或る、晴れた日の事。
「国木田先生!」
突然名を呼ばれ、振り向くと、よく知った顔が目の前に在った。
「…彩香か?」
「はい!そうです!」
国木田君の知り合いかい?、と俺の隣に居る同僚、太宰が訪ねた。
「はい、国木田先生に昔教鞭を執って頂いた、三条彩香と云います。其方の方は国木田先生と如何いう関係で?」
「私は太宰治。国木田君の同僚だ。確か国木田君、前職は数学の教師だったっけ」
俺が嗚呼、と答えると、彩香は驚いたように目を見開き、「国木田先生、新しい職場もう見つけたのですか」と云った。
「今は武装探偵社と云う処で働いている。聞いた事が有るだろう」
「知ってます!確か、昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る薄暮の武装集団、と噂には聞いていましたが…真逆国木田先生がそのような危険なお仕事をされていたとは思いもしませんでした」
「そこまで危険な仕事でも無い。今では多少の荒事も有るが殆どが盗人退治や太宰の始末しかしていない」
「盗人退治と並べられると何か照れるね」
照れる処では無い。
「少し、興味が涌いて来ました!もし良ければ探偵社を見学に行ってもよろしいでしょうか?丁度暇をしていたところなので」
「構わないよ、ねえ国木田君?」
「嗚呼。太宰に振り回されるよりかは遥かにマシだ」
こうして俺達は、彩香を案内する為、探偵社に戻った。
「戻りました」
「こんにちはー…」
探偵社に入ると、中には新入りの中島敦、先輩調査員の江戸川乱歩さん、専属医の与謝野先生が居た。
「国木田ー!頼んでおいた駄菓子はー?」
乱歩さんが頬を膨らませながら尋ねる。
「済みません、乱歩さん。何時もの駄菓子屋に行ったのですが、生憎売り切れていると。明日にはまた仕入れるそうなので、また買いに行ってきます」
「それじゃあ仕方ない。明日まで待とう。…それで、其処に突っ立ってる女の子は?」
元生徒の三条彩香です、と云うと、乱歩さんは興味を持ったらしく、
「ねえ、君幾つ?」
「好きな駄菓子とか在る?」
「それより駄菓子持ってない?」
と質問攻めをしている。
「えーっと…駄菓子は持っていませんが、キャラメルなら…」
彩香は
「どうぞ」
有難う、と云って乱歩さんはキャラメルを口に放り込み、とろけそうな表情を浮かべた。
「すっごく美味しいねこのキャラメル!口の中でとろーんって溶けてくみたい!」
「そうですか?
にっこりと微笑む彼女は、何故だか美しく感じた。