それではどうぞ
酒屋に突然現れた傷だらけの青年、棟谷蓮を霊夢が治療し始めてから30分、彼を運んだ空き部屋から霊夢が出てきた。
霊「とりあえず何とかなったわ。後は彼が目覚めるのを待つだけ」
部屋でぐっすり眠る彼を見て、二人は安心する。それと、と霊夢は懐から彼の腹部に刺さっていた槍の先端を取り出した。その槍はかなりうねっており、一目見ただけで刺されば致命傷になる形だと判断できる形状をしていた。
霊「彼に刺さってたこの槍なんだけど………何か不自然に思わない?」
言われてみれば確かに不自然だと彼女たちは思った。
彼に刺さっていたはずの槍には、
霊「抜いた瞬間は血はついていたのだけど、すぐに消えたのよ。まるで、
シ「血を吸い取った?………その槍、少し見せてもらえませんか?」
霊「いいわよ」
霊夢から槍を受け取ると、シエラは一人ぶつぶつと呪文を唱えるようにつぶやき始めた。そんな彼女をよそに、霊夢は青年を見て呆れたような声を出した。
霊「それにしても、あの状態でよく生き延びれたわね、あいつ。驚きを通り越して呆れたわ」
咲「生き延びれた………って、どういうこと?」
霊「そのままの意味よ。あいつ、少なくともけがを負ってから三週間はあの状態だったと思うわ。服についていた血は完全に固まって変色してたし、あいつから感じれる妖力や霊力も底を尽きかけてた。今までいろんな妖怪を見てきたけど、あんな生命力の高い妖怪は初めてよ」
咲「三週間……………」
彼が行方不明になった時期とほぼ一致する。さらに、さっきのフード男達が誰かを捜し始めた時期とも一致する。そして男たちが捜している存在は、三週間前に傷を負わせられているという。
付け加えて言うならば、二週間前にキラが言った『彼を保護してやってほしい』という言葉からも、彼は何者かに狙われているということが推測できる。
これらのことから、あのフード男達が捜している存在は棟谷蓮であることがほぼ確定する。とすれば、あのフード男達が言った、“世界を支配する”力を彼は持っているということになる。ただこれはあくまで噂らしいので、本当かどうかは定かではないが。
どちらにせよ、彼をあいつらに捕えさせるわけにはいかないという結論に達したところで、シエラが戻ってきた。
シ「この槍を少し調べてみました。これはおそらく、吸血槍というものではないかと」
霊「吸血槍?なに、そのだっさい名前」
咲「そこじゃないでしょ。それで、どういう槍なんですか?」
シ「吸血槍とは、簡単に言えば槍型の吸血鬼です。この槍は刃こぼれした部分を血で再生するという特殊な能力がありまして、刺さっている間ずっと血を吸い続けるんです」
霊「名前のまんまの能力ね」
シ「はい。ですがこの槍はあまりにも危険な代物であるため、一部の亜人にしか使用が許可されていないんです。それも、死神のような“死”を取り扱う種族にしか」
咲「………つまり、彼をあそこまで傷つけたのは、死神族の誰か、ってことになりますね」
シ「その通りです。ただ、この槍が誰の持ち物かは現段階ではわかりません。なので霊夢さん、この槍をしばらく私が預かっていてもよろしいでしょうか?」
霊「いいわよ。むしろそんな気味の悪い槍なんて預かりたくないわ」
シ「ありがとうございます」
シエラは槍を布で包み、懐にいれた。さらにもう一つ、頼みがあると彼女は言う。
シ「もう一つ、彼をしばらく保護してもらえないでしょうか?本来であれば私たちが彼を保護するべきなのですが、今亜人種の中で問題が起こってまして……………どうしても彼を保護できる余力がないんです」
咲「その問題って、序列上位者を襲撃する謎の集団のことですか?」
咲夜の言葉にシエラは目を見開いた。まさか人間である彼女がそのことを知っているとは思わなかったのだろう。無論何も知らない霊夢は首をかしげているが。
咲「二週間前、お嬢様のお師匠様から“謎の紋章がついた集団が序列上位者を襲撃する事件がここ最近絶えない”と話されまして、それで知りました」
シ「そうですか…………はい、咲夜さんの言う通りです。今私たちはその事件を解決することに必死なんです。というのも、一昨日あの人がやられてしまったという情報が入ってから、今大混乱が起きてしまっているんです」
