ……!!」

 

 

 

「冗談じゃなくて現実だぜ兄さん――漸く会えたな……俺は『ツヴァイ』……アンタの弟さ。

 そして俺だけじゃなく、此処に居る全ての俺が遺伝子上はアンタの弟って事になる。」

 

「クックック……まぁ、そう言うこった。

 俺等はアンタに会うのを楽しみにしてたんだぜぇ兄上様よ?俺の名は『ツィーン』こんな言い方は妙かもしれないが、仲良くやろうぜ兄上様?」

 

「お前が俺達の兄貴か……流石によく似てるぜ。

 俺の名は『アハト』。お前が此処に来たと聞いて、いつ会う事が出来るのかと待ちわびてたぜ。」

 

 

 

「一秋の、弟だと!?」

 

「弟どころじゃない、コイツ等は全員俺じゃないか!!其れに、俺にはあの出来損ない以外の弟なんて居なかった筈だ!!」

 

 

 

予想以上に驚いているみたいだが、其れも当然だろうね。

誰だって部屋の中にいる無数の『自分自身』が居るのを見れば言葉を失うってモノだ――此の部屋にいるのは、全員が『織斑一秋』と同じ容姿をしているのだからね。

……明確な自我を持っているのは、ツヴァイ、ツィーン、アハトの3人だけで、残りは自我を持ってない人形同然ではあるのだけど。

 

 

 

「んな、コイツ等は!まさか!!」

 

「そのまさかだ。」

 

コイツ等はお前のクローン。もっと正確に言うなら、織斑千冬の量産化に失敗して生まれた者達だな。

まぁ、要するに不良品だった訳だが、お前同様教授によって可成り強化されているから、並の相手では太刀打ち出来ない程の力は持っている。

 

そしてお前は織斑一夏と共に、僅か2体の『量産型織斑千冬』の成功例だったと言う訳だ、織斑一秋――否、量産型プロトタイプ『ヌォイ』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。