ドッキリ男の恋―君はたった一つの星―   作:@星きらり

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4話 サチ

 

 「ととと、とりあえず、ふ、風呂に入ろう、うん」

 

 優海(うな)はあからさまにドキドキしながら、顔を真っ赤にさせ、きょとんとして玄関に突っ立っている女に言った。

 

 「ほら、これ、バスタオル、ま、前隠した方がいいよ」

 

 女は差し出された緑色のバスタオルを受け取ると、

 

 「隠す……その方がいいの?」

 「あ、ああ」

 

 そう言って、よく分かりませんが、って顔で前を覆った。

 

 「風呂、沸くまでこっち入って待ってて」

 

 優海の鼓動は止まらない。

 そりゃそうだ。そりゃそうだよ。

 よく見ると、美少女だったし、しっかりはっきり、姉以外の女の裸……の一部を見てしまったし。はっきり言って、免疫のかけらもない優海には刺激が強すぎる。

 

 クローゼットから自分のTシャツとハーフパンツをとりだすと、リビングでキョロキョロしているその子に渡した。「風呂入ったら、これ着てね」。

 

 「……昔……こうゆうところ、住んでた」

 「え? 昔? アパートに住んでたことあるの?」

 「……わからない。まだ小さかった」

 「え……と……じゃあ、君の名前は?」

 「名前……サチ」

 「サチ? そっか、サチちゃんか。何歳なの?家族は……ごめん、一気に聞いちゃって。あ、コーヒー飲む?あったかい奴」

 「こーひー?飲み物なの?」

 「うん。インスタントだけどね。」

 「嬉しい!お腹、空っぽ!」

 

 あぁそうか、何も食べてないのか。そうだよな。どう見ても放浪してたみたいだし……。

 

 「じゃあ風呂に入ってる間に、ご飯作っておくよ」

 「ほんと!?嬉しい!嬉しい!!」

 

 よほど腹が減ってたんだろう。ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。

 ここまで喜ばれたら、作るかいがあるな―。

 嬉しそうな顔のサチを見て、優海もなんだか嬉しくなった。

 

 ピーピー

 

 風呂が沸いた音がして、シャンプーやボディーソープ、使うものの説明を聞いてからサチは風呂に入った。

 

 

 それにしても……記憶喪失なのだろうか。幼い頃の記憶は断片的なようだし、会話もちゃんとできるが片言だ。年齢は恐らく高校生くらいかちょっと上くらい。それにかなりの世間知らず。コーヒーも知らなければ、風呂用品の使い方もわからなかったし、バスタオルも巻けないくらいだ。やっぱり迷子なのかもしれない。なにか事件性があれば大変だ。朝になったら警察に届けなければ。

 

 そんな事を思いながら、冷蔵庫の中からちょうど今日食べようと思っていた親子丼の材料、鶏肉と玉葱と卵を取り出した。めんつゆで煮れば完成だから、風呂に入ってる間にさっと作れる。

 

 ぐつぐつ、それを煮ていると、

 

 「美味しそうな匂い!!」

 

 全裸のサチが風呂場から飛び出してきた。全身泡まみれのまま。

 

 「ちょっ!! こ、こら!! 戻りなさい!!」

 

 優海は全身の毛を逆立ててヤカンのように赤く沸騰してしまった。

 

 「はいっ早くするっ」

 

 サチはまたぴゅーんと戻っていった。

 

 「……まったくっ……あ、あぶねっ」

 

 親子煮のつゆがなくなりそうになって、慌てて火を止める。

 あぁやだやだ、こんな自分は嫌だ。

 優海は全身が心臓のように脈打つのを押さえながら、どんぶりを二つ出した。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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