咲「あの人…………とは?」
シ「亜人種序列
咲夜は驚きを通り越して恐怖を感じた。亜人種は軽く数えても数百以上の種族が存在しており、それらの人数は億を超えるだろう。その中でも4位という超上位序列者、更に戦闘においては高いセンスを持つとされる鬼が、その集団によりやられた。亜人種の間で混乱が起きてしまうのも当然だろう。
シ「不意打ちだったということもあるらしいのですが、それでもあの人がやられたということは相当危険な集団だと思われます。なので、序列上位者である彼を保護する必要があるのです」
霊「えーっと…………半分以上何言ってるのかわかんなかったけど、要するに彼を保護しないとまずいってことね」
シ「はい、その通りです」
霊「ふーん。じゃあ咲夜頼んだわ」
咲「はい?」
急に話を振られた咲夜は間の抜けた声を出してしまう。霊夢は笑いながら続けた。
霊「あんたのとこの豪邸なら空き部屋の一つや二つあるでしょ?私には誰かを養えるほどのお金も部屋もないし、一応あそこはこの幻想郷で一番重要な場所よ。すぐにばれるわ」
咲「確かにそうでしょうけど………一度お嬢様に聞いてからじゃないと」
レ「もう聞いてるわ」
突然の彼女の声に三人は驚く。見ると、レミリアが青年の枕元近くに立っていた。
咲「お、お嬢様⁈いつのまに、というかなぜここに?」
レ「咲夜が酒屋で何かに遭遇する運命が見えてね、気になって来てみたのよ」
言われて咲夜ははっとなった。そうだ、お嬢様の能力は【運命を操る程度の能力】、つまりある程度の未来予知ができる。それでここに来たのか、と彼女は納得した。
シ「あなたがレミリアさんですね。初めまして、私はシエラ・リルダヴァルと申します」
レ「ご丁寧にありがとう。私はレミリア・スカーレット。大体の事情は把握したわ。こちらもちょうど彼を保護するために捜していたところだったの」
シ「そうだったんですか‼それじゃあ………」
レ「えぇ…………咲夜、彼を紅魔館に連れて行くわ。いいわね?」
咲「承知いたしました」
彼を引き取ることに決まったので、さっそく咲夜が彼を運ぼうとしたとき、その必要はないとシエラが言った。
シ「私の能力で彼を皆さんと一緒に紅魔館に直接転移させます。そちらのほうが、安全かと」
レ「そんなことができるの?ならそうさせてもらおうかしら。咲夜はどうする?」
咲「私は、徒歩で戻ります。まだ買い物の途中ですし、このあとアスナと一度合流することになっていますので」
レ「そう。
咲「御意」
レミリアが周りに気をつけろと強調したのは、おそらく
シ「では、転移させますね」
そういうと、シエラは魔法陣を展開し、レミリアと彼を囲んだ。そして何やらつぶやき、一瞬で二人をどこかに飛ばした。ちなみに店主から借りた布団はそのままだ。
それを確認した咲夜も、それじゃと言って帰った。その場にシエラと霊夢しかいなくなった時、霊夢はシエラに気がかりなことを聞いた。
霊「シエラさん、さっきの彼が倒れる寸前に行ってた言葉、覚えてる?」
シ「“
霊「えぇ。あれ、どうも嫌な予感がしてならないの。普通戦争が起こるのなら、
シ「……………これは、あくまで私の推測でしかないのですが、おそらく彼は、
霊「…………だとしたら、
シ「おそらくは………こちらからも
霊「あんたからの要請は絶対きくわよ
シ「そうでしょうけど…………」
霊「ま、とりあえず
シ「助かります、霊夢さん。ではまた」
シエラも能力でその場を去る。最後一人残った霊夢は、酒屋を立ち去ろうとしたとき、ふとあることを思い出した。
霊「そういえば、私あいつの名前聞いてないや」
To be continued……
ちょっと短くなった三話でした。
一応シエラさんは、
【ブラック・ブレット】の聖天子様風の色合いをした【GOD EATER2】シエル・アランソンという姿をイメージしてます。
ちなみにアスナちゃんは、
【アズールレーン】の駆逐艦コメットにメイド服着せた姿が一番イメージに近いですね。
以上
次回四話、もしかしたら新キャラがまた出るかもしれません。