え……と。
僕は今、夢を見ているんでしょうか。
それとも、たちの悪いドッキリで頭でも打って、たちの悪い異世界にでも飛ばされたんですかね?
「おい童貞くん! もっと呑めよ~っ」
この黒くて長い髪を引っ下げてるクールビューティーな女は悪魔か?
「なんだ、もっと喋るおもしろい人かと思ってたけど、こんなにおとなしいぃんだ」
この艶々した栗色カールを指でくるくるしている女は女狐か?
「……」
それにあのスマホばっかいじってるすっごーくつまんなそーな子猫ちゃんは本当にメス猫なんじゃないんだろおなぁーーー!!
えーーーっっっ!?? 間宮あああああぁぁぁぁぁ!!!
間宮を物凄い形相で睨みつけるが、一向に目が合わない。今ならこの目力だけで大魔王を倒せる気がする。でもあいつ絶対わざと目を合わせないようにしてる。
するとクールビューティ
「あの落とし穴三十連発はもうお腹よじれるほど笑ったわー。あの時ちょっとへこんでてさ、一気に元気でたよ。で、あたしこいつ好きだわーって思って」
「え……そうですか? それは……良かった」
まさかのベタ褒めに、怒りがすっと引き、まんざらでもないはにかんだ笑顔を見せた。
「ぷっ!」
すると、藍は急に噴出してけらけら笑い出した。
「ごめん、だめだ、だめだこりゃ笑っちゃう!顔見ただけで笑っちゃうよ~」
そして一人で腹を抱えて笑い出すと、栗色カールの
「う……ウナちゃん、良かったわね、みんな喜んでくれてて……ね……」
ばつの悪そうな顔をしながら、間宮が弱々しく消え入りそうな声でそう言った。
「……」
「ウナちゃん?」
「……」
「ウナ……」
「……うっ……!」
「!?」
優海は急に腹を抱え、口を押さえた。
「気持ち悪……いっ……」
諸君、覚えておくんだ。大人の教科書20ページ目くらいにでてくるよ。
これが、「「悪酔い」」の王道パターンだ。
「「悪酔い」」ではね、時々あるんだよ。
急な吐き気に襲われる事が。
「キャーーーッッッ!!」
リバース。
はい、みんなドン引き。
女子、驚いてから怒って速攻帰宅。
さようなら。
◇◆◇◆
『好き、好きよ、ウナくん』
『わっ! 君、そんな裸でなにしてんの!??』
『わたし、あなたが好きなの。あなたと繋がれたいの』
『好き? 僕を……?』
『うん、……来て。こっちへ来て……』
『でも……』
『お願い! 来ないと泣いちゃう!』
『え……。うん、俺も男だ!』
裸でシーツに包まる女に向かって、走り出す。
『うおおおぉぉぉ!!』
ドス!!!
あと1メールってとこで、穴に落ちた。
穴!? こんなとこに穴!??
テッテテー♪
『まじかよ……』
マイクを持った男が穴を覗いて、看板を出した。
『童貞ドッキリ 大成功!!』
童貞どっきりって……。
こんなとこまで来なーーー!!!
「う……」
夢……。
ぐわんぐわん回る脳味噌が、徐々に現実に戻っていった。
気持ち悪い。
あぁそういえば、夕べ……。
「って、まだ夜なのか……。そういや一人で帰るって言い張って……」
途中で急に倒れたような気がする。
徐々に意識がはっきりしてくる。
「……ん?」
つんつん。
「……んん?」
つんつん。「あ、生きてた」
「んあっ!??」
見知らぬ声がして飛び起きた。しかも体を突つつく感触までしっかり感じたのだ。
「な、何!? ドッキリ!?」
「ドッキリ? なにそれ。美味しいの?」
しゃがみ、きょとんとして首を傾げながら、こっちを見ている女がいる。
今の台詞が本気のような顔でだ。そんなはずはないのに。
「ちょ、その格好!どうしたんだ!?ボロボロだぞ、なんかあったのか!?」
よく見ると、いやよく見ないでも、女の服はボロボロだった。黒いワンピースがあっちこっち破けて、土の汚れかわからないがとにかく汚れている。それに長い髪もボサボサだし、顔も土で黒く汚れていた。
女は胸元の服を摘んで見ると、首を傾げてから、
「そうかなぁ? へん?」
と言った。
「へん?って……」
ちょっと変な子なのかな?……それとも障害のある子で迷子になってるとか……。だとしたら、警察に行かなきゃ。じゃなければ、ドッキリ……いや、まさか、こんな時間に。
優海は腕時計を見た。
午前二時。
さすがにこの時間はないだろう。ならばやっぱり警察に……。
「ちょっと待って、君は迷子の子なのかもしれない。一緒に交番に行ってあげるから。え……と、ここはどこなんだ……って!僕のアパートまであと一メートルじゃないか!こんなとこで寝てたのか……恥ずかしい」
「交番?」
「そうだよ、警察、おまわりさん、がいるところ。ちゃんと家に届けてくれるよ」
「あっち家、帰れるよ。帰り道知ってる」
自分の事、あっち、って読んでるのか。
「え?そうなの?どこ?近く?」
「ううん。お山。お山の上のほう」
「や、山?そうかぁ」
やっぱりそうだ。施設から抜け出して行方不明とか、そんなんかもしれない。
その時、女がすくっと立った。
「わわっ!! ちょ!!」
「?」
すると、ワンピースは大きく破れていて、右の胸とお腹が露になってしまったではないか。
「ちょっとマズイマズイ!! その格好はマズイ!! ちょっと来て!!」
優海は慌てて女の手を取ると、自分のアパートへ駆け込んだ。